【2449】株式会社プラップジャパン 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年10月23日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社プラップジャパンは創業以来、PRの根本である“誠実さ”と向き合い続け、PR起点の発想で“あしたの常識をつくる。”会社です。

代表取締役社長の鈴木 勇夫氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社プラップジャパンを一言で言うと

PR発想で「あしたの常識をつくる。」会社です。

プラップジャパンの沿革

株式会社プラップジャパン代表取締役社長 鈴木 勇夫氏

創業の経緯

当社は1970年に創業し、50年以上の歴史があります。

当時、日本ではPRの認知度が非常に低く、PR業務といえば大手広告代理店が広告の一部として手掛ける程度でした。

1960年頃から本格的なPR会社が日本で設立され始めました。

この流れの中で、創業者である矢島はPR会社での経験を経て独立し、「プラップジャパン」を設立しました。

その後、当社は日本のPR業界の草分け的な存在として業界を牽引してきました。

創業当初、PR会社自体の認知が低かったこともあり、矢島には「PRの役割を正しく世間に伝えたい」という強い想いがありました。

PRと広告の役割は異なります。

広告は「バイミー(Buy Me)=買ってください」と直接的に消費者にメッセージを伝える一方、PRは「ラブミー(Love Me)=好きになってください」というアプローチ方法です。

PR会社は企業やブランドに対する好感度を高め、結果として購買活動につなげる役割を担っています。インターネットやSNSが普及した現代とは異なり、企業自らが情報発信することが難しかった時代です。

メディアという第三者に取り上げてもらうことによって、企業や商品の魅力を伝えるという企業の広報・PR活動をサポートすることがPR会社の主な仕事でした。

PR会社としての地位を確立

創業当初は、クライアントの広報・PR業務をアウトソーシングする形でスタートし、広報誌の編集やPRイベントの企画・制作を手掛けていました。

創業当時から今でもお付き合いさせていただいている百貨店様では、より幅広い支援をしてきました。

お付き合いが始まった当時、郊外型の百貨店は珍しく、銀座や日本橋といった都市型の百貨店とどう差別化をして来客を増やしていくかが課題でした。

そこで当社は、行政と連携して地域密着型のイベントを企画したり、カルチャースクールを立ち上げたりなど、まさに「好きになってもらう」施策をサポートしてきました。

また、当時は続々と新しい食文化や技術などが日本に上陸したり誕生したりしていました。日本ではまだ馴染みのないものをいかにポジティブに受け止め根付かせるかという取り組みを支援してきました。

攻めと守りの広報

当社はPR会社として業界を牽引していく中で、”攻めの広報”と”守りの広報”の両輪で、クライアントの広報・PR活動をサポートしてきました。

まず、攻めの広報とは、企業の認知度を高めたり、商品の購買促進や採用広報をしたりなど、積極的にポジティブな情報を発信することを指します。

一方、守りの広報とは、不祥事が発生した際に、真実を伝えつつ、しっかりと改善方針をメディアを通じて社会に示すことで、企業とステークホルダーの信頼関係を回復し、企業ブランドを守る広報活動です。

このように、攻めと守りを活かした支援で自治体、食品、不動産、IT、ヘルスケアなど幅広い業種の企業・団体を支援してきました。

海外・デジタルへの対応

現在、国内企業と外資系企業の割合はおよそ半分で、幅広い業種・規模のクライアントに恵まれています。

当社が海外進出を果たしたのは1997年で、まずは中国に進出しました。

以来20年以上にわたり、日本企業の中国進出をサポートしてきました。

近年では、シンガポールやベトナムなど東南アジアでの事業拡大も進めています。

そして、この事業基盤を活用して、日本企業の海外進出支援だけでなく、アジア企業の日本進出支援や外国人観光客向けのインバウンド対応も行なっています。

また、ここ10年ほどはデジタル領域への対応にも注力しており、SNSやデジタルメディアの知見を深めてきました。

従来の新聞、雑誌、テレビ、ラジオといったメディアに加えてデジタル領域にも精通し、総合PR会社としてクライアントを幅広くサポートしています。

グループ会社は2018年以降、それまでの倍となる12社に拡大しました。

デジタル系の専門会社やクリエイティブやイベントに強みを持つ会社など、より専門性の高い企業を加えることで、クライアントの多様なニーズに対応できる体制を整えています。

プラップジャパンの事業概要と特徴

概要

当社は総合PR会社として、企業や団体のコミュニケーション活動全般を支援するコミュニケーションコンサルティング・サービスを提供しています。

具体的には、PR戦略の立案から実行、PRコンテンツの制作・デザイン、さらには守りの広報として危機管理広報の支援を担っています。

さらに、グローバルにおけるPR活動のサポートや、PR活動によって生じた効果検証、そしてWEBマーケティングの支援も対応しています。

株式会社プラップジャパン 2027年8月期 中期経営計画 より引用

事業における優位性

PR発想での提案

PRとは、 Public Relations(パブリックリレーションズ)の略で、すなわち企業が社会と良好な関係を築くため、企業と社会の相互に利益をもたらす考えや行動をコミュニケーションしていく活動です。

そしてPRを語る上で、“パーセプションチェンジ(認識変容)”と“ビヘイビアチェンジ(行動変容)”というキーワードがあります。

当社のPR活動は情報発信が目的ではなく、ターゲットの認識を変えるような情報発信をすることで行動を変え、その先に社会の常識もアップデートしていくという戦略を大事にしています。

当社は黒子の立場でありながら、PR活動を通じてクライアントのビジネスに貢献すると同時に、社会にも良い影響を与える存在でありたいと考えています。

50年超の業歴、300名を超えるコンサルタント、800社を超えるクライアント

当社には50年以上にわたる経験から培った豊富なノウハウとメソッドがあります。

業界ごとに好まれるコミュニケーションのスタイルや表現方法、ルールが異なるため、そのトンマナ(トーン&マナー)を熟知していることが大きな強みです。

加えて、外資系企業独特の進め方や課題に対応できる点にも長年のノウハウが生かされています。

また、300名を超えるコンサルタントがそれぞれに専門知識を持っていることも強みです。

たとえば、特定の業界やメディアに強いメンバーや、サステナビリティやESGなどトレンド領域に造詣が深いメンバーなどが揃っており、クライアントごとの課題に合わせた多様な解決策の提供が可能です。

国内で300名規模のコンサルタントを有しているPR会社は多くありません。

さらに、当社は800社を超える国内外のクライアントと取引があり、クライアントからの紹介や直接指名による案件も多くいただいています。

広報・PR活動における”攻め”と”守り”の両面でサポートしていることが、多様なクライアントとの取引を実現しています。

デジタル領域ではSNSやVTuberを活用した情報発信など、サービス領域を拡充しているため、クライアントの幅広いニーズに対応可能です。

近年は、PRを起点にマーケティングや経営コンサルティング領域にサービスを広げ、新たな価値提供に挑戦しています。

また、当社のアセットは海外展開にも活かされており、日本のノウハウを海外へ、海外のノウハウを日本に取り入れる形で、グローバルな視点でのサービスを提供しています。

株式会社プラップジャパン 2027年8月期 中期経営計画 より引用

一気通貫型のサポート体制

当社はワンストップのチーム体制で戦略・企画・メディアリレーションを実行しています。

大手広告代理店のようにクリエイティブ、営業、制作と分業する会社もありますが、当社では担当チームがクライアントと密接に情報交換を行い、コミュニケーションの方向性策定からメディア対応まで一気通貫で進めています。

一気通貫の強みとしては、たとえばメディア側から「花粉の季節に特集を組む予定」という情報を得たら、すぐにクライアントにフィードバックすることが可能です。

仮にクライアントが花粉に関連する商品を持っていた場合、「この特集にマッチする商品のご紹介はいかがですか」という提案が可能です。

このように、常にメディアの声を聞いているコンサルタントがクライアントをサポートしていることで、リアルタイムな情報共有と迅速な企画立案を実現しています。

株式会社プラップジャパン 2027年8月期 中期経営計画 より引用

プラップジャパンの成長戦略

5つの成長戦略

当社の成長戦略において、基本方針として5つの柱があります。

これから、その5つの方針について詳しくお話しさせていただきます。

株式会社プラップジャパン 2027年8月期 中期経営計画 より引用

構造改革と人的資本経営の推進

当社は50年にわたり事業を展開してきましたが、今後も業績を伸ばしていくためには構造改革が必要だと考えています。

今後、ビジネスモデルを労働集約型のピラミッド型の支援モデルからサイクル型のコンサルティング・実行支援へと転換させていきます。

そして、データやAIを活用することで、経験値に頼ることなく若手社員でも質の高いコンサルティングを提供できるような新たな支援の方法が可能になると考えています。

株式会社プラップジャパン 2027年8月期 中期経営計画 より引用

また、構造改革を行う上で人的資本経営の推進も欠かせません。

業界最高水準の働きがいを感じられ、個人が成長できる環境の整備を進めています。

1時間単位での有給取得や出社と在宅勤務を組み合わせたハイブリッド勤務を採用するといった柔軟な働き方も推進しており、副業やフレックス勤務の導入も検討しています。

幅広い業務に一気通貫で携わるため、個人にとっては大変な面もありますが、専門性に加えて多面的なスキルを身につけることができると考えています。

株式会社プラップジャパン 2027年8月期 中期経営計画 より引用

海外展開

今後も、高成長のアジアマーケットに重点を置き、広報・PRにとどまらないコミュニケーションサービスを提供していきます。

中国、シンガポールに続きベトナム、タイなど東南アジア各国へ拠点を広げ、既存の海外エージェンシーとの提携を強化しつつ、M&Aを通じて海外拠点とサービスの拡充を図ります。

また、インバウンド・アウトバウンド施策を強化するとともに、海外リリースの配信などの既存サービスも向上させます。

株式会社プラップジャパン 2027年8月期 中期経営計画 より引用

広報・PR、マーケティング、経営の3領域へ展開

広報・PR領域は1,400億円規模とされていますが、当社はPRの価値と可能性を信じ、同領域をさらに拡張していくとともに、7兆円規模とされているマーケティング領域、および1.8兆円規模とされている経営領域へのシェア拡大を目指しています。

株式会社プラップジャパン 2027年8月期 中期経営計画 より引用

マーケティング領域では既にその業界でサービスを提供している競合がいるため、当社の強みであるPRを起点とした差別化をしたいと考えています。

また、経営領域ではクライシスマネジメントや採用、IR支援などに対してもPRの発想を活かし、新たな価値を提供できると期待しています。

株式会社プラップジャパン 2027年8月期 中期経営計画 より引用

AIやデジタルデータの活用

当社のこれまでのデータを連携することで、パブリシティが商品の売上にどのような影響を与えるか、あるいはどのメディア露出が採用活動に良い影響をもたらすのかを分析するなど、デジタルデータを活用したサービス提供を進めたいと考えています。

グループ会社では、デジタルデータを活用することで従来の広報・PR業務を効率化する「PR Automation」と呼ばれるクラウドツールの開発および販売を進めています。

AI活用については、まずは自社の生産性の向上と業務効率化を目指し、ツールの開発等を行なっています。

ただ、プレスリリース作成におけるAI活用など、クライアントにご提供できる要素については、将来的に外販する可能性も秘めています。

AIはあくまで補助的なツールということを念頭に、これまでのナレッジやメソッドのデータを活用し、生産性向上と新たなサービス開発に取り組んでいます。

株式会社プラップジャパン 2027年8月期 中期経営計画 より引用

戦略的M&Aの推進

今後、当社の事業をさらに加速させていくためにもM&Aによる事業拡大に注力する方針です。

M&Aの原資としては現預金40億円及び、必要に応じて借入も検討し、複数の市場に参入するため、戦略的なM&Aを行います。

PMI(買収後の統合)の方針については、まずは価値観の共有が重要だと考えています。

単に買収して終わりではなく、当社グループに加わることで、互いにシナジーを生み出せるかどうかがポイントです。

グループインした後も互いに成長していける企業を対象として、各社の文化を尊重しながらシナジーを生み出すことを重視しています。

また、M&A先の人材も非常に重要な資産だと考えています。

専門性の高い方にグループに加わっていただくことで、これまでとは違ったアプローチでクライアントに新たな価値を提供できると期待しています。

注目していただきたいポイント

当社が特に注目していただきたいのは、経営領域においてもPR発想が重要であるということです。

創業者の矢島が設立時に「PRの大切さや広告との違いを多くの方に知ってもらいたい」と願っていましたが、やはりPRには経営やマーケティングで活用できる要素が数多くあります。

経営者層や人事・採用担当者、経営企画部門の方々にPRの重要性を理解していただくことで、当社はより成長できると考えています。

たとえば、IR活動や採用広報でも企業の魅力や文化を伝えることは大切で、PRの考え方は大きな役割を果たしていくはずです。

また、日本では「PR=広告やプロモーション」というイメージが根強く、SNSで「#PR」と表示されてしまうことで広告と誤解されがちですが、PR活動の本質は広告やプロモーションとは異なります。

ぜひ、PRのメリットや役割をより多くの方に知っていただきたいです。

デジタルマーケティングでは、デジタル広告は、コンバージョンやウェブサイトのリーチ数としてその効果が可視化されやすいのが特徴ですが、PRの場合、こうした効果が可視化しにくい点が難しさのひとつです。

ただ、今後はウェブサイトの訪問者数とパブリシティのデータを関連づけ、PR活動と成果の関係を示せるように“見える化”することで、当社の価値が示せると期待しています。

PRにフォーカスし、その価値を追求してきた当社のこれからの事業展開にご注目ください。

投資家の皆様へメッセージ

当社は2005年の上場以来、19期連続で増配と安定配当を続けてまいりました。

今後の配当方針として累進配当を導入し、これまで以上に安定的な配当を維持していきたいと考えています。

たとえば、2020年のコロナ禍で業績がやや落ち込んだ際も、お約束していた40円の配当を維持することができました。

株式会社プラップジャパン 2027年8月期 中期経営計画 より引用

株主の皆様との約束を守り続ける姿勢は、当社のバリューのひとつである“誠実さ”を表していると自負しています。

今後は累進配当という新たな方針で、株主の皆様へのコミットメントを大切にしながら、しっかりと利益を還元していきたいと思っています。

株式会社プラップジャパン

本社所在地:〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-2 ミッドタウン・イースト8階

設立:1970年9月9日

資本金:4億7,078万円(2024年10月アクセス時点)

上場市場:東証スタンダード市場(2005年7月8日上場)

証券コード:2449

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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