※本コラムは2025年1月22日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社レントラックスは「インターネットを駆使し、人々に適切な情報を提供し、便利さを提供する。」という経営理念のもと、ASP(Affiliate Service Provider:アフィリエイト・サービス・プロバイダー)事業を中心に多角的なビジネスを展開しています。
代表取締役社長の山﨑 大輔氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社レントラックスを一言で言うと
「レントラックスイズム」をベースに、一貫した教育方針と評価制度のもと、ワンチームで成長する会社です。
レントラックスの沿革
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創業の経緯
当社は、創業者である金子 英司(現・取締役会長)が2005年に設立した企業です。
当時、成果報酬型のウェブマーケティング支援、いわゆる「アフィリエイト」というビジネスモデルが急速に成長していました。
アフィリエイトは、広告主にとって実際に成果が出た分の費用しか発生しないという特徴があり、非常に公平な仕組みといえます。
前職で広告ビジネスに携わっていた金子は、このビジネスモデルの可能性に着目し、すでに多くの競合が存在する中で差別化を図りながら事業を開始しました。
そして、2006年3月には、携帯電話向け成果報酬型広告サービス「レントラックスモバイル」の提供を開始しました。
上場と新たな事業展開へ
その後、当社は順調に成長を遂げ、ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダー)事業を中心に売上を拡大しながら、多角的な事業展開を進めてきました。
私が入社したのは2012年です。
金子は前職の上司でしたが、ある時「レントラックスで上場を目指さないか」と声をかけられ、当社に入社しました。
金子から話を聞いた際、前職で上場を経験していたこともあり、「自分の経験を活かして上場に貢献できるかもしれない」と考え、参画を決意しました。
入社後は営業や人事を経験しながら、上場に向けて経営側の立場として、経営会議にも関与するようになりました。
その中で、多角的な事業展開を続けるだけでは、上場に向けた急速な成長が難しいという判断に至りました。
そこで、最も成長が見込まれるASP事業に経営資源を集中させる方針を決定しました。
その結果、2015年に東証マザーズ市場(現・東証グロース市場)への上場を果たしました。
上場後は、海外展開を視野に入れた事業拡大を推進しました。
成果報酬型の広告モデルは、新興国ではまだ認知度が低く、未開拓の市場が広がっています。
そこで、上場によって得た資金を積極的に投資し、海外展開や新規事業の立ち上げを進めてきました。
また、金子から「社長になった方が営業もしやすいのではないか」と提案を受け、2018年に社長に就任しました。
現在は、当社の強みを最大限に活かし、再び多角的な事業展開によってさらなる成長を目指しています。
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レントラックスの事業概要と特徴
概要
創業以来、当社は成果報酬型広告サービス事業を主力として展開しています。
ASPの代理店として、広告を出稿したい広告主と、広告を掲載して収益を得たいメディアを成果報酬型の仕組みで結びつけるサービスを提供しています。
現在、当社の広告主は約4,500社にのぼり、毎月100社ほど新規取引が増加しています。
売上が大きい分野としては、金融、不動産、自動車、転職・人材、電子商取引、エステサロン、オンライン診療などが挙げられます。
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また、規模は小さいものの、従来のデジタルマーケティング広告における一般的なビジネスである検索連動型広告の代行事業も展開しています。
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近年では、子会社であるGROWTH POWERが手掛ける新規事業である中古建設機械マーケットプレイス事業が急成長しています。
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事業における優位性
完全成果報酬型サービスとクローズド型体制の構築
当社のビジネスモデルは完全成果報酬型であるため、広告主には初期費用や月額利用料の負担が発生しない仕組みとなっています。
あくまでも広告主とパートナーサイトの仲介者として、成果報酬額の調整、確定した成果報酬の回収、支払管理などのサービス提供に注力しています。
その結果、当社の管理体制のもと、広告主は余計な手間や経費をかけることなく運用できるようになり、特別に良い条件を設定してもらえる機会も増えてきました。
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さらに、パートナーサイトにも高い報酬を提供できるため、優れたメディアが自然と集まり、質の高いネットワークが構築されています。
一般的なASPは、広告を掲載するメディアを広く募り、広告主に対してサービスを提供するオープン型の仕組みを採用しています。
この形態では、多くのメディアと連携できるものの、運営元が必ずしも信頼できる企業とは限らず、副業として運営する個人メディアも多く含まれています。
そのため、連絡が取りづらかったり、不正行為が発生したりと、サービス品質の低下につながります。
こうしたリスクを回避するため、当社ではクローズド型のASPサービスを展開しています。
誰でも自由にアカウントを作成できる一般的なASPとは異なり、紹介制または当社から声をかけたメディアのみが参加可能な形式を採用しています。
また、むやみに規模を拡大するのではなく、少数精鋭のパートナーサイトと密に連携する方針を取っています。
そのため、すべてのメディアを個別に審査し、質の高いメディアのみと提携しています。
当社が提携するパートナーサイトは、副業ブロガーのような個人が運営するメディアではなく、上場企業や未上場でも月に数億円規模の売上を持つ企業が運営する信頼性の高いメディアが中心です。
このような厳格な管理体制を維持することで、一定の信頼性と品質を確保し、プレミアム感のあるASPとしての地位を築いてきました。
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レントラックスの成長戦略
市場環境について
当社は毎年、矢野経済研究所の取材を受けていますが、そこでは業界の順位や市場動向に関するデータが公表されています。
現在、アフィリエイト広告市場における当社のポジションは業界3位とされています。
インターネット広告市場全体の規模は、2024年時点で約4,400億円とされており、3年後の2027年には約5,800億円まで成長する見込みです。
この期間の成長率は約130%と予測されており、今後もアフィリエイト広告市場は高い成長率を維持すると考えられます。
当社もこの成長の波に乗り、事業のさらなる拡大を目指しています。
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中長期的な成長戦略
中長期的な成長戦略として、ASP事業の営業強化を継続するとともに、新規事業の拡大にも注力していきます。
ASP事業の海外展開に関しては、日本で成功したビジネスモデルを基にグローバル市場へ進出する方針です。
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特に、中古建設機械の売買サイト「GROWTH POWER」の成長が著しく、今後も積極的に推進していきます。
また、新規事業としてはアパレル事業、インドアゴルフ事業、脱毛器メーカー事業など、多角的な展開を進めています。
その中でも成長が見込まれる分野を重点的に強化し、さらなる拡大を図る考えです。
加えて、まだ公表していないプロジェクトも複数進行しており、純投資やM&A(企業買収・統合)を活用しながら、新規事業の創出と事業領域の拡大に取り組んでいます。
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ただし、競合他社が当社の動向を詳細に分析し、模倣する可能性があるため、具体的な施策については公表を控えています。
実際、当社はこの10年間で業界下位(当初は約200位)から急速に成長し、現在では業界3位のポジションを確立しました。
そのため、「一体何をしているのか」と競合企業から注目されています。
現在、当社の取扱高は約270億円ですが、これを1,000億円規模まで引き上げることを目標とし、積極的な成長戦略を進めています。
「GROWTH POWER」の成長
中古建設機械の売買サイト「GROWTH POWER」は、当社の成長戦略において重要なビジネスの一つと位置付けています。
このサービスは、建設機械の売買を促進するマーケットプレイスとしての役割を担っており、イメージとしてはカーセンサーやグーネットの建設機械版に近いものです。
ビジネスモデルには成果報酬型を採用し、掲載料やオファーの手数料は無料としています。
実際に取引が成立した際にトランザクションフィー(取引手数料)を受け取る仕組みです。
また、海外間取引(Cross-border transactions)にも対応しており、たとえばシンガポールで掲載された建設機械がトルコで売却されるといったケースも発生しています。
国境を越えた取引が可能なグローバル・マーケットプレイスとしての成長を目指し、市場規模の拡大と業績向上に取り組んでいます。
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注目していただきたいポイント
当社は後発でアフィリエイト広告市場に参入したため、まだ認知度が十分に浸透していないかもしれません。
しかし、成果報酬型のアフィリエイト広告市場において、2022年には業界3位のポジションを獲得しました。
現在、当社より上位の企業もありますが、これらの企業は業績がやや低下傾向にあり、当社との競争は激化しています。
また、2024年には業界団体の理事を務め、消費者庁との面談や業界のルール策定に関与するなど、業界の発展に向けた取り組みを推進してきました。
ただし、アフィリエイト広告市場自体はまだ規模が小さく、成果報酬型広告の事業単体では売上1,000億円の達成は難しいと考えています。
そのため、本業で得た資金を活用しながら、積極的に新規事業を立ち上げ、海外展開も加速させることで、早期に売上1,000億円の実現を目指します。
すでに海外では13カ国で事業を展開しており、売上が発生している国も半数以上にのぼります。
成長は非常に順調であり、コロナ禍が収束し助走期間を終えた今、海外事業の売上・利益の拡大を進めることが、次の成長戦略の柱になると考えています。
投資家の皆様へメッセージ
当社では社内イベントを非常に大切にしています。
その一例として、社員旅行を開催すると社員全員が参加するなど、高い結束力を持つ組織文化が根付いています。
また、当社は完全出社型の勤務体系を採用し、リモートワークは実施していません。
リモート環境では業務効率の低下や、自発的な学び・好奇心の減退といった懸念があるためです。
実際に社員からも「リモートだとサボってしまうかもしれないので、出社したい」という声が多く、全員がオフィスで働くスタイルを継続しています。
全社員が実践する「レントラックスイズム」は目に見えるものではありませんが、単に成果を出すだけではなく、組織のために努力する姿勢を重視し、一生懸命に取り組む文化が根付いています。
こうした環境が整ったことで、業績も自然と向上してきました。
社員同士が互いに時間を使い、支え合いながら真剣に仕事に取り組む企業として、これからも成長を続けていきます。
そして、既存事業の強化と新規事業の拡大を両軸とし、業界No.1の獲得に向けて全力で挑戦していきます。
今後ともご支援のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
株式会社レントラックス
本社所在地:〒134-0088 東京都江戸川区西葛西5丁目2番3号 NEXTAGE西葛西5F
設立:2005年12月22日
資本金:440百万円(2024年3月末時点)
上場市場:東証グロース市場(2015年4月24日上場)
証券コード:6045