【2378】株式会社ルネサンス 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年5月15日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ルネサンスは「人生100年時代を豊かにする健康のソリューションカンパニー」を目指しています。

代表取締役社長の岡本 利治氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社ルネサンスを一言で言うと

世の中の身体的、精神的、社会的な健康課題解決に貢献する「生きがい創造企業」です。

ルネサンスの沿革

株式会社ルネサンス代表取締役社長 岡本 利治氏

創業経緯

創業者は現会長の斎藤です。

斎藤は大日本インキ化学工業(以下DIC)の研究者として、スイスに留学していた際、休暇でイタリアのフィレンツェを訪れました。

そこでルネサンス文化に触れ、「人間には無限の可能性がある」と感じたことが創業のきっかけとなっています。

また、当時の日本は高度経済成長期で、多くの企業がモーレツ型の働き方を推奨するなか、斎藤はスイスで接したような仕事もレジャーも大切にする文化を日本に広めたいと考えました。

そして、1979年にDICの社内ベンチャーとしてテニススクール事業を立ち上げました。

これがルネサンスの創業の原点です。

総合型スポーツクラブへ

ボーリング場を改装してオープンした「ルネサンス テニススクール幕張」は、テニスブームもあり、開業時には3,000人以上の入会者が集まりました。

その後、蒲田や福岡等にもテニススクールを展開し、同時にテニススクールの業務受託を行い、事業を拡大していきました。

事業が順調に進む一方で、テニスブームがいつまで続くか分からないという危機感を持った斎藤は、幕張のテニスコートの一部を、プールとジムに改装しました。

これが現在の総合型スポーツクラブの原型であり、最初のターニングポイントでした。

全国展開・上場・新領域への拡大

その後、大手企業のスポーツクラブの受託事業やフィットネスクラブ、リゾート施設のコンサルティング事業で企業体力をつけ、1987年に水戸に直営の総合型スポーツクラブを開設し、全国展開を始めました。

また、上場も大きなターニングポイントとなりました。

2003年にジャスダック、2004年に東証二部、2006年に東証一部上場を果たしました。

上場によって社会的な信頼を得たことで、銀行からの資金調達が容易になり、出店の加速につながりました。

さらに、広い視点で健康のあり方について考え、介護や医療周辺事業に進出しました。

2012年に、スポーツクラブで得たノウハウを活用してリハビリ特化型デイサービスの「元氣ジム」を開業し、その後多店舗展開しています。

また直近では企業・自治体との連携も強化し、健康課題解決に向けた取り組みを進めています。

ルネサンスの事業概要と特徴

概要

当社の中心事業はスポーツクラブです。

コロナ前には40万人を超える会員数がいました。

コロナ禍によって一時的に会員数は減少したものの、2025年4月のスポーツオアシス(以下、「オアシス」)との合併により、コロナ前を超える水準まで回復すると考えています。

株式会社ルネサンス 2024年3月期 決算説明資料 より引用

また、若い方の入会者が多い一方で、継続という点では50代以上の方に長期間利用していただいておりボリュームゾーンとなっています。

一番高齢のお客様は90歳代で、水泳のマスターズ大会にも参加する方もいらっしゃいます。

その他にも介護・医療周辺事業、BtoG事業、BtoB事業を展開しています。

事業概要|ルネサンスについて より引用

事業における優位性

全世代の健康課題に寄り添うルネサンス

当社のサービスは幅広い年齢層に対応しています。

一番小さいお子様では、生後6ヶ月からスイミングの親子ベビースコースを利用できます。

次に、幼稚園〜小中学生までのお子様にはスイミングやテニスのジュニアスクールがあります。

さらにスポーツクラブは中学生から利用可能です。

全年齢層をカバーする多様なプログラムを提供することで、幅広いお客様に長く利用していただいています。

また、身体機能に不安のある方に向けては、介護リハビリ施設を運営し、機能改善を図って元気を取り戻していただく取り組みを行っています。

介護リハビリ事業は、訪問看護ステーションを当社スポーツクラブ内に開設するなど、スポーツクラブ事業との連携を強化しています。

このように、全世代が健康で快適に暮らせる社会を目指して事業を展開していることが当社の特徴であり、強みです。

株式会社ルネサンス 2024年5月10日 2024-2027 中期経営計画 より引用

高い継続率

当社のスポーツクラブ会員の解約率は3%程度です。

初期の会員の方がスムーズに運動習慣を身に付けられるよう、店舗のトレーナーによるサポートや、レッスンを実施しています。

様々なサービスの中から何か1つでも夢中になっていただけるよう、ヨガやダンスを含む多数のスタジオプログラムもご用意しています。

また、ルネサンスオリジナルのアプリの活用やアプリ内のプッシュメールを通じて、施設に足を運んでいただけるような工夫もしています。

このように幅広いニーズに応え、長く利用していただけるようなサービスが強みです。

株式会社ルネサンス より提供

全国展開による企業・自治体との連携

ルネサンスは札幌・仙台・東京・大阪・名古屋・広島・福岡等の主要都市をはじめ、全国に100店舗以上展開しています。

全国に展開していることで、BtoB事業においては法人会員のご利用も非常に多いです。

顧客として利用していただく大企業の多くは地方に拠点を抱え、従業員が気軽に使えるかどうかがポイントとなっています。

そのため首都圏や関西圏だけでなく全国に店舗があることで受け入れられやすく、2024年3月末時点では約1,200法人と契約しています。

また、BtoG事業では22の自治体と連携協定を結び、施設を防災拠点として活用する取り組み等を行っています。

また、2021年から小学校の水泳授業の受託を拡大し、2023年度は年間50校で水泳授業を実施しました。

学校プールの老朽化や天候不順の課題から、水泳授業の民間への委託が進んでいます。

将来的には、中学校や高校の部活動も民間に委託する動きが広がると予想しています。

さらに、自治体の介護予防教室についても、累計130以上の自治体に向け、年間1,000案件以上を実施しています。

このように、全国にスポーツクラブを展開していることで、地域の健康課題解決への取組を加速させています。

株式会社ルネサンス 2024年3月期 決算説明資料 より引用

ルネサンスの成長戦略

総合型スポーツクラブのリーディングカンパニーへ

スポーツクラブ事業に関しては収益基盤の強化と事業構造改革を進めることで既存事業を伸ばしつつ、2025年4月のオアシス合併で更なる事業基盤の拡大を目指していきます。

特にオアシスとの統合により東京や大阪の中心部にも店舗が増えるため、より多くの法人会員にご利用いただけると見込んでいます。

また、M&Aについても積極的に行っていきます。

私たちは、過去20回のM&Aを通じて事業を成長させてきました。

今後も店舗を増やしていきたいと考えていますが、建材の高騰や経済環境を考慮すると、まっさらな新規出店を加速するのは難しいのが現状です。

そこで業界再編が進んでいるスポーツクラブ業界の事業承継に着目しています。

親会社の経営方針見直しによってスポーツクラブ事業が切り離されるケースや、コロナ禍を経て経営が厳しくなったスポーツクラブが全国各地にあり、事業の再生という観点で当社へのコンサルティングの依頼が増えています。

そのような中、2024年3月には「KSC wellness フィットネスクラブ金町・金町スイミング」を事業承継しました。

また他社のスポーツクラブが撤退した後のテナントとして、当社がスペースを有効活用して新規出店した事例もあります。

このようなM&Aを通じて、初期投資を抑えながら迅速に事業を展開できると考えています。

株式会社ルネサンス 2024年5月10日 2024-2027 中期経営計画 より引用

BtoG事業では、自治体が持つ体育館や公園等の管理運営を通じた地域活性化や、当社社員が地域活性化起業人として地域に赴き、まちづくりに取り組んでいます。

そしてBtoB事業では健康経営というキーワードの下、5万人を超える会員に自宅等でのレッスン受講が可能なオンラインプログラムも提供しています。

近隣に当社施設がない方や隙間時間に気軽に運動を行いたい方に向けて、週に約900本のコンテンツを提供し、サービスの品質の向上を図っています。

株式会社ルネサンス 2024年5月10日 2024-2027 中期経営計画 より引用

フィットネス業界の枠を超えた中長期成長ドライバー創出

介護リハビリ事業は、今後強化していく事業領域です。

店舗展開については、直営で、神奈川や東京などのエリアにドミナント戦略で集中展開することで、効率的な運営が可能だと考えています。

また脳卒中特化型のデイサービスの展開や、がんサバイバーの術後のリハビリにも力を入れています。

大阪国際がんセンターと連携してがん専門運動指導の資格認定制度に取り組んでおり、資格認定者を全国のスポーツクラブに配置することで、がんサバイバーの方も安心してスポーツクラブを利用できる環境整備を進めていきます。

無人型のスポーツクラブ等が注目を浴びていますが、当社は「健康のソリューションカンパニー」を目指し、あえて人の手が必要な領域で戦っていきます。

株式会社ルネサンス 2024年5月10日 2024-2027 中期経営計画 より引用

また、オアシスが得意としているホームフィットネス事業は、当社がこれまで手掛けてこなかった新たな事業領域となります。

これは、主にサイドステッパーやバランスボールなどの家庭用健康器具の開発、販売を行うもので、2023年度時点で約39億円の売上がありますが、それを2027年度までに50億円近くにまで伸ばす計画です。

具体的にはテレビ通販番組やEC等、多様なチャネルを通じて販売を強化します。

スポーツクラブに馴染みのなかった方で、健康に関心のある層にアプローチすることで、今後の新規顧客獲得に繋がると考えています。

株式会社ルネサンス 2024年5月10日 2024-2027 中期経営計画 より引用

注目していただきたいポイント

当社は単なるスポーツクラブの運営会社ではなく、健康のソリューションカンパニーに変化していることに注目していただきたいです。

ルネサンスは競泳の池江選手などの活躍もあり、スポーツクラブというイメージが強いですが、健康に関する日本の社会課題に対してアプローチしています。

人生における様々なタッチポイントを通じて、多くの方が健康で長生きできるように支援することが私たちの使命です。

これからも幅広い年齢層の人々に対して、健康で豊かな生活をサポートする事業を展開していきます。

株式会社ルネサンス 2024年5月10日 2024-2027 中期経営計画 より引用

投資家の皆様へメッセージ

今後も全世代の健康課題に対して、新しい価値・サービスを創造し続けてまいります。

投資家の皆様におきましては、当社が取り組んでいる事業に少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。

長期的な目線で引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

株式会社ルネサンス

本社所在地:〒130-0026 東京都墨田区両国2-10-14 両国シティコア 3階

設立:1982年8月13日

資本金:32億1,035万円(2024年6月アクセス時点)

上場市場:東証プライム市場 (2003年12月3日上場)

証券コード:2378

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

目次