【3319】株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年6月6日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインは国内に日本最大級のゴルフポータルサイトを持ち、アメリカでGOLFTECやSkyTrakなどのサービスを成長させています。

代表取締役社長の石坂 信也氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインを一言で言うと

ゴルフとテクノロジーを組み合わせて、感動体験を提供していく会社です。 

ゴルフダイジェスト・オンラインの沿革

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン代表取締役社長 石坂 信也氏

創業の経緯

当社は2000年5月の創業で、いわゆるインターネット系企業の起業第一波の際に私が立ち上げた会社です。

創業前は1990年に入社した三菱商事で働いていました。

数年間働いた後、社内制度を使って1997年にアメリカのビジネススクールに留学しました。

当時インターネットビジネスのスタートアップが盛んで、ビジネススクールでもインターネットビジネスに関する授業が行われるほどでした。

そこで、紙メディアの衰退を見越して、好きだったゴルフとインターネットを掛け合わせたビジネスプランとそれに関するレポートを作成し、1999年にMBAを取得しました。

そして、帰国後は金融部門に配属され、投資銀行業務をこなしながら、ベンチャー投資部門のデューデリジェンスを手伝っていました。

色々な企業を見ていく中で、日本でもインターネット企業の波が来ると考え、好きだったゴルフを掛け合わせたビジネスを始めようと思ったことが創業のきっかけです。

ゴルフ業界にイノベーションを

当社の創業時点ではインターネットバブルが弾けた後で、ライブドアショックにより、ブームは終焉を迎えていると言われていました。

また、ゴルフ業界ではゴルフ場の会員権ビジネスが破綻したころです。

しかしながら、幼い頃からゴルフに慣れ親しんできた私にとって、ゴルフにはより多くの人に楽しんでもらえるポテンシャルが秘められていると感じていました。

私は、この環境をチャンスと捉え、インターネットとゴルフでキャッシュフローを創出するビジネスモデルを提供することで、業界にとってもゴルファーにとってもWin-Win-の関係を築くことができると考えました。

そこで、まずはネットでゴルフ場を予約することができるサイトの運営を始めました。

その後、ゴルフ場の予約だけでなく、ゴルフに関する情報サイトやゴルフ用品のECサイトを立ち上げ、ゴルフポータルサイト「ゴルフダイジェスト・オンライン(以下GDO)」として成長させてきました。

また、過去にゴルフ会員権の投資などで世間的にもゴルフ業界のイメージがあまり良くなかったので、そのイメージを払拭し更なる成長を目指すために、2004年に東証マザーズ市場(現 東証グロース市場)に上場しました。

ゴルフ大国のアメリカへ進出

日本国内で最大級のゴルフポータルサイトとしての地位を高めながら、着実に事業を伸ばしていました。

ただ、国内事業だけでは持続的な成長は見込めないと考え、2018年7月にアメリカを中心にゴルフレッスンを行うGOLFTEC社を子会社化しました。

そして、2022年8月には「GOLFTEC」を通じて、一般ゴルファー向け弾道測定器でシェア1位を誇る「SkyTrak」の事業を取得しました。

現在はGDO・GOLFTEC・SkyTrakの3事業のシナジーを活かして、国内外での事業拡大に努めています。

ゴルフダイジェスト・オンラインの事業概要と特徴

概要

売上は国内事業で約50%、海外事業で約50%というバランスです。

まず、国内事業ではゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)という日本最大級のゴルフポータルサイトの運営を行っています。

GDOではゴルフ場の予約、ゴルフ用品の購入、ゴルフイベントへの参加ができるとともに、ゴルフ関連の最新情報を得ることができます。

そして、海外事業ではアメリカでGOLFTECというゴルフレッスンの店舗運営とフィッティングによるゴルフ用品の販売を行っています。

また、SkyTrakという弾道測定器のハードウェアの製造・販売や測定器と連動させることができるソフトウェアの開発を行っています。

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン より提供

事業における優位性

国内最大のゴルフメディア

創業時からゴルフに特化しつつ、幅広いサービスやコンテンツを提供することが重要だと考え、ポータルサイトを構築することを目指してきました。

ゴルフというニッチな分野であるため、単一サービスだけで生き残ることはできません。

そこで当社は、複数サービスを通じて顧客との接触頻度を高く保つことを重要視しています。

例えば、ゴルフクラブの購入頻度は多くても年に1〜2回程度ですが、ゴルフに関する情報は日々チェックされる可能性があります。

そこで、最新のゴルフ情報をお届けするメディアとしての役割も果たしています。

このようにゴルフに関連する様々なタッチポイントを増やし、顧客との接点をできるだけ多く持つことで、アップセルの機会を逃さないようにしています。

さらに、日本のゴルフ業界は保守的な体質が強いため、長期にわたって良好な関係性を築いてきたGDOが主導して、新しい技術やビジネスモデルを積極的に導入しています。

例えば、老朽化したゴルフ練習場に弾道測定器やシミュレーションが行えるシステムとしてトップトレーサー・レンジを導入し、新たな体験価値を提供する施設として生まれ変わらせることができました。

そのように従来のゴルフの楽しみ方だけでなく、テクノロジーを積極的に導入して、新しい楽しみ方やサービスを提案できることがGDOのDNAであり、強みだと考えています。

アメリカでの認知度向上

アメリカと日本は世界でも有数のゴルフ大国です。

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン より提供

当社は日本国内のゴルフ業界を中心に、テクノロジーで変革をもたらしてきましたが、2018年のアメリカ進出を皮切りに海外展開を積極的に行っています。

また、子会社のGOLFTECはアメリカだけでなくイギリス、カナダなど世界8か国にフランチャイズなどを通じて展開しています。

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン より提供

子会社化以降、新店舗出店とテクノロジー投資を行い、積極的に事業展開を進めている企業として認識されています。

特にテクノロジーに関しては、2022年にSkyTrakの事業を買収したことで、一般顧客との接点が増え、アメリカで広く認知されるようになりました。

具体的には、GOLFTECの実店舗の会員のクラブデータやスイングデータにSkyTrakで収集したボールの弾道データを加えることで、レッスンの満足度向上に役立てています。

そして、認知度も高まってきたため、ゴルフ業界に対するインパクトも大きくなり、GOLFTEC自体の認知度はかなり向上していると感じています。

ゴルフダイジェスト・オンラインの成長戦略

アメリカ進出を起点とした3つの戦略

2018年から注力しているアメリカ進出には3つの戦略に基づいています。

まず、アメリカでの総合展開の足がかりとなり、当社の事業の柱として成長させていくことです。

国内で培ったノウハウを活かしながら、マーケティング投資などを積極的に行い、GOLFTEC事業をさらに拡大させていきます。

次に、アメリカから海外への展開です。

GOLFTECのアメリカ以外の国への店舗展開やSkyTrakのハードウェア・ソフトウェアの輸出を行います。

そして、最後にアメリカから日本への逆輸入です。

国内におけるGDOの事業基盤を活用しながら、新たなテクノロジーであるSkyTrakを拡販することで事業を成長させていく方針です。

GOLFTEC ANYWHERE構想へ

GOLFTECは基本的にはリアルビジネスなので、出店戦略が鍵となります。

10年前の分析でも、アメリカ国内で450店舗まで出店が可能と見込まれており、GOLFTECは、200弱の店舗しかありません。

そのため250店舗の出店余地があり、15〜20店舗/年の出店ペースだとしても今後10年以上の成長が期待できます。

さらに、アメリカ以外の海外市場にも出店余地があり、少なくとも数100か所は狙えると考えています。

現在は海外市場ではフランチャイズでの経営を行っていますが、今後は英語圏を中心に直営店舗の経営も検討しています。

このように、GOLFTECの新店舗出店により、レッスン事業、クラブフィッティング販売事業において、成長が加速していくと考えています。

また、SkyTrakも同様に成長余地があります。

販売チャネルは直販、卸売、小売の3つの形態で展開していますが、主に大手量販店やゴルフ以外の量販店に新たに卸していくことで、販路を拡大できると考えています。

そして、未開拓のマーケットも多く、アメリカ国内およびグローバルでのソフトウェア展開が大きな成長を見込めます。

SkyTrakの測定機器は既に8万台近く市場に出回っており、新しいソフトウェアの提供を通じてソフトウェア販売の機会を拡大していきます。

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン 2024年2月14日 中期経営計画2024-2026 より引用

そして、GOLFTECとSkyTrakを組み合わせながら、GOLFTEC ANYWHERE構想を実現していきます。

具体的には、まず人のスイングデータやボールとクラブの動きのデータをカメラやSkyTrakの測定機器を通じて収集し、それをAIで分析します。

その分析結果を用いて、スイングの分析や練習法の提案、最適なクラブの選定を自動化することができるようになります。

ゴルフレッスンを提供する上で、コーチの数には限りがありますが、このレッスンを自動化することで、24時間利用可能なレッスン施設の運営もできると考えています。

世界中の幅広い層のゴルファーをターゲットに、ゴルフ上達の世界クラスの体験を、店舗の対面レッスンでも、外出先のスマホでも、自宅に設置したシミュレーターでも、あらゆる場所に届けていきます。

このGOLFTEC ANYWHEREについては、今後1〜3年の間にローンチできると考えています。

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン 2024年2月14日 中期経営計画2024-2026 より引用

国内のイノベーションを牽引

日本国内において、若い世代や新しいユーザー層のポテンシャルは十分に開拓されていない状況だと考えています。

例えばトップトレーサー・レンジと呼ばれるシステムは、ゴルフ練習場とバーチャルを掛け合わせて、弾道計測や練習の記録を行えるだけでなく、ゲームが行えたりするもので、ゴルフ場に足を運ばなくても気軽にゴルフを楽しむことができるようになります。

アメリカではオフコースゴルフとして広く普及していますが、日本でもこのコンセプトが受け入れられ、成長していくと期待しています。

今後はアメリカで培ったテクノロジーの技術などを日本に逆輸入することで、ゴルフ業界を活発化させていきたいと考えています。

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン 2024年2月14日 中期経営計画2024-2026 より引用

注目していただきたいポイント

当社は国内人口減少というマクロ的な要因に危機感を持ち、将来的な成長を見据えてアメリカに進出しました。

2018年時点では日本国内での利益の積み上げが進んでいたため、このまま利益の最大化を目指すべきだという意見もありましたが、更なるビジネス拡大のためにはアメリカへの進出を決断しました。

そして現在の売上の約半分は海外事業となっています。

そして今後はアメリカでのビジネス成長を起点に、アメリカからグローバルに、そして日本国内へテクノロジーをもたらしながらゴルフ業界全体を牽引していきたいと考えています。

また、具体的なことはまだ非公開ですが、近い将来アメリカで新たなサービスもローンチします。今後更なる市場拡大が見込まれている分野への参入になります。

ぜひ当社のゴルフ業界における戦略的で挑戦的な取り組みに注目していただければと思います。

投資家の皆様へメッセージ

当社はゴルフというスポーツを軸に、テクノロジーを掛け合わせることで国内外でイノベーションを起こし、感動体験を提供していきたいと考えています。

財務面ではまだ胸を張れる状況ではありませんが、事業と売上高においては大きな成長を遂げています。

これからはM&Aで生じた、のれん償却を上回る形で利益と成果を上げていきます。

中長期的な視点でご支援いただき、当社の成長にご期待いただければと思います。

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン

本社所在地:〒141-0022 東京都品川区東五反田2-10-2 東五反田スクエア8階

設立:2000年5月1日

資本金:1,458百万円(2023年12月末時点)

上場市場:東証プライム市場(2004年4月1日上場)

証券コード:3319

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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