【6287】株式会社サトー 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2025年2月25日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社サトーは強みである「タギング」を活かし、情報化社会を最適化していきます。

代表取締役 社長執行役員 グループCEOの小沼 宏行氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社サトーを一言で言うと

情報化で社会を最適化する会社です。 

サトーの沿革

株式会社サトー 代表取締役 社長執行役員 グループCEO 小沼 宏行氏

創業の経緯

当社の歴史は、1951年に「佐藤竹工機械製作所」として設立されたことから始まります。

ただ、そのルーツはさらに遡ります。

創業者の佐藤は、1940年、戦時中の物資不足の中で、「何かを生み出さなければならない」という強い想いから事業をスタートさせました。

その後、スーパーマーケットの普及に伴い、商品の値札を付ける「タギング(タグ付け)」のニーズが高まりました。

当時は、切手を貼るように水や舌で舐めて値札を付けて貼り付けるという、非効率で非衛生的な方法が使われていました。

これを改善しようと、当社は「ハンドラベラー」を開発し、この革新によって大きく事業を成長させることができました。

バーコードの普及とプリンターの開発

1980年代に入ると、スーパーマーケットにPOSシステムが導入され、バーコードの活用が進むのではないかと考え、世界で初めて「熱転写方式バーコードプリンター」を開発しました。

これによって、バーコードの普及も進み、正確で迅速な商品管理が可能になりました。

さらに1990年代に入ると、現場のデータを収集・活用する「Data Collection Systems & Labelling」というビジネスモデルを確立します。

当時の日本には、そのようなデータを体系的に収集する仕組みはほとんどありませんでした。

そこで、当社はバーコードプリンターやバーコードリーダー、ソフトウェア、サプライ品を組み合わせたデータ収集ビジネスを展開し、これが新たな成長の柱となりました。

この時期から海外展開も本格化し、売上も着実に拡大していきました。

通信技術の発達とIoTの普及

2010年代には、IoTや4Gの普及によって、データ収集の重要性がますます高まると考え、プリンターやラベル、RFID(無線識別技術)を活用した新たな取り組みを進めていきました。

そして、2020年代に入ると、データを集めるだけでなく、より広範で複雑化する社会課題の変化への対応が求められるようになりました。

新型コロナウイルスの影響で半導体不足が発生し、世界中のサプライチェーンが混乱したことは、記憶に新しいところです。

これまで当社は、主に個々の現場やお客様に焦点を当てていました。

しかし、これからは複数の企業やサプライチェーン全体を視野に入れたソリューションが必要です。

また、これまでの物流は「モノを作り、消費者に届ける」ことが中心でしたが、近年はサーキュラーエコノミー(循環型経済)の考え方が重視され、「使用済み製品の回収・再利用」といった「モノを捨てるところまでの責任」にも関心が高まっています。

ここにも、新たなビジネスの可能性があると考えています。

このように、当社は創業以来、「現場の課題を解決する」という理念を大切にし、その精神は今も脈々と受け継がれています。

時代の変化とともに、求められる役割は進化していきますが、私たちの使命は変わりません。

これからも、世界社会の発展に貢献し続ける企業でありたいと考えています。

サトーホールディングス株式会社 2025年1月 会社説明資料 より引用

サトーの事業概要と特徴

概要

メカトロ商品とサプライ商品

当社の商品は、大きく分けて二つのカテゴリーに分類されます。

一つ目は「メカトロ商品」で、プリンターやスキャナーといったハードウェアを中心とする商品群です。

プリンターは単発での注文もありますが、当社は保守・運用、ハードウェアに付随する管理用のソフトウェアや業務用アプリケーションも手がけているため、継続的に顧客との接点があり、長期的なお付き合いが生まれやすいのが特徴です。

二つ目は「サプライ商品」で、ラベルやシールなどの消耗品がこれにあたります。

たとえば、無地のラベルはもちろん、商品パッケージの顔となる「プライマリーラベル」など、多種多様なサプライ商品を取り扱っています。

こちらはリピートビジネスの比率が高く、安定した需要が見込める分野です。

サトーホールディングス株式会社 2025年1月 会社説明資料 より引用

日本と海外で異なる販売スタイル

国内では、製造・開発・営業の大半を直販(直接販売)で行っており、場合によっては代理店を経由することもあります。

当社の強みは、お客様の現場に直接足を運び、課題を見つけたうえで最適なソリューションを提案する営業スタイルにあります。

そのため、日本国内では直販型のビジネスモデルが全体の80%以上を占めています。

一方、海外では販売体制が異なります。

代理店販売の比率が約50%を占めるものの、単にプリンターを大量に販売するだけではありません。

市場での差別化を図るため、現地のSIer(システムインテグレーター)と提携し、特定の業界向けに特化したソリューションを展開しています。

たとえば、ヘルスケア分野では、高性能RFIDを搭載した製品を共同開発し、病院や医療施設向けに提供しています。

最近では、冷凍庫・冷蔵庫メーカーと協業し、医療用の血液管理システムの構築にも取り組んでいます。

このように、業界ごとのニーズに応じたソリューションを開発し、単なる機器販売にとどまらない価値を提供しているのです。

他社とは異なるビジネスモデル

一般的な家庭用プリンターのビジネスモデルは、当社のサプライ商品のような消耗品を継続的に販売することで収益を得る仕組みになっています。

そのため、プリンター本体の価格は低く抑えられ、場合によっては赤字で販売されることもあると聞きます。

しかし、当社のビジネスモデルはそれとは異なります。

当社のプリンターは、他社製のサプライ商品でも動作する設計になっており、これは業界の商習慣に基づいたものです。

そのため、サプライ商品市場では競争が激しく、利益率は相対的に低くなっています。

その一方で、機器の品質やソリューションの価値を重視するお客様が多いため、当社はプリンターやソフトウェアを組み合わせて付加価値を提供することで収益を上げています。

市場ごとの特徴

お客様の業種にも地域ごとの傾向があります。

欧米では、リテール(小売業)や食品関連の企業が中心で、特にスーパーマーケットや食品加工業などでの利用が多くなっています。

一方、アジア・オセアニア地域、特に東南アジアでは、日系の製造業が多いことから、当社の市場も製造業向けが主流となっています。

こうした地域ごとの違いを踏まえながら、それぞれの市場に最適な商品やサービスを提供することで、サトーのビジネスは成長を続けています。

お客様の現場の課題に寄り添い、最適なソリューションを提案し続けることが、私たちの最大の強みです。

サトーホールディングス株式会社 2025年1月 会社説明資料 より引用

事業における優位性

タギングを実現する「インテグレーション」

当社の事業の核となるのは、「タギング(タグ付け)」です。

ただ、単にラベルやタグを提供するだけではなく、それを確実に運用できるようにすることが重要だと考えています。

そのため、プリンターの開発まで自社で手がけ、ソリューション視点のビジネスモデルを構築してきました。

私たちはこれを「コト売り」と呼んでいます。

一般的なメーカーは「モノ売り」を基本としており、たとえば「プリンターの印刷速度をどれだけ向上させるか」「ラベルの品質をどう高めるか」といった、製品そのものの競争力を重視する傾向にあります。

しかし、当社は「お客様の生産性を30%向上させる」といった具体的な現場の課題解決に直接貢献することを目的としています。

たとえば、作業の動線を最適化することで業務効率を高めたり、モノや人に適切な情報を紐付けることでボトルネックを可視化し、改善策を提案しています。

実際、プリンターやラベル、スキャナーをそれぞれ異なる会社が提供していると、「ラベルにバーコードがうまく印刷できない」「印刷したバーコードがスキャナーで正しく読み取れない」といった問題が発生し、責任の所在が分散されてしまいます。

これでは、お客様にとって本質的な解決にはなりません。

当社は、プリンター用の純正ラベルを自社で開発し、スキャナーも用途に最適なものを選定して提供しています。

お客様からすれば、「外部業者に頼らず、すべてを一括して対応してくれる」という大きなメリットがあります。

ラベル製造や設備投資には多額のコストがかかるため、他の企業が容易に参入できない分野でもあります。

こうしたインテグレーション(組み合わせ力)も、当社の大きな競争優位性となっています。

また、単なる商品販売に依存せず、ソリューション型のビジネスを展開することで、ソフトウェアやサプライ品も含めた総合的なサービスを提供できています。

これにより、一部の大口顧客に依存せず、安定した取引を継続できるビジネスモデルを確立しています。

幅広い業界をカバーする展開力

当社は特定の業界に限定せず、多岐にわたる市場をカバーしており、それぞれの分野を横断する形で事業を展開しています。

たとえば、製薬業界では、医薬品の調合時に材料の計量や在庫管理を厳密に行う必要があります。

そして、この洗練された技術は食品製造業にも応用されています。

このように、業界ごとのニーズを見極めながら、「横展開」することで、より多くのお客様に価値を提供できるのが強みです。

現在の売上規模では、マニュファクチャリング(製造業)の市場が最も大きく、利益率の観点では、マニュファクチャリングとヘルスケア分野が相対的に高くなっています。

一方で、リテール(小売業)やロジスティックス(物流業)が相対的に利益率は低く、食品は中間程度となっています。

現場を支えるメンテナンスとサポート

当社のもう一つの強みは、現場でのメンテナンスや保守サービスの充実です。

たとえば、プリンターの保守点検の際に、消耗品の不足がないかを確認し、補充を提案するといったサポートも行っています。

このような継続的なサポートにより、国内におけるリピート率は約9割と高い水準を維持しています。

単に商品を納品するだけでなく、導入後の運用支援や継続的な改善提案を行うことで、お客様との長期的な関係を築いています。

サトーホールディングス株式会社 統合報告書 2024 より引用

グローバル展開

当社の生産拠点は、日本国内だけでなく海外にも広がっています。

国内にはサプライ商品の生産拠点が42か所あり、プリンターの製造拠点としてはマレーシア、ベトナム、台湾(子会社を含む)に工場を構えています。

また、当社には現在5,000名以上の従業員が在籍しており、そのうち半数以上が海外で働いています。

各国の子会社で現地採用を行い、それぞれの市場や事業特性に適した人材を配置しています。

ローカル人材の活用を進めることで、各国の文化やビジネス環境に柔軟に対応しながら、グローバルな事業展開を推進しています。

海外市場においても、単に商品を販売するのではなく、現地のニーズに合わせたソリューションを提供することで、独自のポジションを確立しています。

サトーホールディングス株式会社 2025年1月 会社説明資料 より引用

サトーの成長戦略

中期経営計画(FY24-28)の策定

当社では、2024年度から2028年度にかけての中期経営戦略を策定し、5年間の計画を立てています。

これまでは3年単位で経営計画を策定していましたが、今回はあえて5年間というスパンで取り組むことにしました。

私が社長に就任して2年目を迎えますが、この5年という期間を設定した理由は、まず収益力を向上させることにあります。

そのため、今回の中期経営計画では「収益の回復期」と「成長投資期」という2つのフェーズに分けて戦略を進めていく方針です。

もちろん、前半の期間にまったく投資を行わないわけではありませんが、特に最初の1〜2年は収益力の回復を最優先にしたいと考えています。

その背景には、事業環境の急激な変化があります。

たとえば、欧州を中心に「デジタル製品パスポート(DPP)」の制度が整備されつつあり、電子製品のライフサイクル管理の重要性が高まっています。

また、環境規制の強化により「製品を再利用しよう」という動きが活発になり、インフラの老朽化も大きな課題になっています。

こうした変化に対応するため、当社の強みであるタギングにセンシング技術やデータ活用技術をさらに発展させ、新たな事業領域へ進出することが不可欠です。

そのためには、技術開発への投資だけでなく、協業やM&A(企業買収・統合)も進める必要があります。

これらを実現するために、まずは収益の安定化を図り、投資余力を確保することが重要だと考えています。

そして、この5年間で投資を進めた後、次の2030年に向けた中期経営計画では、投資の回収とさらなる事業の飛躍を目指します。

つまり、今後5年間は「ジャンプアップに向けた準備期間」と位置づけています。

サトーホールディングス株式会社 統合報告書 2024 より引用

「Perfect and Unique Tagging」の可能性

「Perfect and Unique Tagging」とは

当社では「Perfect and Unique Tagging」という新たな概念を掲げています。

これは、従来の「人やモノに情報を紐付ける」技術をさらに発展させ、より高度な管理やデータ活用を実現する取り組みです。

当社が扱うタギングの歴史を振り返ると、かつてはハンドラベラーで「198円」と印字されたシールを貼るというシンプルな仕組みからスタートしました。

しかし、バーコードが導入されることで、価格だけでなく商品情報を紐付けることが可能になり、さらにロット番号やシリアルナンバーを加えることで、より詳細なトレーサビリティを確保できるようになりました。

現在では、センサー技術を組み合わせることで、温度や位置情報、さらにはブロックチェーンを活用したデータ管理など、より多様な情報を付加できるようになっています。

これにより、単なる「価格情報」にとどまらず、「どこで製造されたのか」「どの流通経路を通ったのか」といった詳細な履歴情報まで管理することが可能になります。

近年、大手プラットフォーマーはデバイスの製造をやめ、情報ビジネスへと完全にシフトするケースが増えています。

しかし、当社の強みは、タギング(タグ付け)というフィジカルな技術にあります。

すべての識別を画像認識に置き換えるにはまだ時間がかかりますし、情報を正確に読み取るためには、ラベルやタグといった機械的な識別手段が不可欠です。

「Perfect and Unique Tagging」の概念では、たとえ同じ商品であっても、バーコードやICタグに製造日や個別のシリアルナンバーを付加することで、個体ごとに識別できるようになります。

これにより、「産地情報」や「購入履歴」、さらには「特定の顧客向けにカスタマイズされた製品情報」など、より細やかな情報管理が可能になります。

この「Perfect and Unique Tagging」は大きな可能性があるため、実用化に向けた研究開発を進めています。

サトーホールディングス株式会社 統合報告書 2024 より引用

血液SCMへの挑戦

「Perfect and Unique Tagging」がすぐに日常のあらゆる商品に必要かといえば、現時点ではそうではありません。

そこで、まずは高付加価値の製品での実証を進めています。

その一例が、血液バッグや医薬品の管理です。

特に血液は、人由来のものであるため、提供するドナーも輸血を受ける患者も、それぞれ完全に唯一無二の、まさに「パーフェクトユニーク」な存在です。

そのため、厳密なトレーサビリティが求められます。

ここに、当社のソリューションが大きく貢献できると考えています。

当社では、「PJM(Phase Jitter Modulation)」という特殊RFIDを用いて、血液バッグにタグを付与し、正確な管理を可能にしています。

これは、単に識別するだけでなく、輸送時の温度変化や保存状態をリアルタイムで記録し、安全性を確保する仕組みです。

かつてGPSが軍事技術から一般市場に普及し、ナビゲーションや物流管理に欠かせない技術となったように、「Perfect and Unique Tagging」も大きな市場の広がりを見せる技術革新の一つになると考えています。

現在、一部のアジアの国々ではすでに実証が進められており、国単位での導入にも成功しています。

今後10年、20年のスパンで、さらに幅広い市場での活用を目指しています。

現場力を活かして

サトーには、最先端の技術を現場に落とし込み、実際の業務に活用する力があると自負しています。

その好例が、医療業界における「患者用リストバンド」の導入です。

1992年ごろ、当社が初めて患者用リストバンドを提案した際、多くの現場では「こんなもの、人につけるわけがない」と言われたそうです。

営業に行くと、「囚人じゃあるまいし、人をバーコードで管理するなんてありえない」といった否定的な意見が多かったと聞いています。

しかし現在では、リストバンドの使用は医療現場では当たり前になり、医療ドラマの小道具としてもよく見かけるほど普及しました。

「人にタギング(情報を紐付ける)すること」が、今では常識になったのです。

導入当初は、認知症の患者さんがリストバンドを噛んでしまったり、お風呂に入っても消えないようにする必要があるなど、さまざまな課題がありました。

しかし、当社はこうした問題を一つひとつ克服し、業界全体に普及させることに成功しました。

実は、モノに情報を紐付けること自体は、すでに長年にわたり行われてきた技術です。

しかし、それを「人」に適用する際には、倫理的な問題や社会的なハードルがありました。

それでも、今では「患者が安全な医療を受ける権利を持っている」という考え方が浸透し、医療従事者も投薬ミスなどのリスクを減らすために、こうした技術を活用することが一般的になっています。

現在ではシステムによって正確性を担保する時代になりました。

この流れを見てきたからこそ、当社は血液管理に新たなソリューションを導入し、将来的にはさらに多くの分野への展開を目指しています。

サトーホールディングス株式会社 統合報告書 2024 より引用

今後の展望

「Perfect and Unique Tagging」は、医療業界にとどまらず、今後さまざまな分野へと広がっていく可能性を秘めています。

すでに物流や製造業においても、高精度のトレーサビリティが求められるケースが増えており、当社の技術やノウハウが貢献できる場面はますます増えていくでしょう。

特に、環境規制の強化やリサイクルの重要性が高まる中、製品のライフサイクル全体を通じて情報を管理する仕組みが求められています。

これにより、静脈物流(リサイクル・廃棄プロセス)の効率化や、企業の環境対応のサポートといった新たなビジネスチャンスも生まれています。

サトーは、単なるラベルメーカーではありません。

私たちは、「モノ」と「情報」をつなげることで、新たな価値を創出し続けています。

「Perfect and Unique Tagging」を通じて、これからも社会の課題を解決し、新たな未来を切り拓いていきます。

社会課題の解決に向けた取り組み

静脈物流への挑戦

当社は現在、新たな事業領域として静脈物流におけるソリューションの導入を進めています。

近年、廃棄・処理に関わる分野が社会的に重要視されるようになっており、当社自身もメーカーとして、材料の廃棄やゴミの問題に直面しています。

こうした課題に対し、「何とか再利用できないか」という視点から取り組みを開始しました。

廃棄業者やリサイクル業者と話をする中で、現場でのニーズが非常に高いことがわかり、新たな事業領域としての可能性を確信しました。

当社はもともと動脈物流(製品を市場へ流通させるプロセス)の管理を手がけてきたため、その逆工程である静脈物流(廃棄物の回収・再利用)に応用することで、比較的スムーズに事業を展開することができました。

動脈物流の分野では、多くのメーカーが100個の部品を組み合わせて1つの製品を作るプロセスを管理しています。

当社はすでにバーコードを活用したサプライチェーン管理の一環として、こうしたトレーサビリティ(追跡管理)を提供してきました。

これを逆方向に適用し、製品を解体し、部品を再利用するプロセスに転用することで、静脈物流にも貢献できるのです。

さらに、当社は「ベンダーマーキング」と呼ばれる仕組みを通じて、サプライヤーに製品の識別情報を付与するノウハウを持っています。

こうした知見を活用することで、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現をサポートし、環境負荷の低減に貢献していきます。

サトーホールディングス株式会社 事業戦略説明会 中期経営計画(FY24-28)における新領域への挑戦 より引用

静脈物流におけるビジネスの広がり

静脈物流におけるビジネスモデルの確立は、当社にとって新たな事業機会を生み出す可能性を秘めています。

現在、環境規制や法律の整備が進み、企業には「どれだけ再利用しているか」を定量的に示す義務が求められるようになっています。

そのため、企業は自主的にリサイクルの取り組みを進める必要があり、特に上場企業やグローバル企業ではこの動きが加速しています。

たとえば、メーカーは「自社のリサイクル率」を示す必要があり、効率的にリサイクルを管理し、トレーサビリティを証明できるシステムの導入が不可欠になっています。

すでに大手企業との協議も進んでおり、たとえば大手電子機器メーカーのパソコンでは、再生プラスチックの使用率のデータを公開する取り組みが進められています。

企業にとっては、自社で再利用したリサイクル材のほうが品質管理や信頼性の面でメリットが大きいため、今後この流れがさらに広がることが予想されます。

また、企業が静脈物流のプロセスを確立する上で重要なのは、「再利用可能な材料を使用し、それを証明する仕組み」です。

たとえば、法規制により「再利用可能な材料を使用し、それを証明するタグを付けなければ取引しない」と決定した場合、サプライヤーはそれに対応せざるを得ません。

そうした場合、当社のタギングやソリューションを活用することで、企業が環境規制に適応し、ビジネスの持続可能性を高めることが可能になります。

こうした流れを受け、当社は静脈物流の基盤を提供し、メーカーやサプライヤーからの新たな需要を獲得することで、持続的な成長を実現していきます。

サトーホールディングス株式会社 事業戦略説明会 中期経営計画(FY24-28)における新領域への挑戦 より引用

新技術獲得を目指すM&A戦略

これまでの当社のM&A戦略を振り返ると、主に海外拠点の拡充を目的としたものが中心でした。

海外の事業会社を買収し、サトーの技術やノウハウを導入することで事業を展開し、現在では26カ国に拠点を持つまでに成長しています。

この海外拠点の整備は、一つの区切りを迎えたと考えています。

今後、新たな市場としてアフリカなどへの進出の可能性も視野に入れていますが、現時点では現在の26カ国の体制で十分な成長を見込んでいます。

各拠点の黒字化も達成しており、今後は事業の拡大に注力するフェーズに入っています。

そのため、今後のM&A戦略は「技術面での強化」を重視していきます。

特に、当社の核となるタギングのさらなる進化を支えるため、たとえばセンサーデバイスの開発を手がける企業との協業など、さまざまな企業との協業や、買収・出資の可能性を積極的に検討しています。

具体的には、安定的にセンサーを供給してもらうために、当社向けに優先的にセンサーを開発してもらう契約を結び、専用のセンサーを開発することも視野に入れています。

また、センサー技術の導入によって取得できるデータの量が増えるため、データの整理や分析が不可欠です。

そのため、AIやソフトウェア分野への投資も進め、当社に適した形でデータを処理できる企業と連携することを検討しています。

すでにM&Aの専門担当役員を設置しており、完全買収・部分出資・業務提携など、さまざまな形での投資を進めています。

2024年には一部の企業に出資を行っており、今後も成長戦略の一環としてさらなるM&Aを推進していきます。

注目していただきたいポイント

当社は、「あらゆるものを情報化して 、社会のうごきを最適化する 。」ことを目指しています。

社会が円滑に機能するためには、物流、製造、小売、医療など、さまざまな分野での正確な情報管理が欠かせません。

私たちは、その基盤を支えるインフラとしての役割を果たしていると考えています。

情報化技術は、時代の変化に適応しながら進化し続けるものです。

当社は特定の業界に限定するのではなく、あらゆる業種・業界と関わることで、社会全体に貢献できる強みを持っています。

たとえば、車を運転する人だけが必要とする商品や、音楽を聴く人だけが使う商品とは異なり、当社はほぼすべての業界に関わっています。

日常生活のさまざまな場面で、サトーの商品や技術は活用されています。

たとえば、洋服を購入する際のタグ、食品のパッケージ、物流の出荷ラベル、さらには病院でのリストバンドに至るまで、気づかないうちに当社のタグやラベルが身近なところで使われています。

上場企業の社長同士が集まる場でも、「工場でサトーのシステムを導入しています」「出荷時のラベル管理に活用しています」「製品の値札として使っています」といった声をよく耳にします。

また、人のライフサイクルのあらゆる場面で活用されています。

赤ちゃんが生まれた際に装着するリストバンドから、製造業・流通・小売に至るまで、人生のさまざまなシーンで当社のソリューションが正確性や安全・安心を支えるために関わっています。

このように、私たちは「社会を支える裏方」としての役割を果たしているのです。

投資の観点から見ても、こうしたビジネスモデルは非常に魅力的だと考えています。

もちろん、「釣りが好きだから釣具メーカーの株を買う」という投資の考え方もありますが、当社はあらゆる業界に関与しているため、どの分野の成長にも影響を与えるポジションにあります。

今後も、各業界の課題を深く理解し、現場に最適なソリューションを提供していくことで、持続的な成長を実現していきます。

サトーホールディングス株式会社 統合報告書 2024 より引用

投資家の皆様へメッセージ

2025年4月より、「株式会社サトー」として新たなスタートを切りました。

これまでの実績をさらに発展させ、次の成長フェーズへと進んでいきますので、ぜひご期待ください。

当社は、さまざまな社会課題に対応できる技術とソリューションを持つ企業です。

たとえば、省力化・省人化の推進、環境問題への対応、物流・製造業における効率化など、社会には多くの課題があります。

そのすべてに、当社のタギングが貢献できる可能性を秘めています。

また、サプライチェーンの透明化や、サーキュラーエコノミーの実現に向けたトレーサビリティの強化など、今後ますます重要性を増す分野にも積極的に取り組んでいます。

情報を正しく管理し、社会全体の効率を高めることで、企業活動の最適化だけでなく、持続可能な社会づくりにも貢献していきます。

こうした変化に適応しながら、持続的な成長を遂げるためにも、引き続き皆様からのご支援をお願いいたします。

株式会社サトー

本社所在地:〒108-0023 東京都港区芝浦3-1-1 msb Tamachi 田町ステーションタワーN

設立:1951年5月16日

資本金:84億6,800万円(2024年3月末時点)

上場市場:東証プライム市場(1990年10月31日上場)

証券コード:6287

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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