※本コラムは2024年10月31日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社ロゴスホールディングスは厳しい自然にも負けない高品質かつ高性能な家を、手の届く適正価格でお届けしている、デジタルマーケティングとDXオペレーションを活用した注文住宅の会社です。
代表取締役社長の池田 雄一氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社ロゴスホールディングスを一言で言うと
デジタルマーケティングとDXオペレーションを活用した注文住宅の会社です。
ロゴスホールディングスの沿革
創業の経緯
現在、当社はホールディングス体制で運営していますが、もともとの母体は、今から21年前(2003年)に私が創業した「ロゴスホーム」という注文住宅会社です。
私は創業以前、ハウスメーカーで技術職として働いていました。
しかし、大手のハウスメーカーが提供するような画一的で高価な住宅ではなく、地元の方々が手の届く適正価格で、北海道の厳しい自然環境でも快適に暮らせる家を提供したいと考え、北海道の十勝地方で当社をスタートしました。
そして、住宅を提供するのであれば長期間にわたりメンテナンスを続ける必要があるため、私の代で終わるのではなく、次世代に引き継いで会社を永続させたいと思い、上場を目指しました。
ファンドの参画と大規模なM&A
創業後は順調に業績を伸ばし、北海道から東北地方にも進出していきました。
そこから、10年ほど前に本格的に上場の準備を始め、証券会社や監査法人を入れて取り組んだものの、利益や内部統制などの面で上場に必要な体制が整っておらず、うまくいきませんでした。
その後、ファンドの支援を受けることを決断し、現在も支援いただいている独立系ファンド「エンデバー・ユナイテッド」に参画してもらいました。
非常に優秀なメンバーに参画していただいたおかげで、内部の管理体制も整備され、利益がなかなか残らなかった状態から、利益を安定して確保できるような体制へと転換することができました。
その後、札幌で実績も知名度も高い同業他社の「豊栄建設」や宇都宮で注文住宅事業だけでなくリノベーション事業を手がける「GALLERY HOUSE」をM&Aで取得しました。
このようにしてM&Aによる売上規模の拡大と経営体制が整ったことで、2024年6月に東証グロース市場に上場することができました。
ロゴスホールディングスの事業概要と特徴
概要
当社は住宅・不動産に関連する事業を北海道・東北・北関東エリアで展開しています。
各事業会社がそれぞれ特徴的な商品を持ち、注文住宅の設計から建築、販売までを一貫して担います。
また、当社には注文住宅・分譲住宅・宅地販売など様々な顧客ニーズに対応できる多様な商品ラインナップがあります。
展開エリアは、創業時より地盤を築いてきた北海道、最初に進出してから約8年が経つ東北地方、近年注力している北関東エリアで、グループ全体では29の営業拠点があります。
そして、当社がターゲットとしている顧客層は、年収400万円〜600万円の世帯です。
このターゲット層に合わせて、北海道の厳しい環境に耐えうる住宅を手に届きやすい価格帯で提供しています。
事業における優位性
商品開発力
当社はもともと北海道という、冬には-25℃、夏には30〜35℃と非常に厳しい気候環境の中で創業したこともあり、性能面において、どんな厳しい環境でも快適に暮らせる住宅づくりを心がけています。
その中でも特徴的なのは「MCB工法」と呼ばれている独自の建築スタイルです。
このMCB工法は、工場でつくって(Manufacturing)、トラックで運んで(Carry)、現場で建てる(Build)という製造〜輸送〜建造という建築の流れの頭文字を略したものです。
通常、住宅を建築する際には柱や屋根などの資材を現場に運んで組み立てますが、MCB工法では、工場で箱状のユニットをあらかじめ作成した上で、現場に運んで積み木のように組み立てます。
屋内で作業するため、現場に熟練した作業員や職人がいなくても問題なく進められ、快適な環境での作業により作業効率が大幅に向上します。
さらに、現場の施工コストを約半分まで削減でき、職人不足が深刻な業界の課題解決にもつながる方法だと考えています。
鉄骨構造で同様の手法を採用している会社は他にもありますが、木造の場合は箱の運搬や積み下ろし時に木がねじれる問題などがあるため、簡単に実現できる工法ではありません。
当社は木造ユニットを吊り上げたり、運搬したりする際にねじれを防ぐ特殊な技術を開発しており、その技術については特許を出願しています。
日本でこのMCB工法を木造住宅に適用しているのは当社だけで、この技術力は他社との差別化につながっています。
デジタルマーケティング
当社はデジタルマーケティングに特化した集客を得意としています。
一般的なハウスメーカーは総合展示場に大きなモデルハウスを建てて、そこに多くの人を集めることで、顧客の獲得につなげています。
しかし、このマーケティング手法は非効率で、莫大な広告宣伝費や維持費が発生しています。
テレビCMやキャラクターショーなどで人を呼び込む広告宣伝費は数百万円〜数千万円と非常に高額で、モデルハウスの建築にも1棟あたり1〜2億円かかり、最近では2億円以上のものもあります。
これくらいの投資をしないとモデルハウスは見栄えが悪いのですが、100人来場してもそこから家を建てるのは1〜2人程度です。
つまり、1〜2人の顧客のために、他の99人分の多大な経費を負担するという構造になっているため、結果として住宅の価格も高価になっているのです。
一方、当社は総合展示場には一切出展せず、SNSやウェブなどのデジタルチャネルを活用して、確度の高い顧客を自社のショールームに直接呼び込んでいます。
このように、当社はこれらのコストを大幅に削減することで手頃な価格で提供できています。
顧客層としても平均年齢は30代前半と比較的若い層が多く、デジタルマーケティングとの相性も非常に高いため、効果的に集客ができています。
DXによる効率的なオペレーション
当社ではオペレーションを可能な限りDX化し、販管費を大幅に削減することができています。
当社が創業した地、北海道は広大で、当社の一番端の店舗から反対側の端の店舗まで車を走らせると8時間ほどかかります。
そのため、この移動時間をいかに削減するかが非常に重要です。
また、住宅を建てるときには多くの人が関わるため、「言った・言わない」「聞いた・聞いていない」といった伝達ミスが生じやすいことが課題として挙げられます。
このような課題を克服するために、当社ではこれをすべてデジタル化し、オペレーションをデジタル上で一元管理しています。
たとえば、福島の家について打ち合わせが必要な場合は、札幌にいる設計士や仙台にいるインテリアコーディネーターがリモートでつながって打ち合わせを進めるという形でデジタルを活用しています。
こうしたノウハウを蓄積できたのは、広大なエリアをカバーする必要のある北海道で創業したからこそであり、人の動きを最小限に抑え、人の手に頼らず効率的なオペレーションを実現できています。
ロゴスホールディングスの成長戦略
成長戦略のイメージ
当社は2030年に年間5,000棟の住宅供給を目指しています。
現在のハウスメーカーの方針としては、2つに分かれていると思います。
ひとつは棟数を増やさず、一棟あたりの粗利を高めて利益を確保する方針、もうひとつは、一棟あたりの粗利を抑えつつ、棟数を増やしていく方針です。
多くのハウスメーカーが価格を上げ、粗利を高める方向にシフトしている中、当社はあくまでも棟数にこだわっています。
住宅業界では着工件数が最も重要な指標として扱われますが、当社もその数にこだわり、多くの方に適正価格で高品質な住宅を提供することが目標です。
また、当社の一棟あたりの粗利は他の上場ハウスメーカーと比べて7%ほど低く、上場ハウスメーカーの平均粗利が約25%であるのに対し、当社は約18%です。
ただ、デジタルマーケティングやDXによる効率的なオペレーションで販管費を抑えられている当社の経常利益はハウスメーカーよりも同等かそれ以上です。
住宅は一つとして同じものがないため直接の比較は難しいですが、もし同じ条件であれば、当社の方が安く提供できる計算になります。
そのため、一般の方が住宅を購入する際、粗利18%の家と粗利25%の家があれば、きっと18%の家を選びたくなるはずです。
このような価格優位性を活かして、棟数にこだわりつつ、多くの方々に安価で質の高い住宅を提供していきたいと思います。
出店拡大
当社が出店可能性のある市町村数は、779市町村と幅広くありますが、その中でも特に郊外を中心に検討しています。
一般的なハウスメーカーは、新たなエリアに進出する際には何億円もかけて総合展示場を作る必要がありますが、当社はリモートで完結することが多いため、コンビニの跡地など小規模な物件を活用した出店が可能です。
小さな店舗なので、出店費用や管理費用を抑えることができ、人口の少ない地域にも進出することができます。
しかし、当社の得意とする「MCB工法」では、工場から建築したユニットを運ぶ際、ある程度の土地や道幅が必要であるため、都心部への出店ではなく郊外への出店が基本的な戦略となると考えています。
たとえば、関東であれば東京ではなく北関東の住宅地など、地方の広さを生かせるエリアをイメージしていただければと思います。
また、車の試乗や服の試着のように、「試住」ができる宿泊施設を北海道の札幌市にオープンしました。
実際に家に泊まることで、家の性能や快適さを直接体感していただき、その上で契約をご検討いただけるような取り組みを行っています。
おかげさまで成約率は大幅に向上しており、当社は大手のハウスメーカーに比べ、ネームバリューや信用力の面では劣りますが、実際に宿泊していただくことで快適さを実感いただけたのが大きかったのだと自負しています。
新規事業の拡大
住宅市場では中古住宅が現在非常に多くなっており、中古住宅を買い取り、リノベーションして再販するというビジネスも新たに手がけています。
また、障がい者向けのグループホームの建築も手がけています。
これらの事業は、もともと子会社の「GALLERY HOUSE」が行っていた事業ですが、このノウハウを活かして北海道でも事業をスタートさせており、成長が期待できる分野だと考え、新たに投資を行っています。
MCB工法〜モジュール住宅
先ほどもお話ししましたが、MCB工法とは住宅の壁や床を箱型(モジュール)に組み上げて、トラックで運び、基礎の上にクレーンで設置する工法です。
このMCB工法は既に特許出願中の技術ですが、他社にも活用していただくことで、労働人口が減少する日本で大きく伸ばすことができると考えています。
M&A
現状、地方の工務店は経営が非常に難しく、後継者不足に悩まれています。
社会環境が急速に変化する中で、こうした課題を抱える工務店には、当社グループに参画いただき、経営を支援しながら後継者の育成も行っていきたいと考えています。
当社のMCB工法を活用し、事業を再生・拡大ができる工務店も多くあると思います。
まずは、各地域でトップシェアを持つ、またはその可能性のある工務店をグループに加え、一緒に成長していきたいと考えています。
注目していただきたいポイント
当社はデジタルマーケティングとDXによって、販管費を他社よりも大幅に削減しているため、高品質、高性能な住宅を手頃な価格で提供することができます。
そのため、一棟あたりの粗利が低くても利益を出せる構造となっており、業界内でも価格優位性を保っています。
また、当社の事業には季節性があり、第1四半期の業績はあまり良くなく、第4四半期に売上が偏重しています。
これは職人確保の観点から、意図的に第4四半期に集中させている当社の戦略でもあります。
ただ、第1四半期は年間売上計画の10%程度しかないため、全体の計画から見てもそれほど気にしなくてもよい数値だと認識しております。
このように、当社の業界における優位性と事業の季節性についてご理解いただけると幸いです。
投資家の皆様へメッセージ
人口減少が進む日本において、住宅市場は縮小傾向だと考えている方が多いと思います。
それでも、住宅市場は4兆円規模と非常に大きく、日本で最も多くの住宅を販売している会社でも、シェアは全体の2%にも満たないため、寡占的なプレイヤーがいません。
つまり、価格優位性も事業基盤も安定している当社は、市場が縮小しても他社からシェアを獲得することができるため、安定して成長を続けられると考えています。
また、当社は配当性向40%を目標としており、利回りの面でもしっかりと投資家の皆様に還元していく方針です。
縮小する住宅市場でも成長できる稀有な企業であると認知いただき、ご支援いただければと思います。
株式会社ロゴスホールディングス
本社所在地:〒060-0005 北海道札幌市中央区北5条西2丁目5番地 JRタワーオフィスプラザさっぽろ16F
設立:2020年7月9日
資本金:91,789,500円(2024年6月28日時点)
上場市場:東証グロース市場(2024年6月28日上場)
証券コード:205A