※本コラムは2024年10月20日に実施したIRインタビューをもとにしております。
大栄環境株式会社はさまざまな創造や改革、そして挑戦を続け、産業廃棄物業界に新しい価値を提供していきます。
代表取締役社長の金子 文雄氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
大栄環境株式会社を一言で言うと
「資源に変えるチカラ、自然に還すチカラ。」でサステナブルな社会を実現する会社です。
大栄環境の沿革
創業の経緯
当社は1979年に大阪府和泉市で設立されました。
私も当社の発起人の一人として設立に携わりました。
時代背景として、1970年に廃棄物処理法が制定され、廃棄物が産業廃棄物と一般廃棄物に分けられるようになったことで、この業界も大きく変わりました。
産業廃棄物は、民間排出企業が最終処分までを責任を持って行うことが求められ、その処理を受託する側において特に最終処分場の運営は非常にハードルの高いものでした。
高度経済成長期には全国各地でさまざまな廃棄物処理が行われていましたが、産業廃棄物の最終処分場を建設する際には地域からの反対も多く、私たちも大阪府和泉市に処分場を計画した際には、地域住民や市を挙げての反対に直面しました。
「許可はおりないだろう」と言われていた中、大阪府には管理型最終処分場が一つもなかったこともあり、行政も産業廃棄物処理の重要性を認識していただいたことで、なんとか許可を得ることができました。
そして、当社設立の翌年1980年に管理型最終処分場を開設することができました。
その後、住民の方々から許可取り消しを求める訴訟も起こされたこともありましたが、私たちの適切な対応により最終的にはご理解をいただき、今日まで良好な関係を築いています。
阪神・淡路大震災への対応
最終処分場には限りがあるため、当社では処分場への負担をできるだけ減らすべく、早急にリサイクル事業へと舵を切りました。
しかし、リサイクル事業は手間をかけるほどコストがかさむため、経営としては厳しい状態が続き、崖っぷちに立たされることもありました。
そのような中、1995年に阪神・淡路大震災が発生しました。
未曾有の災害により大量の廃棄物が発生し、自治体からの要請でその処理に当たらせていただいたことが、当社にとって大きな転機となりました。
その後、2000年には国による「循環型社会推進基本法」が制定され、その追い風もあり、当社のリサイクル事業は好調でした。
ただ、依然として厳しい経営状態は続いていました。
三重エネルギープラザの開設と上場
厳しい経営状態の中、2013年9月に創業以来最大の投資を行った三重エネルギープラザが開設されました。
三重エネルギープラザは大栄環境グループのリサイクルセンターで最も多くの施設を有し、ジオメルトや焙焼炉、トランスヒートコンテナシステムなど独自の方法で資源循環に取り組む総合リサイクルセンターです。
この三重エネルギープラザの稼働により、2014年から2019年までの間、年率10%を超える成長を遂げることができました。
その間、当社の強固な事業基盤を活用して、多くの救済型のM&Aを行いました。
民事再生などで法的整理された企業に対し、私たちがスポンサーとして支援を申し出たケースや、金融機関から「経営困難な状況なので支援してほしい」と相談を受けて、グループに迎え入れたケースがほとんどです。
そして2019年には子会社が32社、従業員も2,000人を超えたため、子会社管理やガバナンス体制の強化が必要な状況となりました。
そこで、上場基準に沿った仕組みを整えることが最も確実だと判断し、2019年から上場準備を開始し、2022年12月に上場を果たしました。
大栄環境の事業概要と特徴
概要
当社は廃棄物の収集運搬から最終処分までの一貫したサービスを提供し、廃棄物を資源やエネルギーに変換することで、持続可能な循環型社会を目指しています。
廃棄物処理・資源循環事業を中核に、土壌浄化事業やエネルギー創造事業、森林保全事業など、より良い環境づくりを目指してさまざまな事業を展開しています。
事業における優位性
最終処分場の保有とワンストップサービス体制
私たちは創業時から最終処分場の運営を行ってきました。
現在、当社は全国で7か所に最終処分場を持っており、業界でも圧倒的な処分能力を誇っています。
最終処分場の開設のハードルは非常に高く、当初は地域からの反対運動に苦労しましたが、当社の真摯な取り組みもあり、徐々に支援していただけるようになりました。
当社が新たに他の地域で処分場の計画を立てる際に、創業の地である和泉市の住民や行政に「この会社は信頼できるか」とその自治体が確認に訪れますが、和泉市からのお墨付きがあるため、スムーズに話が進んでいます。
また、最終処分場だけでなく、大規模な焼却施設などの熱処理施設を含む中間処理施設も運営しており、これが他社との差別化につながっています。
他の中間処理業者や運搬業者は、最終処分や焼却施設を他社に依存せざるを得ない状況にあるため、非常に経営環境は厳しく、行き詰まってしまいます。
そうした会社が当社グループに加わることで、最終処分場や焼却施設を相乗効果的に活用することで黒字化への転換が可能になり、当社のワンストップ体制をさらに強化しています。
キャパシティ・取引自治体数
当社最大の処理施設である三重エネルギープラザは産業廃棄物の処理だけでなく、一般廃棄物の処理もできる許可を得ています。
現在33か所あるリサイクル・処分施設の全許可能力のうち、約70%で一般廃棄物も扱う許可を有しています。
そのおかげで取引数は年々増加しており、現在の取引先は467自治体にまで拡大しています。
この467自治体との取引には、たとえばペットボトルの運搬やプラスチックの梱包といった限定的な業務もあれば、最終処分まで請け負うケースもあります。
特に取引規模の大きな自治体では、その市町村から出る家庭ごみやリサイクル品の処分に至るまで、全て受託しているケースもあります。
災害支援協定数
現在、災害時支援協定を183の自治体と結んでおり、これまでの災害・緊急時の対応実績があるため、多くのご依頼をいただいています。
先ほどお話ししたように、阪神・淡路大震災での対応がきっかけとなり、一気に信頼が高まりました。
それ以降も毎年のように自然災害が発生していますが、地域の業者だけでは対応が難しいケースも多く、政府が対応せざるを得ないような大規模災害の際には、当社にも要請をいただき、迅速に対応できるような体制を整えています。
民間企業と自治体が災害時支援協定を結ぶのは珍しいことですが、それでも当社との協定数が増えているのは、これまでの実績が評価されているからだと思います。
大栄環境の成長戦略
大栄環境を取り巻く市場環境
各業界では、企業の環境意識の向上により、産業廃棄物をできるだけ減らそうという動きが進んでいます。
そのため、産業廃棄物の排出量は少しずつ減少していくと考えています。
ただし、産業廃棄物を扱う業者は現在全国に約12万社存在しており、そのうち約11万〜12万社は収集運搬業者や中間処理業者です。
これらの業者はこれまでプラスチックや雑品類の処理について中国への輸出に頼って事業を展開していましたが、近年、中国がプラスチックなどの輸入を禁止したため、国内の最終処分業者や大型焼却施設を持つ当社のような業者でなければ利益を確保することが難しい状況となっております。
その結果、確実に処理能力を持つ企業への集約化が進んでおり、当社もM&Aによってグループ会社を増やしてきました。
上場後も数多くのM&A案件をいただいており、その中から精査してグループ化を進めています。
当社の産業廃棄物処理における市場シェアはまだ1%にも満たない状況ですが、このシェアを2%、3%と拡大していくことで、産業廃棄物の市場自体は縮小傾向ですが、M&Aなどによる事業拡大を通じて取り扱い量の増加を目指しています。
持続可能な成長に向けた取組み
持続可能な成長に向けて、施設の増強や新設に取り組んでいます。
まず、最終処分場に大量に持ち込まれるプラスチックなどの可燃物をエネルギー回収するための焼却施設として、三木バイオマスファクトリーを2023年6月から稼働し始めました。
また、有機性廃棄物からメタンを回収し発電する伊賀メタン発酵施設、食品廃棄物から堆肥を製造する伊賀堆肥化施設の稼働を2022年の秋から開始しており、付加価値の高いリサイクル事業に取り組んでいます。
また、当社では2030年を目標に、プラスチック廃棄物を処分せず、資源化することで、埋め立てを行わないという方針を掲げています。
この目標に向け、焼却・熱処理の能力を強化しており、2024年3月末には2,412トンの処理能力を、2030年3月期末には4,000トンにまで引き上げる計画です。
2024年1月に設置許可を取得した西宮リサイクルセンターの西宮エネルギープラザもその具体的施策の1つとなります。
そして、最終処分場や焼却等熱処理施設のような大型施設は、廃棄物処理に欠かせない重要な施設であるため、しっかりと戦略的に運営していきたいと考えています。
カーボンニュートラルに向けた取組み
先ほどもお話ししましたが、プラスチックが国内で溢れかえっているという問題の背景には、中国の輸入禁止が影響しています。
2022年4月には「プラスチック資源循環促進法」が施行され、民間企業や自治体に対し、具体的にリサイクルを促進するように、義務付けられました。
これを受けて、当社も民間企業同士での「再資源化事業計画」認定取得を7社と、認定取得外でも認定同様のマテリアルリサイクルを37社と進めるとともに、自治体が進める「再商品化計画」においても5自治体の計画に再商品化実施者として参画し、マテリアルリサイクルを行っております。
そして、当社のリサイクル事業は廃棄物を回収して再生・再利用、処理・処分などを行う静脈事業に限らず、製品を生み出す製造業などの動脈事業とも協力して取り組んでいます。
公民連携事業
今後の成長事業の柱となるのは、公民連携事業です。
これまで、家庭から排出される廃棄物は1970年の廃棄物処理法に基づき、自治体が処理を担当してきましたが、過疎化や財政難により地方自治体だけでの運営は困難になっています。
効率が悪い施設には国からの補助金も出ないため、当社は地方自治体と協力し、当社の資金で施設を建設する形で新たな解決方法を提案しています。
この際、自治体の廃棄物だけでなく地域の産業廃棄物や他の自治体の廃棄物も一体的に処理することで、自治体との協定を結び、許認可申請を進めています。
これは従来の廃棄物処理の概念を変える画期的な取り組みだと考えています。
たとえば、ある自治体の家庭からの廃棄物が1日80トンあるとしても、私たちは400トンの処理能力を持つ焼却施設を建設することで、他の自治体の廃棄物や産業廃棄物も受け入れ、一体的に処理することができます。
このように、自治体と当社がともに利益を享受できるWin-Winの関係を構築していきたいと考えています。
当社が進出している熊本では、半導体工場の建設に伴い産業廃棄物の排出が増加していますので、こうした新たな需要にも対応することができると期待しています。
M&Aの計画
産業廃棄物や一般廃棄物における最大の市場は関東エリアです。
当社は関西・中部エリアを中心に事業を展開しており、関東エリアでのシェアはまだまだ低い状況です。
関東エリアでのシェアを高めるべく、当社はM&Aを計画的に進めており、2020年には東京駅近郊に大型の中間処理施設を保有する株式会社共同土木のM&Aを行いました。
今期、関東エリアで株式会社共同土木とのシナジー効果が発揮できると考え、栄和リサイクル株式会社、株式会社浦安清運、株式会社アイアの3社のM&Aを実行いたしました。
今後も関東エリアを中心に事業エリアの拡大と顧客基盤の確保を目的に、さらなるM&Aを実施していきたいと考えています。
また、公民連携の観点からも、地方都市が産業廃棄物処理に課題を抱えている状況を鑑み、地方の行政と連携する事業者とのアライアンスも含め、積極的にM&Aを行っていきたいと思います。
注目していただきたいポイント
目先の利益も重要ですが、当社の設備投資計画をご覧いただければわかるように、長期的な成長を目指し、思い切った投資を進めています。
これは、廃棄物処理の在り方を変え、従来は不可能と思われていた課題に果敢に挑戦し、成長を実現していくための投資です。
また、最終処分場がなければ、ワンストップでの廃棄物処理を完結することはできません。
どのように最終処分場を活用するのかも考慮した上で、将来にわたって最終処分場の確保を続けていきます。
そして、最終処分場の付加価値を高めるため、前段階でのエネルギー回収施設や大型焼却施設も増強し、戦略的な投資を行っていく方針です。
長期的な視野で見守っていただき、安定した事業成長にご注目いただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
当社には大きな可能性が秘められていると確信していますので、長期的な視点で私たちの事業を見守っていただきたいと願っています。
先ほどもお話しした公共連携事業は、行政が行っている一般廃棄物の処理を民間に切り替えていくことにより、新たな市場が広がり、さらなる成長の余地があると考えています。
ぜひ、当社の目指すカーボンニュートラルな社会の実現に期待していただき、その未来に向けて温かいご支援をいただけると嬉しいです。
大栄環境株式会社
本社所在地:〒594-1144 ⼤阪府和泉市テクノステージ⼆丁⽬3番28号
設立:1979年10月17日
資本金:5,907百万円(2024年10月アクセス時点)
上場市場:東証プライム市場(2022年12月14日上場)
証券コード:9336