【6863】株式会社ニレコ 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年6月10日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ニレコは「技術と信頼」で、生産現場の”はかる、みつける、ととのえる”に貢献することで、より良い社会の実現を目指します。

代表取締役社長の中杉 真一氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社ニレコを一言で言うと

ニッチでありながら、非常に高い技術を持つ計測・検査・制御機器メーカーです。 

ニレコの沿革

株式会社ニレコ代表取締役社長 中杉 真一氏

創業の経緯

戦前、日本法人として設立されたアスカニア合資会社が当社の前身です。

ドイツのAskania Werke A.G.の技術を基に、日本で制御機器の輸入・製造・販売をしていました。

同社は戦後に一度解散しましたが、1950年に現在の日本製鐵やJFEの出資を受け、日本レギュレーター株式会社として当社が設立されました。

当初は製鉄所向けの制御機器の製造・販売が主な事業でした。

製鉄工程中の高炉への吸気流量制御装置から始まり、その川下の工程で鋼板の均一な幅と厚さを安定的に維持するための計測・制御機械を開発し、その技術を応用して紙や液晶パネルの樹脂シート、食品包装フィルムなど「ウェブ」と呼ばれる薄い素材の制御分野まで拡大していきました。

そして産業の発達とともに制御や計測技術が求められる中で、お客様のニーズに応じて検査技術を強化し、カメラセンサーを用いて無地のウェブ類の表面検査装置や、果物などの農産物や加工食品などの食品検査事業にも参入しました。

オプティクス事業への参入

計測・検査・制御をキーワードに事業を多角化させましたが、大きなターニングポイントとしてオプティクス事業への参入があります。

まず、2017年に理化学研究所の第一号ベンチャーであるメガオプトをグループ化し、その後ニレコ本体に吸収しました。

これを足掛かりに、2019年には光学部品の加工業界で独自のポジションを築いている光学技研をグループ化しました。

この新たに参入したオプティクス事業は成長性の高い分野で、事業をセグメンテーションしてから5年目の2024年3月期には、連結売上高の約2割にまで伸ばすことができました。

株式会社ニレコ 2024年3月期 決算説明資料 より引用

ニレコの事業概要と特徴

概要

当社の事業は主に3つのセグメントに分けられます。

1つ目の事業は、従来のプロセス事業とウェブ事業を統合させた制御機器事業です。

2025年3月期より、2024年4月1日に吸収合併した旧ミヨタ精密株式会社の生産部門も加え制御機器事業としてセグメント区分を統合させました。

まず、プロセス分野は非常に長い歴史がある分野です。

鉄鋼をはじめ、金属、ガス、化学工業等様々な工業分野において、当社の自動制御装置が利用されています。

国内市場における圧倒的な実績と高い市場シェアがあることがプロセス事業の特長です。

株式会社ニレコ 2024年3月期 決算説明資料 より引用

そして、ウェブ分野では紙・フィルム・金属箔等薄いシート状素材の位置制御装置などを扱っています。

当初は紙や印刷業界から始まり、現在では電子部品や二次電池用のフィルム・シートにも技術が応用されています。

このように近年注目されている最先端分野にも進出し、国内シェアは分野によっては約50%に達しています。

株式会社ニレコ 2024年3月期 決算説明資料 より引用

2つ目の事業は、検査機事業です。

二次電池のセパレーターや電極シート、シート状のペロブスカイト太陽電池などの分野で検査ニーズが高まっており、ウェブ分野の技術と掛け合わせたソリューションを提案しています。

また、農産物や加工食品の分野向けに、主にカメラセンサー技術を活用した検査技術を提供しています。

検査工程の省人化ニーズもあり、国内での需要は安定しています。

株式会社ニレコ 2024年3月期 決算説明資料 より引用

最後にオプティクス事業ですが、グループ会社である光学技研の売上が大半を占めています。

光学技研は光学部品分野において、他社に真似出来ないような独自の技術を有し、46年の歴史を持つ会社で、業界でも独自のポジションを築いています。

また現在ニレコ内部の組織となっているメガオプトの手掛けていたレーザ分野では、ハイエンドでニッチな市場向けのレーザ製品を開発しています。

数量もそこまで多くは出ない製品なので、なかなか売上は伸びていませんでしたが、2024年3月期には大型受注があり、今後の収益に貢献する見込みです。

株式会社ニレコ 2024年3月期 決算説明資料 より引用

事業における優位性

技術と信頼に基づく安定したお客様基盤

制御機器事業のうち鉄鋼業向けのプロセス分野に関しては、約100年間かけて磨き上げてきた独自の技術があります。

設立当初から鉄鋼・非鉄金属業などの生産ラインを対象とした製品を取り扱い、鉄鋼製品におけるあらゆる生産工程で、当社の製品が活躍しています。

さらに保守点検や、修理、部品・消耗品の交換など、充実したアフターフォローも行いお客様に寄り添った提案を行なっています。

またウェブ分野に関しても歴史は長く、新聞紙や雑誌から始まり、現在ではPCやスマホで使われる樹脂シートや、食品の包装フィルム、二次電池用フィルムにまで技術を応用しています。

このように当社はあらゆる生産現場で使用される、様々な制御機器の技術・ノウハウをお客様に提供し続けてきました。

そして、長年の信頼の下、当社製品はお客様の工場で広く導入され、このニッチな市場で高いシェアを獲得しています。

既存事業から派生した新分野の成長

制御機器事業で培った長年のノウハウを活かして、検査機事業・オプティクス事業を成長させてきました。

まず検査機事業に関しては、センシングや光学などのコア技術を駆使し、人間の目では認識が困難な小さなキズや汚れなどを高速かつ高分解能で検査する装置を提供しています。

また、オプティクス事業においては、これまで培ってきた技術を駆使して、半導体検査装置用レーザ光源、レーザ加工用装置、医療診断装置用光源などの分野へレーザ装置を提供しています。

それに加え、光学部品分野における独自の加工技術に強みを有しています。

この専門的な分野に高い知見を持った技術者を多数有していることも当社の強みです。

そして計測・検査・制御という3つの技術を駆使し、お客様の声をフィードバックして最適化を図りながら、新分野を成長させることで事業の多角化を実現しています。

ニレコの成長戦略

市場の拡大:事業基盤の拡大強化

まず制御機器事業には、長い歴史と成熟した技術があります。

そのため、国内においては高いシェアを誇る一方、新たなブレークスルーは少なく、製品のマイナーチェンジや改良を行っていくと共に、2つの事業をまとめたことによる事業の効率性向上が主要な戦略となります。

また海外市場では未だシェアが低く成長の余地が大きいことから、今後は海外展開に注力しシェア拡大を目指します。

株式会社ニレコ 2024年3月期 決算説明資料 より引用

一方、検査機事業は今後も新技術の開発が多く進んでいく分野で、国内外ともに用途が拡大していくことが見込まれることから、主に成長産業への適用に注力していきます。

そしてオプティクス事業における光学部品は、半導体市場の拡大に伴い安定的に成長しています。

今後はこの成長ポテンシャルの高い2事業に対し、新製品や新しい用途を開拓していくことで、さらなる成長を目指します。

株式会社ニレコ 2024年3月期 決算説明資料 より引用

技術の進化:競争優位性の向上

繰り返しにはなりますが、市場拡大のために、検査機事業・オプティクス事業への成長投資を積極的に行っていきます。

具体的にはR&D投資として、次世代画像検査装置の開発やレーザ技術による製品開発、光応用検査・計測装置の開発に注力し、場合によってはM&Aや業務提携を考えています。

中期経営計画にはM&Aによる具体的な数値を盛り込んでいませんので、当社とのシナジーを発揮できる企業が見つかった場合は、プラスアルファでの成長が期待できます。

主なターゲットは、当社の技術と社風に親和性があり、10年以上の歴史を持ち、売上高が10億円前後の、安定した事業を持つ企業です。

今後は安定した事業基盤の下、積極的な成長投資でニッチマーケットにおける競争優位性を高めていきます。

株式会社ニレコ 2024年3月期 決算説明資料 より引用

経営体質の強化:経営基盤の強化

持続的成長を目指す上で、経営基盤を強化することは大切です。

当社の経営理念は「技術と信頼」であり、今後もこの理念を徹底しながら事業を行なっていきます。

また、当社社員はお客様からの信頼を得ることを基準に活動し、非常に丁寧なコミュニケーションを重視しています。

この方針は崩さずに、あらゆるステークホルダーの皆様に寄り添いながら、競争力を高めるために資金や人材を優先的に投入していきます。

そしてその競争力を活かすためにも、グループの総合力を高め、事業の垣根を超えて、お客様の計測・検査・制御における様々な課題解決に挑戦していきます。

株式会社ニレコ 2024年3月期 決算説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

当社の安定した事業基盤と成長事業のポテンシャルに注目していただきたいです。

まず、制御機器事業のプロセス分野に関しては、鉄鋼メーカーを主要なお客様として、長年の信頼と実績の下、非常に強固な顧客基盤を有しています。

また、ウェブ分野に関しては、紙や印刷業界の市場は縮小傾向にあるものの、新たな樹脂フィルムや二次電池用セパレーターなどの分野を含めると全体では安定しており、プロセス分野同様の強固な顧客基盤があります。

この安定した顧客基盤の下で、着実にキャッシュフローを生み出していきます。

そしてこの安定した事業基盤で生み出されたキャッシュを成長投資に回し、検査機事業とオプティクス事業を成長させていきます。

まず、検査装置では、二次電池用のセパレーターや電極シートなど、今後も引き続き成長が期待できる用途へ訴求していくことに加え、官民一体となり開発が進むペロブスカイト太陽電池業界での検査用途など、今後の成長市場に合わせた展開を図っていきます。

また、オプティクス事業の主要顧客である先端半導体検査装置分野は、世界中の検査機メーカーや半導体メーカーから多くの問い合わせを受けているホットな分野で、こちらも非常に高い成長ポテンシャルを持っています。

光学部品分野で高い注目を浴びていることに加え、レーザ技術に関しても先端半導体分野で需要が高まっています。

持続的な成長を続ける安定事業と成長事業のバランスに注目していただき、M&Aも含めた成長に期待していただければと思います。

投資家の皆様へメッセージ

改めてにはなりますが、​​ニレコは長い歴史を持ち、盤石な顧客基盤を築き上げています。

この安定した基盤の上に、最先端の技術を展開し、持続的な企業価値の向上に努めています。

そして株主の皆様に対しては引き続き還元策や市場への訴求方法などを検討しており、併せて成長のための積極的な投資も行ってまいります。

これからも当社の成長戦略と技術力にご注目いただき、一層のご支持を賜りますようお願い申し上げます。

株式会社ニレコ

本社所在地:〒192-8522 東京都八王子市石川町2951-4

設立:1950年11月4日

資本金:3,084百万円(2024年6月アクセス時点)

上場市場:東証スタンダード市場(1989年10月27日上場)

証券コード:6863

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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