【248A】株式会社キッズスター 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年12月4日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社キッズスターは子ども向け社会体験アプリ「ごっこランド」を軸に子どもの「夢中」を育て、応援しています。

代表取締役の平田 全広氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社キッズスターを一言で言うと

「子どもの夢中を育て、応援する」企業です。 

キッズスターの沿革

株式会社キッズスター代表取締役 平田 全広氏

創業の経緯

私たちは、アイフリークモバイルという上場企業の一事業としてスタートしました。

私自身、以前サイバーエージェントに勤めており、その際にアメーバの立ち上げに関わった経験があります。

そのため、アイフリークモバイルでも新たな事業を立ち上げたいという想いがありました。

ちょうどその頃、私の子どもが生まれたことをきっかけに「子ども向けの事業を手がけたい」という気持ちが芽生えました。

そこで、絵本の読み放題サービスと「ごっこランド」を企画し、事業をスタートさせました。

これらのサービスは順調にダウンロード数を伸ばし、黒字化を達成しました。

しかし、アイフリークモバイルは当時「デコメ」事業を主軸としていたため、開始した新規事業は選択と集中の観点から継続することが難しくなりました。

その後、外部の支援を模索していたところ、クックパッドさんとの出会いがありました。

クックパッドさんは周辺事業の育成やM&Aに積極的で、子ども向けサービスにも関心を持っていただけました。

そして2014年、クックパッドの100%子会社として株式会社キッズスターが再スタートを切りました。(その後、2016年にはMBOを実施)

ビジネスモデルの転換

「ごっこランド」というアプリでは、子どもたちが社会体験を楽しめるゲームを提供しています。

当初のビジネスモデルは、企業からゲームの開発費用と運用費をいただくという形で開始しました。

イメージとしては、キッザニアのアプリ版と考えると分かりやすいと思います。

サービス開始当初の出店企業は約5社でしたが、開発費用が高額なため、企業が気軽に参加できるものではありませんでした。

それでも2〜3年にわたる運営の中でダウンロード数を順調に伸ばしていたところ、新たな可能性が見えてきました。

「ごっこランド」で遊んだ子どもたちが、そのゲームに登場する企業のファンになってくれるという反響を得たのです。

たとえば、「ケーキを作る」ゲームで遊んだ子どもが、外でそのゲームに登場した洋菓子ブランドの店舗を見つけた時に、「あれ作ったことがある!」と親に伝えたというエピソードがありました。

これは通常のプロモーションでは得られない特別な愛着を生む効果であり、企業のブランディングにつながると感じました。

そこで私たちは、「新規開発費用を取らず、月額の出店料として2年間の契約をしていただければゲームを制作する」という形で、企業がより参加しやすい仕組みを整えました。

そして、2018年頃からは本格的にブランディングやマーケティング要素を取り入れ、KPI(重要業績評価指標)を設定し、出店企業の成果を測定できるようにしました。

さらに、サービスの価値を、ゲームのプレイ回数≒動画再生の回数と想定し、

これを企業に伝えることで、「単純なバナー広告を出すよりも、ごっこランドを活用した方が認知度や第一想起率を高められる」という理解が広まり、利用企業が増えていきました。

2018年から2019年にかけて、出店企業の数は一気に増加しました。

この間、「ファンが生まれる」というブランディング効果が注目され、現在では、出店企業のうち、約8割の企業がブランディング目的で「ごっこランド」を利用しています。

当初は飲食店が中心でしたが、最近ではBtoB企業の出店も増加しています。

また、出店企業の社内アンケートでは、「ごっこランド」へ出店していることに社員が喜びを感じるという声も多く、社員のエンゲージメントを高める効果も確認されています。

このように、サービスの発展とともに利用の幅が広がり、企業から選ばれる存在へと成長しています。

株式会社キッズスター 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する説明資料 より引用

キッズスターの事業概要と特徴

概要

当社は、子ども向け社会体験アプリ「ごっこランド」を中心に、地域体験ガイドブック「ジモトガイド」やリアルな社会体験の場「ごっこランドEXPO」を展開しています。

これらを通じて、子育てファミリー層を対象としたマーケティングおよびブランディング支援を行っています。

主力事業である「ごっこランド」は、企業の仕事や社会体験をゲーム形式で疑似体験できるアプリです。

ユーザーは無料で利用できるため、これまでに累計700万ダウンロードを記録しています。

当社のキャッシュポイントは、企業からいただく月額の出店料にあります。

企業はゲーム内にパビリオン形式で出店し、自社の魅力を子どもたちや、その家族に伝えることができます。

「ごっこランド」を通じて、企業のブランディングやプロモーション活動を支援しています。

株式会社キッズスター 2024年12月期 第3四半期 決算説明資料 より引用

事業における優位性

ユーザーが醸成する「ごっこランド」の成長サイクル

当社は創業以来、子ども向けサービスの提供に注力してきました。

「ごっこランド」を開発するにあたっては、子どもたちが安心して遊べる環境を整えることを最優先に考えています。

「ごっこランド」のユーザーには小さな子どもたちが多く、親御さんが一緒に遊ぶ場面も多々見られます。

そのため、企業にはサービスの趣旨や意味合いをしっかりと理解していただいた上で、参画していただいています。

私たちは、「ごっこランド」を通じて、子どもたち、親御さん、出店企業、そして当社の社員を含む「子どもの夢中」を応援する人々が集まるオンリーワンのプラットフォームを構築しています。

このプラットフォームが生み出すサイクルが日々回り続けることで、私たちのサービスも成長を遂げています。

株式会社キッズスター 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する説明資料 より引用

独自のビジネスモデルとその効果

当社では、単に企業から業務委託を受けるという認識ではなく、ゲームが実際にプレイされることを最重視しています。

そのため、責任を持ってプレイ回数を確保できるような設計を心がけています。

さらに、成果として企業サイトへの誘導数を含め、企業側とKPI(重要業績評価指標)を設定し、毎月レポートを提出しています。

ただし、これらの活動が必ずしも即座に売上に直結するわけではありません。

例えば、飲食店であれば、週末に「どこか食べに行こうか」となった際、ゲームで遊んだ店舗に行きたくなるという具体的な結果が出ることもありますが、そうでない場合もあります。

そのため、企業の認知度や第一想起率を向上させるため、ゲーム開始前後の定期調査を行い、その結果をレポートとして提供しています。

株式会社キッズスター 2024年12月期 第3四半期 決算説明資料 より引用

一般的な無料アプリでは広告が表示されますが、子ども向けアプリの場合、不適切な内容が敬遠される傾向にあります。

そこで当社では、「ごっこランドに出店する」こと自体を企業のブランディングと位置づけ、企業の内容を正しく理解して頂く仕組みを採用しています。

現時点で約80社が参画しており、ユーザー数も安定しています。

当社が目指しているのは、子どもたちに「ごっこランド」を通じて商品やサービスが「どのように作られているのか」を学んでもらうことです。

その結果、子どもたちが街で企業の看板や商品を見かけた際に「あの企業だ!」と気づき、親御さんにも企業の理解が広がる、そのような「ファン作り」を目指しています。

株式会社キッズスター 2024年12月期 第3四半期 決算説明資料 より引用

キッズスターの成長戦略

「ごっこランド」をリアルに展開

「ごっこランド」をデジタルだけに留めず、リアルな場でも展開したいと考え、2024年から新サービスとして、「ごっこランドEXPO」を開始しました。

2024年7月から11月までに全国5箇所で開催し、参加者数1万人を突破しました。

各会場、2,000〜3,000人の集客を実現しており、多くのご家族にご来場いただいています。

「ごっこランドEXPO」のワークショップでは、「お仕事体験」ではなく、「商品を作っている人々の思い」や「社会体験」に重点を置いています。

また、開催場所は固定の施設があるのではなく、全国各地の大型ショッピングモールで開催しているため、より手軽に体験いただける場として親しまれています。

2025年度には、開催数を30箇所を目標に、地方都市も含めてさらに展開していく予定です。

株式会社キッズスター 2024年12月期 第3四半期 決算説明資料 より引用

これにより、デジタルとリアルの垣根をなくし、ファミリー層にとって、新たな外出先の選択肢を目指しています。

収益性に関しては、1開催あたり2〜3社程度の企業協賛料と施設からの収益を得ることで、一定の収益性を確保しています。

この成果により、「ごっこランドEXPO」を次のサービスの柱に育てることが可能と考えています。

今後、毎週末に全国各地でイベントを開催する規模へと拡大することで、デジタルとリアルの融合を本当の意味で実現することを目指しています。

このようにして、より集客力が高まれば、企業も参加しやすくなり、施設側も来場者による収益が得られるという「三方良し」の関係が構築できると考えています。

株式会社キッズスター 2024年12月期 第3四半期 決算説明資料 より引用

アジア版「ごっこランド」の可能性

日本では少子化が進行していますが、当社のビジネスモデルは、ユーザー(親御さん)から直接お金をいただくものではありません。

そのため、子どもの数が減少してもなお、成長の余地があると考えています。

しかし、長期的に見れば少子化は避けられない課題であり、私たちはその対策として子ども人口の多いアジア地域でのサービス展開を始めました。

株式会社キッズスター 2024年12月期 第3四半期 決算説明資料 より引用

2023年8月に、「ごっこランド」の海外版として、「Gokko World」をベトナムでリリースしました。

リリースから1年1ヶ月で累計ダウンロード数が100万を超え、アジア地域でも十分に受け入れられると確信しました。

私たちのゲームが「安心して遊べるもの」として評価されていると感じています。

株式会社キッズスター 2024年12月期 第3四半期 決算説明資料 より引用

さらに、アジアでは日本よりもプレイ回数が多い傾向にあり、今後の成長への期待が高まっています。

ベトナムでの実績を鑑みつつ、人口増加や経済成長等の様々な観点から、更なる海外展開を検討しております。

当社のゲームはシンプルで分かりやすい設計のため、3〜4歳の小さな子どもでも遊べるのが特徴です。

言語が分からなくても楽しめる設計となっており、言語ローカライズについては基本的に英語を使用しつつ、必要に応じて現地語対応も進めています。

まずはアジアでNo.1を目指し、最終的には日本も含めて「真のNo.1」となるポジションを築いていきたいと考えています。

株式会社キッズスター 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する説明資料 より引用

ごっこランドを起点に「特性」に合わせた学びのマッチング

現在、子どもが自発的に「やりたい」と思うものよりも、親御さんが子どもに「やらせたい」と考えるものを与える形での「学び」が多いのが現状です。

しかし、子どもが日々遊びながら「好きなもの」を見つけ、それをきっかけに「やってみたい」と思える瞬間もあるはずです。

私たちは、そのような子どもの内発的な興味や関心を引き出し、その特性に合った学びをレコメンドする仕組みを作りたいと考えています。

この仕組みを通じて、子どもたちが「学び」に自然に触れる機会を広げ、さらにサービスとしての可能性を拡大していけると考えています。

株式会社キッズスター 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する説明資料 より引用

また、学びを提供する企業にとって、集客のための広告宣伝費用は大きな負担となる場合があります。

そこで、「ごっこランド」の集客力を活用したいと考えています。

この集客力を生かし、連携できる企業とともに成長していける環境を整えたいと考えています。

たとえば、プログラミング教育だけでもさまざまな学びの形があります。

また、最近では走り方を教える指導者や、かけっこの教室といった、従来の「勉強」とは異なる学びもビジネスとして注目されています。

しかし、多くの親御さんは「何を基準に選べばいいのか」が分からないという課題を抱えています。

そこで、私たちは厳選した安心して始められる学びの場を提供し、子どもたちが「勉強」という枠を超えて「好き」や「得意」を見つけられる環境を作りたいと考えています。

親子が安心して学びを選べるプラットフォームを提供することで、子どもの未来の可能性を広げていくことにチャレンジしていきます。

株式会社キッズスター 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

私たちは、自社のビジネスモデルが非常にユニークであると自負しています。

今後、アジアでユーザーを大きく獲得することができれば、日本での成功を再現性の高い形で他国にも広げ、事業をさらに拡大していけると確信しています。

アプリサービスで海外展開を成功させた事例はまだ多くありませんが、私たちは実現可能性の高いモデルを作り上げていると考えています。

また、市場に多いキャラクターや知育系アプリが有料で提供される中、私たちのサービスは、ユーザーが無料で利用できる点も大きな特徴です。

株式会社キッズスター 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する説明資料 より引用

この結果、少子化が進む日本国内の厳しい環境下でも、またアジア展開においても、私たちのビジネスモデルは大きな可能性があると確信しています。

ぜひ、当社のユニークでオンリーワンのビジネスモデルにご注目いただきたいと思います。

株式会社キッズスター 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する説明資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

子ども向けサービスを長期的に続けるのは簡単ではありません。

しかし、私たちは多くの企業や支援者と共にここまで成長してきました。

「子どもたちの夢中を育て、応援する」という目標に少しずつ近づいており、投資家の皆さんとともに成長していきたいと考えています。

子どもを主役に据えた私たちの取り組みに賛同し、共感いただける方には、長期的に私たちの成長を見守っていただきたいです。

しっかりと成果をお返しできるよう努力していきますので、ぜひご期待ください。

株式会社キッズスター

本社所在地:〒150-0045 東京都渋谷区神泉町9-5 フジタ・インゼックスビル5F

設立:2014年10月20日

資本金:914百万円(2024年9月末時点)

上場市場:東証グロース市場(2024年9月26日上場)

証券コード:248A

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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