【3788】GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年10月11日に実施したIRインタビューをもとにしております。

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社はシェアトップ5社のうち唯一の国産電子認証局である「GlobalSign」を持ち、電子契約を実現する「電子印鑑GMOサイン」やセキュリティサービス「GMOトラスト・ログイン」、クラウド運用サービス「CloudCREW byGMO」などを提供しています。

代表取締役社長執行役員の青山 満氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社を一言で言うと

「コトをITで変えていく。」会社です。

GMOグローバルサイン・ホールディングスの沿革

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社代表取締役社長執行役員 青山 満氏

創業の経緯

私はもともと航空機に搭載する電子機器のエンジニアとしてキャリアをスタートしました。

その後、エンジニアリングとは全く異なる分野で起業し、アメリカでスノーボードのメーカーを立ち上げ、その製品を世界中に販売するというビジネスを行っていました。

当時、インターネットが個人でも利用され始め、インターネットを活用して製品を販売できないかと考えていましたが、現代のように簡単にECサイトを構築できる訳もなく、ホームページを持つこと自体が非常に難しい状況でした。

そこで、日本の企業がインターネットを使ってビジネスを拡大できるようなインフラを提供し、ホームページやECを裏側で支える仕組みを作ろうと考え、新たにビジネスを始めることにしました。

これが、当社の出発点です。

ホスティングサービス事業の拡大、GMOグループへの参画

当社が最初に手掛けたのは、レンタルサーバーやウェブホスティングです。

ホスティングサービスの開始後、非常に早いペースで成長を遂げ、2000年に入るまでには破竹の勢いで事業を拡大することができました。

そのような中、私はアメリカやヨーロッパの同業他社の成長を常にウォッチし、彼らがどのようなサービスを提供しているのか、どのように市場を拡大しているのかを研究していました。

当時、アメリカではトップ3社が大きく成長し、その他の企業が伸び悩んでいる状況を見て、日本でも同様の現象が起こると予想しました。

日本では同業他社が10社ほどありましたが、成長スピードもあまり変わらなかったため、早期に国内の競争で上位グループに入るべく、GMOインターネットグループへの参画を決定し、2001年に資本業務提携を結びました。

M&Aの加速、電子認証局へ

GMOインターネットグループに加わった後、積極的にM&Aを行い、ホスティングサービスを強化しつつ、事業成長を加速させることができました。

その中でも特に大きな転機となったのが、電子認証局事業へのシフトです。

日本では当時、インターネット上でデータを暗号化して送受信する仕組みであるSSL(Secure Sockets Layer:セキュア・ソケット・レイヤー)の普及が進んでおらず、セキュリティに対する意識も低かったため、私はこの分野に大きな成長の可能性を感じました。

日本でのSSL普及が進まないのは、提供事業者が高価格で提供していることにあるのではないかと考えました。

そこで、2003年に世界で二番目に大きな電子認証局の代理店権を取得し、日本法人を設立してSSLを低価格で提供するセキュリティサービス事業を開始しました。

しかし、他社の製品を販売するだけではリスクが大きいため、2006年にはベルギーに拠点を持つ世界6番目の規模の電子認証局を買収し、自社での電子認証局の運営を開始しました。

「GMOサイン」「GMOトラスト・ログイン」をリリース

2015年にサーバー運用やSaaSビジネスの裏側をサポートできる強みを活かし、電子認証局をベースとした「GMOサイン」という電子契約サービスをスタートさせました。

同時期に、電子認証局・セキュリティ・クラウド基盤を組み合わせた「GMOトラスト・ログイン」という新しいサービスも提供を開始しています。

「GMOサイン」は当初から順調に成長し、特にコロナ禍の影響で急速に需要が拡大しました。

これらの事業は、当社の成長を支える重要な柱としてさらに伸びていくと考えています。

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 会社案内 より引用

GMOグローバルサイン・ホールディングスの事業概要と特徴

概要

当社の事業は電子認証・印鑑事業、クラウドインフラ事業、DX事業の3つのセグメントで展開しています。

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 2024年第2四半期 決算説明資料 より引用

中核となる事業は、電子認証・印鑑事業です。

まず、電子認証局「GlobalSign」を通じて、ウェブサイトの信頼性を高めるためのSSL証明書を発行し、インターネット上での安全な通信をお客様に提供しています。

また、「GMOサイン」では事業者間の取引における契約書を電子化し、契約のプロセスをオンラインで完結できるようなサービスを提供しています。

契約書を印刷して郵送し、捺印して返送するという一連の手間が省けるため、契約締結までの時間が大幅に短縮され、多くの企業や自治体に導入されています。

そして、「GMOトラスト・ログイン」はクラウドやSaaSを活用する企業が増える中で、従業員や組織が使用するさまざまなオンラインサービスのアカウント情報を安全に一元管理するために活用されています。

従業員が複数のサービスに個別にログインする手間を省き、一度のログインで複数のアプリケーションやサービスにアクセスできるシングルサインオン機能を提供しています。

また、企業内で部署ごとにSaaSやクラウドサービスを導入している場合、アカウント管理が分散し、パスワードの使い回しや退職者のアカウントが放置されるなど、セキュリティの抜け穴が生まれやすくなります。

シングルサインオン機能はそのようなセキュリティリスクの軽減に役立っています。

大企業を中心に着実に導入を増やしているサービスです。

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 2024年第2四半期 決算説明資料 より引用

そして、クラウドインフラ事業では、お客様のニーズに合わせたクラウドのシステム構築・運用を行っており、特に主力サービスである「CloudCREW」は、AWSやGoogle Cloudなどメガクラウドの利活用支援を行い、大きく成長しています。

企業はクラウド環境を利用することで、初期投資を抑えながらも柔軟なシステムを利用することができるため、中小企業から大手企業に至るまでご利用いただいています。

最後に、DX事業ですが、これは企業や自治体のデジタル化推進をサポートする重要な分野です。

「hakaru.ai byGMO」を用いたAIによるメーター読み取りおよびデータ自動入力による点検業務の効率化や、自治体向けの電子クーポン発行サービス「モバイル商品券プラットフォーム byGMO」など、アプリ開発を通じて、幅広いソリューションを展開しています。

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 2024年第2四半期 決算説明資料 より引用

事業における優位性

グローバル展開を可能にする電子認証局

グローバルでシェアを持つ電子認証局の世界トップ5社に含まれる当社ですが、その中でも国産認証局として唯一無二の存在です。

インターネット上での取引や情報のやり取りが日常化する現代において、信頼できる第三者認証局の役割は非常に重要です。

このグローバルな電子認証局としての地位は、世界各国で信頼されるセキュリティを有していることを表しており、国内外のあらゆるデジタル取引の信頼性を保証しています。

また、グローバル市場の拡大に向けた現地法人の設立やマーケティング活動を積極的に展開し、すでに欧米や中国など主要市場においては確かな事業基盤を築いています。

国内シェアNO.1を獲得

当社の「GMOサイン」や電子認証局「GlobalSign」によるSSLサーバー証明書は国内シェアNo.1を誇ります。

「GMOサイン」は国内の主要企業や行政機関に広く導入されており、すでに多くの実績を積み上げてきました。

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 2024年第3四半期 決算説明資料 より引用

企業や自治体では、紙の契約書から電子契約へと急速に移行しており、これが私たちの成長の原動力となっています。

特に、自治体への導入に関しては、内田洋行やNEC、富士電機などの⾃治体向け⽂書管理システムを手掛けるSIerとの協業により拡大が進み、トップシェアを獲得しています。

当社は、そのシステムに「GMOサイン」がシームレスに連携できるように、業界内で初のオンライン型の電⼦公印サービス「GMOサイン電⼦公印」を開発しました。

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 2024年第2四半期 決算説明資料 より引用

さらに、⾃治体が重視するセキュリティ認証をすべて取得しているため、自治体にとっての導入ハードルは大幅に下がり、新規受注が増えている状況です。

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 2024年第3四半期 決算説明資料 より引用

安定したストックモデル

当社のビジネスモデルは、サブスクリプション型のストック収入を基盤としています。

特に「GMOサイン」では、契約書の数に応じた従量課金制を採用しており、大企業では大量の契約書が日々発生するため、これが収益の拡大を後押ししています。

当初は中小企業で利用されていた「GMOサイン」も、近年は大企業への導入が進んでいるため、契約書の数が多く、利用頻度の高い大企業での利用は、当社にとってはスケーラブルな収益モデルを実現しています。

また、クラウドインフラ事業においても当社の強みが発揮され、継続的に使用していただくことでストック収入を安定させています。

多くのIT企業がAWSやGoogle Cloudなどメガクラウドの導入支援を手がけていますが、導入後の運用・保守までカバーできる企業は限られています。

運用・保守には高度な専門知識とセキュリティ管理が必要で、当社が長年培ってきたクラウドインフラの運用・保守を包括的にサポートできる体制によって差別化され、安定的な顧客基盤の確保に繋がっています。

GMOグローバルサイン・ホールディングスの成長戦略

重点成長分野:電子認証・印鑑事業

紙からデジタルへ

現在、電子署名や電子契約の需要が急速に拡大しており、企業や自治体を中心に、広範な領域で紙からデジタルへの移行が進んでいます。

契約書と言えば、「一対一」や「一対多」などをイメージすることが多いと思いますが、受け手が署名をする必要がない「一方通行」の形式の書類にも活用されています。

例えば、行政から建築会社などに発行される建築許可証や道路使用許可証などを電子化することが可能です。

また、総務省やデジタル庁と協力してeシールの実用化に向けた取り組みを進めています。

eシールは、企業や団体などの組織としての正当性を証明し、発行する電子文書へ付与することで発行元が特定できる仕組みです。

欧米ではすでに法整備が進み、発行元の信頼性や書類の真正性を保証するものとして、公的・民間の書類で使用されていますが、日本では法整備が行われていません。

このeシールを日本に導入するため、総務省やデジタル庁と協力して日本版eシールの開発を進めています。

IoT分野への投資

さらに、私たちはIoT分野にも、電子認証の技術を拡大していく計画です。

IoTは、モノ同士がインターネットを介して通信し、自律的にデータをやり取りする技術ですが、これに伴うセキュリティや信頼性の確保がますます重要になっています。

例えば、ドローンの運行において、外部からの不正アクセスを防ぐための通信認証や、IoTデバイス間の通信が正しいものであることを証明する技術が求められています。

私たちの電子署名や認証技術は、こうした新しい分野でも重要な役割を果たしており、今後のデジタル社会の基盤を支え、さらなる成長を見込んでいます。

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 2024年第2四半期 決算説明資料 より引用

グローバル展開

当社はグローバル展開を積極的に行っており、今後成長が期待される新興市場、特にアジアや中南米の市場に対する投資を強化しながら、さらなる事業拡大を目指しています。

特に東南アジアのインドネシア、パキスタン、バングラデシュといった国々は市場こそ小さいものの、非常に大きなポテンシャルを持っており、IT化が急速に進む中で、私たちの電子認証やクラウドインフラサービスへの需要が高まっていくと考えています。

今後、現地のIT企業やシステムベンダーとはパートナーシップを強化するために、業務提携や合弁会社設立を検討しています。

早期に市場に参入することで先行者利益を享受しながら、各国の市場成長に合ったサービスを提供していきたいと考えています。

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 2024年第2四半期 決算説明資料 より引用

クラウドインフラ事業・DX事業

当社のクラウド事業の拡大においてはクラウド市場の成長とともに売上を伸ばしています。

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 2024年第3四半期 決算説明資料 より引用

また、DX事業への取り組みについては販促と開発に注力していきます。

今後、より広範囲な市場に対応していくという意味では、当社が持つ多様な商材をクロスセルさせていくため、部門間の連携を強化しています。

単一のサービス提供に留まらず、複数の商材を顧客に提供できる機会が増え、ビジネスの厚みが増すのではないかと考えています。

また、開発については「GMOサイン」や「GMOトラスト・ログイン」のような新たな事業の柱となるようなサービス開発を目指しています。

開発の際、キーワードとなるのは「電子認証 × 〇〇」で、当社の強みを活かした新たな価値提供ができるのではないかと考えています。

今後も、企業や自治体の業務効率化や新たな価値創造を支援するサービスを拡充していく方針です。

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 2024年第3四半期 決算説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

当社の注目すべきポイントは、グローバルな展開力、成長分野の電子認証事業、そしてESGや人的資本への取り組みにあります。

まず、当社のグローバル展開の強みです。

GMOグローバルサインは、世界に5社しかないグローバルな電子認証局の1つとして、日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国などの主要市場で高いシェアを誇っています。

また、成長余力が大きい新興市場であるブラジル、インド、メキシコなどにも積極的に進出しており、売上におけるグローバル比率は約4割で、国内外でしっかりと成功を収めているユニークな企業です。

次に、電子認証・印鑑事業の急成長です。

当社は国内において、「GMOサイン」をはじめとする電子契約サービスやSSLサーバー証明書で、シェアNo.1を誇っています。

今後も行政手続きやビジネスのデジタル化が進むにつれて、さらに成長が見込まれます。

加えて、当社はESGへの取り組み、人的資本の取り組みに対して8年前から積極的に行ってきました。

社会的な貢献として、紙データの電子化など企業や行政のデジタル化を通じて、業務効率を高め、社会全体のデジタル化を推進しています。

さらに、人的資本への投資にも早くから注力しており、社員一人ひとりが成長できる環境を整えることで、組織全体の競争力を向上させてきました。

特に、社員が自主的に挑戦し、成長する姿勢を奨励する企業文化が根付いており、社員全員が挑戦するマインドを持ちながら、日々新しい目標に向けて行動しています。

これが組織全体の競争力の強化に繋がり、企業としての成長力を支えています。

投資家の皆様へメッセージ

当社は「あって便利な会社」ではなく、「なくてはならない会社」になることを目指しています。

私たちが提供する電子認証やセキュリティのサービスは、デジタル時代のインフラとして不可欠な存在であり、今後も需要は拡大していく見通しです。

特にBtoB事業を中心に、グローバルな視点で事業を展開し、世界中のお客様に信頼されるサービスを提供していきます。

私たちは、これからも成長し続ける企業として、皆様の期待に応えていきたいと考えています。

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社

本社所在地:〒150-8512 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー10階

設立:1993年12月14日

資本金:9億1,690万円(2023年12月31日時点)

上場市場:東証プライム市場(2005年12月16日上場)

証券コード:3788

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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