【4425】Kudan株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

Kudan株式会社はAP(人工知覚)の開発に特化し、AI、自動運転、ドローンなど新技術への実用化を加速させるディープテック企業です。

代表取締役CEOの項 大雨氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

Kudan株式会社を一言で言うと

比類なきディープテックを目指すグローバル・先鋭技術集団です。 

Kudanの沿革

Kudan株式会社代表取締役CEO 項 大雨氏

創業経緯と上場まで

当社はもともと2011年にイギリスで創業し、拡張現実(AR)技術に焦点を当て事業を始めました。

創業者の大野は、戦略コンサルタントとしてアクセンチュアやアーサーアンダーセンで活動した後、ゲーム業界のコンパイラ技術に携わり、PlayStationのコンパイラの基になる技術をソニーに売却しました。

ソニーへの売却後、大野はゲームIPを利用した新たなコンテンツ開発に取り組み、欧米市場向けにコンテンツのローカライズを行っており、それがKudan創業の基盤となりました。

そしてAR技術において、GoogleやAppleなどの大手企業が市場を席巻する中、我々は一歩先を行くディープテック(深層技術)に焦点をあて、2014年に東京に本社機能を移し、2018年に東証マザーズ市場(現 東証グロース市場)へ上場しました。

KUDAN IR より引用

Artisense Corporation(アーティセンス社)の取得と実用化

2020年1月にミュンヘン工科大学発、自動運転技術の第一人者として世界最高峰の研究実績

を有するDaniel Cremers 教授が創業したArtisense Corporation(以下アーティセンス社)が当社に参画し、圧倒的な市場シェアの確保に寄与しました。

欧州は人工知覚の研究が盛んですが、その中でも人工知覚のメッカとも呼ばれており、Daniel Cremers 教授にはノーベル賞級の実績と技術力があります。

当社が独占的にアーティセンス社の持つ技術を保有したことで、相乗的により複雑な環境下での高度な空間・位置認識を実現しました。

KUDAN IR より引用

また、Intel Corporationとの戦略的技術パートナーを結んでおり、2022年10月には自律走行ロボット(Autonomous Mobile Robot、AMR)向けソフトウェア・プラットフォームの商用Visual SLAMソフトウェアとしてKudan Visual SLAM(KdVisual)が採用されました。

足元でも国内外で当社の技術が採用されており、2024年3月にはNVIDIAのエッジAIプラットフォーム「Jetson」向けに、当社の空間・物体認識ソフトウェア「Kudan Visual SLAM」を発売することを発表しました。

KUDAN IR より引用

Kudanの事業概要と特徴

概要

我々のビジネスモデルは至ってシンプルです。

主にライセンスを販売しており、ビジネスは大きく二つの段階に分かれます。

初期の段階では技術を仕込む「前半戦」と、商用化後に市場で製品が売れていく「後半戦」です。

後半戦で当社の技術を採用した製品が市場で成功すれば、拡販に比例してライセンス料収入が増加し、ストック収益を積み上げていくことができます。

ただし、このフェーズに至るまでには研究と実用化するための技術の醸成が必要です。

またこの技術が搭載されるのは自律して動き回るロボットや次世代のデジタルツインなど、高度な技術を必要とする製品ばかりです。

したがって、競合に先んじて市場に参入し追随を許さない状態にまで地位を確立していくことが我々の戦略の鍵です。

KUDAN IR より引用

事業における優位性

人工知覚、それは人工知能と似て非なるもの

当社はすべての機械に“目”を与えることを目指しています。

一般的に知られている人工知能が“脳”とするならば、我々はその“目”、すなわち人工知覚を提供しています。

KUDAN IR より引用

このアプローチにより、機械やロボットが人間のように環境を理解し対応することができるようになります。

通常の画像認識技術は深層学習や機械学習に基づく学習が必要ですが、我々の技術では直感的に空間を認識し、自身の位置を特定することができます。

たとえば、大きな駅で迷わずに自力で道を見つける能力や、未知の環境でも自身の位置を把握して適応する能力を機械にもたらすため、自動運転車やロボティクスに応用されています。

さらにこの人工知覚技術はデジタルツインにも活用されています。

デジタルツインは、リアルタイムで現実の空間や環境をデジタル化し、そのデータを建築、都市計画、インフラメンテナンスなど多岐にわたる分野での応用が期待できます。

特に建築や工業などにおける三次元データは、都市計画、インフラ点検、産業メンテナンスにおける効率化・省人化を加速させていくはずです。

KUDAN IR より引用

産業を最深部から支える「超・ディープテック」

当社がターゲットとしている市場は、インフラと産業の二つです。

これらのセクターは膨大な市場ポテンシャルを持っており、特にロボティクスの領域では、市場規模が数百兆円にも及ぶ可能性があります。

そこで我々のコアテクノロジー、すなわちディープテックが競争力の源泉として重要です。

このディープテックは、主にアルゴリズムや情報処理のパターン、ロジック定義のソフトウェアが含まれます。

これらは半導体やプロセスセッサー、さらにはロボットやその運用サービスに組み込まれることで、階層的に技術の積み重ねが行われ、当社の技術は一度導入されると置き換えが困難な深層部にあるという点が特徴的です。

例えば、英国で創業されたARMという会社は、CPUアーキテクチャの開発で知られ、巨大な半導体企業と比較してもそのポジションは非常に強固です。

当社もARMの例に倣い、高度なディープテクノロジーを基盤に、産業全体に影響を与えるプロダクトのための技術を提供しています。

KUDAN IR より引用

最近では、NVIDIAなどの大手半導体企業とのパートナーシップを通じて、半導体と先端ソフトウェアの技術を融合させ、新しい電子回路の開発にも取り組んでいるところです。

KUDAN IR より引用

Kudanの成長戦略

大手が戦いづらい領域で固める非競争戦略

当社は競争の激しい人工知能/Deep Learning による画像認識の技術ではなく、人工知覚/SLAM による空間位置認識の技術に特化して研究開発をしています。

KUDAN IR より引用

特に人工知能は主にアメリカと中国がリードしており、高品質なデータと強力なサーバー能力が求められる分野です。

OpenAIのChatGPTにおける膨大なサーバー維持費の例からもわかるように、プロジェクトの進行のためには巨大な資本力が必要です。

一方、我々が取り組んでいる人工知覚技術は、学習を必要としない直感的なデータ処理に重点を置いているため、資本に依存することなく事業の展開が可能です。

またメタバースや消費者向け製品に特化しているGAFAとは異なり、我々は産業用途に特化する戦略をとっています。

KUDAN IR より引用

特に製造・物流・不動産業界は独自でデータ保持したいケースが多く、技術的な課題に対してのソリューションを提供していくことが重要です。

今後は産業分野における商用向けに、専門開発された技術における企業としてのデファクトスタンダードを獲得できるかが鍵となってきます。

KUDAN IR より引用

現在、Kudanの技術は世に出始めている

当社の技術は既に製品に導入されており、最終顧客にも届き始めています。

KUDAN IR より引用

現在最も活用されているのはインフラ点検で、特に欧州での再生エネルギープロジェクトにおいて、デジタルツインを通じてメンテナンスや管理がされています。

我々は現在約10社のパートナーと協力し、送電網や大規模変電所プロジェクトにも応用されています。

KUDAN IR より引用

また、既に我々の人工知覚技術を活用した様々なプロジェクトが進行中です。

例えばGPSの届かない環境での自動運転プロジェクト、NASAの月面探査ロボットの開発、フィンランドの農林省が推進する森林資源のデジタルツインを活用した管理などです。

KUDAN IR より引用

我々は開発規模が小さいながらも、高い専門技術を持っています。

今後は最終顧客まで我々の技術が届き製品関連の売上が増加し、この勢いをさらに加速させ、事業拡大を図っていく方針です。

KUDAN IR より引用

注目していただきたいポイント

まず、私たちがグローバルで展開しているこの先端技術は、同様の事業を行っている企業がほとんど存在しないという点に注目していただきたいです。

特に日本の市場においてはこの独自性が強みとなっており、大きなポテンシャルを秘めています。

我々の人工知覚—”機械の目”—の技術を支えているのは、欧州にある最高峰の技術者たちと実用化に向けたグローバルでの事業展開です。

また、足元ではAIの進化とともに半導体産業が注目を浴びている中、当社もこの半導体に関連した銘柄として取り上げられることが多くなってきました。

技術として競合が非常に少ない分野かつ、最先端の技術を持っていることは参入障壁が非常に高くパイオニアとしてのメリットを享受していると感じています。

今後はインフラ、産業、半導体市場の”黒子”として市場の成長に寄与していくので、ぜひこのユニークな当社の技術に注目していただければと思います。

Kudan株式会社 2024年3月期 通期決算説明資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

我々はディープテック企業として業界の最深部の技術開発に取り組み、市場の発展とともに一気に業界をリードしていくポテンシャルを秘めております。

今後は当社の技術を活用した製品が次々と生まれ、拡販していくことで安定的なビジネスモデルを構築していきます。

ぜひ当社のユニークな技術や実用化された製品に注目していただき、暖かいご支援をいただけると幸いです。

Kudan株式会社

本社所在地:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷二丁目10番15号

設立:2014年11月19日

資本金:740百万円(2024年3月末時点)

上場市場:東証グロース市場 (2018年12月19日上場)

証券コード:4425

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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