【228A】株式会社オプロ 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年10月3日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社オプロは「帳票DX」や「ソアスク」など、企業の生産性をあげるSaaSを提供しています。

代表取締役社長の里見 一典氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社オプロを一言で言うと

「まだないピースを発明する」をコンセプトに、安定的な成長を実現しているSaaSベンダーです。

オプロの沿革

株式会社オプロ代表取締役社長 里見 一典氏

創業の経緯

私は大学を卒業後、外資系企業である日本DEC(現 日本ヒューレットパッカード)に約10年間勤務していました。

当時、私はセールスエンジニアとしてIT分野での経験を積み重ね、IT技術に関する深い知識を学びました。

しかし、外資系企業特有の組織文化に違和感を感じることが多く、自分自身で新しいビジネスを立ち上げようと考え、個人事業主として事業を始めました。

2003年には最初の製品としてWeb帳票ソフトウェア「OPRO X Server」をリリースしました。

SaaSベンダーへの転換

2007年に初となるクラウド帳票サービス「OPROARTS」を提供開始し、帳票に関わるSaaSビジネスをスタートさせました。

当時、日本市場ではまだクラウドの概念が広く浸透しておらず、私たちの取り組みは非常にイノベーティブでした。

従来はオンプレミス型のソフトウェアが主流で、大手企業を中心にウイングアーク1st社の帳票出力ソフトが広まっていましたが、当社はSaaSで提供することで差別化を図ることができました。

Salesforceのプラットフォーム上で帳票の作成・管理が可能なシステムを構築し、企業の業務プロセスを効率化することができます。

このオンプレミス型からクラウド型へのビジネスモデルの転換が、今日までの事業成長を支えています。

2024年8月に上場

当社は2024年8月に東証グロース市場に上場を果たしました。

上場の主な目的は、信頼度と認知度の向上です。

特に、新卒採用に力を入れている当社にとって、上場企業であることは大きな利点となります。

就職活動において、親御さんの意見が影響を与えることが多く、上場企業は業績や経営情報が公表されているため、安心感を持ってもらいやすいという点で役立ちます。

また、今後のエンタープライズ向けの製品としてシフトしていくためには、上場による信頼性向上が大きな支えとなります。

上場によって得た信頼度と認知度を活用して、さらなる事業成長を目指します。

株式会社オプロ 2024年8月21日 事業計画及び成長可能性に関する説明資料 より引用

オプロの事業概要と特徴

概要

当社はデータオプティマイズソリューションとセールスマネジメントソリューションの2軸でビジネスを展開しています。

データオプティマイズソリューションでは、帳票出力クラウド「帳票DX」の提供や、電子申請プラットフォーム「カミレス」、業界特化型タブレット入力「帳票DX ME(モバイルエントリー)」を提供しています。

また、帳票の自動生成や管理だけでなく、販売管理や営業支援の機能を含むサービスを提供しているのがセールスマネジメントソリューションです。

当社のようなソフトウェア開発企業向けの無形商材の販売管理システム「ソアスク」や、有形商材の販売管理システム「モノスク」を提供しています。

これらのサービスはSalesforce上でシームレスに機能するように設計されており、ユーザーにとって使いやすいシステムに仕上がっています。

一部はオンプレミスで提供している製品もありますが、基本的にはSaaS型で提供しているため、ストック収益が積み上がっていく安定的なビジネスモデルです。

株式会社オプロ 2024年8月21日 事業計画及び成長可能性に関する説明資料 より引用

事業における優位性

継続的な商談を生み出すパートナーとの協業体制

パートナーとの強固な協業体制が当社の強みです。

特にSalesforceとのパートナーシップは、私たちのビジネスにおいて極めて重要な役割を果たしています。

新規商談の約9割はSalesforceやその代理店、またはコンサルティングファームなどからの紹介によるものです。

また、当社のパートナーの中にはアクセンチュアなどエンタープライズ領域に強いコンサルティングファームが多数おり、大規模案件受注に繋がっています。

株式会社オプロ 2024年8月21日 事業計画及び成長可能性に関する説明資料 より引用

新サービス・新機能を生み出す顧客ニーズ把握力と製品アップデート力

SaaSを継続して利用していただくためにはお客様のニーズを適切に把握し、サービスをより良いものへと改良していくことが必要です。

Salesforceと連携して帳票を出すシステムの開発はお客様のニーズからスタートしました。

Salesforce上で管理しているページからボタンをクリックすれば帳票が出せるシステムが求められたので、それを実装しました。

アップデートしていくうちに、見積書、請求書を管理・発行できるパッケージが欲しいという要望が徐々に増え、現在の「ソアスク」の前身となるサービスを開発しました。

SaaSの最大の利点は、お客様が使っている様子を確認し、都度ニーズを吸い上げることができるため、”ハズレ”のないサービス・機能を作りやすいという点にあります。

お客様からの生の声は非常に重要です。

オンプレミスの世界では、SIerや代理店を通して販売されるため、お客様の声が開発者側には直接届きません。

しかしSaaSであれば、極端なことを言うと、簡単な機能であれば翌日にはリリースして対応することも可能であり、柔軟に対応できます。

このように、お客様からの要望に迅速に応え、新たなサービス開発をできることが強みだと自負しています。

株式会社オプロ 2024年8月21日 事業計画及び成長可能性に関する説明資料 より引用

市場や顧客に応じた柔軟な価格戦略

当社のお客様層は幅広く、業界問わず様々なお客様にご利用いただいています。

お客様によっては部門導入から始まることも多く、価格戦略を柔軟に変化させることで導入のハードルを下げています。

サービスによって料金体系は異なりますが、ID課金、従量課金、機能課金などのパラメーターがあるため、様々な選択肢から組み合わせることで、お客様に合わせた価格設計が可能です。

例えば「金額はここまで払えないけれど、この機能は使用しないので価格を下げてほしい」といった場合には、機能制限をかけて価格を抑えることで新規契約につなげています。

株式会社オプロ 2024年8月21日 事業計画及び成長可能性に関する説明資料 より引用

オプロの成長戦略

エンタープライズ市場の開拓

現在はエンタープライズ企業の比率は約20%です。

今後、中長期的に成長していくためにはエンタープライズ市場の開拓が重要な課題だと考えています。

エンタープライズ向けの機能追加を行い、マーケティング活動や外部への発信を続けていきます。

また、大手のコンサルティングパートナーはエンタープライズ領域を開拓する上で重要なチャネルとなるため、関係性の強化を図る取り組みを積極的に進めて参ります。

株式会社オプロ 2024年8月21日 事業計画及び成長可能性に関する説明資料 より引用

収益基盤の多様化

エンタープライズ領域のお客様への導入を進めるためには、SAP市場の開拓を避けて通ることはできません。

現状、私たちの製品でSAPから帳票を出している企業はほとんどないため、拡大余地は大いにあります。

今後、2027年に向けてSAPのクラウド化が進んでいきますが、そこには当社が市場をひっくり返すチャンスがあると期待しています。

そして、当社の製品群のほとんどがSalesforceと連携する製品として拡大していますが、収益基盤を多様化するという意味合いでは、SAPへの市場参入は大きな挑戦です。

Salesforce自体がまだまだ伸びているため、当社の市場の広がりは明るいと考えていますが、中長期的な目線で見るとリスクファクターを減らすという観点で、今後取り組んでいくべき課題だと認識しています。

株式会社オプロ 2024年8月21日 事業計画及び成長可能性に関する説明資料 より引用

人材投資

当社の成長において、人材投資は非常に重要な要素だと考えています。

当社は新卒社員の比率が非常に高く、新卒人材とキャリア人材の比率は1:1となっていますが、非常に優秀なメンバーが多いです。

新卒に関しては、数ヶ月の研修後には現場で働くことができる即戦力が多く入社しています。

また、当社の製品を開発した初期メンバーが未だ在籍していることは大きなメリットです。

優秀な人材のもとには優秀な人材が自ずと集まってくるため、開発人材に関しては良質なサイクルを実現しています。

ただ、今後エンタープライズ向けに展開していく際には開発人材だけではなく、営業やカスタマーサポート、バックオフィスなども強化していく必要があります。

お客様が増えるに伴い、長期的にサービスを利用してもらうことがビジネスの成功に不可欠であり、そのためにはLTV(Life Time Value)を向上させることが重要です。

このため、カスタマーサクセスのチームを強化し、お客様がサービスを効果的に活用できるように支援する体制を整えていきます。

さらに、上場後は社員数が増加することが見込まれるため、バックオフィス部門も含めた体制強化が不可欠です

人的資本の充実を図ることで、持続可能なサービスの提供と成長を支えたいと考えています。

株式会社オプロ 2024年8月21日 事業計画及び成長可能性に関する説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

当社のビジネスモデルは、SaaSの強みを最大限に活かしたものです。

お客様からのフィードバックを迅速に反映し、新しい機能やサービスを提供することで、持続可能な成長を実現しています。

そして、当社のビジネスモデルがSaaSビジネスであるため、安定した収益を生み出すため、SIerやソフトウェア開発企業とは異なる成長曲線を描いています。

まずは業績をみていただき、今後もしっかりと成長していく会社として、ご注目いただければと存じます。

株式会社オプロ 2024年8月21日 事業計画及び成長可能性に関する説明資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

当社は早期からSaaSビジネスの可能性を信じ、その優位性を最大限に活かして成長を続けてきました。

私たちの目標は、ARR100億円の達成と、プライム市場への上場です。

今後も、安定的な成長を続けながら、さらなる市場拡大を目指し、投資家の皆様に安心していただける企業であり続けるために全力を尽くしてまいります。

株式会社オプロ

本社所在地:〒104-0031 東京都中央区京橋2-14-1 兼松ビルディング9階

設立:1997年4月4日(創業:1993年6月29日)

資本金:435,810,200円(2024年10月アクセス時点)

上場市場:東証グロース市場(2024年8月21日上場)

証券コード:228A

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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