【6635】株式会社大日光・エンジニアリング 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年5月8日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社大日光・エンジニアリングは電子部品実装を中心に高い技術力の下、環境に優しいものづくりや、人々の生活を楽にする製品の開発・製造・販売を通じて、社会に貢献する会社です。

代表取締役社長の山口 琢也氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社大日光・エンジニアリングを一言で言うと

最先端のものづくり技術で社会に貢献する会社です。 

大日光・エンジニアリングの沿革

株式会社大日光・エンジニアリング代表取締役社長 山口 琢也氏

創業の経緯

当社の創業は1979年9月です。

創業者は現会長の山口侑男で、もともとは電子基板を製造する会社の事業部長でした。

そして電子基板の上に部品を載せる電子部品実装事業を開始した際に独立し、当社を設立しました。

設立当初から2000年代前半までは、売上のほとんどがキヤノングループからの仕事で、グループ全体の売上比率は80%を超えていました。

取引先の多角化と上場

当社は2007年にJASDAQ市場(現 東証スタンダード市場)に上場を果たしました。

上場準備の際に顧客基盤を安定させるため、新規顧客への積極的な営業を推進する戦略を取りました。

この戦略に注力したことは我々にとって大きなターニングポイントでした。

そして、2010年ごろからは自動車関係の仕事を頂けるようになり、特定のお客様に依存しすぎない、バランスの取れた事業ポートフォリオへと徐々に転換してきました。

海外へ本格的に事業を拡大

2013年には資本提携を行い、タイに進出しました。

過去にも中国やベトナムにも進出しましたが、タイ進出の際には日系の同業他社から株を譲り受け、合弁会社で本格的な事業展開を行いました。

以降は自社ですべてを完結させるのではなく、協業先とのパートナーシップを構築することで、リスクを抑えつつスピード感を持った事業展開を行えるビジネスモデルに転換してきています。

大日光・エンジニアリングの事業概要と特徴

概要

ビジネスモデルについて、ジャンル・エリア・プロセスの3つの切り口で説明させていただきます。

まず、ジャンルですが、当社はOA機器や事務機などに内蔵される電子基板の製造からスタートし、コンシューマー向けの製品がメインでしたが、近年は自動車・医療機器・産業機器等、認証までのハードルが高く、参入障壁の高いジャンルからの受注が主流となっています。

次にエリアですが、足元では中国への依存度が高い状況です。

今後も中国を重要な市場として維持しつつ、タイやベトナムなどのASEAN地域での受注拡大を目指していきます。

また、インド・メキシコ等、顧客の拠点の近くで地域性を活かしたサプライチェーンを構築していく計画です。

最後にプロセスの観点でご説明します。

まず、我々の本業は基板に部品を載せる電子部品実装です。

ただし、それだけでは利益率が低いため、自動車や医療、半導体製造装置向けに回路基板設計の段階から関わる案件や、実装基板だけを納品するだけでなく、完成品の組立までを行わせて頂く案件の受注に注力しています。

その中でも、これまでに蓄積したノウハウを活かし、カスタム電源基板の設計や製造、リチウムイオンバッテリーモジュールの設計から製造、組立などにも力を入れています。

株式会社大日光・エンジニアリング HP より引用

事業における優位性

高い開発設計力・製造技術力

当社の事業は大別すると、EMS(エレクトロニクス製造サービス)事業に分類されます。

そのような業界の中、日本国内においては特色のある会社が生き残っています。

特に当社はカスタム電源やリチウムイオン電池など、アナログ回路と言われる分野での管理技術や開発設計力、製造技術力に強みがあります。

また、電源やバッテリーなどのアナログ技術の他に、一眼レフカメラレンズなどの光学分野のアナログ技術のノウハウを保有していることも強みだと考えています。

当社は半導体製造装置の基板やユニットの組立といった、製造リードタイムが長く付加価値の高い工程の仕事をいただいています。

自動化しづらいアナログ的な製造工程を高い製造技術力で担える会社は国内では少なく、当社が高く評価されている点だと考えます。

株式会社大日光・エンジニアリング HP より引用

小ロットから大きな筐体の組立までトータルで対応

当社の強みは小ロットで基板実装を行い、大きい筐体の組立まで対応できることです。

もちろん大きなロットの方が管理工数を省けますが、あえて手間のかかる小ロットの受注に対応することで、顧客からは非常に喜ばれ、業界からは高く評価されています。

このように一貫したサービスを提供できる企業は日本国内では非常に少なく、規模感で言えば、下請法に抵触するような企業が数社あるだけです。

その中でも日系大手メーカーの半導体製造装置を手掛けており、今後もこの分野でのシェア拡大を目指しています。

受注を頂く顧客からすると、手離れが良く、安定感があり、信頼性が高いということで、多くの事業者に選ばれています。

株式会社大日光・エンジニアリング HP より引用

グローバルネットワーク

製造拠点としてはそれぞれ異なる設備を有しているため、拠点ごとの取引先によって製造できる分野は異なります。

ただし、何かトラブルが発生した際に他拠点でも代替生産ができるよう、BCP(事業継続計画)の観点から標準的な製造ラインは共通しています。

また、生産品目については拠点ごとに特色があります。

まず国内拠点では、小ロットの製品を主に取り扱っており、例えば医療用検査装置や半導体製造装置の基板やユニットの組立を行っています。

一方で海外拠点では自動車関連の比率が高く、日系の顧客が多いエリアではインテリア部品の他、エンジン周りの製品に力を入れています。

中国では中国市場向けの自動車部品、タイやベトナムは東南アジア向けおよびアメリカ、ヨーロッパ向けの製品を製造するという体制で、顧客と相談しながらエリアごとに事業展開を決めています。

株式会社大日光・エンジニアリング HP より引用

大日光・エンジニアリングの成長戦略

ROIC経営

成長戦略におけるKPIとして、ROIC(Return On Invested Capital)を重視しています。

今年は取り組みの初年度で試行錯誤の段階ですが、まずは日々の業務改善を通じてROICを従業員一人ひとりに理解してもらうことに注力しています。

利益率を改善しつつ、投下資本の回転率を高めることがROIC向上の鍵です。利益を上げるだけでバランスシートが悪化しては意味がありませんし、バランスシートが健全でも余剰資金を活用できていなければ問題です。

これらを踏まえて今後3年間、そして2030年までの先を見据えた長期的な視点で戦略を進めていきます。

そこでまずは上流工程から完成品に至るまで、これまで取り切れていない付加価値の高い工程のシェアを増やしていくことが基本方針です。

また従業員のモチベーションを高めることでパフォーマンスの向上にもつながるため、健康経営というキーワードの下、エンゲージメントを高めながらバランスの取れた経営を目指しています。

さらに投下資本に関しては、在庫の回転率向上や投資の早期回収を目指し、M&Aや外部資本の取り込み等、スピード感のある施策を進めていきます。

これらの取り組みを通じて、フェーズ2の目標達成を目指します。

株式会社大日光・エンジニアリング 2024年2月29日 DNE WAY 2030 Phase2(2024年~2026年) より引用

セグメント戦略

自動車関連の受注がメインでありますが、同時に主に医療機器分野と産業用半導体分野、電源やバッテリーといったパワーサプライユニット分野の売上比率の向上に注力していきます。

設計段階の上流工程にいかに関われるか、どれだけ利益率の高い工程に携われるか、がポイントと捉えており、そのためには非常に高い技術力が求められます。

これら当社が力を入れている分野は参入障壁が高い分野だと認識しています。

例えば医療機器分野では、体内に埋め込むような高度な薬機法レベル(クラス3以上8)にはまだ参入できていませんが、今後取り組みを強化していく方針です。

こうした分野ではある程度独占的に事業を展開できますし、長期的な生産継続が計画しやすく、付加価値も高いため、先行投資していく価値はあると考えています。

株式会社大日光・エンジニアリング 2024年2月29日 DNE WAY 2030 Phase2(2024年~2026年) より引用

地域戦略

まず、中国に関しては、単に売上比率を下げるのではなく、一定のポジションを保ちながら常に動向を把握して戦略を練っていく必要があります。

そして、ASEANや日本、もしくは他の地域に進出して売上比率のバランスを取ることが必要です。

事業ポートフォリオを安定化させるためには地域の依存度をできるだけ分散させていくことが大切だと考えています。

そのような戦略の中で、現在はベトナムやタイでの受注拡大を図っており、「ネクストチャイナ」と呼ばれる地域でのプレゼンスを強化しています。

2年後の2026年に向けて、中国・タイ・ベトナム・日本のポートフォリオのバランスを整えていく方針です。

株式会社大日光・エンジニアリング 2024年2月29日 DNE WAY 2030 Phase2(2024年~2026年) より引用

注目していただきたいポイント

我々は宇宙関連の分野にも事業を展開していますが、認知度はまだまだ低いと感じています。

投資段階でもあるため収益化は少し先の話にはなりますが、当社の技術力は非常に高いと自負しています。

今後は宇宙関連事業を通じて、宇宙でも通用するものづくりができる会社としての認知度を高めていきたいと考えています。

もちろん、既に注力している半導体や医療分野にも積極的に投資をしていきたいと考えています。

投資家の皆様には当社のチャレンジングな事業展開にご注目いただき、興味を持っていただけたらと思います。

株式会社大日光・エンジニアリング HP より引用

投資家の皆様へメッセージ

仮にAI化が進んでも、ものづくりは決して無くなりません。

当社の手掛けている基板に部品を載せるという技術は必要とされ続けるはずです。

今後しっかりとした還元策を講じて、株主の皆様に長期的に支えていただけるように努めてまいります。

投資家の皆様には当社の事業とそれを支える技術力に興味を持っていただき、ご支援いただけると嬉しいです。

株式会社大日光・エンジニアリング

本社所在地:〒321-2342 栃木県日光市根室697番地1

設立:1979年9月17日

資本金:11億7,468万円(2023年12月末時点)

上場市場:東証スタンダード市場(2007年3月22日上場)

証券コード:6635

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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