【9163】株式会社ナレルグループ 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2025年1月28日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ナレルグループは建設業界を中心に技術者人材派遣・紹介に特化し、誰もが「プロ人材に、なれる」会社を目指しています。

代表取締役の小林 良氏に事業の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社ナレルグループを一言で言うと

「プロ人材に、なれる。」会社です。 

ナレルグループの沿革

株式会社ナレルグループ代表取締役 小林 良氏

創業の経緯

2008年11月、建設業界への人材派遣を目的に「ワールドコーポレーション」を設立しました。

少し話は遡りますが、私が小学校6年生の頃、父の経営していた会社が倒産してしまいました。

それでも、経営者として働く父の姿はかっこよく映り、自分もいつか会社を興したいと考えるようになりました。

学校を卒業して最初に就職したのは、時計などの卸売を行う会社でした。

その後、ホテルの会員権を販売する会社に転職し、ホテル業界を対象にした派遣ビジネスを始めようと考えていました。

そのような折、建設業界の派遣事業の存在を知る機会があり、父から「今後ニーズが高まる建設業の派遣事業に挑戦してみたらどうか」と勧められました。

しかし、当時の建設業界はバブル崩壊の影響を受けて低迷していましたので、私自身はネガティブな印象を持っていました。

ただ、業界を詳しく調べてみると、若手人材の不足が深刻であること、業界規模が非常に大きいこと、そして技術者派遣の利益率が高いことがわかりました。

「実は魅力的な市場ではないか」—そう考えた私は、大胆な決断を下しました。

「営業ならなんとかなる」という根拠のない自信も後押しし、建設業の派遣事業をスタートさせるため、2008年11月に「ワールドコーポレーション」を設立しました。

リーマンショックの影響と若手人材の採用

設立からの数年間は、想像以上に厳しいものでした。

リーマンショック直後ということもあり、会社設立から2年間は存続の危機に立たされ、顧客からほとんど相手にされず、いつ倒れてもおかしくない状況が続きました。

そのような中、ハローワークを活用した人材採用が功を奏しました。

リーマンショックで職を失った人を中心に「施工管理の技術者」を採用し、派遣人材を増やすことができました。

派遣事業はストック型ビジネスで、採算分岐点に到達するまでが最も苦しい時期です。

一人ずつ着実に積み上げていくしかありませんでした。

しかし、リーマンショックが落ち着き景気が戻り始めると、徐々にハローワークでの採用が難しくなりました。

当時の建設業界では「経験者を採用するのが常識」という風潮がありましたが、設立間もない当社には資金がなく、採用広告に50万〜100万円かけても経験者を集めることができません。

そこで目を向けたのが、未経験の若手人材です。

若年層の就職率がそれほど高くなく、求職者が多かった時期であったこともあり、「未経験の若手なら採用できるのでは」と考えました。

試験的に採用コストを抑えて募集を出したところ、これが大きく機能し、結果的に事業の成長スピードが一気に加速しました。

2023年7月に上場

「未経験者を積極的に採用し、社内教育を経て施工管理者として派遣する」ビジネスモデルが市場から高く評価され、着実に成長していきました。

そして2023年7月、ついに上場を果たしました。

最初に上場に挑戦したのは2016年でしたが、上場準備の業務負担も大きく、事業成長を優先すべきと判断して断念しました。

一定の事業成長を実現できたことから2019年頃に改めて上場に挑戦するわけですが、今度は外部パートナーの力も活用すべきと考え、ファンドの助言を受けながら準備を進め、上場を果たしました。

コロナ禍の影響もありましたが、2023年7月に目標を達成することができました。

上場によって経営基盤が整い、人材採用や事業の多角化を進めやすくなりました。

特に管理部門のレベルが向上したことを実感しています。

私はもともと営業畑の人間で、管理業務の主導は得意ではありませんでしたが、現在は優秀なメンバーが揃い、リスク管理を含めた組織全体のレベルアップが図れています。

現在は、会社として次のステージへ進んでいることを強く感じています。

株式会社ナレルグループ 個人投資家説明会資料 より引用

ナレルグループの事業概要と特徴

概要

当社は技術者派遣を事業の中心としています。

未経験者を採用し、研修を通じて育成した後、お客様と共に学びながらさらなるスキル向上を図り、人材の付加価値を高めることでサービス品質の向上につなげています。

株式会社ナレルグループ 個人投資家説明会資料 より引用

建設ソリューション事業では、建設・プラント業界における施工管理者の派遣や人材紹介を手掛けています。

一方、ITソリューション事業では、IT業界向けの技術者派遣(SES)を中心に展開しています。

このITソリューション事業は、もともと別のオーナーが運営していたものを、事業を継続する形で当社が引き継いだ経緯があります。

建設業界とは異なる領域ですが、大手IT系企業から中小企業まで幅広い取引先を持ち、多様な業務を担っています。

また、未経験人材を採用し、育成するビジネスモデルは建設ソリューション事業と同じです。

建設ソリューション事業・ITソリューション事業の両方において(人材紹介を除く)、お客様と一定期間の契約を結び、継続的な利益を確保するストック型ビジネスモデルを採用しています。

株式会社ナレルグループ 個人投資家説明会資料 より引用

事業における優位性

「採用力」と「教育力」

当社が最も強みとしているのは、採用力と教育力です。

2025年度には年間約2,000人の採用を目標としています。

年間1,000人以上の採用を実現できる企業は限られており、特に建設業に特化した派遣事業者の中では非常に少ない状況です。

お客様からの信頼を獲得し、継続的に人材を活用していただくためには、採用後の育成が重要になります。

そこで当社では、新卒社員には1ヶ月、中途採用者には2週間の研修期間を設けています。

入社時点では未経験者が大半を占めるため、まずは建設業界で働くための心構えを教えることからスタートし、業界知識や基本情報を丁寧に伝えることでミスマッチを防いでいます。

特に、離職を最も大きなリスクと考えており、初期段階で「働く姿勢」をしっかりと身につけてもらうことを重視しています。

その後、半年から1年が経過したタイミングで、各自の業務内容や習熟度を確認し、必要に応じた技術研修を実施しています。

研修内容は一律ではなく、個々の成長度合いや業務フェーズに応じて柔軟にカスタマイズしながら進めています。

IT分野に関しては、入社直後から成果が求められるケースが多いため、最初の2ヶ月間で基礎的なITスキルを習得してから現場へ送り出す体制を整えています。

このように、それぞれの分野に適した研修プログラムを構築し、人材育成に力を入れています。

株式会社ナレルグループ 個人投資家説明会資料 より引用

幅広い顧客基盤

同業他社では、スーパーゼネコンのみを取引対象としているケースが多いですが、当社ではスーパーゼネコンから地方のゼネコンまで幅広い企業と取引を行っています。

取引先の数においても業界内でトップクラスの規模を誇ります。

仮に特定の取引先で問題が発生したとしても、会社全体への影響は限定的であり、特定の企業に依存しすぎないバランスの取れた売上構成を実現しています。

これが当社の大きな強みとなっています。

ナレルグループの成長戦略

業界の展望と市場認識

当社がターゲットとする建設・プラント業界は、どちらも今後の成長が期待される分野です。

建設業界では人材不足が深刻化しており、施工管理技術者の派遣ニーズは今後も拡大していくと考えています。

株式会社ナレルグループ 個人投資家説明会資料 より引用

プラント業界も、老朽化した設備の更新や環境投資の増加により、成長の可能性が高い分野として注目しています。

株式会社ナレルグループ 個人投資家説明会資料 より引用

また、近年の建設業界では、BIM(Building Information Modeling)やCIM(Construction Information Modeling)などの新技術が導入され、DX化が加速しています。

この分野の市場はまだ寡占化が進んでおらず、大きな成長余地があります。

当社としても、この分野への投資を強化し、技術者の育成と派遣を進めていきます。

株式会社ナレルグループ 個人投資家説明会資料 より引用

派遣領域の拡大

現在、未経験者だけでなく、経験者の採用も積極的に推進しています。

一口に「経験者」と言っても、20代後半から30代の若手技術者と、50代から60代のベテラン技術者では志向やニーズが異なります。

若手層は誰もが知るような都心の大規模プロジェクトに携わることを希望するケースが多く見られます。

一方で、ベテラン層は、収入を重視する方や、これまでの経験を活かせる現場を希望する方など、求める条件が多様化しています。

営業部門では、各層のニーズに合わせた案件を積極的に開拓し、当社が保有する多様なプロジェクトを紹介することで、採用の強化を図っています。

さらに、自社採用メディア「セコカンNEXT」では最新の案件情報を掲載し、インターネット経由で「この案件で働きたい」と応募する求職者の増加につなげています。

株式会社ナレルグループ 2025年10月期 経営方針説明資料 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

人材紹介サービス

現在、人材紹介サービス事業は投資フェーズの3年目に入っています。

この事業は、ある企業から事業譲渡を受けたことでスタートしました。

建設業界では、職人をはじめとする現場作業員などの直接的な作業を伴う職種は、派遣法によって派遣が禁止されています。

そのため、職人の人材紹介は特別な許可を受けた会社のみが取り扱うことができる状況です。

日本には、こうした特別な許可を取得できる団体が3つ存在していますが、その中で実際に人材紹介事業を展開しているのはおそらく当社のみとなっています。

そのため国内市場で競争相手がほとんどいない状況です。

既に、手に職をつけたい求職者と人材不足に悩む企業のマッチングが成功しており、事業を着実に拡大しています。

この分野も、今後成長が期待できる事業の一つとして位置づけています。

派遣事業とは異なり、ストック型ビジネスではなく、1契約ごとに収益が発生するモデルですが、これまで培った採用ノウハウを活用することで、シナジーを生み出し、さらなる成長を目指しています。

株式会社ナレルグループ 2025年10月期 経営方針説明資料 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

建設DX支援

建設業界におけるDX支援のニーズは高まっていますが、実際にこの分野で活躍できる人材の育成には高度な技術や経験が求められます。

特にBIMの作図業務は、施工管理業務とは異なり、単純に現場での経験を積めば習得できるものではありません。

そのため、まずは施工管理の経験者を対象に、建設業に関する基礎知識を一定レベルまで習得してもらい、その後、社内研修を通じてBIMの操作スキルを身につけるプロセスを採用しています。

この研修は約半年間にわたり実施し、基礎的なスキルを習得した段階でチームを編成し、実際のプロジェクト現場で実務経験を積んでもらいます。

BIMのような高度な技術は、未経験者を短期間で育成し、大量に供給するモデルが難しいため、教育と実践を組み合わせながら、確実に技術者を育成していく方針を取っています。

また、建設現場におけるICTツールの導入支援にも力を入れています。

近年、建設業界ではICTツールの導入が進んでおり、当社でも専門チームを立ち上げ、企業のDX推進をサポートしています。

DX推進事業の成長率は200%を超えており、市場拡大のスピードも非常に速い状況です。

導入が広がっている各種の建設ICTツールの操作方法を社内で教育した上で、チーム派遣の形で現場に提供する仕組みを整えています。

今後も、建設業界のDX化を推進する人材を社内で育成し、企業のニーズに応えていく方針です。

株式会社ナレルグループ 個人投資家説明会資料 より引用

注目していただきたいポイント

当社は、非常に高い成長力を持つ企業であると認識していただきたいと考えています。

派遣会社は数多く存在しますが、その中でも10%以上の営業利益率を維持し続けている企業は決して多くありません。

引き続き、業界トップクラスの営業利益率の水準を維持しながら、トップラインの成長を続けていく方針です。

今後、人材不足はますます深刻化し、どのように人材を供給するかが企業成長の鍵を握るようになります。

当社では、人材供給力の強化に注力し、この5年間で採用数を倍増させるなど、着実な成長を遂げています。

こうした取り組みを通じて、企業としての競争力をさらに高め、業界全体の発展にも貢献していきます。

当社の成長戦略に、引き続き注目していただければ幸いです。

投資家の皆様へメッセージ

当社はBtoBのビジネスを展開しており、ニッチな業界で事業を手がけています。

そのため、現時点では投資家の皆様の中でまだ認知度が高いとは言えない状況です。

今期からは、個人投資家の皆様にもより関心を持っていただけるよう、積極的にIR活動を推進していきたいと考えています。

当社は、まだまだ成長の途上にあり、これからも伸び続ける企業であると確信しています。

引き続き成長を加速させ、企業価値を高めてまいりますので、今後ともご支援のほどよろしくお願いいたします。

株式会社ナレルグループ

本社所在地:〒102-0084 東京都千代田区二番町3番地5

設立:2019年5月27日(創業:2008年11月11日)

資本金:403,280,713円(2024年10月末時点)

上場市場:東証グロース市場(2023年7月21日上場)

証券コード:9163

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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