※本コラムは2025年2月19日に実施したIRインタビューをもとにしております。
エリアリンク株式会社は「ストレージで暮らしが変わる」をキーワードに、日本の暮らしを変えていきます。
代表取締役社長の鈴木 貴佳氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
エリアリンク株式会社を一言で言うと
ストレージを通じて日本の暮らしを変えていく会社です。
エリアリンクの沿革

創業の経緯
当社の創業者であり現会長の林は、新卒一期生として千曲不動産(現在のスターツコーポレーション株式会社)に入社し、約10年間勤務した後にエリアリンクを立ち上げました。
創業当初は不動産の流動化事業を中心に展開し、売買や転売、開発、さらにはホテルの開発まで手掛けていました。
たとえば、箱根の高級旅館「ふふ」はご存じでしょうか?
現在はヒューリックとカトープレジャーグループが共同で運営し、2号店・3号店と展開されていますが、最初に開発したのは当社です。
また、賃貸管理や駐車場管理にも取り組んでいました。
当時の収益の柱は不動産の売買事業で、その利益を活用してストレージ事業に投資するというビジネスモデルを展開していたのです。
ただ、ストレージ事業は不動産とは異なり、キャッシュフローが非常に重要になります。
そのため、不動産流動化事業をメインに据え、ストレージ事業はサブとして慎重に運営していました。
リーマンショックの発生、ストレージ事業に注力
ところが、2008年に発生したリーマンショックが不動産業界を直撃し、当社も多くの在庫を抱えていたことから大きなダメージを受けました。
一方で、ストレージ事業はこの影響をほとんど受けませんでした。
この経験を踏まえ、「ストレージ事業に注力すべきだ」と判断し、事業転換を進めました。
不動産売買を徐々に縮小しながら、ストレージ事業の拡大に舵を切ったわけです。
私は2011年に入社しましたが、その頃はちょうど転換期を迎えた直後でした。
当社ではリーマンショックの影響で2〜3年間、新卒採用を行っておらず、久しぶりに採用された新卒社員だったことを覚えています。
ストレージ事業のビジネスモデルの確立
今でこそ、ストレージ(トランクルーム)は多くの人に認知されていますが、10〜15年前はまだまだ一般的ではありませんでした。
「ストレージとは何か?」というレベルで知られておらず、新たに出店する際も地主やビルオーナーから怪訝な目で見られることも少なくありません。
また、「コンテナを自宅の横に置きたくない」「不特定多数の人が出入りするのが怖い」といった懸念も多く、稼働率が思うように伸びないため、家賃や利用料を下げざるを得ない状況でした。
当社のビジネスモデルは、基本的に土地やビルを借りて事業を展開する形なので、空室があっても賃料を支払い続けなければなりません。
つまり、出店の初期段階では、一定の入居率に達し、損益分岐点を超えた時点でようやく収支がトントンになり、そこから初めて利益が生まれるという仕組みでした。
そのため、積極的に出店を進めると、一時的に赤字が膨らむというジレンマも抱えていました。
そこで、当社はマーケティング調査を徹底し、ノウハウを蓄積しながら、少数精鋭でも効率的に運営できるオペレーション体制を築いていきました。
その結果、現在では新規出店から満室になるまでのスピードが飛躍的に向上し、出店を進めても早期に収益化できるようになっています。
さらに、既存のストレージ施設が増えたことで、事業全体の収益基盤も強化され、より安定した運営が可能になりました。
ストレージ事業を軸に据えた今、当社はこれまで培ってきた経験とノウハウを活かしながら、さらなる成長を目指しています。

エリアリンクの事業概要と特徴
概要
当社の主力事業は、レンタル収納スペースを提供するストレージ事業です。
「ハローストレージ」というブランドのもと、コンテナ型・ビルイン型・建築型の三種類の形態で全国に展開しています。
事業の収益モデルとしては、大きく分けて二つの柱があります。
一つは、自社でストレージ施設を運営し、利用者から賃料収入を得るケースとストレージ施設の受注・販売を行うケースです。
2025年1月時点では、2,456物件・111,331室を管理しており、国内最多のストレージ施設を有する企業となっています。
すでに大半の施設が損益分岐点を超えており、安定したストック収益を生み出す基盤が確立されています。
また、土地権利整備事業や不動産アセット事業、レンタルオフィスの運営といった事業も展開しており、ストレージを軸にしながら不動産関連の幅広いサービスを手がけています。

事業における優位性
新規参入が難しい業界構造
ストレージ事業は、一見するとシンプルなビジネスモデルですが、実際に参入しようとすると多くのハードルが存在します。
まず、新規出店をしたからといってすぐに利益が出るわけではありません。
ストレージ施設は、満室になったとしても1件あたりの利益は10万円〜20万円程度のケースが多く、大きなリターンを得るには時間がかかります。
したがって、一定の規模に達するまでは、長期間の資金投資が不可欠です。
また、ストレージ事業の特徴の一つとして無人運営が可能という点がありますが、本当の意味でのメリットが発揮されるのは、最低でも数千室に達してからです。
1,000室でも5,000室でも、運営スタッフの人数は大きくは変わらないため、大規模化することで人件費の割合を抑え、利益率を飛躍的に向上させることができます。
しかし、そこに到達するまでの道のりは簡単ではなく、多額の資金、時間、そして緻密な経営戦略が求められます。
そのため、ストレージ事業は単なる”貸し倉庫ビジネス”とは異なり、ノウハウがなければ成功が難しい業界であり、これが新規参入の障壁となっています。
当社はストレージ業界のパイオニアとして、長年の経験とデータを蓄積してきたことが大きな強みです。
新規事業者が一朝一夕で同じ水準に達するのは容易ではなく、これが当社の競争優位性を支えています。
データを駆使した出店戦略
当社では、これまでに3,000物件以上を運営し、数十万件に及ぶ顧客データを蓄積してきました。
このデータを活用し、出店用地やエリアの選定を精密に行っています。

新規出店の際には、厳格な基準を設けており、基準を満たさない物件には手を出しません。
逆に、基準を満たしていれば、一部にリスク要因があっても出店を決断するケースもあります。
たとえば、東京23区の六本木にコンテナ型のストレージを設置すれば、極端な価格設定をしない限り、確実に埋まることは明白です。
同様に、江東区などのエリアも需要が高いため、リスクを気にする必要はありません。
しかし、地方の人口が少ないエリアでは、50室規模のコンテナを設置しても埋まるには数年単位の期間を要するでしょう。
重要なのは、その”判断が難しいエリア”をどう見極めるかです。
当社では、過去の実績データを活用しながら、こうしたエリアの収益性を予測し、精度の高い出店判断を行っています。
多くの事業者は「とりあえず出店してみる」という手法をとりますが、当社はリスクを最小限に抑えながら、成功確率の高い出店戦略を実行しているのが大きな違いです。
また、出店後も価格設定の最適化を細かく調整し、エリア特性に応じた戦略を取ることで、より高い収益性を確保しています。

少数精鋭で高収益を実現するビジネスモデル
当社のもう一つの大きな特徴は、少数精鋭で高収益を実現できるビジネスモデルです。
もちろん、ストレージ事業の運営をシステム化し、オペレーションを効率化すれば、管理業務の負担を大幅に削減することはできます。
しかし、これを実現するには、単に”システムを導入する”だけでは不十分で、企業文化として効率的な運営を徹底的に追求する姿勢が求められます。
特に、当社の運営体制は、特別に優秀な人材がいなければ成り立たない仕組みではなく、普通の人が普通に仕事をすれば、確実に結果を出せる仕組みを重視しています。
こうした体制を築いていることが、当社の競争力を支えています。

さらに、ストレージ施設は基本的に無人運営が可能なため、経営の健全性を維持しやすく、他の不動産ビジネスに比べても安定性が高いのも特徴です。
実際、不動産投資では物件価格の高騰や賃貸需要の変動といったリスクがありますが、ストレージ事業は比較的安定したキャッシュフローを生み出すことができます。
また、企業経営における課題の約7割は”人間関係”だと言われています。
当社のように、少人数で運営できるビジネスモデルは、人材リスクを最小限に抑え、安定した事業運営を可能にしています。
実際に、2022年7月26日に東洋経済オンラインで発表された「1人当たり営業利益をドーンと稼ぐトップ500社」では、当社は26位にランクインしています。
これは、当社の収益力の高さを裏付ける指標の一つです。

全国展開を支えるオペレーション
当社は全国にストレージ施設を展開していますが、全国展開を行うには、広範なネットワークや運営の仕組みが必要です。
コンテナ型・ビルイン型・建築型といった異なる形態を活用することで、エリアごとの特性に応じた運営を行っています。

地方での運営ではトラブルが発生した際にすぐに対応できる体制が必要です。
そのため、多くのストレージ事業者は特定のエリアに絞って事業展開を行っています。
しかし、当社は少人数ながらも全国の施設を管理する仕組みを構築し、全国展開を実現しているのです。
今後もこの強みを活かし、さらなる事業拡大を目指していきます。
エリアリンクの成長戦略
ストレージ市場の成長性
日本国内のストレージ市場は、現在約65万室の規模となっています。
一方で、アメリカのストレージ業界を見てみると、業界1位の企業が250万室を展開しており、その時価総額は約7兆円にも達しています。
つまり、日本のストレージ市場はまだまだ発展途上であり、成長の余地が大きい市場と言えます。
アメリカでは、広い住宅を持つ家庭が多いにもかかわらず、ストレージの普及が進んでいます。

それに対し、日本は住宅の面積が限られていることを考えると、ストレージの必要性はむしろ日本の方が高いと考えています。
現状、日本では年間2〜3万室程度の新規出店が行われていますが、今後の市場拡大に伴い、年間5万〜10万室規模の新規出店が行われる時代が来るのではないかと見込んでいます。
市場全体の成長とともに、当社のシェア拡大も加速していく方針です。

ストレージ事業の拡大と市場シェアの向上
当社の成長戦略としては、国内でのストレージ事業の拡大を最優先課題と考えています。
市場のポテンシャルを踏まえると、海外展開よりもまずは日本国内でのシェア拡大に集中するのが得策です。
新規出店を積極的に進めていますが、ありがたいことに、供給した物件が早期に満室になるという好循環が確立されています。
そのため、2029年末までに現在の約2倍となる総室数20万室の展開を目指しています。
全国のニーズをしっかりと捉えながら、多様なストレージ施設を展開していく方針です。
ただ、現時点ではまだ業界自体の認知度が十分に高いとは言えません。
市場の需要は明らかに高まっているものの、ストレージサービスの存在を知らない人も多く、ここが課題の一つです。
そのため、引き続きメディアへの露出や情報発信を積極的に行い、認知度向上に取り組んでいきます。

現在、当社は業界最多の室数を誇っていますが、市場シェアはまだ約18%にとどまっています。
これを早期に30〜40%まで引き上げたいと考えています。
ただし、新たな物件を確保し、出店し、満室にするまでには時間がかかります。
そのため、シェアの大幅な向上には5〜10年単位の長期的な視点が必要です。
しかし、2024年のデータを見ると、日本全体で新規出店されたストレージ施設の約半数は当社が手がけたものでした。
このことからも、当社の成長スピードは他社と比較して圧倒的に速いと自負しています。
業務効率化の追求
今後の成長を見据え、業務の効率化を徹底的に追求することも重要な戦略の一つだと考えています。
特に、出店が増えれば増えるほど、最も業務負担が大きくなるのはコールセンターです。
コールセンターの業務は作業的な側面が大きいため、AIやシステムの導入によって業務量を削減し、最終的にはコールセンターの規模を縮小していきたいと考えています。
現状、申し込みの多くはWEB経由で行われていますが、電話での申し込みも一定数あります。
電話の場合、やり取りが長引きやすく、1件の申し込み対応に30〜40分かかることも珍しくありません。
お客様からの「どのサイズが適しているか?」「どのエリアが空いているか?」といった質問に個別対応し、さらに契約手続きに関する説明を行うためです。
これをWEBに移行することで、手続きの負担を軽減し、業務効率を向上させることができるはずです。
すでに、申し込み手続きをWEBで完結できるようになっており、今後もさらなるシステム化を図ることで、効率的な運営を実現していきます。
パートナー企業との連携強化
ストレージ事業を安定的に成長させるためには、パートナー企業との連携が欠かせません。
当社では、JR東日本や三井不動産レジデンシャルといった大手企業はもちろん、地元の不動産会社とも幅広く提携を進めています。
多くの企業がストレージ事業に参入していますが、ある程度の規模(5拠点で200〜300室程度)で展開しても、期待するほどの稼働率を確保できないケースがあることがわかってきました。
「試しにやってみよう」とストレージ事業を始めたものの、その後は拡大するつもりがなく、問い合わせや解約の対応だけを続けている企業も少なくありません。
また、事業を始めて10〜15年が経過すると、物件の老朽化に伴うメンテナンスが必要になります。
このタイミングで、「思った以上に手間がかかる」「稼働率が伸びない」「今後も拡大する予定はない」と悩む企業が増えているのが実情です。
特に、地元の管理会社や不動産会社の多くは、ストレージ事業を本業ではなくサイドビジネスとして運営しています。
そのため、専任の人員を配置することが難しく、「それなら、事業ごと委託したい」と考えるケースが増えています。
この傾向は、大手デベロッパーでも同様の状況だと聞いています。
結果として、「運営を丸ごと委託したい」というニーズが生まれ、当社との提携につながっています。
ストレージ市場はまだまだ成長の余地が大きく、当社はこれまで蓄積してきたノウハウとデータを活かし、引き続き市場の拡大をリードしていきます。
今後も、パートナー企業と連携しながら、業界全体の発展に貢献していく方針です。

注目していただきたいポイント
私たちが取り組んでいることは、単にストレージを提供することではありません。
「日本のライフスタイルを変えること」に本気で挑戦しています。
現在、日本におけるストレージの普及率はまだまだ低く、認知度も十分に高いとは言えません。
利用者も限定的な状況です。
しかし、私たちが積極的に新規出店を進め、商品を提供し続けることで、メディアで取り上げられる機会が増えています。
それに伴い、ストレージの存在を初めて知る人が増え、新たな利用者の獲得につながっています。
私たちが目指しているのは、「ストレージを利用するのが当たり前」という世の中をつくることです。
クローゼットに収納するのと同じ感覚で、必要に応じてストレージを活用する、そのような新しい生活スタイルが根付いたとき、初めて「私たちは日本の生活を変えた」と胸を張って言えるのではないでしょうか。
この目標は、一見すると大きな理想に聞こえるかもしれません。
しかし、私たちは決して夢物語として語っているわけではありません。
本気で、ストレージを通じて新しいライフスタイルを提案し、社会全体に変化をもたらすことを目指しています。
投資家の皆様へメッセージ
日本のストレージ市場は、今後も大きな成長の余地を持っています。
海外から見ても、日本の市場は非常に魅力的であり、ポテンシャルの高い分野だと評価されています。
一部では、「日本は人口減少が進んでいるため、市場が縮小するのではないか」という懸念の声もあります。
しかし、私たちは人口減少が市場成長を妨げる要因にはならないと考えています。
なぜなら、ストレージ自体がまだ十分に普及しておらず、利用率の伸びしろが非常に大きいからです。
仮に日本の人口が半減したとしても、利用者数が現在の5倍に増えれば、市場規模は5倍に拡大します。
つまり、ストレージ市場には無限の可能性があるのです。
私たちは、ストレージの利便性を広く認知してもらい、市場の拡大をリードしていくことが使命だと考えています。
そして、過去の成長実績を振り返っていただければ、当社が着実に事業拡大を進め、成果を上げてきたことがお分かりいただけるはずです。
これからもさらなる成長を目指し、新しい価値を創造していきます。
今後の展開にぜひご期待いただくとともに、引き続きご支援・ご注目いただければ幸いです。
エリアリンク株式会社
本社所在地:〒101-0021 東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDXビル北ウィング20階
設立:1995年4月21日
資本金:6,111百万円(2025年2月アクセス時点)
上場市場:東証スタンダード市場(2003年8月8日上場)
証券コード:8914