※本コラムは2024年11月28日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社ボルテージは「恋愛と戦いのドラマ」を追求し、エンターテイメント市場を盛り上げていきます。
代表取締役社長の津谷 祐司氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社ボルテージを一言で言うと
「恋愛と戦いのドラマ」で、世界の人々に感動を与える会社です。
ボルテージの沿革
創業の経緯
1999年9月に私は株式会社ボルテージを創業しました。
それまでは新卒で入社した博報堂で広告業界でのキャリアを築きながら、映画監督になる夢を抱いていた私は、UCLAの映画学部大学院へ留学し、監督コースで3年間学び、短編映画を3本制作するなど、映像制作に情熱を注いでいました。
帰国後、映画監督としての活動を模索しましたが実を結ばず、再び博報堂へ戻ることになり、新規事業の立ち上げに挑戦しました。
当時流行していたカーナビ向けの情報提供サービスを企画しましたが、なかなか思うようにはいきませんでした。
しかし、NTTdocomo(以下ドコモ)が「iモード」サービスをスタートしたことをきっかけに、その新規メニューとして「映画館の混雑情報サービス」を提案すると、ドコモからは月50万円の契約を得ることに成功するなど、その事業は黒字化の兆しが見えていました。
しかし、新しく就任した上司に事業の中止を命ぜられ、「これではこの会社で新規事業を立ち上げても意味がない」と感じていました。
そんな時、ドコモから「ゲームを作ってみませんか?」との提案を受けました。
これが私の物語ゲーム制作への第一歩です。
当時のiモードは黎明期で、モノクロ画面で動作も遅く、ゲームはシンプルなパズルゲームなどが流行っていました。
映画脚本の執筆と映画会社へのアプローチも続けていましたが、なかなか期待する成果は得られず、本格的に「物語ゲーム」の制作に注力しました。
紆余曲折
そこから物語ゲームに注力してみたものの、ゲーム市場が小さかったこともあり収益は見込めず、赤字が続いていました。
売上はある程度出ていたのですが、人を雇ったことでコストが増え、資金がどんどん減っていき、3年目には3億円あった資金も底を突き、このままでは会社が潰れてしまうかもしれないと危機感を抱きました。
当時はゲームよりも写真やイラストを活用した「待受画面」や「着メロ」などが主流でした。
そこで当社もこれに挑戦するしかないと感じ、大きく事業を転換させることにしました。
ただし、当時のiモードは群雄割拠の時代で、既に300以上あったメニューにさらに新たなサービスメニューを追加するためには熾烈な競争に晒される他ありませんでした。
そのため差別化が重要でしたが、広告代理店時代に培ったアイデアを元に、写真にキャッチコピーを載せた「メッセージ付き待受画面」のサービスを企画し、これが大ヒットしました。
その後は着メロにも参入し、日本語の歌詞を活かした着メロサービス「歌詞で胸キュン!」を開発し、順調に売上を伸ばしていきました。
女性向け恋愛ゲームの開発とヒット
着メロ市場も数年で終焉を迎え「占いゲーム」8本や「男性向け対戦ゲーム」を3本ほど作りヒットはしたものの、大きく成長するまでには至りませんでした。
そのような中、ドコモの担当者から「未開拓な市場の女性向けゲームに注力した方が良い」とアドバイスを受け、方向転換することにしました。
当時、女性向けの恋愛ゲームはPCゲームでしかリリースされていませんでしたが、携帯版の恋愛ゲームとして現在の「ボル恋」シリーズを2006年にリリースし、瞬く間に大ヒットしました。
そして、2011年には上場を果たし、女性向け恋愛ゲームのパイオニアとしてさまざまな作品を生み出すことができました。
現在は、物語を軸にアプリゲームのみならず、電子コミックや自社企画したIPグッズなど国内外で事業を展開しています。
ボルテージの事業概要と特徴
概要
現在はスマホアプリ市場の縮小を受けて、物語アプリ事業で培った技術力やファンを活かして、電子コミックやNintendo Switch向けの事業を拡大させています。
事業における優位性
「恋愛と戦い」 を軸とした物語性
当社の強みは「物語性」にあります。
物語には汎用性があるので、メディアやジャンルが変わっても応用が可能です。
また、広告会社勤務10年で培った広告ノウハウも、自社サイトのプロモーションをかけることに活用してきました。
その中でなんと言っても、ヒットを続けることができたのはシリーズ化です。
ゲーム業界はボラティリティが高く、ヒットするかどうかの振れ幅が非常に大きいためビジネスとしては安定しないことが多いのが難点です。
そこで当社は恋愛ゲームをシリーズ化することで物語のテーマを変えながら制作し続けています。
結果としてノウハウが蓄積されたことで採算性の向上を実現しています。
地域性を考慮した展開
当社は日本国内だけでなくグローバル向けにも恋愛アプリゲームやコンテンツを展開していますが、地域によって好みが違うためその特徴をしっかりと反映させることが必要です。
日本では細マッチョやシュッとしたタイプが人気ですが、アメリカでは筋肉質のマッチョが人気です。
また、日本では「俺様キャラ」のようにツンデレな性格で、みんなの前では威張っているけれど、二人きりになると本音を見せて甘えてくれるようなキャラクターが圧倒的に支持されています。
一方で、アメリカでは非常に優しく振る舞うよう教育されており、ドアを開けたり椅子を引いたりといった表面的な優しさが求められ、危機的状況に陥った時に「自分を体で守ってくれる」というような男性が人気です。
こういった地域性に合ったキャラクターを作るために、日本とアメリカの両方の文化を理解している絵師が担当しています。
このように、地域ごとのニーズをしっかりと理解して展開できるような体制を整えていることは当社の強みです。
ボルテージの成長戦略
世界的なヒットIPを目指す
私たちの目標はヒット作品を生み出し、大きなIPを育てていくことです。
一時期、私たちのゲームは一世を風靡したので、現在40代〜50代の方の半数以上が名前を聞いたことがあると思います。
今後はアプリゲームだけでなく、電子コミックや漫画、Nintendo Switchなどの分野でも、再び多くの人に知られるようなIPを作っていきたいと考えています。
IPを作る上で重要となるのは、やはり「物語」です。
キャラクターひとりひとりにストーリーがあり、そのストーリーを支える世界観の三拍子が揃って初めてIPが成立します。
今後も物語とキャラクターの両方を大切にしてグローバルに通用するIPを創出していきたいです。
注目していただきたいポイント
現在、新分野として取り組んでいる電子コミック分野とコンシューマー事業は大きく成長しています。
現在の市場環境ではアプリゲームでヒット作を生み出すのは非常に難しいですが、コンシューマ事業では既に「TEMPEST(テンペスト)」シリーズを中心に安定した収益を生むタイトルがあります。
漫画分野でも、講談社と協力して10万〜20万人が購読する作品をリリースしており、100万部を超えるヒット作になるように注力しています。
当初は年に3〜4本の作品を制作するのが精一杯でしたが、制作を続ける中で、チームのスキルも向上し、販売方法や広告戦略も洗練されており、効率良く作品を生み出せています。
今後、当社がリリースする作品に期待していただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
私たちは、「物語」を軸に、アプリゲーム、漫画、グッズなど幅広いコンテンツを展開し、世界中の人々に楽しんでいただける作品を生み出し続けることを目指しています。
2006年に配信を開始した「女性向け恋愛ゲーム」では、家事に仕事に忙しい女性たちが、ほんの少しの時間でもほっとできて癒されるコンテンツを提供してまいりました。
エンターテインメント市場の裾野の広がりは、とどまるところを知りません。
我々は、ユーザーの皆様の日々の生活の中での楽しみを最大化し、人々の生活を明るく盛り上げ生きる活力となる「ストーリー」を社会に提供し続けてまいります。
物語には、人々の心を揺さぶる力があります。
そして、私たちは「物語」とは「恋愛」と「戦い」に集約されると考えています。
「恋愛」には、恋人同士の愛だけでなく、親子愛や仲間との助け合いといった多様な形があります。
一方で「戦い」は、戦争や争いを意味するのではなく、ライバルと切磋琢磨する競争の観点を指しています。
私たちは、この「恋愛」と「戦い」を軸に、物語性をドラマチックに表現し、人々の心を揺さぶるストーリーを届けたいと考えています。
ぜひ、私たちが創り出すコンテンツにご期待いただき、引き続きご支援いただければ幸いです。
株式会社ボルテージ
本社所在地:〒150-6028 東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー28階
設立:1999年9月17日
資本金:12億50百万(2024年9月末時点)
上場市場:東証スタンダード市場(2010年6月11日上場)
証券コード:3639