※本コラムは2024年6月4日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社イーグランドは今あるものを最大限に活かし、次世代へと繋げていく「中古住宅再生事業」を展開しています。
代表取締役社長の林⽥ 光司氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社イーグランドを一言で言うと
「中古住宅再生事業」を通じて、時代の要請に応え、良質な住まい(=礎)を提供し続ける社会貢献企業です。
イーグランドの沿革
創業の経緯
当社は1989年に代表取締役会長の江口が立ち上げました。
当時の社員は5人程度と小規模な会社でしたが、バブル崩壊後に地価が下落したリゾート地の再生などから始まりました。
創業当初は資金力が乏しい中でのスタートでしたが、徐々に中古再生物件事業が軌道に乗っていきました。
上場と事業の拡大
私は今から約20年前の2004年に当社に入社しました。
そして着実に中古住宅再生事業を拡大させ、2013年12月にはJASDAQ市場(現 東証グロース市場)に上場を果たしました。
上場によって会社の信用力が向上し、金融機関からの融資など資金調達が容易になりました。
これにより中古住宅再生事業をさらに拡大させていきました。
そして2024年4月より私が代表取締役社長に就任し、更なる事業拡大のため、2024年5月に第3次中期経営計画を発表しました。
イーグランドの事業概要と特徴
概要
当社は中古住宅再生事業を中心に、リノベーションした収益物件を再販する収益再販事業、不動産賃貸等を行うその他事業を展開しています。
売上の大半は居住用の中古住宅をリノベーションして販売する中古住宅再生事業で、2024年3月期には売上の約8割を占めています。
事業エリアは東京・横浜・札幌・名古屋・関西の全国5拠点にて展開しています。
事業における優位性
商品バリエーション
マンション専業の買取再販業者が増加する中、当社は大都市圏を中⼼に中古⼾建の再⽣販売も⼿掛けています。
一般的に他社は、マンションの中でも高価格帯の物件を中心に取り扱っていますが、当社は平均売買単価が約2500万円の物件を取り扱い、住宅を初めて購入する一次取得者がターゲットです。
そして当社のターゲットエリアは大都市圏で、東京、大阪、名古屋を中心に事業を展開しています。
さらにこれまで、一棟モノ・区分所有モノにおける収益用不動産のリノベーションと販売のノウハウを蓄積してきました。
そのノウハウを活かして、収益物件の売却によるフロー収益と賃料の積み上げによるストック収益の安定した収益源を狙っています。
このような居住用・収益用という商品バリエーションの多さを持ち、様々な販路に繋がることが当社の強みです。
良質で安価な物件
当社はファミリー層などの一次取得者をターゲットとし、賃貸よりも住宅ローンを活用して購入したいと考えていただけるような、良質で安価な物件を手がけています。
実際に弊社が売買した埼玉県久喜の物件の事例でみてみると、販売価格2,540万円の物件のため、35年の住宅ローンで月額60,000円にまで抑えることができます。
また、住みやすさを重要視した適材適所のリフォームで良質な物件に仕上げています。
リスク低減の取り組み
当社は首都圏・地方主要都市にいくつか拠点を置いていますが、このエリア分散でリスクを分散させることが可能です。
このようなリスク低減に対する取り組みが当社の強みですが、その中でも代表的な取組方法が仕入手法と在庫コントロールです。
まず仕入手法に関しては、競売と任売の2つのルートで行っています。
近年は競売件数が減少し競争激化しているため、難易度は非常に高く、物件を安定的に確保することが難しい状況です。
そのような中、当社の首都圏における競売落札件数は、2024年3月期で122件と圧倒的な件数とシェアを誇り、数年間に渡ってNo.1を維持しています。
また入札時には、「この価格で売れるだろう」「リフォームにどれくらい費用がかかるか」といった予測を立て、逆算することで入札額を決定しています。
この長年蓄積されたノウハウが、競売でのトップシェアを実現できる理由です。
また、2024年3月期には不動産仲介業者からの情報を活用して仕入をする任売仕入が約8割、市場からの情報から入札して仕入をする競売仕入が約2割と任売仕入件数が上回っております。
任売においても競売で培われた価格決定のノウハウは活用でき、近年の競売の市場激化に伴い、任売での仕入にも注力してきました。
このように双方の仕入手法を活用することで安定的に物件を確保しています。
そして在庫コントロールを適切に行えることも当社の強みです。
当社のビジネスモデルは高速回転型で、居住用物件の場合は仕入から売却までの期間を約6ヶ月としています。
この数値は物件保有の長期化を避け、適切に管理することで景気動向の変化に対応できるように、短い期間を設定しています。
直近ではコロナ禍の物件価格上昇により、早期に売却するよりも長く保有していた方が利益を得られるという特殊な状況が続いていたため、調整しながら在庫の管理を行いました。
実際に、販売価格はコロナ前に2,000万円程度だった物件がコロナ後には2,500万円前後まで上昇しました。
今後も市場動向に注意しながら、適切にコントロールしていきます。
イーグランドの成長戦略
住生活基本法と事業環境
現在、新築住宅の供給が著しく減少しています。
例えば、首都圏ではピーク時には9万4,000戸の新築マンションが供給されていましたが、2023年には2万6,000戸に激減しました。
以前は「新築信仰」が強く、一次取得者の多くは新築物件を求める傾向がありましたが、今では新築の供給が少ないため、中古住宅市場が注目を浴びています。
また、近年の資材や建築費の高騰も影響し、中古住宅再生の重要性が増しています。
今後も中古住宅の取引が増加していくと考えられるため、まだまだ当社には成長の余地があると見ています。
そして住生活基本法にも定められているように国の政策でも住居環境の整備が重視され、足元では中古住宅再生に対する支援や税制面での優遇措置も拡充されています。
中古買取再販事業者としての当社の役割も大きくなっており、この流れを受けて更なる成長を目指しています。
中古住宅再生事業の戦略
現在は年間850〜950戸の物件を取り扱っていますが、今後は安定的に1,000戸に増やすための体制を構築しようと考えています。
現在は5人でチームアップしていますが、人員を増強しチーム数を増やした上で効率的な販売活動をすることで1,000戸の達成は可能だと思っています。
また、中古住宅再生事業の中心価格帯は2,000万円から2,500万円ですが、今後は2億円超の高価格帯物件も狙っていきます。
特に都心部の物件は将来的にも上昇が予測されますが、1億円規模のマンションは取り扱い事業者も多く、競争も激しいため、ボリュームゾーンを外しながらバリエーションを増やしていく方針です。
すでにハイグレードマンションに特化したチームを立ち上げましたが、早ければ2025年3月期の下期には結果が出てくることを見込んでいます。
収益再販事業・その他事業の戦略
収益再販事業については、売上に対するシェアを拡大させていきます。
これまでは居住用の中古住宅再生が主な収益の柱でしたが、当社を支える新たな収益の柱として、収益再販事業の売上を2027年3月期に80億円を目標に拡大させていきます。
これからは1件あたり5〜10億円をターゲットとして、取り扱い単価を上げていく方針です。
また、リゾート事業推進室を新設し、リゾート物件の企画〜再販に着手しています。
例えば、静岡県の伊東でプール付きの貸別荘を数棟取り扱っており、2024年3月期は1億円規模の売上を達成しました。
今後は民泊や貸別荘運営等インバウンド需要も視野に入れ、新しい事業として展開していきます。
そして単なる転売ではなく、利回り商品として展開できる可能性もあるため、将来的にはバルクでの販売なども検討しています。
また別の観点ではありますが、当社物件のリフォームの内製化を行っていきます。
2021年6月に設立したリフォーム子会社「イードア」との連携を強化し、中古住宅再生事業でのワンストップ体制を築いていきます。
注目していただきたいポイント
現在、当社の株式の流通量は非常に少ない状況です。
そのため、中期経営計画の一環として累進配当政策を導入し、株主還元を充実させていく方針を打ち出しました。
今後は累進配当政策により、株主の皆様に対して、業績によらない安定した配当を実施し、長期的な株式保有を促進していきたいと考えています。
これからも安定した成長を目指し、安定的に増配を行いながら、株主の皆様への還元を進めてまいります。
投資家の皆様へメッセージ
2013年のJASDAQ上場から10年以上経過しました。
そして2024年4月に創業者から私へ社長のバトンが渡され、大きな節目を迎えています。
この体制変更とともに、新たに3ヵ年の中期経営計画を策定し、着実に履行していく所存です。
今後も成長を続け、株主の皆様に対する利益還元を充実させていきます。
当社の成長にご期待いただき、引き続きご支援賜りますようお願い申し上げます。
株式会社イーグランド
本社所在地:〒101-0053 東京都千代田区神田美土代町1番地
設立:1989年6月23日
資本金:8億3,652万円(2023年3月末時点)
上場市場:東証スタンダード市場(2013年12月18日上場)
証券コード:3294