【8008】株式会社ヨンドシーホールディングス 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年8月1日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ヨンドシーホールディングスは常に時代の変化に対応し、水のように姿を変え、新たな価値を創造し続けるDNAを有しています。

代表取締役社長の増田 英紀氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社ヨンドシーホールディングスを一言で言うと

新しいことにチャレンジし続ける風土・DNAを有したグローバルファッション創造企業です。

ヨンドシーホールディングスの沿革

株式会社ヨンドシーホールディングス代表取締役社長 増田 英紀氏

創業経緯

1950年、10人の有志によって「十和織物株式会社」として設立された当社は、繊維問屋からスタートし、順調に成長を遂げました。

しかし、当時の東京大学助教授であった林 周二氏が著した「流通革命」に触発され、流通業界に大きな変革が訪れていることを認識しました。

危機感を持った経営陣は欧米の流通機構を視察し、その知見を基に新たな方向性を模索したそうです。

その結果、問屋機能を中心に消費者に近いリテール事業と、より川上となるアパレルメーカー事業の確立を目指し、「流通機能の強化」を掲げました。

そして1967年には、フジ宇和島店を開店し、小売業への進出を果たしました。

なお、株式会社フジは1987年に上場(※当社は1972年に上場)を果たしております。

「4℃」ブランドの確立

1986年に「4℃」ブランドをトータルプロデュースするために、株式会社エフ・ディ・シィ・プロダクツを設立しました。

「4℃」は1972年に原宿で数人の若者から誕生したブランドで、当時から独自性の高い商品を次々と展開し、急速に成長していました。

当初、アパレル卸を営んでいた当社は、お得意様への提案力を高めるために、アパレルのモデル店舗を作り、運営を行っていました。

そのことがきっかけで「4℃」ブランドとの関係が生まれ、その後、「4℃」は当社グループの一員となりました。

当社グループに加わった後、「4℃」ブランドは百貨店への出店や直営店の新規出店を積極的に進めていきました。

それまで日本のジュエリー市場においては、それまで宝飾品やアクセサリーという高価なジュエリーが主流でした。

「4℃」の台頭により、日常使いが可能な本物のジュエリーとして「ファッションジュエリー」という新たなジャンルと文化を創出しました。

ホールディングス体制へ

2006年、当社はグループ全体の事業の集中と選択を加速させ、資源を有効活用するためにホールディングス体制へと移行し、企業価値のさらなる向上を目指しました。

この組織再編により、効率的な経営資源の配分が可能となり、グループ全体の成長を促進することができました。

さらに、2013年には、主たる業種を卸売業から小売業へと変更し、お客様により近い企業となることを目指しました。

また、企業の永続性を追求するためには当社のブランド力と事業領域を強化することが必要だと考え、社名を「4℃ホールディングス」へと変更しました。

現在は、持続可能な企業として成長していくために商品戦略と販売戦略の見直しをかけ、第7次中期経営計画を進めています。

株式会社ヨンドシーホールディングス 統合レポート 4℃レポート2024 より引用

ヨンドシーホールディングスの事業概要と特徴

概要

当社の事業はブランド事業とアパレル事業(OEM・ODM事業、小売事業)の2セグメントで展開しています。

ターゲットは、各事業によって異なります。

ブランド事業においては、主に百貨店を訪れる高品質な商品を求めるお客様に向けて「4℃」ジュエリーを中心にブランド展開を行っています。

OEM・ODM事業では専門店を主要な取引先とし、生産背景と企画力を活かした商品提供を行っています。

小売事業では幅広い層のお客様に向けて、地域の日常生活を応援する、総合衣料品を取り扱うデイリーファッション「パレット」をチェーン展開しています。

外部環境の変動にも柔軟に対応できる事業ポートフォリオであるため、コロナ禍の非常時においても安定した利益を創出することができました。

事業における優位性

国内で圧倒的な知名度を誇る「4℃」

当社グループの主力事業であるブランド事業における最大の強みは、「4℃」ブランドの圧倒的なブランド力です。

国内のジュエリーブランドとして高い知名度を誇り、女性の約9割、男性でも約6割の方に認知されています。

この強固なブランド力が、お客様からの信頼と支持を集め、当社の安定した成長を支える大きな要因となっています。

デザインとクラフトマンシップ

「4℃」は、女性の毎日を輝かせるジュエリーを創り出すために、身に着ける女性と調和しながら、あらゆる魅力を引き出す本物の美しさを追求してきました。

シンプルでありながら、女性の持つ優しい雰囲気を引き立てる柔らかくしなやかな曲線、360度どの角度から見ても美しい立体的なフォルムは、「4℃」ジュエリーの特徴です。

細部にまで計算されたシンプルで澄んだラインは、身に着けたときに初めて完成される美しさを実現しています。

「4℃」のアトリエでは、原型師と呼ばれる熟練の職人がデザイン画からジュエリーを立体に起こします。

彼らは年月をかけて磨かれた卓越した技術を駆使し、試行錯誤を繰り返しながら、妥協のない姿勢でひとつひとつのジュエリーを丁寧にかたちづくっています。

当社は同業他社と比較すると幅広いデザイン、数多くの型数を展開しており、数多くのジュエリーを手掛けることで職人としての技量を磨くことができることも魅力となっています。

高い技術力を持った原型師達とその技術から生み出される多種多様のデザインは当社のブランド力を支える大きな強みとなっています。

ジュエリーSPA(製造小売業)の構築

ブランドビジネスにおいては、デザイン、品質、接客サービス、店舗空間、広告宣伝など、ブランドを構成するすべての要素が統一感を持つことが重要です。

この統一感こそが、ブランドの価値を高め、お客様からの信頼を得るための基盤となります。

当社のブランド事業では、企画・デザインから製造、そして店頭での小売までを一貫して自社でコントロールするジュエリーSPA(製造小売業)体制を確立しています。

この体制により、ブランド全体の統一感を維持しながら、お客様に満足していただけるような商品を生み出すビジネスモデルを構築しています。

お客様に対して高品質な商品とサービスを提供し、ブランドの信頼性と価値を持続的に向上させることが可能です。

株式会社ヨンドシーホールディングス 統合レポート 4℃レポート2024 より引用

ヨンドシーホールディングスの成長戦略

第7次中期経営計画

コロナ禍を経て、社会経済の正常化が進む中、市場環境には依然として非連続的な大きな変化が見られます。

株式会社ヨンドシーホールディングス 第74期(2024年2月期)決算説明資料 より引用

現在、「4℃」の主要チャネルである百貨店では、高額品やインバウンド需要の増加により、非常に好調な業績推移を続けています。

また、ECチャネルも拡大を続け、さらなる成長が期待されています。

2024年度は、第7次中期経営計画「Challenge for Future 未来への挑戦 ~2030年に向けて~」の初年度となります。

この計画では、「環境変化への対応」を前提とし、「顧客提供価値」を追求することが基本方針です。

ブランド事業においては、百貨店チャネルでの1店舗あたりの売上高の拡大、ECチャネルのさらなる成長、顧客化の推進によるリピート売上の拡大を通じて、着実な利益成長を図ります。

また、システム投資にも力をいれており、ブランド事業では現在基幹システムの刷新を進めています。新たなシステムでは、企画・生産からECおよび店頭販売までを一元管理できる体制を構築します。そして、お客様との接点を強化し、パーソナルなデータの蓄積、活用によりエンゲージメントを強化していきます。

これにより、お客様一人ひとりに合わせた商品企画やサービスの提供が可能となり、LTVを高めるための施策づくりに役立つと考えています。

アパレル事業においては、「パレット」の新規店舗を毎年10店舗ずつ出店し、売上高の拡大を目指します。このように、将来の飛躍に向けた成長基盤の構築をこの中期経営計画の3年間で進めていきたいと考えています。

株式会社4℃ホールディングス 第74期株主通信 より引用

「4℃」ブランドの新しい提供価値の基盤づくり

「4℃」ブランドは、その高い認知度とシンプル・上品・清楚なデザインにより、女性だけでなく、男性からのギフトニーズにおいても高い支持を獲得してきました。

さらに、2012年以降は新規ブランドの開発・育成を通じたチャネル戦略の推進により、ブランド事業は大きく拡大しました。

しかし、社会の大きな変化と消費者価値観の多様化に伴い、主要なお客様である女性がジュエリーに求めるものも変化しているように感じています。

当社は、企業およびブランドの永続性に対する思いを「100年企業」「100年ブランド」という言葉に込め、その実現に向けた取り組みをしています。

特に、「4℃」ブランドが「100年ブランド」となるためには、今後50年を見据えた戦略を考えていくことが必要です。

株式会社ヨンドシーホールディングス 第74期(2024年2月期)決算説明資料 より引用

第7次中期経営計画期間においては、女性からの支持拡大に向けた商品・販売促進戦略の見直しを進め、基盤を強化していきます。

具体的には、商品企画のテイストの幅を大きく広げ、「4℃」の企画ポートフォリオを充実させることで、ブランドの多様性を表現していきます。

そのために、ディレクターを増員し、商品企画体制を刷新するとともに、店頭演出も大きく変化させます。

株式会社ヨンドシーホールディングス 統合レポート 4℃レポート2024 より引用

また、「4℃」の新たな世界観を多くの女性に伝えるために、プロモーションにも力を入れていく方針です。

2030ビジョン

第7次中期経営計画では、主力ブランドである「4℃」のブランド価値をアップデートし、成長基盤を構築することに重点を置いています。

その上で、2027年度以降に開始される第8次中期経営計画では、未来志向の成長投資を積極的に行い、飛躍的な利益成長を実現していく方針です。

株式会社4℃ホールディングス 第74期株主通信 より引用

成長投資には、新規商材や新規ブランドの開発を通じた新たな事業・マーケットの開拓、海外出店、M&Aによる事業領域の拡大など、さまざまな選択肢があります。

当社グループの磐石な財務基盤を活かしながら積極的な投資を実行し、ブランド事業を中心に、新たな事業領域への拡大を目指していきます。

さらに、アパレル事業では、2027年度以降、「パレット」の出店ペースを現在の10店舗から15店舗へと加速させ、事業のさらなる成長を図ります。

2030年に向けて、成長戦略と資本・財務戦略を両輪で進めていくことで、資本収益性の向上を図ってまいります。

株式会社ヨンドシーホールディングス 第74期(2024年2月期)決算説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

当社は、新しいことにチャレンジし続ける企業風土とDNAを持っています。

創業以来、事業領域を拡大し、成長を遂げてきた当社の歴史や、ファッションジュエリーという文化を日本に根付かせた功績は、このDNAの象徴です。

常に時代の流れに合わせ、お客様の一歩先を見据えたニーズに応えることで、今日まで成長を続けてきました。

現在、これまでジュエリー事業としていたセグメントを「ブランド事業」という名称に変更し、「4℃」ブランドの刷新を進めています。

これまではクリスマス商戦という女性へのギフトニーズを取り込む戦略で12月に売上が集中していましたが、持続的な成長を目指すうえで、エンドユーザーである女性のブランドに対する好感度を高め、支持を拡大していくことが大切であると、あらためて感じています。

2024年度はMD改革に取り組んでおります。

商品のテイストの幅を広げ、ファッション性を高めるとともに、店頭演出を大きく変え、プロモーション活動に積極的に取り組むことで、「新しい4℃」を表現していきます。

この取り組みは将来的な成長を見据えたチャレンジでもあります。

当社の挑戦するDNAは、今後も人財教育を通じて次世代に引き継がれ、新たな市場の開拓や持続的な成長を実現する基盤になると期待しています。

投資家の皆様へメッセージ

当社は現在、今後の持続的成長を具現化するために、基盤構築に取り組んでいます。

ブランド事業は高い収益性を誇り、「4℃」ブランドの価値を高めていくことこそが、当社グループの最大の成長戦略です。

過去の成功体験を捨て、今の時代に求められているものと向き合い、未来に向けて「4℃」ブランドの価値を更に輝かせるための具体的な施策を、一つ一つ丁寧に実行しています。

また、アパレル事業では、「パレット」が関東編への進出も果たし、出店拡大フェーズに入っているため、今後も安定的な成長を見込んでいます。

そして株主還元では、DOE4%以上を指標に掲げ、安定的・継続的な配当を実施しております。

将来的には利益成長に伴う100円配当の実現も目指しています。

加えて、機動的な自己株式取得に取り組むことで、総還元性向の水準向上を図ってまいります。

株式会社ヨンドシーホールディングス 第74期(2024年2月期)決算説明資料 より引用

今後も安定した経営を心がけ、大きな成長可能性を持つブランドビジネスを育てることで、企業価値向上に努めてまいります。

ぜひ、応援のほど、よろしくお願いいたします。

株式会社ヨンドシーホールディングス

本社所在地:〒141-0021 東京都品川区上大崎二丁目19-10 

設立:1950年5月18日

資本金:24億8,652万円(2024年8月アクセス時点)

上場市場:東証プライム市場(1972年12月1日上場)

証券コード:8008

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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