※本コラムは2025年1月10日に実施したIRインタビューをもとにしております。
リネットジャパングループ株式会社は世界に類を見ないユニークなビジネスモデルで成長していきます。
代表取締役社長兼グループCEOの黒田 武志氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
リネットジャパングループ株式会社を一言で言うと
ビジネスを通じて「偉大な作品」を創る会社です。
ここでの「偉大な作品」とは収益性と社会性を両立したビジネスモデルを指しています。
リネットジャパングループの沿革
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創業の経緯
当社は2000年に創業し、今年(2025年)で25周年を迎えます。本社を名古屋に構え、東京にも拠点を展開しています。
私は大学卒業後にトヨタ自動車へ就職し、9年間勤めた後に独立しました。
創業当時はインターネットバブルが始まったばかりで、「これからはインターネットの時代だ」と多くの期待が寄せられていました。
アメリカではAmazonが本の通販で注目を集めており、日本でも同様のビジネスモデルを展開できないかと模索しました。
しかし、日本では新品の本の値引き販売が法律で制限されていたため、中古本の再販ビジネスに着目しました。
その結果、中古本販売大手のブックオフから10%、前職のトヨタから10%の出資をいただき、残りの80%を私自身が出資する形で事業をスタートしました。
当初は、インターネット版のブックオフという立ち位置で日本最大級のオンライン書店「eBOOKOFF」(現在のネットオフ)を開設し、業界初の宅配買取サービスを展開しました。
なお、現在はブックオフとの資本関係はありません。
リサイクル事業の立ち上げ
創業から10年目となる2010年、当社は経営理念として「ビジネスを通じて『偉大な作品』を創る」を掲げました。
この理念は、その後の事業展開の方向性を決定づけた大きな転機となりました。
さらに2013年には、小型家電リサイクル法が施行されました。
この法律は「都市鉱山」、すなわち不用になった電子機器に含まれる貴重な金属資源を有効活用することを目的に施行されました。
そこで、当社は事業拡大と社会貢献を両立させるための新たな挑戦として、パソコンなどに含まれるレアメタルを再利用するリサイクル事業を開始しました。
当時は、社会課題の解決と収益性の両立が近年ほど注目されていませんでしたが、この事業拡大が当社独自の「ESモデル(Environment:環境、Society:福祉)」の創出につながりました。
そして2014年1月には、環境省および経済産業省から小型家電リサイクル法の認定を取得しました。
同年7月には、ユーザーがインターネットで申し込むことで不用になった使用済みパソコンや携帯電話、小型家電を宅配回収するサービスを開始しました。
また、当社は東京2020オリンピック・パラリンピックの「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」に協力し、リサイクル金属を用いて約5,000個の金・銀・銅メダルの製作に貢献しました。
ソーシャルケア事業への拡大と「ESモデル」
当社のリサイクル事業におけるパソコンの分解作業は、知的障がいを持つ方々に非常に適していることが分かっています。
この特性を活かし、リサイクル事業とソーシャルケア事業を融合させた「ESモデル(Environment:環境、Society:福祉)」の実現を進めています。
その一環として、2020年8月に障がい者雇用と住まいの提供を目的としたグループホーム事業を展開する「リネットジャパンソーシャルケア株式会社」を設立しました。
さらに2023年には当時、フランチャイズを含め障がい者向けグループホームを全国で1,800棟を運営する規模を誇る業界でNo.1のアニスピホールディングス社を子会社化しました。
しかし、すべての物件を直接管理することの難しさから、現在は直営で運営する68棟の物件に注力しています。
そして当社は、リサイクル事業とソーシャルケア事業を連携させることで独自のビジネスモデルを確立し、持続可能な成長を目指しています。
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リネットジャパングループの事業概要と特徴
概要
当社の目指すのは環境と福祉の両方に貢献する「ESモデル」による循環型のビジネスモデルです。
リユース事業・リサイクル事業・ソーシャルケア事業・外国人材事業の4つの事業を展開しています。
その中でも中核としているのがリサイクル事業です。
都市鉱山は資源大国並みに埋蔵されていると言われていますが、このリサイクルに関わる業務を担っています。
回収後の再資源化の現場では、知的障がいのある方を積極的に雇用しており、当社のソーシャルケア事業とのシナジーを生み出しています。
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事業における優位性
リサイクル事業の特徴・強み
当社のリサイクル事業における最大の強みは、国からの許認可を取得している点です。
2013年に施行された小型家電リサイクル法に基づき、2014年に認定を取得しました。
この許認可は、通常の廃棄物処理法のライセンスとは異なり、取得までのハードルが非常に高いものです。
中でも、宅配便を利用して小型家電を回収するビジネスモデルで許認可を取得している企業は、現在(2025年1月時点)のところ当社だけです。
この認定が他社に対して高い参入障壁となっており、当社の競争優位性を支えています。
さらに、全国の自治体との提携も当社の大きな強みです。
すでに約700の自治体と協定を結んでおり、これは国から許認可を受けた事業者としての信頼性が基盤となっています。
これにより、日本全国の約9,000万人(人口ベース)をカバーする形でサービスを展開しており、パソコンの年間回収台数は約100万台に達し、業界トップの実績を誇ります。
従来、多くの自治体では不用なパソコンが粗大ごみとして扱われず、住民が適切な廃棄手段を見つけられない状況が続いていました。
また、メーカーが不用パソコンの回収義務を負っているものの、積極的に取り組む企業は少なく、日本全国で大量の不用パソコンが家庭内に放置されているのが現状でした。
そのような中で当社は許認可を活用し、信頼できる民間事業者として宅配回収サービスを提供しています。
そして現場ではパソコンの分解作業を障がい者の方に作業を任せるなどして、収益性と社会的課題解決を両立させるビジネスモデルを構築しました。
この分野は非常にニッチですが、他社が簡単に参入できないオンリーワンのビジネスとして確立しています。
また、営業利益率は20%を超える高収益事業となっており、当社の成長を支える柱となっています。
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リユース事業の特徴・強み
当社のリユース事業では、パソコンや小型家電だけでなく、本、CD、DVDといった多様な中古品を取り扱っています。
この分野は創業当初から注力してきた領域であり、現在は「NETOFF」ブランドを展開しています。
インターネット専用の在庫として約70万タイトル、150万点を常時揃え、日本全国から買取した商品を販売しています。
取引量は膨大で、年間約2,700万点の買取実績を持っていますが、書籍は一冊あたり100円程度で販売されることもあり、単価が非常に低いのが特徴です。
そのため、バックヤードでのオペレーションの効率化が事業運営の鍵となります。
そこで、当社は物流センターに「トヨタ生産方式」を導入しています。
これは私自身のバックグラウンドや名古屋で創業した経緯に由来していますが、中部エリアの「ものづくり」文化を取り入れたものです。
この効率的な運営体制により、在庫の年間回転率は約23回を達成しており、小売業としては非常に高い数字を記録しています。
その結果、キャッシュフローも安定し、強固な事業基盤となっています。
高額商品を取り扱うリユース事業であれば、多少効率が低くても利益を上げられる場合がありますが、当社が扱うのは低単価商品です。
そのため、効率性と品質を両立させた高度なオペレーションが不可欠です。
当社はこの課題を徹底的に追求することで、リーンな運営体制を構築し、それが他社にない独自の強みとなっています。
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リネットジャパングループの成長戦略
選択と集中
2020年のコロナ禍において、当社のカンボジアでの海外事業は停滞し、特別損失として累計約35億円を計上しました。
カンボジアは途上国であり、当社にとって金融という事業領域は未知の分野であったため、リスクを過大に取った結果、失敗に至ったと反省しています。
土地勘や現地事情の理解が不十分なまま進めたことや、事業会社としてのノウハウとは異なるリスク感覚が求められる領域での事業展開が原因となりました。
この経験を踏まえ、今後は日本国内に事業の軸足を置き、リスクコントロールを徹底していきます。
外国人材事業についても取り扱いますが、クライアントは日本国内の企業に限定することで、リスクを最小限に抑える方針です。
「ESモデル」を活かした成長
当社は、国内事業であるリサイクル事業とソーシャルケア事業を成長の原動力とし、これらのシナジーを活かして事業を拡大していきます。
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リサイクル事業では、2020年度までに導入された約950万台の「GIGA端末(学習用パソコン)」が2025年度に更新時期を迎え、大規模な入れ替えが進むことが見込まれています。
この特需に対応するため、当社は全国700の自治体との協定を活かして準備を進めています。
年間約100万台を回収している現在の規模から、5倍、10倍のスケールアップが期待されており、施設の増強を検討しながら最大500万台の回収を目指しています。
この特需を追い風に、当社はV字回復を実現したいと考えています。
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ソーシャルケア事業においては、今後10年間で日中支援型のグループホームを200棟展開する計画です。
この事業はストック型の収益構造を持ち、年間営業利益は50億円程度に達すると見込んでいます。
また、GIGA端末のリサイクルを地域ごとに展開し、障がい者の雇用を創出する「地産地消型」のモデルを構築することで、業界内で圧倒的なシェアを確立したいと考えています。
ソーシャルケア事業と外国人材事業のシナジー
現在(2025年1月時点)、当社は愛知県で9棟、関東で65棟の障がい者向けグループホームを直営で運営しています。
2024年にはフランチャイズ部門を切り離したため棟数は減少しましたが、直営に注力することで管理の質を向上させています。
将来的なモデルは、グループホームでの生活と働く場をセットで支援し、「包括的な自立支援」を実現することを目指しています。
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また、外国人材事業とのシナジーを追求しています。
これまで当社の外国人材事業は、カンボジアを中心に自動車整備士というニッチな分野に絞っていましたが、人口2億人以上を抱えるインドネシアに注力し、介護や福祉分野への進出を図っています。
特に、インドネシアには多くの看護学生がいるため、介護や障がい福祉の人材として大きな潜在力があると見込んでいます。
まずは、自社のグループホームに外国人材を配置し、現場での実績を積み上げます。外国人材の活躍を通じて他の企業にも効果を実感してもらい、業界全体の課題解決にも貢献したいと考えています。
さらに、グループホームでは慢性的な人材不足が課題となっていますが、そこに若くてエネルギッシュな外国人材が加わることで職場全体の雰囲気が明るくなり、より良い環境が生まれることが期待されます。
実際に、知的障がいを持つ方々と外国人材のコミュニケーションは良好で、言葉の壁をお互いに克服しながら自然な関係が築かれています。
このモデルをさらに発展させ、障がい福祉の現場全体に広げていくことで、業界全体の課題解決に貢献したいと考えています。
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注目していただきたいポイント
今後2〜3年の成長において、リサイクル事業におけるGIGA端末の特需が当社の成長を支える重要な要因となると考えています。
ただし、現時点ではこの需要に関する具体的な数値が明確でないため、2025年度の計画には大きく織り込んでおらず、保守的な見通しを立てています。
しかし、四半期ごとの業績をご覧いただければ、この需要が業績に大きな影響を与えていることをご確認いただけるはずです。当社からの発表にぜひご注目ください。
また、自治体からの受注データを月次ベースで公表し、業績発表に先行する指標として投資家の皆様に提供していく予定です。
このデータを活用することで、3〜4カ月先の売上予測が可能となり、次回決算の手応えを早期に感じ取っていただけると考えています。
投資家の皆様へメッセージ
現時点で当社の株価は底値にあると考えており、社内でも従業員持株会を通じて社員に積極的な購入を奨励しています。
今後、GIGA端末の特需を追い風に、V字回復を実現し、持続的な成長を目指していきます。
当社は、環境と福祉の両立を目指す「ESモデル」を軸に、社会課題の解決に取り組みながら成長を続けています。
このモデルに基づき、長期的かつ持続可能なビジネスを展開することで、企業価値をさらに高めていきます。
当社の成長性にご注目いただき、引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。
リネットジャパングループ株式会社
本社所在地:〒453-6126 愛知県名古屋市中村区平池町四丁目60番12 グローバルゲート26階
設立:2000年7月27日
資本金:12億4,997万円(2024年9月末時点)
上場市場:東証グロース市場(2016年12月20日上場)
名証メイン市場(2023年8月24日上場)
証券コード:3556