【9928】株式会社ミロク情報サービス 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年9月19日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ミロク情報サービスは45年以上にわたり会計事務所や中堅・中小企業、小規模事業者向けに会計システムや業務ソリューションを提供してきました。

代表取締役社長の是枝 周樹氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社ミロク情報サービスを一言で言うと

会計事務所、中堅・中小企業向けに新たなソリューションを提供し、継続的な企業価値向上を続ける会社です。 

ミロク情報サービスの沿革

株式会社ミロク情報サービス代表取締役社長 是枝 周樹氏

創業の経緯

1977年に、「ミロク情報サービス」の当時の親会社であり、現取締役会長の是枝伸彦が専務を務めていた「ミロク経理」から是枝伸彦が全株式と経営権を買い取り独立する形で当社は設立されました。

当時、海外を含めてオフィスコンピューター(以下オフコン)と呼ばれる事務処理専用の小型コンピューターが急速に普及していました。

そのような中、当社は、会計事務所向け計算センター業務を中心としたビジネスモデルから、会計事務所向けの専用オフコンの開発・販売を中心としたビジネスモデルへと変革していきました。

その後、1983年からは会計事務所の顧問先企業向けの専用オフコンの開発・販売およびOEM提供での事業展開を始めました。

ハードウェアからソフトウェアへ

1992年にWindows 3.1が登場し、1995年のWindows 95とともにパソコンやサーバーの時代へと移行しました。

それを見越して、当社もハードウェアの製造から、ソフトウェア専業へと事業転換し、1990年からパソコンに搭載できるパッケージソフトの開発を行っていました。

その後も財務会計、税務、給与、人事、販売管理などのソフトウェアを開発・提供しながら事業を拡大してきました。

近年はソフトウェアからクラウドサービスの時代に移行しつつあります。当社もまた自社製品をソフトウェアからクラウドサービスに移行しています。

1992年に店頭登録、2012年に東証一部上場を果たし、2022年からは東証区分の変更により東証プライム市場へと移行しました。

本年5月に「中期経営計画Vision2028」を策定し、「ビジネスモデル変革と新たな価値創造へのチャレンジ」を推進しています。

株式会社ミロク情報サービス 2024年5月22日 「サステナビリティ2030」と「中期経営計画Vision2028」について より引用

ミロク情報サービスの事業概要と特徴

概要

ERP事業においては、会計事務所と中堅・中小企業、小規模事業者に対して財務・会計・税務を軸としてERP製品をはじめとする経営システムならびに経営情報サービス等を提供しています。

近年は新規事業として統合型DXプラットフォーム事業を立ち上げ、2020年に子会社化したトライベック社と「Hirameki 7」を開発し、中小企業の業務効率化、DX化をサポートするプラットフォームも提供しています。

事業における優位性

他社には真似できない会計・税務の専門的知見

当社が持つ最大の強みは、45年以上にわたる会計事務所との強固な信頼関係、そして蓄積してきた業界知見とノウハウです。

私たちは、単に製品を提供するだけでなく、時代のニーズに合わせて絶えずアップデートを重ねてきました。

例えば、MJSシステムをご利用の税理士の先生方からシステムやサービスへの要望、提言をいただき継続的に製品・サービスの開発、改善に取り組むほか、法改正が行われるたびに、会計や税務システムを迅速にアップデートし、お客様が新しい規制に対応できるように整備しています。

そして、こうした税制への詳細な理解をもととした各種法制度改正への迅速できめ細やかな対応、実務に即した使い勝手の良い操作性など、この長年の法改正に対してしっかりと積み上げてきた知見は高い参入障壁となっています。

新興企業が経費精算などのシステムを開発しても、税務システムに参入してこない理由にはそのような背景があります。

また、当社は北海道から沖縄まで全国に32拠点を有しており、導入時の設定や操作説明など地域密着型でMJS社員が直接訪問し作業、対応しています。

電話やメールによる問い合わせ対応など、各種サポート体制も充実しており、お客さまはいつでも安心してMJS製品をお使いいただくことができます。

その他、当社のシンクタンク「税経システム研究所」の客員講師が講師を務める税理士会認定研修をはじめ、専門知識や実務ノウハウを提供する各種研修会やセミナーを全国各地およびオンラインで多数開催しています。

このように、当社は専門的知見を活かして、コンサルティングや製品の提供だけでなく、導入支援や導入後のアフターケアを含む様々なサポートを行い、お客様にとって信頼できるパートナーであり続けています。

強固な顧客基盤

当社のERPパッケージは、中小企業から上場企業まで幅広い顧客に導入されており、特に会計事務所マーケットではシェア25%と業界トップクラスのシェアを誇っています。

創業以来、会計事務所との信頼関係を構築し、その先にある顧問先の中堅・中小企業、小規模事業者に対してアプローチを重ねてきました。

特に、会計システムは年間通して使用されて初めて評価される製品です。

法人税などの税金が適切に計算され、決算書が正確に作成されて初めて信頼を得ることができます。

当社の専門的な知識によるサポートはもちろんのこと、お客様の成長に寄与できるようなソリューションのラインナップを増やしながら、様々な規模の企業に対応してきました。

現在、約8,400の会計事務所、ERP製品を利用する中堅・中小企業は約18,000社、当社と直接取引の無い小規模な顧問先企業も含めると約10万社に上るお客様にMJSのシステムをご利用いただいております。

業種業界問わず、様々な企業に導入されていることも特徴です。

一気通貫で提供できるシステム群

当社が提供するシステムは、財務会計、税務、給与、人事、販売管理など多岐にわたります。

また、他社製品とのシステム連携も強化しており、お客様の業務に合わせて、経理部門のみならず他部門も含めた会社全体の生産性向上を実現可能とします。

ミロク情報サービスの成長戦略

ERP事業成長のための取り組み

持続的な成長を目指し、2024年5月にERP事業の成長を軸に据えた「中期経営計画Vision 2028」を策定しました。

今後、DXコンサルティングサービスと新たなSaaS製品の提供を行い、会計事務所や顧問先企業のDX化を実現していきます。

新たに開始するDXコンサルティングサービスでは、会計事務所とともに中小企業に寄り添い、伴走支援で経営改善に取り組むことで、顧問先企業のビジネス上の成功、すなわちカスタマーサクセスを目指します。

現在、当社はITコンサルティング力強化に力を注いでおり、2024年度では、約100名の従業員が経済産業省推奨資格であるITコーディネータ(ITC)資格を取得する計画です。

当社のコンサルタントが会計事務所とBPO(Busuiness Process Outsourcing)の契約を結び、顧問先企業に対してDX支援をする新たなビジネスを始めます。

株式会社ミロク情報サービス 2024年5月22日 「サステナビリティ2030」と「中期経営計画Vision2028」について より引用

また、これまではパッケージ型の販売モデルを中心に展開してきましたが、今後はSaaS型ERP販売によるサブスクリプションモデルへの転換を図ります。

この移行により、お客様は初期投資を抑えつつ、最新の技術や機能を常に利用できるようになるため、非常に大きなメリットを享受できます。

そして、当社にとってはストック収益の積み上げによる安定的な収益源となるだけでなく、お客様との長期的な関係構築にも繋がる重要な戦略です。

2023年度時点では既に3,190社の企業がサブスクリプション契約を結んでおり、2028年度にはこの数を約5倍の15,000社へ増やすことが目標です。

株式会社ミロク情報サービス 2024年5月22日 「サステナビリティ2030」と「中期経営計画Vision2028」について より引用

さらに、私たちはERPシステムの導入を単なる業務効率化の手段として捉えるのではなく、企業全体の経営を支える基盤として提供したいと考えています。

具体的には、ERPシステムを通じて得られるデータを活用し、経営者が意思決定を行う際の判断材料を提供したり、企業全体の業務フローを最適化したり、売上の増加、事業拡大・継続に向けた、より戦略的な経営支援を行っていきます。

こうしたサービスの拡充を通じて、中小企業のビジネスを次のステージへと導くパートナーであり続けます。

株式会社ミロク情報サービス 2024年5月22日 「サステナビリティ2030」と「中期経営計画Vision2028」について より引用

DXプラットフォーム事業の挑戦

DXプラットフォーム事業では中小企業のDX化を包括的に支援するサービス「Hirameki 7」を展開していきます。

具体的には、コーポレートサイトの構築から、新規顧客開拓を効率化する営業リスト検索、お問合せや資料請求などのWebフォーム作成や名刺管理、メールの配信など顧客へのアプローチを支援するマーケティング機能までをトータルでカバーし、企業のデジタルプレゼンスを強化することを目指しています。

「Hirameki 7」は、2022年7月のサービス提供開始から利用者は34,000社を突破しており、機能拡充や当社の販売網を活用した拡販にも注力し、2028年度にはユーザー数約80,000社を目標としています。

株式会社ミロク情報サービス 2024年5月22日 「サステナビリティ2030」と「中期経営計画Vision2028」について より引用

個人的な考えではありますが、中小企業におけるDXの第一歩はコーポレートサイトだと考えています。

例えば、スマートフォンで閲覧してもPC版の表示になってしまうサイトを見た時に、その会社がどこまでITリテラシーを持っているのかなど、考えてしまうと思います。

そういった点も含めて、会社の「名刺」とも言えるコーポレートサイトをしっかり整備することが重要です。

そしてDXへの理解が進み、ITリテラシーがある程度向上した段階で業務系システムのサポートを行い、新たな成長余地を生み出すことができるのではないかと考えています。

そのような展開も考え、経営者向けにはリアルタイムで財務状況や営業活動の進捗を把握できるダッシュボードを提供するなど、企業の意思決定を支援するための高度な機能を備え、デジタルサービスと会計システムを連携し、お客様が1つのプラットフォーム、デジタル環境の中で業務を進められるような世界観を想像しています。

株式会社ミロク情報サービス 2024年5月22日 「サステナビリティ2030」と「中期経営計画Vision2028」について より引用

経営基盤強化・人的資本経営

経営基盤の強化や人的資本経営の推進は当社の成長にとって重要な戦略です。

先ほど申し上げた通り、現在、ITコーディネータなど各種資格取得の推進をはじめ、中小企業向けのDX支援を推進する体制を整えており、リスキリングを行いながらコンサルティングを担える人材を増やしていきます。

また、当社は企業価値向上の観点から女性の活躍推進にも注力しています。

2030年度には管理職の21%を女性にするという目標を掲げ、採用基準やキャリアパスの見直し、育児休業制度の拡充や就業規則の改定など、社員が安心して働ける環境を整えるための改革も進めています。

私は社員一人ひとりの成長が企業の成長に直結すると考えており、人件費はコストではなく投資だと考えています。

社員が意欲的に働き、最大限のパフォーマンスを発揮できるような環境を整備していきたいと考えています。

注目していただきたいポイント

当社は”現場”に強い企業です。

全国に32拠点を構え、お客様に対して1on1のDX支援ができるため、各社のニーズに応じたサービス提供を行っています。

お客様のカスタマーサクセスを実現することで、LTV(顧客生涯価値)をどれだけ高めることができるかが、当社の今後の持続可能な成長を実現するためには重要です。

そのためにも、当社は将来的にはSaaS型製品の提供によるストック収益を積み上げ、コンサルティング収益による売上を拡大していきます。

当社の事業基盤を活かした新たなビジネスモデルにご注目いただきたいです。

そして、当社の子会社であるトライベック社の「Hirameki 7」の成長性にもご注目ください。

トライベック社はデジタルマーケティング支援を本業としているため、当社とは一見、毛色の違う会社に見えるかもしれませんが、将来的には最大のシナジーが生まれると考えています。

ERPの新規顧客をどこから獲得するのかという視点に立つと、「Hirameki 7」が潜在顧客の新たな獲得チャネルとして大きな役割を果たすと考えています。

また、ユーザー数が増えれば、データも多く集まります。

プラットフォーム内で中小企業、小規模事業者のコミュ二ティが創出されれば、将来的にそのコミュニティ内で業界別のプロモーションやビジネスマッチング、さらにはM&Aなども可能です。

このように「Hirameki 7」には様々な可能性が秘められていると考えています。

ぜひ当社の新たな展開に期待していただければと存じます。

投資家の皆様へメッセージ

当社は、長期的に安定した利益還元を維持することを基本方針としており、これからも株主の皆様のご期待に沿えるよう、安定した成長を続けてまいります。

私たちの事業成長に引き続きご期待いただき、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

株式会社ミロク情報サービス

本社所在地:〒160-0004 東京都新宿区四谷4-29-1

設立:1977年11月2日

資本金:31億98百万円(2024年3月末時点)

上場市場:東証プライム市場(1992年8月27日上場)

証券コード:9928

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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