【5885】株式会社ジーデップ・アドバンス 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年12月24日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ジーデップ・アドバンスは「Advance with you」をミッションに、先進的な技術・手法を取り入れ、AIとビジュアライゼーション分野において総合的なソリューションを提供しています。

代表取締役社長の飯野 匡道氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社ジーデップ・アドバンスを一言で言うと

「Advanced with You」を体現する、AIとビジュアライゼーションのソリューションプロバイダです。

ジーデップ・アドバンスの沿革

株式会社ジーデップ・アドバンス代表取締役社長 飯野 匡道氏

創業の経緯

当社のルーツは、1978年に私の父が東北地方で電子部品の卸売を行う商社「トーワ電機」を設立したことに始まります。

私自身は29歳でトーワ電機に入社しましたが、それ以前はIT業界でキャリアを積んでいました。

この経験を活かし、情報通信関連の商材を取り扱う新たな事業を立ち上げました。

そして、その事業を切り出す形で2016年に設立したのが現在のジーデップ・アドバンスです。

NVIDIAとの出会い

当社にとって大きな転機となったのは、2007年にNVIDIAと出会ったことです。

それ以前は、半導体メーカーのIntelの国内パートナーとして活動し、大学や研究機関を主なお客様としていました。

2006年、NVIDIAは「CUDA(Compute Unified Device Architecture)」という革新的なソフトウェア環境を発表し、翌年にはHPC(High Performance Computing)向けのGPU「Tesla(テスラ)」を発表しました。

HPCとは、複雑な計算やシミュレーションを高速で処理するためのシステムで、科学技術や産業の分野で幅広く活用されています。

2007年11月、アメリカの学会でNVIDIAの展示ブースを訪れた際、現在では考えられないほど展示ブースは小規模でしたが、製品の革新性と市場に即応する姿勢が強く印象に残りました。

その高い技術力と製品力に魅了され、NVIDIA製品の取り扱いを開始し、翌年にはパートナー認定を受けました。

このパートナーシップは現在まで続いており、当社の事業基盤を支える重要な関係性となっています。

AIワークステーションのリリース

2012年、「ImageNet」と呼ばれる画像認識技術のコンペティションで、Geoffrey Hinton教授が開発した「AlexNet」が大きな成果を上げました。

このコンペで注目を集めた「deep learning(深層学習)」という手法は、現代AIの礎を築く重要な技術となり、NVIDIAもその開発をサポートしていました。

この背景を受けて、NVIDIAは2012年以降、AI市場へのシフトを加速し、高性能なGPUを次々に開発しました。

当社もこの動きに呼応し、2015年にディープラーニングに特化した高性能ワークステーション「DeepLearningBOX」を開発・発売しました。

この製品は、AI研究者や開発者がすぐにディープラーニングを始められるオールインワンのソリューションとして設計され、多くの法人顧客からの反響がありました。

そして、法人顧客が急増したことで、当社の事業は大学や研究機関を中心とする従来の取引から、民間企業との取引へと広がりました。

こうした市場拡大を背景に、2016年には事業を独立させ、経営資源を集中させることで、現在のジーデップ・アドバンスとしての基盤を築きました。

株式会社ジーデップ・アドバンス 2024年5月期決算補足説明資料及び中期経営計画 より引用

ジーデップ・アドバンスの事業概要と特徴

概要

当社はシステムインキュベーション事業を単一セグメントとして展開しています。

この事業は大きく2つの柱から成り立っています。

1つ目は、ハードウェア、ソフトウェア、そしてそれらを動作させる環境を提供するDXサービスです。

2つ目は、システムの保守、運用支援、さらには性能向上をサポートするService & Supportです。

このように、単なるシステムの販売にとどまらず、開発から運用に至るまで一貫したサポートを行っています。

株式会社ジーデップ・アドバンス 2024年5月期決算補足説明資料及び中期経営計画 より引用

また、当社のお客様を獲得する方法は3つのチャネルを中心に展開しています。

展示会やセミナーを通じて直接お客様からお問い合わせをいただく場合、メーカーからのご紹介を受ける場合、そして販売パートナーからの紹介による場合です。

この多角的なアプローチにより、新規顧客の獲得と事業拡大を進めています。

株式会社ジーデップ・アドバンス 2024年5月期決算補足説明資料及び中期経営計画 より引用

さらに、東証の分類では「卸売業」に位置づけられていますが、当社は単なる卸売業ではなく、開発、導入、運用支援を含めたトータルソリューションを提供する企業です。

このため、商社的な役割を超えた付加価値の高いサービスを提供しており、全方位的な事業を展開しています。

株式会社ジーデップ・アドバンス 2024年5月期決算補足説明資料及び中期経営計画 より引用

事業における優位性

グローバルプロセッサメーカー4社から認定された高い技術力

当社は、NVIDIAのパートナーとして国内最高レベルの認定を受けており、さらにIntel、AMD、XILINXといった主要なプロセッサメーカーからもパートナー認定を取得しています。

日本国内でこの4社から同時にパートナー認定を受けている企業は当社だけであり、この点が当社の技術力の高さを示しています。

そして、当社はお客様のニーズに応じた多様な提案が可能です。

たとえば、AIの「学習」ではNVIDIAのGPUが高い性能を発揮しますが、AIの「推論」ではXILINXのFPGA(Field Programmable Gate Array)の方が消費電力が少なく、特定のプロジェクトにおいて適しているという場合があります。

このように、各プロセッサメーカーとの連携を活かし、プロジェクトごとに最適なソリューションを提案しています。

さらに、当社はNVIDIA、Intel、AMD、XILINXと定期的に情報交換やトレーニングを行い、自社の技術力を常に高め続けています。

こうした取り組みが、他社にはない当社の競争力の源泉となっています。

株式会社ジーデップ・アドバンス 2024年5月期決算補足説明資料及び中期経営計画 より引用

強みと特徴

当社は、NVIDIAに関してAI、メタバース、ビジュアライゼーション(CADなどの用途)といった特定分野ごとにパートナー認定を受けています。

この認定を維持するには、四半期ごとにトレーニングや試験を受け、常に最新技術に対応していく必要があります。

当社はこのスピーディーなスキルアップと情報キャッチアップを実現しており、これが競争力を支える重要な特徴となっています。

株式会社ジーデップ・アドバンス 2024年5月期決算補足説明資料及び中期経営計画 より引用

また、当社はお客様のニーズに応じて柔軟にソリューション提供の形態を変化させています。

オンプレミス型(自社設置型)のシステム開発だけでなく、クラウドやレンタルといった選択肢も提供しており、幅広いニーズに対応可能です。

株式会社ジーデップ・アドバンス 2024年5月期決算補足説明資料及び中期経営計画 より引用

当社が提供するクラウドサービスでは、大手クラウド事業者にはない最先端のハードウェアを使用しています。

仮想化を行わず物理サーバーに直接接続する「ベアメタル方式」を採用することで、高性能かつ利便性の高いサービスを実現しています。

株式会社ジーデップ・アドバンス 2024年5月期決算補足説明資料及び中期経営計画 より引用

さらに、当社はハードウェア・ソフトウェアの取り扱いだけでなく、導入後の保守・運用支援にも重点を置いています。

一度販売したら終わりではなく、お客様が継続的に利用できるように伴走支援を行う点も、当社の特徴的な取り組みの一つです。

株式会社ジーデップ・アドバンス 2024年5月期決算補足説明資料及び中期経営計画 より引用

当社のもう一つの特徴として「スモールマス展開」が挙げられます。

これは、開発した高性能なプロダクトを他の用途に転用するビジネスモデルを指します。

基本的に当社は既製品をそのまま提供するのではなく、お客様の課題解決に貢献するために独自の知見を活かしたカスタマイズを施しています。

具体例として、中国医療系スタートアップのInferVision JAPANが開発した肺のCT画像を基に新型コロナウイルスの自動診断を行うAIの事例があります。

このAIシステムは、一般的なパソコンでは推論速度が遅く、実用化が難しい状況でした。

当社は台湾のメーカーと協力し、NVIDIAのGPUを最適に選定するなどの試行錯誤を経て、推論速度を従来の約36倍に向上させることに成功しました。

また、当社の技術は、監視カメラの制御ユニットや顔認証システムとしても活用されています。

これらのシステムは、コンサートやスポーツイベントの入場ゲートでの本人確認に使用されており、初期の課題解決で得た成果を基に多分野への展開が進められています。

こうした展開を可能にするために、開発の初期段階でペルソナ(具体的な顧客像)を設定し、最適なソリューションを設計することを重視しています。

この取り組みは、他社にはない当社独自の強みだと自負しています。

株式会社ジーデップ・アドバンス 2024年5月期決算補足説明資料及び中期経営計画 より引用

当社は、単なる商社的な役割にとどまらず、開発から運用支援までトータルソリューションを提供することで、業界内での独自のポジションを確立しています。

さらに、グローバルなビジネスパートナーとの連携を活かし、ハードウェアとソフトウェアの統合的な活用を推進しています。

このような柔軟性、専門性、グローバル視点を持つ当社のビジネスモデルは、他社との差別化を図る大きな要因となっています。

株式会社ジーデップ・アドバンス 2024年5月期決算補足説明資料及び中期経営計画 より引用

ジーデップ・アドバンスの成長戦略

AIの市場環境とエコシステムの構築

生成AIの普及に伴い、当社のお客様の業界構成は大きく変化しています。

これまでは製造業のお客様が最も多く、主に外観検査や不良品の選別といった生産工程においてAIが活用されてきました。

しかし、現在ではAIの利用用途が広がり、医療、メディア、エンターテインメント、自動車といった多様な分野での導入が進んでいます。

医療分野では、診断支援や画像解析の用途でAIが活用されています。

メディアやエンターテインメント分野では、コマーシャル制作、アニメ制作、映画制作など、大量のデータを処理する業務においてAIが貢献しています。

また、自動車業界では、自動運転技術だけでなく、車内環境の音声認識、安全性・快適性の向上、さらにはバッテリーや新素材の開発にもAIが利用され始めています。

株式会社ジーデップ・アドバンス 2024年5月期決算補足説明資料及び中期経営計画 より引用

このように、業界構成が変化する中で、お客様のニーズもますます多様化しています。

これらの変化に対応するため、当社では24時間365日のシステム安定稼働の保証、既存の全社システムとの連携、さらにはアマゾンAWSやMicrosoft Azureなどのクラウドサービスとの統合といった多岐にわたるリクエストに対応しています。

上位レイヤーソリューションへの移行と環境整備

これまでのAIは比較的小規模で、たとえば、製造現場で使われているような画像認識を用いた外観検査や、セキュリティにおける異常検知などのAIは、デスクサイドのワークステーションやサーバー1台でも構築が可能でした。

しかし、最近注目を集めている自然言語処理や生成AIといった大規模なAIでは、これまでのシステムでは学習が追いつきません。

より高い性能のサーバーが求められるため、サーバーを複数台つなげた「クラスター」という大規模システムを構築する必要があるとされています。これを扱うには高度な知見が必要となります。

市場のAI進化に対応するためにも、当社ではこのような大規模なAIシステムをお客様に適切に提供できるよう、技術スキル、調達能力、提供能力の向上に取り組んでいます。

その中でも特徴的な取り組みとして、まず重要なのはソフトウェアです。

当社では社内の知見を蓄積するためにトレーニングを徹底し、人材育成を進めています。

株式会社ジーデップ・アドバンス 2024年5月期決算補足説明資料及び中期経営計画 より引用

大規模AI時代に合わせたエコシステムの増強

大規模AIシステムの導入に際しては、「電力不足」や「設置スペースの不足」といった国内特有の課題があります。

これらの課題を解決するため、当社は国内のデータセンターと提携し、お客様が大規模AIシステムを安定して稼働させられる環境を整えるトータルソリューションを提供しています。

さらに、当社はエコシステムの構築において、さまざまなパートナー企業と連携しています。

株式会社ジーデップ・アドバンス 2024年5月期決算補足説明資料及び中期経営計画 より引用

たとえば、ソフトウェア開発やコンサルティングにおいては国内のAIスタートアップ企業が強みを発揮しています。

一方で、グローバル規模の案件では海外の大手コンサルティング企業がサポートを提供しますし、

クラウドサービスについては、複数の国内クラウドベンダーとの連携を強化しています。

また、2024年4月には、豊田通商グループのネクスティエレクトロニクス様と提携し、自動車業界に特化したソリューション提供体制を構築しました。

このように、多様なニーズに柔軟に対応しながら、ユーザーニーズに適切に対応できる準備を進めています。

株式会社ジーデップ・アドバンス 2024年5月期決算補足説明資料及び中期経営計画 より引用

AIリソースの総合ベンダーとしてハイブリッド化を促進

当社は、AIリソースの総合ベンダーとして、オンプレミス、クラウド、さらには大規模パブリッククラウドへのバースティングなど、さまざまな環境に対応した製品とサービスを提供しています。

2023年から2024年にかけて小規模なAIシステムから大規模な生成AIに対応するシステムまで、一貫して提供できる体制を準備してきました。

こうした体制は、NVIDIAをはじめとするメーカーとの連携を軸に、他社とも等距離でのパートナーシップを築くことで実現しています。

市場の成長に伴い、相乗効果を発揮するエコシステムを構築することが、当社の使命であると考えています。

今後も市場のニーズに応じてエコシステムを拡張しながら、AI開発を支える総合的なソリューションを提供していきます。

株式会社ジーデップ・アドバンス 2024年5月期決算補足説明資料及び中期経営計画 より引用

注目していただきたいポイント

昨今、NVIDIAはAI分野における製品供給で世界的に注目を浴びており、高い成長性と強力な技術力を誇る企業です。

当社は、そのNVIDIAと長年にわたる歴史的な繋がりを持ち、国内で最もプレゼンスの高いパートナー企業であると自負しています。

当社は単なる商社ではなく、「ソリューションプロバイダー」としての役割を果たしています。

豊富な知見を基に、お客様に最適な提案を行い、課題解決に向けたソリューションを提供しています。

また、自社製品の開発や、ソフトウェアの自社開発にも積極的に取り組んでおり、技術面でも他社にはない独自の強みを持っています。

現代は変化の激しい時代であり、当社では経営において「アジリティ(敏捷性)」を最重要視しています。

NVIDIAをはじめとするAI業界では進化のスピードが非常に速く、製品の「Time to Market(市場投入までの時間)」を最優先に考えています。

一度製品が完成したら、まずお客様に使っていただき、その過程で小さなトラブルが発生した場合にはお客様と共に迅速に改善していく姿勢を持っています。

この柔軟性は、伝統的な日本のメーカーでは難しい場合があります。

製品にバグが見つかった場合、日本企業ではその解決に時間がかかり、製品の市場投入が1〜2年遅れることも少なくありません。

しかし、その間に市場は次の世代へと移行してしまいます。

当社ではこのスピード感に対応し、求められるタイミングで最適な製品を提供することを目指しています。

たとえば、自動車業界においては、ソフトウェアの更新により機能を追加・向上させる「Software Defined Vehicle」が求められています。

この変化は他の業界にも広がりつつあり、製品を提供した後もお客様と共にアップグレードを続けていくことが、これからのビジネスの主流になると考えています。

当社もこの変化をしっかりとキャッチアップし、時代のニーズに応える企業として成長していく所存です。

株式会社ジーデップ・アドバンス 2024年5月期決算補足説明資料及び中期経営計画 より引用

投資家の皆様へメッセージ

当社がNVIDIAと取引を開始した当初、これほど市場規模が拡大するとは想像していませんでした。

私はNVIDIAの関係者と意見交換をする機会が多くありますが、。

NVIDIAがこのような成功を収めている理由の一つは、AI市場の急成長です。

しかし、それ以上に「ワクワクするものを生み出している」という点が成功の鍵だと考えています。

常に市場を驚かせる革新的な製品や技術を提供し続けているからこそ、彼らは業界で突出した存在となっているのです。

当社もNVIDIAとともに仕事をする中で、その「ワクワク」を共有し楽しんでいます。

そして、お客様にも当社との関わりを通じて少しでもその「ワクワク感」を感じていただけていると信じています。

さらに、当社の株を購入していただいた投資家の皆様にも、そうした期待感や面白さを共有できるビジネス展開を心がけています。

「この会社の株を持っていると、これからどんな展開があるのか楽しみだ」と感じていただけるような企業であり続けるために、社員一同努力してまいります。

ぜひ今後の当社の成長にご期待いただき、見守っていただければ幸いです。

株式会社ジーデップ・アドバンス

本社所在地:〒980-0803 宮城県仙台市青葉区国分町3丁目4番33号 仙台定禅寺ビル8階

設立:2016年1月15日

資本金:285百万円(2024年5月末時点)

上場市場:東証スタンダード市場(2023年6月30日上場)

証券コード:5885

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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