【7501】株式会社ティムコ 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年7月25日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ティムコは趣味や余暇を通じて、お客様の人生をより豊かにすることを目指します。

代表取締役社長の酒井 誠一氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社ティムコを一言で言うと

人々の生活を豊かにする、趣味と余暇の会社です。 

ティムコの沿革

株式会社ティムコ代表取締役社長 酒井 誠一氏

創業の経緯

私の父が創業者で、ティムコは1969年12月に設立されました。

もともと父は国内メーカーで貿易の仕事に従事しており、アメリカに出張した際、週末に家族でキャンプに行くなど、豊かな余暇時間や趣味を楽しむ様子を目の当たりにしていました。

当時の日本ではそんな習慣はほとんどなかったのですが、高度経済成長を迎える中、これから日本でも余暇を楽しむ時代が来ると確信し、当社を立ち上げました。

日本のルアーフィッシング・フライフィッシングのパイオニア

当初はフリスビーやサーフボードなど、多岐にわたる商品も取り扱っていましたが、早い段階で釣り分野に絞り込むことにしました。

日本には江戸時代から釣り文化が庶民にも広がっていましたが、会社を立ち上げた1960〜70年代当時は、ルアーフィッシングやフライフィッシングという釣りは日本ではほとんど知られていませんでした。

米国のFenwick(フェンウィック)やORVIS(オービス)という有名なブランドに問い合わせたところ、幸運なことに日本における代理店の権利を得ることができたのです。

このことは、日本のルアーフィッシングとフライフィッシングの黎明期を築く大きな力となりました。

特にフライフィッシングは特殊なキャスティング技術が必要で、道具の使い方を知らないと釣りになりません。

そこで1976年に日本初のフライフィッシングスクール「ティムコ・フライフィッシングスクール」を開校しました。

現在までに、延べ2万人以上の生徒を輩出し、この国におけるフライフィッシングの啓蒙を行ってまいりました。

国内でフライフィッシングのパイオニア的存在とご評価いただけているのも、こうした恵まれた環境の賜物なのです。

アウトドア事業の開始

当社では、輸入品を日本市場で展開するビジネスでしたが、アメリカでは起業して成長したら会社を売却するスタイルも多く、当社の輸入元でも一部そのような取引先が出てきました。

オーナーの方針によって代理店の権利を失う恐れもあるほか、1970年代は為替変動が激しい時代で、これらの要因に成長が左右されるリスクを感じていました。

そこで、自社製品の開発に着手し、1982年に自社のアウトドア衣料ブランド「Foxfire(フォックスファイヤー)」を立ち上げました。

最初はフィッシングベストの開発からスタートし、そこからジャケットやシャツやパンツへと総合的なアウトドア衣料ブランドへと展開していきました。

現在では、このFoxfireを主軸としたアウトドア事業が会社の売上の7割を占めるに至っています。

スノーピークとの事業提携

2019年にはスノーピークとのユーザー層のシナジーを活かしたサービスを提供するために、資本業務提携契約を締結しました。

キャンプとフィッシングを融合させたライフスタイル提案を行っており、2021年にはスノーピーク、アイビック、アイビック食品と合弁会社「株式会社キャンパーズアンドアングラーズ」を設立しました。

昨年、北海道の北広島市にキャンプと釣りの体験をテーマとした商業施設「キャンパーズアンドアングラーズ北広島」をオープンしています。

株式会社ティムコ 第54期(2023年11月期)決算説明補足資料 より引用

ティムコの事業概要と特徴

概要

フィッシング事業とアウトドア事業の売上比率は概ね3:7です。

売上の約9割は自社企画商品で構成されており、輸入ブランドにおいても日本市場向けに当社によりローカライズされた自社企画品が多く含まれます。

また、日本の釣用品市場は1997年にピークを迎え2011年の東日本大震災あたりまで縮小し続けました。

その後、SNSの発展等で若年層の参加も増え始めていましたが、2020年以降のコロナ禍では、密を避けられるアクティビティとして、釣りに注目が集まりました。

逆に、このコロナ禍では登山等のアクティビティは低迷し、アウトドア衣料を販売する商業施設も苦戦しました。

現在は、釣り市場は平常に復し、登山を中心としたアウトドア市場や商業施設も平常に戻っており安定しつつあります。

株式会社ティムコ 第55期(2024年11月期)第2四半期決算説明補足資料 より引用

事業における優位性

釣用品市場の細分化と確立されたポジション

釣用品市場は細分化されており、磯釣り、ヘラブナ釣り、鮎釣り、船釣り、ルアーフィッシング、フライフィッシングなど、さまざまなジャンルがあります。

ルアーフィッシングは釣用品市場全体の約6割を占め、フィールドも海、川、湖と分かれ、それぞれの領域で製品も文化も異なります。

株式会社ティムコ 第54期(2023年11月期)決算説明補足資料 より引用

当社の場合は川や湖といった内水面のルアー用品を中心に取り扱っています。

また、フライフィッシングはイギリスで誕生し、アメリカを経て日本に伝わりました。

株式会社ティムコ 第54期(2023年11月期)決算説明補足資料 より引用

当社オリジナルのフライ用フック(釣鉤)やツール類は欧米市場でトップブランドの一角としてご評価いただいています。

株式会社ティムコ 第54期(2023年11月期)決算説明補足資料 より引用

アウトドア衣料「Foxfire」

Foxfire(フォックスファイヤー)は4型のフライフィッシングベストの開発から始まりました。

水辺からスタートしたアウトドアブランドで、そこから総合的なアウトドアブランドに発展しています。

防水機能も得意分野ですが、水辺は虫が多いため防虫衣料も得意分野のひとつとなっています。

Foxfireは、ファッションでもアパレルでもウェアでもなく、「クロージング」という位置づけです。

クロージングとは使用目的の明確な衣料を意味します。使用目的に合致した素材や機能をデザインして製品化します。

また、ロングライフ設計を基本としているので、お客様に長く使っていただき、リペアも受け付けています。

衣料品業界では大量な製品廃棄が問題となっていますが、Foxfireはほとんど製品廃棄していないのも特徴のひとつといえます。

現在、登山用品店やアウトドア専門店でのお取り扱いのほか、直営店 Foxfire Store を全国に40店以上で展開しています。

ティムコの成長戦略

お客様との接点の強化

当社では最終消費者向けの商品を取り扱っていますが、フィッシング用品のほとんどは釣具店さんへの販売で、お客様にはほとんど直接販売していません。

また、直営店のあるFoxfireについては、直接お客様との接点はあるものの、お客様へのサービス提供が不十分であると感じています。

まず、SNSやHPを活用した情報発信とともに、積極的な販売促進を行うと共に、会員制度を拡充していきます。

会員制度の充実により、よりパーソナライズされたサービスを提供していくほか、顧客のプロファイルのフィードバックを強化し、商品開発やマーケティングに役立てていきます。

また、リアルな体験も重要視しています。スポーツや音楽などは実際に体験するだけでなく、鑑賞することで楽しむことができますが、キャンプやフィッシングは自分で体験することで初めて楽しさを味わうことができます。

例えば、スノーピークさんと共同でオープンした「Foxfire白河高原」(福島県)は、湖畔にある店舗で、目の前の湖でお客様が釣り体験できる環境になっています。

初心者の方々には釣りのレクチャーを、また、上級者の方々は中々試し振りでいない高額なロッドもお試しできるレンタルサービスも提供しています。

株式会社ティムコ 第54期(2023年11月期)決算説明補足資料 より引用

また、キャンパーズアンドアングラーズでは、キャンプと釣りを融合させた体験型店舗となっており、今後様々な体験をお客様に提供してまいります。

株式会社ティムコ 第55期(2024年11月期)第2四半期決算説明補足資料 より引用

さらに、群馬県の上野村とも包括連携協定を締結し、アプローチに優れた現地の漁協と手を組みながらフライフィッシングの普及に努めています。

株式会社ティムコ 第55期(2024年11月期)第2四半期決算説明補足資料 より引用

EC分野の拡大

ティムコの全商品を見ることができる場所はありません。

専門店でも全てを取り揃えることはできないため、店舗に行っても欲しい商品が手に入らないという消費者からの声もありました。

株式会社ティムコ 第54期(2023年11月期)決算説明補足資料 より引用

そこで、自社のウェブサイトをリニューアルし、使い方がわかる動画や画像で説明し、安心して購入できるECサイトを構築しています。

もちろん当社のECサイト経由で購入していただくほか、商品の情報を幅広く提供することで、消費者がリアルな店舗で購入することも視野に入れています。

一種のマーケティング活動としても活用し、顧客のUI/UXを高めるようなサイト作りを心がけていきます。

株式会社ティムコ 第54期(2023年11月期)決算説明補足資料 より引用

海外への展開

海外には多くの潜在顧客がいるため、国内以上にマーケットを広げていくことができると考えています。

株式会社ティムコ 第54期(2023年11月期)決算説明補足資料 より引用

まず、フライ用品における知名度は欧米で確立されているため、グローバルブランドとなるべく商品ラインナップを拡充していきます。

また、ルアー用品に関しては欧米向けに販売を強化していきます。

特にアメリカでは、日本の繊細な釣り方や道具が注目されており、今後も需要が伸びていくと考えています。

そして、円安で輸出が追い風という状況もあり、これをチャンスと捉えてルアー市場の拡大を目指します。

株式会社ティムコ 第54期(2023年11月期)決算説明補足資料 より引用

注目していただきたいポイント

当社では安定配当を基本としています。安定した財務体質は株主の皆様からの賜物でありますので、安定した配当で還元しております。

ただし、ROE(株主資本利益率)やPBR(株価純資産倍率)といった指標では、今後改善すべき点があります。

2024年度の上半期については、暖冬による防寒衣料の販売低迷や釣用品市場の市況低迷により、第一四半期、第二四半期ともに前年と比べて厳しい状況でした。

しかし、当社の特徴は売上総利益率の高さにあり、売上が上がると最終利益が大幅に増加する傾向にあります。

売上高の回復が利益に直結するため、まずはトップラインを上げていきたいと考えています。

業界全体としては急成長を目指す業界ではないため、安定的な一桁成長を続けることが目標です。

フィッシング業界、アウトドア業界ともに自然環境が相手です。例えば、魚の数が倍増したからといって売上が倍増するわけではありません。

当社は「身の丈に合った成長」を基本に、着実な成長を目指していきます。

投資家の皆様には、安定した配当方針と堅実な成長戦略に注目していただければと思います。

投資家の皆様へメッセージ

現在の状況を正直に申し上げますと、ティムコの業績は振るわない状況にあります。

まずは、業績が低迷する中では、株価が向上しにくい状況でありますので、まずは業績向上に向けて取り組んでまいります。

長期的な視点で事業を見据え、安定した成長を遂げることを目指しています。

スローガンである「Think in the field」を軸に、フィールドでのリアルな体験を重視し、自然との共生を図ることで、社会全体の平和と繁栄に貢献することを目指しています。

この取り組みを通じて、持続可能な成長と企業価値の向上を実現します。

投資家の皆様には、短期的な成果だけでなく、長期的な視点で当社の成長を見守っていただきたいと思っています。

今後とも、ティムコへのご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

株式会社ティムコ

本社所在地:〒130-8555 東京都墨田区菊川三丁目1番11号

設立:1969年12月1日

資本金:1,079,998千円(2024年7月アクセス時点)

上場市場:東証スタンダード市場(1996年6月18日上場)

証券コード:7501

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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