【6096】株式会社レアジョブ 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年11月27日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社レアジョブは「Chances for everyone, everywhere.」をグループビジョンに掲げ、テクノロジーで世界中の人々が国境や言語の壁を越えて活躍できる社会を創造します。

代表取締役社長の中村 岳氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社レアジョブを一言で言うと

「Chances for everyone, everywhere.」を実現する会社です。 

レアジョブの沿革

株式会社レアジョブ代表取締役社長 中村 岳氏

創業の経緯

当社の創業は2007年です。

当時、英語を話せる場は非常に限られており、「英語を勉強しよう、英会話ができるようになりたい」と考えた場合、選択肢は英会話スクールに通うか、あるいはアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアといった英語圏の国に留学するくらいしかなく、どちらも時間や費用がかかるものでした。

一方で、2007年というと様々なサービスやツールのオンライン化が生まれてきた頃で、Skypeなどのツールが登場し始めた時期でもありました。

そこで、オンラインツールを活用して海外の人と気軽に会話できる環境を整えれば、より多くの人が英語を話せるようになるのではないかと考え、共同創業者とともにSkypeを利用したオンライン英会話サービスを開始しました。

これが「レアジョブ英会話」の始まりです。

英語が公用語であり、教える技術にも長けたフィリピン人を講師とし、サービスの料金は、毎日25分のマンツーマンレッスンを月額5,000円(当時)というリーズナブルな価格設定を実現しました。

リーズナブルな価格設定かつ短時間から利用できるので、継続的に学びに繋がり、英語力を着実に伸ばせる好循環な仕組みを作り上げました。

レアジョブの認知拡大

リリース当初は、「フィリピン人から英語を学ぶ」「オンラインで英語を学ぶ」という考えを広めるためにさまざまな取り組みを行いました。

フィリピン人講師と直接会話する場を設けて、彼ら/彼女らの英語力を実感していただいたり、オンラインでも十分に英語を学べることを理解していただけるようなデモンストレーションの機会を提供したりしました。

その結果、「WBS(ワールドビジネスサテライト)」などのテレビ番組に取り上げられるなど、徐々に認知が広がっていきました。

そして、個人向けの英会話サービスとして、口コミやWEBマーケティングを活用しながら少しずつ利用者を伸ばしていったのです。

事業領域の拡大

創業当初は個人向けのみでしたが、認知が拡大したことで「企業向けにもサービスを提供してほしい」といった要望が寄せられるようになりました。

そこで、人事担当者向けの専用サイトを整備するなど、2009年から本格的に法人向けサービスを開始しました。

こうして法人向けサービスが拡大し始め、2014年ごろからは学校向けのオンライン英会話サービスも提供を開始しました。

子どもから大人まで幅広い層を対象にしたコンシューマー向けサービスに加え、法人や学校にも対応するサービスを整えながら、事業を拡大していきました。

また、2016年には子ども向けオンライン英会話を行う株式会社リップル・キッズパークがグループ入りしました。

それに加え、2023年には小学校や中学校に外国人英語指導助手(ALT)を派遣するALT派遣事業などを行う株式会社ボーダーリンクを完全子会社化し、現在の主力事業として成長しています。

株式会社レアジョブ 2025年3月期 第2四半期 決算補足説明資料 より引用

レアジョブの事業概要と特徴

概要

当社の事業セグメントは、2つに分かれています。

1つは、オンライン英会話サービス「レアジョブ英会話」やビジネス英語スピーキングテスト「PROGOS®」などを提供するリスキリング事業です。

もう1つは、ALT派遣や児童生徒向けオンライン英会話サービス、英語教室の運営などを行う子ども・子育て支援事業です。

株式会社レアジョブ 2025年3月期 第2四半期 決算補足説明資料 より引用

事業における優位性

オンライン英会話のパイオニアとして

当社の大きな強みは、オンライン英会話を通じて英語力を着実に伸ばせるサービスを提供している点です。

現在、会員数は110万人を超え、多くの方々に継続的に利用いただいています。

その背景には充実したトレーニング体制と、それによる講師陣の質の高さがあると考えています。

講師にはレッスン提供を開始する前に十分なトレーニングを実施するのに加え、生徒向けと講師向け、それぞれに対して専用教材を用意しています。

特に講師向け教材では、「日本人が間違いやすいポイント」や「注意すべき点」を明確に示すことで、一定以上のクオリティを担保しているのです。

また、優秀な講師を確保するため、働きやすい環境を整え、口コミや講師同士の紹介を活用した採用活動も行っている他、講師のロイヤリティを高める取り組みとして、年に数回のイベントを開催しています。

ランチやパーティーを通じた交流の場を設けるだけでなく、表彰や指導のヒントを提供することで、講師との厚い信頼関係を築いています。

こうした取り組みの結果、現在当社には6,000名以上の講師が在籍しており、安定した品質のオンライン英会話サービスを提供しています。

株式会社レアジョブ より提供

ビジネス英語スピーキングテスト「PROGOS®」

当社が提供するビジネス英語スピーキングテスト「PROGOS®」は、CEFR(セファール)に準拠したテストです。

CEFRは言語能力をレベル別に評価する世界標準の基準ですが、国内でCEFRに準拠したテストは非常に少ないのが現状です。

そのため、「PROGOS®」はビジネス英語力を測る指標として、多くの企業から高い評価をいただいています。

従来、ビジネスで英語力の指標とされてきたTOEIC ®L&Rは「話す」力を評価するテストではないので、たとえ800点や900点といった高得点を取得していても、実際のビジネスシーンで使える英語を話せないことが多いという課題がありました。

一方、「PROGOS®」はスピーキング力を評価するテストなので、企業が必要とする実践的な英語力を持つ人材を見極める手段として活用されています。

さらに、「PROGOS®」はAIを活用しているので、手軽に受験できることも特長です。

これらの利便性から、多くの企業に導入されており、たとえば大手EC運営事業者では新卒採用プロセスに組み込まれ、大手製薬会社では全社一括受験が実施されるなど、人事戦略の一環として幅広く利用されています。

当社は「英語力の測定ならPROGOS®」という業界スタンダードの確立を目指し、認知度を高めていきたいと考えております。

株式会社レアジョブ より提供

レアジョブの成長戦略

目指す姿

当社は世界中の人々が、それぞれの能力を発揮し、活躍できる世の中の実現を目指しています。

英語力のみにとどまらず、グローバルリーダーに必要なスキルや異文化コミュニケーション能力といった幅広いスキルを身につけるサービスを提供することで、このパーパスを実現させたいと考えています。

そのため、自社開発のサービスに加え、他社が提供するパッケージも活用し、法人のお客様に多様なサービスを提供しています。

具体的には、英語を使ったディスカッションや仕事のシチュエーション別トレーニング、たとえば交渉術やプレゼンテーションスキルといった実践的なプログラムを展開しています。

こうした取り組みにより、ビジネスパーソンを中心に、幅広い方々にサービスを提供し、当社の目指す姿に向けてさらなる成長を遂げてまいります。

ALT派遣サービスの拡大

近年、当社の事業においては自治体向けのALT派遣サービスが特に成長を遂げています。

この成長の背景には、自治体がALTの直接雇用から派遣型へとシフトする動きがあり、その中で他社からシェアを獲得していることが主な要因です。

株式会社レアジョブ 2025年3月期 第2四半期 決算補足説明資料 より引用

ALT派遣事業を営むボーダーリンク社では、高品質なサービス提供と強力な営業力を組み合わせ、多くの自治体から選ばれています。

他社のシェアをさらに獲得できる余地があることから、さらなる事業成長に向け、人材投資を強化しています。

たとえば、オンライン英会話サービスにおいて一定の成果を上げた優秀なフィリピン人講師をALTとして派遣するなど、当社グループ独自の講師採用も実践しています。

また、パキスタン政府とも提携し、現地で英語指導経験がある人材などを日本に派遣する取り組みも増えてきました。

今後も安定的に講師を派遣し、自治体のニーズに応えることで、さらなるサービス拡大を目指していきたいと考えています。

学研ホールディングスとの資本業務提携

非常に大きなシナジーがあると考え、学研ホールディングス(以下、学研HD)と資本業務提携契約を結びました。

学研HDは幅広い世代に向けたサービスを提供しており、法人向け研修や学校教育機関向けのサービス、さらにはオンライン英会話も手掛けています。

そのため、当社グループと相互に補完し合える領域が多く、サービスごとのオペレーションや開発を協働することでコストを削減したり、複数のサービス間で回遊させたりするなど、効率的な事業運営を検討しています。

また、AIなどを用いた技術開発においては、当社のエンジニアリング体制を活用した協業の可能性も、考えていく予定です。

株式会社レアジョブ 2025年3月期 第2四半期 決算補足説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

学研HDとの資本業務提携を通じた今後の成長にぜひご注目ください。

当社のアセットと学研HDの多様なアセットを掛け合わせ、相互送客や事業連携を進めることで、新たな成長を目指していきます。

たとえば、学研HDでは出版事業や幼稚園運営といった豊富なアセットを保有しています。

これらを活用し、幼稚園への講師派遣やオンラインサービスの提供など、付加価値を高める取り組みも、実現可能性を探っていく予定です。

また、学研HDが展開する学校教育向けサービスと当社のALT派遣事業などを連携させることで、より多くのお客様に選ばれるサービスの提供を目指しています。

この提携を通じて、学研HDとのシナジーを最大化し、売上と利益の向上につなげていきたいと考えています。

これからの取り組みに、ぜひご期待ください。

投資家の皆様へメッセージ

これまで順調に成長を続けてきましたが、投資家の皆様の期待に十分応えられているかどうかを常に自問しています。

売上は一定の成長を遂げているものの、試行錯誤を繰り返しながら、投資のタイミングや利益を確保する時期を慎重に見極めてきました。

今期の利益は前期と比較してやや減少しましたが、その要因として、円安の影響や投資の増加、経済環境の変化が挙げられます。

ただし、来期に向けて新たな取り組みを進めるべく、事業基盤の整備や次なる成長のための仕込みに注力しています。

当社は、より収益性の高い企業へと変革し、最終的には投資家の皆様の期待を超える業績を達成したいと考えています。

また、子どもから大人まで多くの方々が英語やその他のスキルを身につけられる環境を提供し、社会に貢献してまいります。

今後とも変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

株式会社レアジョブ

本社所在地:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-27-8京セラ原宿ビル

設立:2007年10月18日

資本金:657,207千円(2024年9月末時点)

上場市場:東証スタンダード市場(2014年6月27日上場)

証券コード:6096

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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