【9795】株式会社ステップ 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年7月18日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ステップは神奈川県を中心に小中高と幅広い生徒に対して質の高い学習塾や学童施設を提供しています。

代表取締役社長の遠藤 陽介氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社ステップを一言で言うと

生徒の成長をリングサイドから応援する、教える職人集団です。 

ステップの沿革

株式会社ステップ代表取締役社長 遠藤 陽介氏

創業の経緯

創業者は現会長の龍井で、1975年に藤沢市の長後でアパートの一室を借り、「ステップ学習教室」という名称で学習塾を始めたのがスタートです。

当初は小さな塾でしたが、地域のニーズに対応しながら成長していきました。

私自身も2007年から12年間、100を超える校舎がある中で最も歴史のある長後スクールの教室長を務めていました。

私が教室長をしていた頃、龍井に教わっていた生徒が親となり、お子さんをSTEPに預けてくださるケースが多くありました。

このように保護者の方からも愛される学習塾として、長きにわたって神奈川県に集中して事業を拡大してきました。

株式会社ステップ より提供

上場と「大学受験STEP」

私は1996年に入社しましたが、その前年の1995年に当社は株式を公開しました。

このタイミングで、従来の小中学生を対象とした高校受験STEPに加え、高校生を対象とした「大学受験STEP」をスタートさせ、事業を大きく成長させることができました。

現在、夏期講習が始まっていますが、藤沢校、平塚校、厚木校、横浜校、大船校の各校舎は、受験学年ではない高校一年生でも満席のクラスが大半です。

神奈川県内の予備校市場を見渡すと、代々木ゼミナールは撤退し、駿台や河合塾も規模を縮小している中、当社は順調に生徒数を伸ばしています。

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学童教室「STEPキッズ」

2016年からは学童教室のSTEPキッズをスタートさせました。

現在、小中学生を対象とした高校受験STEP、高校生を対象とした大学受験STEPが事業の柱となっていますが、将来的にはSTEPキッズが3本目の柱となっていくものと考えています。

ステップの事業概要と特徴

概要

当社は小中学生を対象とした高校受験STEP・Hi-STEPの運営と高校生をターゲットとした大学受験STEP・個別指導K-STEPの運営、そして小学校1~4年生を対象とした学童教室STEPキッズを展開しています。

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事業における優位性

高いレベルの教師陣

他塾では、1校舎に社員は若干名で、その他のスタッフは大学生のアルバイトや非常勤の講師ということも珍しくありません。

一方で、ステップでは自社で採用し育成した正社員の教師が授業を担当することによって、質の高い学習機会を提供しています。

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当社には、子供が好き、生徒や保護者から頼りにされることが好き、人に喜んでもらえることが好き、コミュニケーションや共感性を大事にしたい、生徒の成長過程をそのすぐそばで応援したいという人材が全国から集まっています。

そして継続的かつ充実した研修制度の下、専門的で質の高い教師を育成しており、当社の教師陣は「職人集団」だといえます。

学習塾業界では、生徒を集めるために正社員の教師は営業活動に力を入れることが一般的ですが、当社の教師は、「営業活動はしない、させない」を社是として営業活動を一切行いません。

夏期講習の募集時期にも電話をかけたり、学校の門前で文房具などのノベルティを配布したりすることもありません。

営業活動をしない分のエネルギーは、研修や授業準備など、生徒と向き合うための時間に使います。

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また、最も生徒数の多い小中学生部門では、「教室長こそ、トップクラスだけでなく基礎クラスも担当する」という内規を設けています。

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ステップにはトップ校を目指す生徒だけでなく、勉強に苦労しているものの成績を上げたい、定期テストの点数を何とか伸ばしたいという生徒も通っていることが特徴です。

そうした生徒たちが多い基礎クラスの授業は、教室長が率先して担当します。

上位を目指す生徒にも強いが基礎を固めたい生徒にも強い、そんな学習塾でありたいと思っています。

高い合格実績

2024年度の湘南高校の合格実績では、定員359人中252人がSTEP生で、定員の約70%に達する高い比率です。

このように県内の旧学区トップ校での高い合格実績もステップの人気の理由かもしれません。

今春も、神奈川県のトップ校19校中16校でNO.1の合格実績を実現し、公立トップ校の合格者合計は28年連続でNO.1(全塾中)の実績を継続しています。

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また、私たちは合格率にもこだわっています。

県内有数のトップ校である湘南高校を例にとると、ステップ生とステップ生を除く受験生の合格率の差は17.4%あり、STEPの合格率の高さが分かります。

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神奈川県に特化し地域密着型で運営

神奈川県の公立高校受験では、通常の5教科(英語、数学、国語、理科、社会)に加えて「特色検査」と呼ばれる特殊な入試科目があります。

上位の高校を中心に実施される特色検査は、合格に不可欠の要素となっており、STEPでは専門チームを立ち上げ、その対策を重ねています。

このように神奈川県に特化した対応により、地域や保護者の信頼を高め、校舎数・生徒数を着実に伸ばしています。

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大学受験STEP(高校部)は、各地域の公立トップ校や主要駅の近くに校舎を設け、部活動が終わった後でも授業に参加できる体制を整えています。

公立高校の生徒は部活や行事で非常に忙しいですが、STEPはそのような生徒を応援するため、授業開始時間を生徒が参加し易い時間帯に設定しています。

また、STEPの良さを体感した小中学部の生徒がそのまま高校部に進むケースが多く、生徒数は年々増加中です。

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ステップの成長戦略

高校受験STEPのシェアを高める

令和6年5月現在、神奈川県全体で約20万人の公立中学に通う生徒がいる中、約2万2千人がSTEP生です。

つまり、中学生の約11%がSTEPに通っている計算になります。

ステップがスタートした神奈川県の中西部地区を例にとると、藤沢市では約26%、鎌倉市でも約25%のシェアを持っていますが、全県的に見ると、神奈川県の公立中学の生徒は川崎市と横浜市が特に多く、県全体の約54%を占めています。

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横浜市には約7万5千人の公立中学生がいますが、そのうちSTEP生は約7,500人です。

東急田園都市線が走る横浜市青葉区や横浜市営地下鉄沿いの都筑区では、ドミナント戦略により15%以上のシェアを達成しましたが、横浜市全体ではまだ約10%に留まっています。

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このシェアを15%程度を目安に引き上げるために、横浜市の東部地区、臨海地区、そして川崎市に継続してスクールを開校し、10年程度かけてスクール網を完成させていきます。

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スクールの評判や生徒の集まり具合は、生徒に愛される魅力ある教師の存在が大きく関係しています。

しかし、子供からも人気があり教えるのも上手な教師に成長するまでには何年かの経験が必要で、一朝一夕に育成できません。

当社は、成長のペースが遅いと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、「ゆっくり急ぐ」をモットーに社員の育成に時間をかけ、年間で3〜5校の開校ペースで、クオリティを担保しながら成長していく方針です。

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大学受験STEPとSTEPキッズの拡大

今後の柱として、大学受験STEPとSTEPキッズをさらに成長させていきます。

まず大学受験STEPに関しては、川崎地区の進学校である多摩高校周辺や人口の多い川崎駅周辺には、まだ展開していません。

また、田園都市線や相鉄線の沿線にも展開していないため、今後は時間をかけてこれらの未進出エリアにも展開していきたいと考えています。

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次に、学童部門であるSTEPキッズの成長です。

STEPキッズでは様々なプログラムを提供しています。

英語では「英語」「英会話」「英検講座」の3つのプログラムがあり、ほかにも算数やことば(国語)といった教科的なものから、ダンス、将棋など、生徒の興味を深め伸ばしていく多くのプログラムがあります。

例えば、「はば広教養」のプログラムでは、自社開発した無線早押し機を導入しており、生徒が楽しみながら、教科を横断した幅広い教養や様々な知識を身につけることができます。

その他にも、サイエンス、プログラミング、卓球、音楽、百人一首、手話など、多岐にわたるプログラムを提供しており、ここまで多様なコンテンツを揃えている学童教室はなかなか他では見ることができません。

この分野は今後の成長が期待され、新たな3本目の柱として将来のステップを支えていく事業になると考えています。

注目していただきたいポイント

これまでの売上高推移を見ると、急激な成長というよりも継続的に着実な成長をしています。また営業利益率も20%超で推移しています(コロナ禍の2020年9月期を除く)。

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今後も横浜市・川崎市を中心にドミナント戦略を継続するとともに、「ゆっくり急ぐ」スタンスは堅持し、派手さはなくても着実な成長を続けていきたいと考えています。

PLの観点では、STEPは口コミが最大の募集要因となっているため、広告宣伝費が著しく少ないことが特徴です。2023年9月期の広告宣伝費の対売上高比率は0.8%で、1%を切っています。

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広報面では、2022年2月から開設したSTEP公式YouTubeチャンネルで、生徒や保護者向けに情報発信を行い、チャンネル登録者数は2024年7月末時点で1.1万人を超えました。

YouTubeに限らず広く情報発信を続け、神奈川県の教育インフラを担っていくことで、より多くの方々にステップを知っていただき、生徒募集にもつなげて参ります。

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また、私は代表取締役社長ですが、普段は週に3日は高校受験ステップの教室で中学生の授業を担当しています。

他の役員も取締役を務めながら校舎で教師として授業を担当しているメンバーが大半です。

このように経営陣が現場に深く関わり続け、その声を直接反映した経営に取り組んでいるのも私たちの持つ強みです。

投資家の皆様へメッセージ

当社の事業内容や戦略をご理解いただき、是非ステップを応援していただける投資家の皆様が増えることを期待しています。

直近では株主還元について、配当性向を30%から50%へ引き上げました。

これは2023年5月に発表した新経営方針「3本の柱」に基づくものです。

その柱の一つとして、社員の処遇改善も行い、2022年から2024年の3年間に亘り年収ベースを引き上げました。

また、教育環境のさらなる向上を図るため、最新のプロジェクターの大量導入や自習室の増設等も積極的に実施しました。

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このように、社員、顧客、株主の三者にとっての「三方良し」のスタンスで経営を進めていくことが、昨年5月に公表した新経営方針の主旨です。

今後も着実な成長を続け、長期的に見て魅力的な投資先となるよう努力して参ります。

株式会社ステップ

本社所在地:〒251-0052 神奈川県藤沢市藤沢602

設立:1979年9月20日(創業:1975年1月)

資本金:17億7,800万円(2024年7月アクセス時点)

上場市場:東証プライム市場(1995年6月12日上場)

証券コード:9795

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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