【3041】株式会社ビューティカダンホールディングス 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2025年2月4日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ビューティカダンホールディングスは花咲く未来を創り出すことを目指し、花を軸に多角的な事業を展開しています。

代表取締役社長の舛田 正一氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社ビューティカダンホールディングスを一言で言うと

「美しく豊かな世界を創造する会社」です。

ビューティカダンホールディングスの沿革

株式会社ビューティカダンホールディングス代表取締役社長 舛田 正一氏

創業の経緯

当社は、代表取締役会長である三島が1974年に熊本県熊本市で個人商店「ビューティ花壇」として創業したことが始まりです。

創業当初は地域に根ざした花屋としてスタートしましたが、1997年には有限会社ビューティ花壇として法人化し、さらに1999年には福岡支店を開設しました。

こうして九州地区を中心に事業を拡大していく中で、卸売業やブライダル事業など、多様な分野へと展開を進めてきました。

関東への進出

2000年には株式会社ビューティ花壇へと組織変更し、翌年には東京支社を開設することで関東地区への進出を果たしました。

当時、私たちが取り組んでいた「生花祭壇」を用いた葬儀の文化は、関東ではまだ一般的ではありませんでした。

生花で彩る祭壇は、主に著名人や大規模な葬儀に限られていたのです。

そこで、私たちは中小規模の葬儀でも「生花祭壇」を提供できるように取り組みました。

進出当初は競合が少なく、関東エリアでは数社しか存在していなかったこともあり、当社の価格設定や飾りつけの技術が高く評価されました。その結果、事業の拡大に繋がったと考えています。

また、フューネラル(葬儀)業界向けの「生花祭壇の技術講習会」が開催されています。

私たちも講師として参加し、全国各地から訪れる花屋に技術を伝える機会を得たことで、「生花祭壇」の普及がさらに加速したと感じています。

現在では、生花祭壇事業と生花卸売事業を中心に、多角的な事業展開を通じてさらなる成長を目指しています。

ビューティカダンホールディングスの事業概要と特徴

概要

当社は「生花」を軸に多岐にわたる事業を展開しています。

主力となる生花祭壇事業では、お客様のご要望に応じて葬儀用の生花祭壇を企画・制作・設営まで一貫して手がけています。

また、生花卸売事業では、国内外の生産者や卸売市場から仕入れた生花を、自社の他事業や全国各地の葬儀関連会社、生花小売店へ販売しています。

さらに、ブライダル装花事業では結婚式場向けに卓上花やブーケなどの婚礼用装花を制作・設営しています。

加えて、葬儀関連会社向けには基幹システムやCADシステムを開発するシステム開発事業も展開しています。

近年では、花卉の生産・販売を通じて農業分野への注力も進めており、事業のさらなる多角化を図っています。

株式会社ビューティカダンホールディングス より提供

事業における優位性

生花祭壇事業 × 生花卸売事業

当社の大きな特徴は、BtoCやBtoBといったさまざまな販売チャネルを活用している点です。

生花祭壇事業では、生花祭壇の価格は一定であるのに対し、生花卸売事業では仕入れ価格に対する一定の割合が利益として得られます。

葬儀は突発的に発生するため、常に一定量の生花を仕入れる必要がありますが、生花卸売事業で同じ品種の生花を取り扱うことで在庫を調整し、ロスを最小限に抑えています。

生花は鮮度が重要であり、美しい状態を保てる期間が限られています。

農家が花を切ってから一般の花屋に届くまでの期間が長くなると劣化が進んでしまうため、鮮度管理には特に気を配っています。

そのため、生産者との直接契約を通じて仕入れを行い、海外からの輸入も含めた取引を一元管理しています。

グループ内で在庫を滞留させることなく、さまざまな販売チャネルを活用することで効率的な運営を実現しています。

株式会社ビューティカダンホールディングス より提供

全国に広がるネットワーク

生花祭壇事業では、大手葬儀社とも取引がありますが、全国的に見ると中小規模の葬儀社との取引が多い状況です。

これは業界全体として中小規模の葬儀社が多いことに起因しており、そうした企業との取引が圧倒的に多くなっています。

一方で、大手葬儀社の場合は一定規模でエリア展開しており、生花部門を内製化しているケースもありますが、当社とは生花卸売の形で取引が続いています。

こうした取引の多様性は、さまざまな角度からのアプローチによって生まれています。

業界内でもこの柔軟かつ幅広いアプローチは当社の強みだと考えています。

全国展開を支える高品質の技術

全国規模で高品質な生花祭壇を提供できることも、当社の大きな強みです。

社内全体で技術のレベルを維持し、お客様に満足していただけるサービスを提供できていると自負しています。

株式会社ビューティカダンホールディングス より提供

ビューティカダンホールディングスの成長戦略

既存事業の方向性

葬儀業界においては、今後も死亡者数の増加が予想されており、特に団塊の世代の影響により、2040年頃までがピークになると見込まれています。

このため、少なくとも今後10年以上は需要が続くと考え、この分野での事業拡大を積極的に進めていく方針です。

2024年1月には持株会社体制に移行し、生花祭壇事業を東日本地域と西日本地域に分割しました。

これにより、株式会社ビューティ花壇東日本と株式会社ビューティ花壇西日本がそれぞれの地域で事業を承継しています。

ホールディングス体制によって経営の効率化を図り、迅速な意思決定とさらなる成長を目指しています。

また、水平型のM&Aも積極的に展開していきます。

全国各地に点在する花屋の多くは、小規模で地域の葬儀社から依頼を受け、少人数で運営しています。

しかし、日本全体の高齢化に伴い、後継者不足が深刻な社会問題となっている現状があります。

当社と協業することで事業の継続が可能になり、さらにグループ化を進めることで、この課題の解決に貢献していきたいと考えています。

株式会社ビューティカダンホールディングス 2025年6月期(第29期)~2027年6月期(第31期) 中期経営計画 より引用

新事業の創出と事業多角化

当社では、事業基盤の強化を図るため、新規事業の創出と多角化を進めています。新事業として特に注力しているのが、生花の内製化です。

当社は農業法人(農地所有適格法人)としての要件を満たしており、これを強みとして、生産から販売までを一貫して行う体制の構築を目指しています。

これにより、より安定した供給とコスト競争力の強化を図る考えです。

さらに、葬儀業界向けのソフトウェア開発を手がけるSHFとの連携にも力を入れています。もともとSHFはCADなど結婚式業界向けのソフトウェアを開発していましたが、当社の葬儀事業との顧客層の重なりを活かし、幅広い提案が可能になりました。

このシナジーを最大限に活かし、顧客にとってより利便性の高いサービスを提供していきます。

また、2024年7月には新たに設立した「THE MOMENT」によって飲食事業にも参入しました。

ブライダル事業でホテル業界に携わってきた経験豊富なスタッフが在籍しており、その人材を活かして飲食業を展開しています。

すでに本社近くにある、KOKO HOTEL Premier 熊本の最上階にてレストランを運営しており、地域に根ざしたサービスを提供しています。

このように、生花事業を基盤としながらも、多角的な事業展開を通じてさらなる成長を目指しています。

今後も新たな分野に挑戦し、持続的な発展を遂げていきたいと考えています。

株式会社ビューティカダンホールディングス 2025年6月期(第29期)~2027年6月期(第31期) 中期経営計画 より引用

注目していただきたいポイント

今後、特に力を入れていきたいのは「生産部門」です。

為替の変動や気候変動の影響により、野菜の価格が高騰するなど、農業全体にさまざまな課題が発生していますが、生花業界も同様に影響を受けています。

そのため、気候に左右されにくい生産体制を構築し、安定した供給を目指していきます。

生花の生産拡大に向けては、生産委託を通じて農家の方々と協業しながら、当社自らも農業分野への参入に挑戦しています。

生産を内製化することで、原価の安定化が期待できると考えています。また、施設を新設する際には一定の資金が必要になりますが、露地栽培と施設栽培をどのように組み合わせて展開していくかが今後の課題と捉えています。

これからも農業関連の取り組みをはじめ、多様なビジネスチャンスを生み出しながら、事業の拡大を進めていきます。

こうした取り組みを通じて、企業としての成長を加速させ、収益を向上させることで、その成果を株主の皆様にも還元していきたいと考えています。

投資家の皆様へメッセージ

現在、気候変動や生花の廃棄問題、さらには高齢化による後継者不足など、多くの社会課題が存在しています。

これらの課題に真摯に向き合い、解決に貢献していくことが、私たちの使命だと考えています。

これからも生花を中心とした事業をさらに拡大し、全国各地へのエリア展開を進めていきます。

また、農業分野にも注力しながら、多角的な事業展開を通じて企業全体としての成長を目指してまいります。

そして、株主の皆様への還元についても積極的に取り組んでいく所存です。

今後の成長にご期待いただくとともに、引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。

株式会社ビューティカダンホールディングス

本社所在地:〒862-0967 熊本県熊本市南区流通団地1-46

設立:1974年5月1日

資本金:213,240,000円(2024年6月末時点)

上場市場:東証スタンダード市場(2006年6月19日上場)

証券コード:3041

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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