【5532】株式会社リアルゲイト 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年3月4日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社リアルゲイトは、主に競争力を失った築古ビルに対してリノベーションを行い、スモールオフィスやシェアオフィスなどのフレキシブルワークプレイスを提供し、新たな価値を生み出す会社です。

代表取締役の岩本 裕氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社リアルゲイトを一言で言うと

古いものを大切にして街づくりをする会社です。 

リアルゲイトの沿革

株式会社リアルゲイト代表取締役 岩本 裕氏

創業経緯

私は大学時代、建築を勉強していました。

しかし設計の分野では振るわなかったため、アメリカンフットボールを始め、ゼネコンでの現場管理、デベロッパーでの業務、営業や土地仕入れ等、幅広い経験を積みました。

その過程で一級建築士の資格を取得し、設計だけに留まらない仕事をしたいと考えるようになりました。

その折に、海外で見た築百年を超える古いビルのリノベーションに可能性を感じ、日本での新事業を模索することにしました。

そして建築士としての資格を生かし、海外のヴィンテージビルのような価値あるリノベーションを日本で実現できないかと考え2009年に当社を創業しました。

リノベーション需要の高まり

当社の重要な転機として、2011年の東日本大震災があります。

当時、カナダ大使館の隣の大型マンションが空室となり、旧耐震基準の古いビルから多くのテナントが退去する事態になりました。

そこで私たちはこれらの物件を安価に借り上げリノベーションをした後、マスターリースを提供するというビジネスを始め、大きく成長することができました。

また2020年から始まったコロナ禍も大きく当社の事業を押し上げるきっかけとなりました。

社会的なリモートワーク需要や多様なオフィス需要の高まりを受け、古いビルをリノベーションして様々な場所で働ける環境を提供する当社の事業が注目されていきました。

上場経緯

およそ7年ほど前から飲食業を主軸に展開していた前の親会社の下、上場を目指すための準備を始めました。

更なる事業拡大のためには金融機関からの借入れだけではなく、株式市場での資金調達が必要だと考えたことが主な理由です。

また当時は、約50棟のビルを運用し、約1,000社のテナントにサービスを提供していました。、この規模以上で事業を継続するために、より強固な信用基盤を築く必要があると考えたことも上場を目指した理由の1つです。

しかし前の親会社がコロナ禍によって業績不振に陥ったため、サイバーエージェントに全株式が譲渡され、サイバーエージェント傘下で再度上場を目指しました。

そして2023年6月に東証グロース市場に上場を果たしました。

株式会社リアルゲイト 事業計画及び成長可能性に関する事項(2023年12月7日) より引用

リアルゲイトの事業の概要と特徴

概要

当社の事業は、築古ビルの再生に特化したフレキシブルワークプレイス事業を展開しています。

業界には様々なリノベーション会社が存在しますが、当社は一級建築士事務所と特定建設業の資格を有しています。

これにより建物の耐震補強や増築、エレベーターの設置、用途の変更等、建物を根本から改修することが可能です。

そして改修後は、デザインや共用部分の改善を加え、部屋を細分化してスタートアップ企業へ貸し出すビジネスモデルです。

このモデルを例えるならば、単に外見を整えるだけの車屋ではなく、エンジンを含む車両全体を一から組み直し、しっかりと走ることができるヴィンテージカーに作り直すことができる修理工場のような存在だと考えていただければと思います。

株式会社リアルゲイト 事業計画及び成長可能性に関する事項(2023年12月7日) より引用

事業における優位性

築古ビル再生の運営実績に基づく技術力と企画力

当社の強みは、技術力と企画力、そしてこれらを全てワンストップで提供できることにあります。

株式会社リアルゲイト 事業計画及び成長可能性に関する事項(2023年12月7日) より引用

この16年間で、私たちは約100棟近くのスタートアップ向けオフィスを供給してきました。

このように継続して安定供給することができているのは、事業の最末端、つまり運営までを自社で手掛けているからです。

物件の運営を通じて、お客様からの直接のフィードバックや市場のニーズを把握し、それを物件の開発に生かしています。

日々の運営で得られるクレームや解約といった情報は、市場における最新のニーズを理解する上で非常に貴重です。

また、リーシングの営業活動を通じて、どのようなオフィスが求められているかが明確になるため、時代の流れに合わせた物件を迅速に提供することができます。

更に物件の設計や変更を社内で完結させることで、高度にカスタマイズされた解決策をパズルのように素早く組み合わせて提供できる力も私たちの強みです。

一般的に設計事務所やゼネコンは技術的に優れていますが、当社の最終的な物件のコンセプトや機能は、お客様のニーズに基づいているため、ご納得いただける物件に仕上げることができます。

この一気通貫のサービス提供により、お客様のニーズに応えながらコストを抑えつつスピーディに物件を市場に提供するビジネスモデルを実現しています。

株式会社リアルゲイト 事業計画及び成長可能性に関する事項(2023年12月7日) より引用

高収益性を実現するエリアターゲティング

現在、私たちのターゲットエリアは主に渋谷区・港区・目黒区です。

株式会社リアルゲイト 事業計画及び成長可能性に関する事項(2023年12月7日) より引用

事業の根幹をなすシェアオフィスビジネスでは、お客様に提供するスペースの価格設定が極めて重要です。

現在は過去の成功を基に適正な価格設定が可能なエリアを選定することで、安定した経営を維持し、周辺エリアへと順調に拡大しています。

特に渋谷区を中心に、池尻・目黒・青山方面へと事業範囲を広げて、このドミナント戦略により市場の需要を正確に捉えることができています。

エリアを絞ることで、運営の効率化を実現し、人件費やその他の経費を最小限に抑えることが可能となっています。

株式会社リアルゲイト 事業計画及び成長可能性に関する事項(2023年12月7日) より引用

よく投資家の方々から、「ビルが不足するのではないか」「より遠方での展開を検討した方が良いのではないか」とのご指摘を受けます。

しかし当社の事業は新築のビルよりも既存ビルのリノベーションに特化しています。築古ビルが豊富な都心部での需要が絶えることはありません。

また新築ビルも時間が経過すればいずれ築古ビルとなり、私たちの手で新たな価値を創出するチャンスが生まれるはずです。

このように都心部に特化することで、長期的なビジネスチャンスを確保しています。

株式会社リアルゲイト 事業計画及び成長可能性に関する事項(2023年12月7日) より引用

時代のニーズに合致したユニークなポジショニング

当社のビジネスは大きく分けて2つのスキームに基づいています。

ひとつはストック型ビジネスで、マスターリースから得られる賃料や、当社が保有する物件からの賃料収入が含まれます。

もうひとつがフロー型ビジネスで、こちらはオーナー様からの設計や施工の受託、保有物件の売却等、一回性の取引から収益を得るモデルです。

株式会社リアルゲイト 事業計画及び成長可能性に関する事項(2023年12月7日) より引用

コロナ禍では、特にフロー型ビジネスにおいて解約や物件の入れ替わりが多く見られました。

株式会社リアルゲイト 事業計画及び成長可能性に関する事項(2023年12月7日) より引用

しかし外部環境の変化が激しかったこともあり、多くのオーナー様が物件の有効活用に苦慮されており、私たちの提供する設計や施工サービスが求められました。

例えば機能しなくなったホテルをオフィスやサービスアパートメントに転換するといったプロジェクトを多数手掛け、事業を拡大することができました。

このように当社のビジネスモデルは柔軟に対応することができるため、時代のニーズを捉えた独自的なポジションを確立しました。

株式会社リアルゲイト 事業計画及び成長可能性に関する事項(2023年12月7日) より引用

リアルゲイトの中長期の成長イメージとそのための施策

面での拡大とストック収益の拡大

まずエリア戦略としては渋谷区・港区・目黒区といった現在のエリアに集中し、引き続き東京都内での面積拡大を目指しています。

そしてストック型ビジネスであるマスターリース等を中心に伸ばし、利益を最大化させることが目標です。

現在はストックによる安定した粗利益で、全ての販管費を賄っています。

今後は上場によって得た資金を活用し、これまで他社が行っていた不動産の購入や転売等を積極的に行い、新たなビジネスチャンスを掴んでいく方針です。

株式会社リアルゲイト 事業計画及び成長可能性に関する事項(2023年12月7日) より引用

POPUPショップ・イベントスペースの拡大

コロナ禍から回復している今、再度リアルでの接点を持ちプロモーションを行いたいと考える事業者が増えています。

そのため当社は、コロナ前から手がけていたPOPUPショップやイベントスペースの運営に再度注力していきます。

また、シェアオフィス内にイベントスペースを設けることで、流行のイベントが定期的に開催され、オフィス環境にもポジティブな影響をもたらすと考えています。

今後はシェアオフィスとイベントスペースやPOPUPショップが相互にシナジーを発揮できる空間を意識し、事業者と消費者のニーズを考えながら展開していきます。

大型・築浅案件への進出

当社が築古のビルに焦点を当てたのは、都心部でスタートアップ企業に安価なオフィススペースを提供したいという思いからでした。

近年は東京都内では新築ビルの建設が続いており、シェアオフィスの需要も増加しています。

かつては珍しい存在だったシェアオフィスが今では一般的になり、マンションやオフィスビルの下層部に新しくシェアオフィスを設置することで、建物全体の価値を高めたいというニーズが増えています。

これはスタートアップと大企業の交流を促進し、ビル自体のブランド価値を向上させる狙いもあります。

従来のマンションやオフィスビルが市場での競争力を失いつつある中で、シェアオフィスを取り入れることが、新たな価値提案に繋がると考えています。

株式会社リアルゲイト 事業計画及び成長可能性に関する事項(2023年12月7日) より引用

注目していただきたいポイント

私たちが目指す街づくりとして、小規模ながらも個性的なビルを通じて、街全体の価値向上に貢献していきたいと考えています。

例えば渋谷のキャットストリートのように、大小様々な店舗が連なり、それぞれが個性を放つような街並みを作ることが理想です。

私たちが手がけるのは主に300坪から1,000坪規模で、築30年から50年のRC構造のビルが中心です。

これらの築古のビルに新しい命を吹き込むため、アートの導入やカフェの設置等を行っています。

確かに、大型ビルを中心とした都市開発も魅力的ですが、私たちの強みはむしろ中小規模のビルを活用した、細かく繋がった街づくりです。

ぜひ私たちの個性的な街づくりに興味を持っていただければと思います。

株式会社リアルゲイト 事業計画及び成長可能性に関する事項(2023年12月7日) より引用

投資家の皆様へメッセージ

元々上場したばかりで中期計画を公表していた際には15%に設定していました。

今期で16期になりますが、営業利益6.4億円という目標ですでに7億円以上となり、前期と比べると30%増です。来期、再来期の物件購入も順調に進捗しており、物件を売上につなげていければ、25〜30%の伸びを達成できると考えています。

投資家の皆様は投資する企業に成長を期待していると思いますが、”成長の継続性が重要”とお考えでしょう。

物件保有するものは保有し、ストックを伸ばし、その中でフロー収入をプラスして優れたビジネスモデルを構築した会社を作っていくというのが目標です。

式会社リアルゲイト

本社所在地:〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷3-51-10 3F

設立:2009年8月24日

資本金:665百万円(2023年9月末時点)

上場市場:東証グロース市場 (2023年6月22日上場)

証券コード:5532

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

目次