※本コラムは2024年9月11日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社コパ・コーポレーションは長年にわたる実演販売のノウハウを活かし、テレビ通販、インターネット販売、直営店舗など、多様な販路でヒット商品を提供し続けます。
代表取締役社長の吉村 泰助氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社コパ・コーポレーションを一言で言うと
作ると売るのプロ集団です。
コパ・コーポレーションの沿革
創業の経緯
私が当社を立ち上げたのは1998年ですが、その前から実演販売の世界にどっぷりと浸かっていました。
大学時代に所属していたサークルの縁で、実演販売の甲子園とも言われる『秋葉原デパート』でアルバイトをしたことがきっかけで実演販売という仕事に出会いました。
実演販売の魅力に強く惹かれた私は、1990年から実演販売のプロとして歩合制の個人事業を始めました。
その後、個人で実演販売を行っているうちに、ある商品の売上が大きく伸び、法人化の必要性を感じたため、当社を設立しました。
一般的に実演販売を行う会社は派遣業がメインの事業ですが、当社は実演販売を通じた卸売業を行うことを目的に設立しました。
卸売で商品を小売店に販売し、ただ棚に並べるだけでは消費者にその価値はなかなか伝わりません。
対して、当社は実演販売士を自社で育成し、彼らが現場で商品を紹介し、直接的に消費者に売り込むというビジネススタイルを確立させました。
この「実演販売士」という言葉も私が考案しました。
実演販売士育成講座をスタート
店頭販売やTVショッピングでの販売、ネット販売などの様々なチャネルを活かして事業を伸ばしていきました。
そのような中、2006年に本社を恵比寿に移した後、実演販売士の育成に力を入れるようになりました。
2007年には、消費者にどのようにアプローチすれば商品が売れるのかを体系的に教える「売の極意塾」という講座を始めました。
実際、この講座から多くの実演販売士を輩出しました。
TVショッピングやネット通販の現場で活躍する”有名販売士”が在籍していたという過去もあります。
コロナ禍での上場
緊急事態宣言下の2020年6月24日に私たちは東証マザーズ市場(現 東証グロース市場)に上場を果たしました。
当初は同年3月に上場を予定していましたが、世の中が混乱していたため、上場の延期を余儀なくされてしまいました。
そのような中、業績は堅調であったことから上場が認められ、緊急事態宣言後に初めて新規上場した会社となりました。
しかし、実演販売という事業の性質上、三密回避などの影響は大きく、店頭での実演販売は難しい状況が続きました。
コロナの影響を大きく受けた中でも、テレビ通販やネット通販といった多様なチャネルを持っていたことが功を奏し、上場によって得た資金力も支えとなり、この困難を乗り越えることができました。
現在はコロナからの回復の兆しが見えており、早期黒字化に向かって邁進しています。
コパ・コーポレーションの事業概要と特徴
概要
当社の事業は5つの販売チャネルを通じて展開されています。
まず、TV通販が主要な販売チャネルの1つです。
私たちはTV通販会社に商品を卸すだけでなく、当社の実演販売士が番組に出演し、視聴者に商品を実演しながら販売しています。
このTV通販を通して売れた商品の売上が当社に入ります。
次に、小売店舗へのベンダー販売です。
実店舗に商品を卸し、店舗で販売されることで売上が計上されています。
さらに、インターネット通販も強化しており、楽天やアマゾンなどのECプラットフォームを通じて、消費者に商品をお届けしています。
加えて、東京スカイツリー内で運営している直営店「デモカウ」を通じて消費者に直接販売しています。
また別の切り口から、セールスプロモーションも展開しています。
クライアントからの依頼を受け、実演販売士が販促ビデオに出演するなど、実演を通じたプロモーション活動のお手伝いをしています。
セールスプロモーションセグメントにおける新たな取り組みとして、2023年8月にライブ配信型のクラウドファンディング「わくたん」を立ち上げ、新たなチャネル開拓を試みています。
「わくたん」にメーカーが商品を出展することで、消費者からクラウドファンディングで資金を募り、当社の実演販売士がライブ配信で販促するという流れで商品をお届けします。
このように多岐にわたる販路を活用し、独自の販売戦略である「3Dマーケティング販売戦略」を展開しています。
事業における優位性
実演販売
実演販売という独自の手法に裏打ちされた強力な販売力が最大の強みです。
実演販売は、単に商品を紹介するだけではなく、消費者にその商品が日常生活の中でどのように役立つのかを具体的にイメージさせる話や実演により、購買意欲を刺激することができます。
このノウハウは実演販売士育成プログラムである「売の極意塾」で学ぶことが可能です。
そして、熟練度に応じて、実演販売員、実演販売士、実演アンカーマンと呼ばれる認定制の資格制度を導入しており、効率的な育成を行っています。
その中でも、当社のコア人材でもある実演アンカーマンは、実演販売で経験した消費者ニーズを商品企画に活かし、”売れる”商品の企画に繋げています。
このように組織的に実演販売士を有している企業は珍しく、他社と差別化できる強みだと自負しています。
売れる商品企画力
独自の商品企画力が特徴です。
一般的なメーカーでは、商品を開発してから販売方法を考えますが、当社では逆のアプローチを採用しています。
まず、消費者に響くセールストーク、つまり実演トークを作り、そのトークに基づいた商品を開発するというスタイルです。
そして、そのような商品を開発できるメーカーと協力し、販売士が考えたセールストークに合致する商品を企画・製造しています。
このようなアプローチによって、商品自体が消費者にどうアピールするかという視点が初期段階から取り入れられ、売れる商品を効率的に生み出すサイクルを構築しています。
また、当社が長年培ってきた「実演販売トーク」に基づく商品開発は、失敗するリスクが非常に低いことも特徴です。
このように、”売れる”商品をコンスタントに作ることができるのは当社の強みです。
売れ筋商品の開発
独自の商品企画力に基づいた当社の売れ筋商品を4つご紹介します。
まず1つ目が「骨盤整隊カシャーン」です。
この商品は、腰のサポートを行う骨盤ベルトです。
長年仕掛けてきた商品の一つで、特に立ち仕事やデスクワークの多い人々に大きな支持を受けています。
2つ目は「99Tsukumo傘」です。
「Tsukumo」という名前は、重さが約99gであることや、急な雨や思いがけず日差しが強かったときなどにまさに「救急(99)」的に使えるということに由来し、軽さにこだわった晴雨兼用の折りたたみ傘です。
最近男性が日傘をさすシーンが見られるようになりましたが、この文化の定着に貢献した商品だと自負しています。
実演販売で紹介されると瞬く間にヒット商品となりました。
3つ目は「ゴムポンつるつる」です。
このタオルは、水で濡らして肌をこするだけで、古い角質や垢を簡単に落とすことができる商品です。
非常にシンプルで効果的なケア商品で、実演販売でその効果を実際に見せることで、消費者の心をつかんできました。
長年にわたり安定して売れ続けているロングセラー商品です。
4つ目は「鎬 -Shinogi- 包丁」です。
この商品は非常によく切れる包丁で、料理好きな方やプロの方にもぜひお使いいただきたい商品です。
実演販売でその切れ味を見せることで、購買意欲を高めることができる商品です。
このように、実演販売を前提とした様々な商品を開発し、日用品に限らず幅広いカテゴリーを扱いながらヒット商品を生み出し続けています。
競合の少ない市場
日用品卸売市場において、商品企画力を持ちながら、消費者との接点を強く持っている企業として、独自のポジションを確立しています。
実演販売のノウハウを持ち、そのスキルを活かして商品を販売する企業は限られており、私たちのように体系的な育成プログラムを有している企業はほとんど存在しません。
コパ・コーポレーションの成長戦略
実演アンカーマンの育成に注力
今後の成長戦略の中で、特に力を入れているのは実演アンカーマンの育成です。
実演アンカーマンとは、単なる販売士にとどまらず、商品の企画・開発から販売までの全てを担えるスペシャリストです。
この実演アンカーマンの育成は、単に販売力を強化するだけではなく、新たな商品を生み出すことにも繋がります。
彼らが現場で培った販売ノウハウを基に、どのような商品が市場で受け入れられるかを判断し、その知見を商品企画にフィードバックすることで、ヒット商品を次々と生み出していきたいと考えています。
自社プラットフォームの醸成
当社のファンを増やし、自社プラットフォームの強化を進めます。
特に2023年にリリースしたライブ配信型クラウドファンディング「わくたん」は、今後の成長を牽引する重要なチャネルです。
わくたん (wakutan)|ワクワクする商品や体験が見つかる応援サービス
「わくたん」は、単なるクラウドファンディングではなく、当社の強みである実演販売と組み合わせた新しい販売モデルです。
企画内容や応援者へのアプローチに対して実演販売の要素を用いた協力はもちろんのこと、当社は卸売業を営んでいるため、企画終了後も様々な販路を活用してマーケティングのサポートを行うことが可能です。
また、当社の商品の多くは、商品名で検索された結果購入されたり、商品を求めて直営店で購入される”指名買い”がほとんどです。
そのため、当社のファンとどのように接点を増やしていくかが今後の売上成長の重要なポイントとなります。
そして当社のプラットフォームを通じて、消費者との直接的な接点を増やし、より密接なコミュニケーションを図ることで、売上拡大できると期待しています。
商品企画販売力の強化
商品企画力と販売力の強化も欠かせません。
当社では、実演販売士や実演アンカーマンが現場で得たフィードバックをもとに、新たな商品を企画・開発するプロセスを採用しています。
そのため、消費者が本当に欲しい商品を提供することが可能です。
コロナ禍ではなかなか効果的に活用することはできませんでしたが、アフターコロナに合わせた現場実演の強化を図り、店頭実演プロモーションを積極的に行うことで、販売力を復活させていきます。
現在、実演販売士と消費者の接点である「デモカウ」では、土日には必ず実演販売が行われています。
このような実演販売の場を提供することで、実演販売士の育成と販売力を強化していきたいと考えています。
また、「わくたん」の認知度を高めることで、メーカーからの商品の卸売を強化していきます。
そして、自社でプロデュースしているSNSアカウントや、外部のインフルエンサーを活かしたマーケティング活動を通じて、多角的に商品を市場に投下していきます。
この結果、消費者の必要とする商品を適切に届け、無駄なモノを減らすことで最終的には社会へ貢献できるはずです。
このように商品やサービスの認知向上を戦略的かつ積極的に行い、商品企画力や販売力を強化することで、売上を伸ばしていきたいと考えています。
注目していただきたいポイント
意外と知られていませんが、実演販売には原稿があります。
即興ではなく、緻密に計画され、何度も何度も修正を重ねて完成させられたトークがあります。
最初に3,000~4,000字程度の原稿を書き、それを基に実演し、反応を見ながら改良し、誰が話しても「滑らない話」になるまで、トークを練ります。
そのために「売の極意塾」では売れるトークの”文法”を教えています。
このトーク作りには過去の成功データも活用し、平成版のネタを令和版にアップデートすると言う方法もあります。
トークがあっても、実演販売士のキャラが売上を左右するのではないか、と思われる方もいますが、そもそも売れなければキャラは成り立ちません。
お客様に届く、売れるトークを追求している人が、最終的に実演販売士として成功しています。
このような実演販売士を多く生み出すためにも、今後は生成AIを使ってトークを作成する工程の効率化に取り組みたいと考えています。
これが成功すれば、AIの力により実演トーク作成の難易度を下げることができ、人の力だけだと発生してしまう商品カテゴリの得意・不得意に縛られることなく、売れるトークを効率的に作り出すことができると期待しています。
皆様には当社がキャラ頼りではなく、私たちが緻密に練り上げたトークが、売上を生み出していることにご注目いただきたいです。
投資家の皆様へメッセージ
コパ・コーポレーションは、「やさしさと感動を売って笑顔と感謝を稼ぎ、みんなのための糧とします。」という経営理念を掲げています。
これまでに培ってきた実演販売のノウハウを活かしながら、今後も時代に合わせて会社も商品やサービスも変わり続けます。
これまではコロナ禍の影響もあり赤字が続いていましたが、今年度は黒字転換を目指し、事業基盤を強化しています。
また、事業基盤の強化とともに新規事業にもコツコツと取り組むことで、さらなる事業成長を目指しています。
ぜひ当社の今後の成長にご期待いただき、引き続きご支援いただけると嬉しいです。
株式会社コパ・コーポレーション
本社所在地:〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南2-23-7 エビスパークヒルズ6階
設立:1998年10月21日
資本金:401,160千円(2024年9月アクセス時点)
上場市場:東証グロース市場(2020年6月24日上場)
証券コード:7689