【6165】パンチ工業株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年6月26日に実施したIRインタビューをもとにしております。

パンチ工業株式会社は金型部品を製造し、ものづくりの上流から下流までを支える「縁の下の力持ち」です。

代表取締役 社長執行役員 最高経営責任者(CEO)の森久保 哲司氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

パンチ工業株式会社を一言で言うと

特注金型部品において日本・中国でシェア1位の会社です。 

パンチ工業の沿革

パンチ工業株式会社代表取締役 社長執行役員 最高経営責任者(CEO) 森久保 哲司氏

創業の経緯

1975年に現名誉会長の森久保 有司が設立した商社、神庭商会から始まりました。

当時の日本は高度経済成長期が終わり、第一次オイルショックの影響で経済の先行きが不透明でした。

そのような状況下で、より便利な社会を実現するためには、製造業の活性化が必要だと考え、何か役に立ちたいという思いがあったそうです。

中でも、家電製品に多く使われているプリント基板の穴開け工程に使用するプリントピンが脆いという課題に着目しました。

当時は、ピアノ線を使用するのが一般的でしたが、曲がりやすく、金型を分解してピンを交換するメンテナンスが頻繁に発生していました。

そこで、お客様の困り事ごとを解決したいと、ピアノ線よりも硬くて折れにくいハイス鋼(高速度工具鋼)に目をつけ、ハイス鋼を使用したプリントピンの販売を開始しました。

その後、売上が増える中、供給不足でお客様にご迷惑をお掛けすることもあり、それであれば自分達で作ろうと決断し、1977年、商社から製販一体の金型部品メーカーへ転身し、パンチ工業株式会社に社名変更しました。

生産体制の強化

その後、事業を拡大していく中で、1982年に世界で初めてプラスチック金型用のハイスエジェクタピンの量産化に成功しました。

それまでのエジェクタピンは精度や硬度に課題がありましたが、大学教授や熱処理会社、材料メーカーとも連携して開発を進め、試行錯誤の結果、精度と耐久性を格段に向上させました。

そして、営業拠点を全国に拡大し、1983年には岩手県北上市に北上工場を設置するなど、生産体制を強化しました。

中国進出

将来の日本国内における事業展開の課題、特に生産コストの上昇を早くから予測した結果、1990年に中国遼寧省大連市に盤起工業(大連)有限公司を設立しました。

当初は日本から材料を中国に輸出し、現地で完成品を作って逆輸入するというビジネスモデルでスタートしました。

その後、中国市場での販売も開始し、2000年以降は中国国内での売上も急速に拡大しました。

現在は、中国のみならず、インド、東南アジア、アメリカ、ヨーロッパにも拠点や代理店を構え、グローバルな事業展開を行っています。

パンチ工業株式会社 2024年3月期決算概要 より引用

パンチ工業の事業概要と特徴

概要

当社は主に金型部品の製造・販売を行っています。

まず、金型について説明させていただきます。

大量生産される製品が圧倒的に多い現代の製造業において、金型は欠かせない存在です。

その金型に組み込まれるさまざまな部品を製造・販売しているのが当社です。

パンチ工業株式会社 2024年3月期決算概要 より引用

自動車、パソコン、スマートフォン、飲料関連、医療関連など幅広い分野の金型部品がありますが、最終製品に直接組み込まれるわけではないため、一般の消費者にはあまり知られていないニッチな業界です。

主な顧客は金型を製造しているメーカーや、金型を使用して大量生産を行う自動車メーカー、家電メーカー、飲料メーカーなど様々な顧客基盤があります。

金型部品がなければ金型は動かせず、また最終製品を完成させることはできないため、当社は「ものづくりを支える縁の下の力持ち」としての役割を果たしています。

パンチ工業株式会社 2024年3月期決算概要 より引用

事業における優位性

日本・中国で特注金型部品シェア1位

特注金型部品は顧客からの依頼にどれだけ対応できるかが大切です。

常に顧客の希望する納期、価格、品質に応えることが求められ、様々な業種の顧客からの依頼を日々受注し、技術力やノウハウをブラッシュアップしています。

そして、顧客と膝を突き合わせながらソリューションを提案する密着型の営業体制や、顧客からの依頼にスピード感を持って対応できる一気通貫の生産体制を持っています。

これらの強みを活かし、当社はものづくり大国である日本・中国の特注金型部品においてトップシェアを自負しています。

そして、世界1万5千社以上の顧客との取引があり、その多くがリピート顧客です。

パンチ工業株式会社 2024年3月期決算概要 より引用

カタログ品・特注品と販売網

当社の金型用部品はカタログ品と特注品の両方を幅広くカバーしています。

まず、カタログ品と呼ばれる汎用性の高い標準製品を豊富に取り揃えています。

そして、特注品と呼ばれる顧客ごとにオーダーメイドで異なる図面や仕様に対応し、高精度な部品を製造できる体制を整えています。

特に、顧客の図面通りに高精度で具現化できる能力は非常に評価されており、当社と同規模で量産できる設備を持つ会社は少ないと認識しています。

競合他社に依頼して期待通りの製品が得られなかったとしても、当社に依頼いただければ、期待以上の製品を提供します。

そのため、多くの顧客から厚い信頼を得ており、当社が選ばれている理由はここにあります。

さらに、当社が選ばれる理由の一つに、グローバルなネットワークを有していることが挙げられます。

例えば、東南アジア地域からの引き合いに対しては、日本や中国の製造拠点を活用して柔軟な対応が可能です。

また、当社は日系企業の中でも早期に中国に進出しているため、日系企業が中国に進出する際には、現地で部品供給できる企業として高く評価されてきました。

このように、カタログ品と特注品のどちらにも対応でき、グローバルな供給体制を整えていることが当社の競争力の源泉です。

パンチ工業株式会社 2024年3月期決算概要 より引用

パンチ工業の成長戦略

「 バリュークリエーション2024 Revival」

中期経営計画「バリュークリエーション(以下、VC)2024 Revival」では2025年3月期までを目標期間とし、国内事業の再整備と海外事業での成長を重点ポイントとしています。

パンチ工業株式会社 2024年3月期決算概要 より引用

まず、赤字が続いていた国内事業の再整備に関しては、2023年9月には希望退職者を募り、経営の合理化を断行しました。

今後は、付加価値の高い特注品ビジネスに注力し、金型部品にとどまらず、直接製品に組み込むような精密部品にもより取り組む必要があると考えています。

さらに、海外事業の成長も視野に入れており、中国をはじめ、ヨーロッパ、アメリカ、インド、東南アジアでの事業拡大を目指しています。

また、日本と中国においては、金型部品だけでなく、FA(Factory Automation)分野にも注力していきたいと考えています。

パンチ工業株式会社 2024年3月期決算概要 より引用

R&Dの強化

まず、金型部品に関しては、飲料関連製品と医療関連製品に注力しています。

例えば、様々な形状のペットボトルの製造にも、当社の高精密な金型部品が貢献しています。

また、近年注力しているFA分野には、日本と中国の労働人口減少を見据え、自動化・省力化が重要であると考え、積極的な投資を行っています。

これまで金型部品で培ってきたノウハウをFA分野にも拡大するため、2022年10月、北海道に拠点を置く株式会社ASCe(アスク)をパンチグループに迎え入れました。

生産ラインの自動化装置の設計や開発、製造、組み立て、販売を行っているASCeと協力して、FA分野をさらに強化していきたいと考えています。

ASCeがパンチグループに加わったことで、自社工場の自動化も加速させています。

自社工場での自動化で得たノウハウを活かして、外販も視野に入れた事業展開を進めていく考えです。

次期中期経営計画においても、このFA分野の拡大が当社の事業成長の鍵となると考えています。

注目していただきたいポイント

まず、パンチ工業は一般の方々にはあまり知られていないため、何をしている会社なのか知っていただければと思います。

当社は金型部品の製造を主軸としていますが、今後はFA装置や精密部品の分野にも取り組みを広げ、世界の製造業を支える企業を目指しています。

さらに、労働人口の減少に対して、FA事業で省人化・省力化を実現し、社会に貢献する会社としても認知していただきたいです。

また、 VC2024 Revivalにて、ROIC経営を導入しました。

これは、資本コストや株価を意識した経営方針であり、グループ全体で推進しています。

また、資本政策として、連結配当性向30%以上、株主資本配当率(DOE)3%以上を指標とし、財務基盤の健全性を確保しつつ、経営効率の向上を図っています。

これにより、積極的な株主還元を行い、時価総額やPER、PBRの向上を目指していきます。

ぜひ、パンチ工業の今後の動向に注目していただければ幸いです。

パンチ工業株式会社 2024年3月期決算概要 より引用

投資家の皆様へメッセージ

これまで、金型部品の製造を中心に事業を展開してきましたが、製造業の幅広いニーズに応える企業へと進化してまいります。

また、労働人口の減少といった社会的課題に対して、自動化・省力化を推進することで、ものづくりの現場に貢献していきたいと考えています。

今後も持続可能な成長を追求し、株主の皆様への価値向上に努めてまいります。

引き続きパンチ工業へのご支援とご期待を賜りますようお願い申し上げます。

パンチ工業株式会社

本社所在地:〒140-0013 東京都品川区南大井6丁目22番7号 大森ベルポートE館 5階

設立:1975年3月29日

資本金:34億円(2024年6月アクセス時点)

上場市場:東証スタンダード市場(2012年12月20日上場)

証券コード:6165

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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