【3947】ダイナパック株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2025年4月2日に実施したIRインタビューをもとにしております。

ダイナパック株式会社は地域密着型のビジネス展開で、中部から全国各地の包装材を取り扱う総合パッケージング会社として成長を続けてきました。

今後は、高い技術で、中部から世界へと羽ばたいていきます。

代表取締役社長の齊藤 光次氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

ダイナパック株式会社を一言で言うと

野心に燃えた包装材のリーディングカンパニーです。 

ダイナパックの沿革

ダイナパック株式会社 代表取締役社長 齊藤 光次氏

創業の経緯

ダイナパックは、「大日本紙業」と「日本ハイパック」という二つの企業が統合して誕生しました。

合併から20年を迎えていますが、会社としての歴史はさらに古く、大日本紙業の設立が1962年、日本ハイパックが設立されたのは1950年に遡ります。

1950年といえば戦後の混乱期が続く大変な時代で、その翌年の1951年には、日本政府が「森林法」を制定しました。

この法律ができた背景には、終戦直後の山火事による深刻な森林の消失や、復興資材として木材が大量に伐採されてしまい、森林資源が著しく枯渇するという危機的な状況がありました。

当時、日本に駐留していたアメリカ軍が、物資の輸送や梱包に木箱ではなく段ボールを使用していました。

それを見た日本人はとても驚いたと聞いています。

木箱が当たり前だった日本人の目には、簡単に折り畳めて軽い段ボールという包装資材がとても新鮮で、まさに目からウロコの出来事でした。

これに刺激を受けて、吉田茂内閣は、資源保護の観点から木箱の使用をやめて段ボール包装を推進する方針を閣議決定しました。

これが、日本における段ボール産業が急速に伸びるきっかけとなりました。

まさにその段ボール包装への転換期に、日本ハイパックは創業したわけです。

以来、私たちは段ボール産業の発展とともに、社会の変化を見つめながら歩んできました。

段ボールの機能拡充に注力

当時の包装需要は、特に野菜や果物といった青果物で非常に高まりました。

1958年には「青果物段ボール包装普及会」が発足し、リンゴや柑橘類などの果物では一気に段ボール包装が広がっていきます。

一方で、白菜やキャベツ、レタスなどの葉物野菜については、なかなか普及が進みませんでした。

葉物野菜というのはサイズが大きく、重量もあり、しかも高原地帯で朝収穫されると表面に大量の露がついてしまいます。

通常の段ボールだと、この水分を吸収して強度が落ちてしまうという難しい課題があったのです。

そこで日本ハイパックは、「耐水段ボール」の開発に挑戦することにしました。

段ボールを水に強くするにはどうしたらいいかと考えた結果、「蝋引き(ワックス加工)」という技術を導入し、ヨーロッパから専用の設備を取り寄せました。

この設備のおかげで、水分に強い段ボールの生産が可能になりました。

実際に耐水段ボールを作った後は、現在のJA(全国農業協同組合連合会)の前身である全国購買農業協同組合連合会と協力し、長野県の野辺山高原などで何度も輸送テストを繰り返しました。

その結果、まったく問題がないことが実証され、ついに葉物野菜でも段ボール包装が本格的に使われるようになりました。

青果物の包装は、これを機にほぼ全面的に段ボールへと移行していき、当社の「耐水段ボール」は、まさに包装業界における“革命”と呼べるほどの成果を挙げました。

その後は、単に段ボールを作るだけでなく、さらに機能を高める製品開発にも力を入れていきました。

次に取り組んだのが「強化段ボール」です。

通常のものより格段に丈夫で強度が高いため、電気製品や機械などの重量物でも段ボール包装が可能になりました。

こうした挑戦を繰り返してきたことで、「商品開発のDNA」ともいうべき企業文化が自然に社内に根付いていったと思います。

紙製の緩衝材や、段ボール製のパレットといった新しい製品も、こうしたDNAから生まれてきたものなのです。

⼤⽇本紙業と⽇本ハイパックが合併

2005年に大日本紙業と日本ハイパックは経営統合を行いました。

当時、両社はともに段ボール業界では数少ない上場企業で、営業利益率でも常にトップクラスを競い合うほどの、いわば非常に優良な企業同士でした。

それだけ順調に成長を続けていましたが、一方で私たちは業界の将来を見据えたときに、「このままではいずれ業界再編の波が押し寄せてくるだろう」という強い危機感を共有していました。

なぜかといいますと、その頃すでに「板紙(いたがみ)」、つまり段ボールの原料となる茶色の紙の業界では、再編の動きが急速に進んでいたのです。

板紙業界では中小メーカーが競争に敗れて廃業し、大手の製紙会社に吸収合併されるなど、大きく業界が変わっていく姿を目の当たりにしていました。

板紙メーカーが数多く存在していた時代は、私たち段ボール製造企業も仕入れ先を競わせて、有利な条件で原料調達を進めることができていました。

しかし板紙業界の再編によって、供給元がどんどん減っていき、交渉力の面で立場が徐々に逆転してしまったのです。

さらに私たちが警戒していたのは、大手製紙会社の影響力が増す中で、彼らが段ボールの製造業務にまで本格的に進出してくる可能性でした。

もしそうなれば、私たち段ボール専業の企業にとっては、独自性や競争力を維持することが難しくなる恐れがあったのです。

このように、板紙業界の再編をきっかけとして、「私たち段ボール業界の独立性をどう守っていけばよいのか」という問題意識が、両社の間で自然に共有されるようになりました。

こうした共通の認識と危機感をもとに話し合いを進めた結果、「両社が統合することが最善の選択である」と互いに判断し、経営統合という決断に至ったのです。

M&Aによる事業拡大

経営統合後は、M&Aによる事業拡大を進めました。

海外事業を展開する際、私はよく「グリーンフィールド」という言葉を使って話をします。

これは、まったくの更地にゼロから工場を建て、人を採用して育て、お客様を一から開拓するという方法のことです。

当然ですが、これは膨大な時間と労力がかかりますし、事業が軌道に乗るまでの間、赤字を覚悟する必要もあります。

一方で、M&Aという手法は、まさに「時間を買う」ことができるわけです。

さらに、自分たちが持っていない経営資源やノウハウを短期間で手に入れることができるという非常に大きなメリットもあります。

実際、当社が最初にM&Aを経験したのはベトナムで事業を展開する時でした。

当時、「これはグリーンフィールド型に比べるとはるかに効率的で、成果も早い」と強く実感したことを覚えています。

その経験があったため、それ以降の私たちの事業拡大は、M&Aを軸として進めるようになったのです。

国内では、2016年にクラウン紙工業を買収しました。

そして2018年には旭段ボールをグループに迎え入れ、関東エリアでの基盤を強化しました。

さらに2019年にはマレーシアの包装メーカーであるGrand Fortune Corporation Sdn. Bhd.(現在のDynapac GF)を子会社化することでマレーシア事業を拡大し、また、2024年にVietnam TKT Plastic Packaging Joint Stock Companyを買収することでベトナム南部への進出も実現しました。

直近の動きとしては、2022年に買収した城西パックを、2024年7月に旭段ボールと統合し、グループとして段ボール製品事業を集約することで、運営効率を高める取り組みを進めています。

このように、現在では国内外あわせて16の連結子会社を持つまでに成長し、総合包装資材メーカーとして業界でも確かなポジションを築くことができました。

ダイナパック株式会社 2024年12月期 事業報告 より引用

ダイナパックの事業概要と特徴

概要

私たちは、自らを「トータルパッケージング・ソリューション・プロバイダー」と呼んでいます。

これは単に包装資材を製造・販売するだけの会社ではないということを意味しています。

つまり、私たちが提供するのは、お客様が抱える包装に関する課題をトータルで解決することです。

包装の分野を事業ドメインとして捉え、包装に関するさまざまな課題に対して幅広く解決策をご提供しています。

具体的に言いますと、まず上流工程では、商品の魅力を引き出すグラフィックデザインの提案や、商品の形状に合わせた最適な箱の構造設計(プロダクトデザイン)を行っています。

「商品がきれいに収まるように」「使いやすさが感じられるように」「使い終わった後に折りたたんで捨てやすいように」といったように、実用性とデザイン性を両立させた包装設計が当社の強みです。

また、下流工程では商品のアソート(詰め合わせ)やピッキング(商品の仕分け)といった作業まで請け負っています。

たとえば、チョコレートメーカー様を例にすると、定番の商品はメーカーご自身の工場で製造・包装されていますが、バレンタインなどの季節イベントにおいて、さまざまな種類の商品を組み合わせて詰め合わせる作業は、自社だけでは対応が難しいケースがあります。

当社は、そのような作業を代行しています。

メーカー様からチョコレートがバルク(大容量)の状態で納品され、それを当社で作った専用の箱に丁寧に詰め、出荷できる状態に仕上げるという作業です。

さらに、最近では「デジタル印刷」という新たな技術を活用して、店頭で使われるディスプレイや什器など、販促物の製作にも力を入れています。

これらは実際の販売現場でセールスプロモーションを支援するもので、「セールスプロモーション事業」としても積極的に展開しています。

私たちの事業の中核となるパッケージング分野では、製品を包む袋やトレーなどの内装材、商品そのものを入れる小箱や化粧箱といった中装材、そしてそれらをまとめて運ぶための段ボールという外装材まで、すべてを自社内で製造・販売できる体制を整えています。

このように、私たちは包装資材の製造・販売だけではなく、上流のデザイン開発から下流の物流支援、さらには販促支援まで、包装に関するすべての領域にワンストップで対応できる企業として、多くのお客様に選ばれ続けているのです。

ダイナパック株式会社 会社案内パンフレット より引用

事業における優位性

カスタムメイド志向とデザイン力

日本で初めて導入した段ボール専用のデジタル印刷機「Scitex15500」を活用し、お客様それぞれのご要望にきめ細かく対応した「オンリーワンパッケージ」を提供しています。

また、当社には包装設計技術者やデザイナーなど専門スタッフが多数在籍しており、東京と中部の二つの拠点に開発本部を構えています。

そこではグラフィックデザインからプロダクトデザインまでを一貫して手がけられる体制を築いています。

さらに、私たちが特にこだわっているのは、包装設計技術者を開発本部だけでなく、全国各地の工場にも配置しているという点です。

現場からの案件を都度本部にあげていたのでは、情報がタイムリーに伝わらず、各地域のお客様が求める迅速かつ柔軟な対応ができなくなってしまいます。

現場に近い包装設計技術者が対応することで、スピード感を持ってお客様のニーズに応えられるようにしています。

外部からも評価される高い技術力

おかげさまで当社は、「アイデアを強みにしている企業」として、これまで数多くの賞を頂戴してきました。

具体的には、毎年開催される日本包装技術協会主催のパッケージングコンテストでは、当社の作品が毎年複数点、入賞しています。

さらに、このコンテストで日本国内の賞をいただいた作品は、「世界包装機構(World Packaging Organisation)」が主催する世界大会へ進みます。

ここで評価されますと、国際的な栄誉である「ワールドスター賞」を受賞することができます。

今年度もありがたいことに当社からは3点が入賞することができました。

こうして、私たちダイナパックは、国内外で評価される高い技術力を持ち、包装業界において独自の強みを築いているのです。

デザイン力を活かした提案力

設計スタイルの基本は、あくまでお客様の声にじっくりと耳を傾け、一緒になってパッケージをつくり上げていく「協働型」です。

ただ最近では、もう一歩踏み込んで、お客様に積極的に提案を行う「能動型」のアプローチも非常に大切だと考えるようになりました。

これはどういうことかと言いますと、お客様から特に具体的な依頼がなくても、こちらから積極的にお客様の商品を拝見し、「こういった包装に変えてみてはいかがでしょうか?」と、私たちから自発的にご提案する手法です。

こうした「能動的な提案活動」を今後さらに強化していくことで、お客様の期待を上回るご提案を行い、より深く、強固な信頼関係を築いていきたいと考えています。

実際に過去には、お客様の技術部門に当社スタッフを派遣し、設計段階から包装について一緒に検討を進める、いわば「プロダクトイン」という形で取り組んだ事例もあります。

製品が出来上がってから包装を検討するのではなく、製品設計の段階から当社が参画していくことで、結果として非常に完成度の高いパッケージが生まれます。

そのため、私たちのスタッフが一定期間お客様の会社に常駐し、技術チームの一員となって包装設計を進めるというケースもいくつかありました。

こうした取り組みは、私たちの事業においていわゆる「非価格競争力」を高めることにつながっています。

ご存じの通り、包装材というのはどうしてもコモディティ化、つまり価格競争に巻き込まれやすい業界です。

単純に価格だけで競争していると、利益率はどうしても低下してしまいます。

だからこそ私たちは、「価格以外の要素で選ばれる力」を磨きたい。その核となるものが、まさに当社が持つ「設計力」であると考えているのです。

実はこれまでも、当社は日本の産業資材、特に工業製品向けのパッケージで多くの実績を築いてきました。

たとえば、マイクロソフト社の「Windows 95」のパッケージ箱は、当社も担当いたしました。

また、ソニーさんが「VAIO」ブランドを立ち上げ、パソコン市場に初めて参入した際の記念すべき第一号機のパッケージ、さらには犬型ロボット「aibo」のパッケージも、当社が担当しています。

こうした歴史的な製品、特に“第一号”となるような製品のパッケージを数多く手がけさせていただいてきました。

当社が得意としている「レポートメイキング(印象に残るパッケージづくり)」には自信を持っています。

ダイナパック株式会社 会社案内パンフレット より引用

ダイナパックの成長戦略

「現在の深化と未来の創造」

2024年から2026年にかけての当社の中期経営計画では、これまでの「変化への対応」から「成長」へと大きく舵を切ることを明確に打ち出しています。

今回の中期経営計画に掲げたテーマは『現在の深化と未来の創造』です。

これはつまり、これまで培ってきた既存事業をさらに深掘りして強化する一方で、新たな成長分野の取り込みや創出にも積極的にチャレンジしていこう、という私たちの意思の表れです。

私たちが長年かけて築いてきた総合パッケージメーカーとしての強みを最大限に活かし、より付加価値の高い事業を構築していくことで、「事業が稼ぐ力」をさらに高めていきたいと考えています。

変化の激しい時代のなかで、今までの取り組みをより深化させると同時に、将来のさらなる成長に向けて新しい分野を切り拓いていく、この二本柱を軸に、当社は着実に成長の道を歩んでまいります。

ダイナパック株式会社 2024-2026年 中期経営計画 より引用

海外戦略の方針

現在、ダイナパックの海外事業は、中国、マレーシア、そしてベトナムに展開しており、それぞれ現地に工場を構えて包装資材を販売しています。

ただ実情としては、取引先の多くが日系企業に偏っているという課題があります。

そこで私は日頃から社内に対して、「日系企業だけに頼っていてはいけない。ローカル企業や日系以外の外資系企業へも積極的に取引先を広げていくべきだ」と強く伝えています。

海外における日系企業の存在感や生産規模は、残念ながら以前ほどの勢いがありません。

わかりやすい例で申し上げますと、ベトナムに進出している日系企業が生産しているスマートフォンの台数と、同じベトナムに進出しているサムスンが生産する「Galaxy」の台数では、もはや一桁どころではなく、二桁、三桁も違いがあるほどです。

このような圧倒的な差がある中で、日系企業だけを相手にしていてはビジネスとしての伸びしろは限られてしまいます。

また、これまでは海外拠点でお付き合いする企業として、「労働集約型の輸出加工産業」が中心でした。

過去には円高や国内の人件費の高騰が理由で、生産拠点が中国や東南アジアなど海外に次々と移っていきました。

しかし労働集約型産業は常に人件費の安い場所を求めて移動します。

以前は東南アジアから中国へ、今では再び中国の人件費高騰や米中関係の悪化から、「チャイナ・プラスワン」として東南アジアに回帰する動きも見られます。

組み立て加工型の産業は人と場所さえあれば比較的簡単に移転できますが、私たちの事業は設備投資が大きいため、そう簡単に拠点を移転することはできません。

だからこそ、私たちは長期的に安定して取引できる顧客を確保することが非常に重要だと考えています。

つまり、人件費や為替の影響を受けて頻繁に拠点を移す輸出加工産業だけでなく、現地に根づいた内需型のローカル企業との関係を強化する必要があるのです。

そうした背景から、私自身も社内では「せっかく現地に工場を構えているのだから、現地のローカル企業を積極的に開拓していこう」と訴え続けています。

特にベトナムは、近年の中国の人件費高騰や米中摩擦などの影響で、東南アジアの中でもとりわけ製造業が集まっています。

私たちも現在ベトナムへ特に経営資源を集中させており、今後も継続的に投資を進めていくつもりです。

手元に明確な市場シェアの数字があるわけではありませんが、ある情報筋によれば、当社は現在ベトナム国内で包装資材メーカーとして第6位の規模だと言われています。

ちなみに4位は王子グループで、1位はローカル企業です。

トップ企業と当社の売上規模は約2倍ほどの差がありますが、これは決して手の届かないレベルではないと思っています。

「ベトナム市場でナンバーワンを取る」という目標も十分に現実的であると考えています。

実際、日本では日清食品さんや東洋水産さんが有名なインスタントラーメン市場を見ても、ベトナムにおいてはエースコックさんが圧倒的なシェアを獲得しています。

つまり日本国内でトップでなくても、海外でナンバーワンになれる可能性は十分にあるのです。

私たちも同様に、ベトナムにおいて「業界ナンバーワン」を本気で目指していきたいと考えています。

そうした意味でも、海外戦略においてはM&Aが非常に有効な手段になるはずです。

日本人中心の組織で進めていると、どうしても取引先が日系企業に偏りがちになります。

しかし、現地のローカル企業を買収することで、その企業が既に築いている現地顧客との関係をスムーズに取り込むことができます。

つまり私たちがゼロから築くことが難しい現地の経営資源や顧客基盤を効率よく獲得できるということです。

これからの海外展開では、そうしたM&Aを戦略的に活用し、さらなる成長を図っていきたいと考えています。

ダイナパック株式会社 2024-2026年 中期経営計画 より引用

サステナブルな包装の開発

ダイナパックは今、「サステナブルな包装」の開発に力を注いでいます。

特に注目している素材が、「パルプモールド」と呼ばれる紙製の緩衝材です。

実は当社がこの分野に取り組み始めたのは、約35年も前のことになります。

ちょうど当時は、環境問題が注目され始めた第一次環境ブームの真っただ中でした。

日本の家電メーカーが世界市場で圧倒的な存在感を示していた時代です。

当時、家電製品を保護する緩衝材と言えば、ほぼ例外なく発泡スチロールが使われていました。

しかし、環境への負荷が問題視され、「脱・発泡スチロール」や「発泡スチロール使用量削減」の動きが急速に広がったのです。

そこで私たちにも家電メーカー様から「環境負荷の少ない代替素材を検討してほしい」という依頼が寄せられました。

さまざまな素材を調査・検討する中で目を付けたのが、パルプモールドでした。

卵のパックやりんごの底敷きなどに使われている紙製の成形品で、割れやすい卵もしっかり保護できる優れた緩衝材です。

私たちはこれをより大型で、複雑な形状に成形できれば、発泡スチロールの代替として十分な可能性があると考え、開発に着手しました。

そうして誕生したのが、日本で初めて実用化された工業製品向けのパルプモールドです。

現在では主にマレーシアとベトナムで製造していますが、この技術は当社の大きな強みの一つだと自負しています。

今後も、私たちが長年培ってきた「プラスチック代替の紙製品」に関する技術やノウハウをさらに活かして、パルプモールド分野への注力を一層強めていくつもりです。

一方で、現実問題として、プラスチック素材は機能性やコスト面で優れており、すべての用途を紙製品で代替することは難しいでしょう。

そこで私たちが最近特に注目しているのが「モノマテリアル(単一素材)」です。

たとえばフィルム包装の場合、強度や機能性を高めるためにポリエチレンとナイロンなど、異なる素材を組み合わせてラミネート加工を施すのが一般的です。

しかし、こうした複合素材はリサイクルが極めて難しいという課題があります。

一方で、プラスチックであっても単一の素材だけで作られている場合、リサイクル性が格段に向上するわけです。

これからの時代、プラスチック包装については、この「モノマテリアル化」を積極的に進めていきたいと考えています。

そして紙製素材とプラスチック素材の両軸で、より持続可能性の高いパッケージを実現していくことが、当社の大きな使命だと考えています。

注目していただきたいポイント

ダイナパックはこれまで主にBtoBの事業を展開してきたこともあり、株主の皆様や投資家の皆様からの認知度はそれほど高くないかもしれません。

実際、財務基盤は非常に堅実であるにもかかわらず、「売上がなかなか伸びていないのでは」「成長戦略が分かりにくい」といった声をいただくこともありました。

これは当社自身も認識していることであり、ある意味、仕方がない部分もあったと思います。

しかし、実はここ3年ほどで当社は大きく変化しています。

まさに今、「第二の創業」とも言える新たな成長ステージに入ったことを、ぜひ知っていただきたいのです。

その成長の土台となっているのは、何よりも長年かけて築き上げてきたお客様との強固な信頼関係です。

現在、私たちには約4,000社におよぶ取引先があり、ほぼすべての産業分野のお客様とお付き合いをさせていただいています。

この広範で安定した顧客基盤は、他社には真似できない当社ならではの強みです。

加えて、日本国内のパッケージングコンテストや世界大会で毎年のように高い評価をいただいている、技術力と提案力も当社の成長を後押しする大きな原動力になっています。

さらには、サステナブルな包装開発のように、時代のニーズを先取りし、常に市場のトレンドを捉えて積極的に先手を打ってきた姿勢も評価いただいています。

また、あまり知られていませんが、当社は実は“隠れたM&A巧者”でもあります。

これまでも国内外の企業を戦略的に買収し、事業を拡大してきました。

今後も、自社のオーガニックな成長に加えて、M&Aを積極的に活用したインオーガニックな成長にも注力し、新規分野への進出やさらなる事業拡大を進めていく計画です。

さらに当社は、非常にドメスティックな性質が強い段ボール業界にあって、実は30年前から積極的に海外進出を進めてきました。

現在では海外事業が売上の約20%を占めるまでに成長しています。

国内の段ボール需要は依然として底堅いものの、人口構造の変化などを考えれば、国内市場での急成長は望みにくい状況です。

だからこそ、今後もベトナムをはじめとした東南アジアなど、包装需要が拡大する成長市場にさらに積極的に展開し、海外事業を次なる成長ドライバーとして強化していきたいと考えています。

こうした取り組みの成果は、数字としても着実に表れてきました。

おかげさまで売上高は6期連続で増収を記録し、経常利益は4期連続で過去最高を更新しています。

さらに直近の当期純利益は、前期比で約80%増という大きな成長を遂げています。

かつて「成長が見えにくい」と言われた当社ですが、実際には約3年前から大きな変革を進め、合併から20年の節目を迎えた今、「第二の創業」として新しい成長の軌道に本格的に乗り始めています。

ぜひダイナパックの今後の成長に、大きなご期待をお寄せいただければ幸いです。

投資家の皆様へメッセージ

投資家の皆様には当社の未来に期待していただき、長期的な視点で応援していただきたいと思います。

かつて私たちダイナパックは、「成長が見えにくい」「将来性に乏しい」といった厳しい評価を受ける時期があったのも事実です。

しかし、ここ数年の私たちの歩みをご覧いただければおわかりいただける通り、現在は明確に変革を成し遂げ、「第二の創業」と呼べる成長フェーズに入っています。

業績や収益性も順調に伸びており、その成果はすでに数値として現れ始めています。

ただ、こうした当社のポテンシャルがまだ市場では十分に評価されておらず、株価は依然として低位にとどまっております。

ですが、だからこそ今がまさに絶好の投資タイミングであると自信を持ってお伝えしたいと思います。

長年培った堅実な財務基盤、安定した顧客基盤、優れたデザイン力や技術力、そして国内外での戦略的な事業展開といった当社の多くの強みを最大限に活かし、さらなる成長を加速させていきます。

ぜひ、投資家の皆様には私たちダイナパックが描くこれからの成長ストーリーに注目していただき、ともに未来の成功を共有できるよう、温かいご支援をお願い申し上げます。

ダイナパック株式会社

本社所在地:〒460-0003 愛知県名古屋市中区錦三丁目14番15号 カゴメビル

設立:1962年8月1日

資本金:40億円(2025年4月アクセス時点)

上場市場:東証スタンダード市場、名証メイン市場(1976年7月5日上場)

証券コード:3947

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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