※本コラムは2024年5月21日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社イエローハットは国内No.1のカー&バイクライフサポートチェーンを目指しています。
代表取締役会長の堀江 康生氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社イエローハットを一言で言うと
イエローハットは全国(特に地方、降雪地区)においてお客様に必要不可欠な存在です。
イエローハットの沿革
創業の経緯
当社は1961年に創業しました。
創業者の鍵山 秀三郎は、元々自動車用品卸売業者に勤めており、非常に優秀だったと聞いています。
初期の取引先はガソリンスタンドとカーショップで、そこに商品を卸しておりました。
以前勤めていた会社からの妨害もあり、大変苦労したようですが徐々にガソリンスタンド、カーショップ、ホームセンターと販路を広げていきました。
そのような中で1975年に宇都宮にイエローハット1号店をオープンし、小売業を始めたことがターニングポイントです。
徐々に小売業に進出し、1997年には400店舗にまで拡大させ、東証一部市場(現 東証プライム市場)に上場を果たしました。
赤字転落とV字回復
創業者から代が変わり、2008年3月期には営業赤字に転落しました。
リーマンショックも重なり、経営危機を乗り越えるために、私が新社長として任命され「コア事業への資源集中」「車検サービス事業の拡充」「経営効率の向上」「活力ある会社づくり」の4つの基本方針を打ち出しました。
この方針に従って、社内に浸透させていくことで業績はV字回復し、現在は当時の10倍以上の株価の計算になりました。
事業ポートフォリオを拡大
2012年にオートバイ用品専門店「2りんかん」、2014年には新車・中古バイク販売・買取店の「バイク館」が当社グループに加わりました。
この新たな看板を持ったことで、新規出店の際の土地の活用方法が増え、容易に出店することができるようになりました。
2024年3月現在イエローハットは740店舗まで増やし、カー用品専門店国内店舗数No.1となっています。
イエローハットの事業概要と特徴
概要
カー用品・バイク用品を中心に小売業を展開し、フランチャイズ(以下FC)が50%、子会社が50%というバランスで運営しています。
イエローハットでは、ブリヂストン、ダンロップ、ヨコハマ、ミシュラン、ピレリなど、多種多様なタイヤメーカーの商品を扱っています。
中古タイヤの買取・販売にも注力し、格安タイヤ「トレッド」という看板で50店舗を展開しています。
バイク関連に関してはバイク用品の販売店を62店舗、バイク車両の販売店を72店舗運営しています。
また店舗に併設しているピット作業場では、タイヤ交換やナビゲーションの取り付け等を提供しています。
そして一度撤退したカー用品の卸売り事業も再開しており、現在は各地のホームセンター等に商品を卸しています。
事業における優位性
確かな出店戦略 × 広告戦略
居抜き物件含め土地の調達等、長年培ってきた出店ノウハウは当社の強みです。
地方、特に降雪地域に複数店舗を構えています。
雪が降った時期には、冬用タイヤの需要が急増し、全国的に知名度のあるイエローハットの客足が増えます。
また、イエローハット・2りんかん・バイク館・格安タイヤ トレッド等の複数の看板を持っているため、多様な出店を行うことができます。
そのため不動産会社からの土地紹介も含め、好条件な立地を確保できるとともに、利益改善の為の店舗集約やグループ内での業態変更が柔軟です。
そして広告戦略においてはスケールメリットを活かした宣伝を行っています。
近年ではスカイツリーの近くにイエローハットを出店し、情報番組等で取り上げられやすいように思い切った投資をしました。
また店舗数が増えることで広告効果が高まるため、出店を行いながらテレビCMを全国に流しています。
高品質の商品・サービスを低価格で提供
まずタイヤ販売を例にとってお話しします。
当社は大量のタイヤを仕入れることでコストを抑え、業界内でもはるかに安い価格で提供しています。
また車検サービスを例にすると、主要道路から1本入った場所や細い道路に作業場を置くことで賃料を抑えています。
一般的にカーディーラーは主要道路に面した好立地かつ、ドリンクサービス等のホスピタリティが充実しているため、車検の価格は高くなってしまいます。
一方でイエローハットでは限りなくコストを抑え、車検サービスのみに重点を置いているため、低価格を実現しています。
グループの結束力
当社はFCと非常に強固な関係を構築しています。
テレビ会議を地域ごとに毎月開催し、直接現場の声を聞きながら本部施策の徹底的な浸透を図っています。
これによりFCを含めた全体のコミュニケーションが円滑に行われ、現状や課題を共有することができる体制作りを心がけています。
またFC間で切磋琢磨するため、グループとしての結束力を高めています。
イエローハットの成長戦略
タイヤ販売の強化・車検獲得に注力
タイヤ販売に関してはWEBを活用しながら新たなチャネルでの販売も行っていきます。
一方でWEBでの販売は慎重に行っています。
例えば店頭で1万円で販売するタイヤをECで8000円で販売することは、FCとの関係を悪化させる可能性があります。
そのため、価格設定や販売方法に注意しながらWEBを活用しています。
またタイヤの物流網も整備し、自社で全国に配送する仕組みを構築しました。
具体的には全国3か所に倉庫を設立し、2024年中に稼働予定です。
初期投資こそ大きいですが、長期的には大きな利益を生み出してくれると考えています。
このように先行投資を行い、数年後の利益を見据えた戦略を展開しています。
また車検は市場での当社シェアは僅か数%であり、伸ばせる余地が十分にあると考えています。
そのため、認定が必要となる特定整備への対応、人材育成、技術指導等の車検体制の強化に全社を挙げて取り組んでいます。
市場環境とM&Aに対する方針
業界全体が疲弊している状況です。
ガソリンスタンドの数は減少し、ホームセンターのカー用品コーナーも縮小し、業界全体で淘汰が進んでいます。
タイヤ専門店やオイル交換を行う店舗も減少しています。
そのような中で市場を獲っていくには一気に売上を伸ばすM&Aが重要です。
例えば100億円の企業を買収すれば、売上も100億円増加します。
しかしM&Aは必ずしも契約が成立するとは限りません。
そのため中長期計画の中にはM&Aを組み込むことはせず、保守的な数字をお示ししています
注目していただきたいポイント
カー用品・バイク用品業界は残存者利益を得られる業界で、その中でもグループ企業を含め圧倒的な結束力を持って施策に一丸となって速やかに取り組める強固な事業基盤に注目していただきたいです。
国内人口の減少に伴って、乗用車の保有台数も現在の6,000万台から減少していくことが予想される縮小市場です。
また競合の整備工場やガソリンスタンド等は後継者が不在で、特に地方では整備事業者の撤退が相次ぎ、生活者は日常整備に困っているのが現状です。
今後は自動車の電子化により整備が複雑化していくことが予想され、撤退や廃業が更に増えると考えています。
一方で当社は、継続的な投資と安定した組織運営の下、適切なコストコントロールを行いながら、地方にも複数店舗を構えています。
このような現状を分析すると、当社は業界において残存者利益を得やすいポジションだと認識しています。
投資家の皆様へメッセージ
私たちは国内No.1のカー&バイクライフサポートチェーンを目指しています。
この業界を底上げするために、適正な価格設定と透明性の高いサービス提供を心掛けています。
グループ一丸となって業界内の競合減少による残存者利益を得ながら、株式市場からも評価される業界No.1の企業となることが目標です。
足元では15期連続の増配を計画し、今後も累進配当を維持して参ります。
ご支援のほどよろしくお願いいたします。
株式会社イエローハット
本社所在地:〒101-0032 東京都千代田区岩本町1-7-4 イエローハット本社ビル
設立:1962年3月15日
資本金:150億72百万円(2023年3月31日時点)
上場市場:東証プライム市場(1990年12月21日上場※店頭登録)
証券コード:9882