【3479】株式会社ティーケーピー 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年8月13日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ティーケーピーは空間シェアリングビジネスのリーディングカンパニーとして、常に時代のニーズに合わせた新しい価値を創出し、継続的な成長を実現することで社会に貢献します。

代表取締役社長の河野 貴輝氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社ティーケーピーを一言で言うと

もったいない資源や空間を再生し、価値を生み出す「空間再生流通企業」です。 

ティーケーピーの沿革

株式会社ティーケーピー代表取締役社長 河野 貴輝氏

創業の経緯

私は創業前にネット証券やネットバンクの立ち上げを手掛けていたため、インターネットでの集客ノウハウがありました。

このノウハウをBtoBで応用しようと考え、2005年に当社を設立しました。

きっかけはミッドタウン建設予定の場所にあったビルが誰にも使われていなかったことです。

そのビルでは、1Fのテナントが立ち退き次第取り壊されることが決まっていましたが、2Fと3Fは空きテナントとなっており遊休スペースと化していました。

このように、東京の一等地で活用されていないスペースがあるのは「もったいない」と考え、取り壊しの決まった空きビルを取り壊されるまで有効活用するビジネスを開始しました。

危機に直面しながらも成長

当社の主力である貸会議室事業は景気に連動して売上高が変化します。

これまでも、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災、2020年からのコロナウイルスなどの景気後退のタイミングで倒産の危機に直面しました。

しかしながら、「ピンチをチャンスに変える」という発想で、危機に瀕しながらも常に会社を成長させてきました。

リーマンショック時には、1ヶ月で5億円のキャンセルに遭い、1ヶ月で1億円の赤字を計上しましたが、この時は不動産のオーナーと交渉し、賃料を半額程度まで下げてもらうのと同時に貸会議室の利用料金を値引きすることで新たな顧客をつかみ、乗り切りました。

また、東日本大震災発生時にもキャンセルが相次いだものの、過去の教訓を活かして事業ポートフォリオを多角化することを決定し、ホテルの宴会場の再生ビジネスに着手しました。

イベント自粛により使われなくなったホテルの宴会場や厨房を取得したことで、料理や音響照明、レンタル備品などを内製化でき、客単価が上がったことから、売上は大幅に増加し、事業を成長させることができました。

さらに、2020年4月からの緊急事態宣言下においては、約90億円のキャンセルという過去最大の危機が発生し、創業以来初の減収及び営業赤字を記録しました。

コロナ禍の3年間で約116億円の赤字になったものの、金融機関からの借入枠の確保や不動産の売却などを通じて、1年間持ち堪えられる資金として約360億円の運転資金を確保しました。

そして、主力のフレキシブルスペース事業に注力し、周辺事業の選択と集中により抜本的な構造改革を断行しました。

年間インパクトは約50億円規模のコスト削減に繋がり、事業の存続を目指しました。

そして、コロナ禍におけるオプション需要や利用形態の変化、職域ワクチン接種支援サービスなど、コロナをきっかけとした新たなビジネスチャンスが発生しました。

このように、何度も危機に陥りながらも事業を成長させてきました。

現在はフレキシブルスペース事業の周辺領域を含め、M&Aやアライアンスを積極的に進めています。

今後は複数の事業モデルを抱え、多角的な事業ポートフォリオで売上、利益を拡大させていく方針です。

ティーケーピーの事業概要と特徴

概要

2005年の創業以来、遊休不動産を保有することなく借り受け、貸会議室・宴会場として展開することで、新たな空間活用ビジネス市場を創出しています。

また、活用されていないスペースの「再生」とシェアリングを起点に、周辺事業として、宿泊研修のためのホテルや旅館、料飲、BPO、イベント企画などのサービスを提供しています。

現在、全国に232施設(2024年5月末時点)の貸会議室・宿泊施設を展開しています。

株式会社ティーケーピー 2024年5月31日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

事業における優位性

持たざる経営

フレキシブルスペース事業において、貸会議室は全国の全施設を保有ではなく賃貸借で借り上げているため、アセットライトで損益分岐点が低く、経営リスクが最小限に抑えられています。

仕入れる物件は、遊休不動産や取り壊しが決まっているビルなどを中心に「訳アリ」物件のため、安価な賃料で契約することが可能です。

また、様々な契約形態を組み合わせることで固定家賃の支払いリスクを低減させることに成功しています。

株式会社ティーケーピー 2024年5月31日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

全国ネットワーク・オペレーション力

当社は政令指定都市など、各地方の主要都市で人が集まる場所を中心に拡大してきました。

まずは東京から始め、次に大阪、名古屋、福岡、さらに札幌、仙台へと展開し、現在では契約面積14万坪超のスペースを提供しています。

この全国ネットワークは業界の中でも圧倒的トップです。

また、業容の拡大とともに蓄積してきた会議室の運営ノウハウも強みです。

株式会社ティーケーピー 2024年5月31日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

豊富なブランドラインナップ

地方と都市部では貸会議室の使われ方は異なります。

地方ではホテルの宴会場が競合となり、パーティーや宴会のニーズが高いことが特徴です。

一方、都市部ではそもそものスペースが限られているため、宴会を行わなくてもスペース自体に需要があります。

そのため、都市部では立食パーティーや会議室利用の需要が高く、地方では比較的大規模な着席型の宴会などが主流です。

当社はスペースのグレードをCIRQ(シルク)からスター貸会議室という6段階に分け、幅広いラインナップを取り揃えることで、様々なニーズを取り込んでいます。

株式会社ティーケーピー 2024年5月31日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

安定した顧客基盤

貸会議室の年間利用顧客数は約3万社で、上位2,500社からの売上が約8割を占めています。

また、上場企業約4,000社のうち約半分と取引があり、大手の顧客が多いことも特徴です。

既存顧客のリピート率は高く、顧客業種も様々であるため、売上高に占めるリピート率は約9割を占め、安定した顧客基盤を築いています。

株式会社ティーケーピー 2024年5月31日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

ティーケーピーの成長戦略

貸会議室事業

2025年2月期に懇親会を含め、対面需要が回復したことで、貸会議室需要はコロナ前の水準へ戻りつつあります。

これからも継続的な拡大を見込み、東京・大阪のビジネス地区を中心に新規出店を行い、既存施設の増床を積極的に進めます。

株式会社ティーケーピー 2024年5月31日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

また、好立地の施設に関してはグレードアップさせたバンケット仕様にリニューアルし、単価アップと収益拡大を目指します。

そして、料飲の需要回復に伴い、内製化することで原価率を最適化させていきます。

さらに、DX戦略やCRMを活用した営業力強化による運営の効率化を進め、顧客への高付加価値を提供することで収益力を最大化させていきます。

株式会社ティーケーピー 2024年5月31日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

ホテル・宿泊研修事業

ホテル・宿泊業界はコロナ禍による打撃から急速に回復しており、インバウンド需要の高まりを受け、この強い需要を掴むことが重要だと考えています。

2024年8月13日時点では開業前施設を含め、27施設(28棟)を展開しています。

株式会社ティーケーピー 2024年5月31日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

インバウンドによるBtoC、法人利用のBtoBというチャネルを活用することで稼働率を上げることができると考えています。

3ヵ年でアパホテルブランドを含めたビジネスホテルを中心に10施設を目安に出店します。(すでに7施設の出店を発表済み)

また、郊外に展開しているリゾートホテルでは、企業保有の保養所や古びた旅館などのリノベーションを行い、ブランド力を強化することでインバウンド需要を取り込んでいきます。

株式会社ティーケーピー 2024年5月31日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

イベントプロデュース事業

これまではスペースを売る会社でしたが、これからはスペースでのコンテンツを提供する会社に変貌をとげたいと考えています。

すでに Google や NVIDIA などの企業イベントのプロデュースを手掛けていましたが、そのノウハウを活かして本格的な内製化と横展開を図ります。

企業のコミュニケーションイベントや商品発表会、展示会などを中心にエンターテイメント性のあるコンテンツを提供することで、独自性を高めていきたいと考えています。

株式会社ティーケーピー 2024年5月31日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

政策投資・事業提携

リリカラ

リリカラに対して公開買い付けを実施し、2024年6月に連結子会社になりました。

より資本関係を強化し、両社の企業価値を高めていく方針です。

リリカラは壁紙やカーテン、床材など、様々なシーンに応えるインテリア商品を提供する企業です。

当社が運営する貸会議室や宿泊施設で、リリカラにリノベーション工事を発注するなどのシナジー発揮や、APAMANとの連動を見込んでいます。

また、今後スペースのコンバージョンがトレンドになると予測しているため、リリカラによって加速させていきたいと考えています。

働き方の多様化や循環型オフィスなど、オフィスソリューションマーケットの成長が期待できます。

株式会社ティーケーピー 2025年2月期 第1四半期決算説明会資料 より引用

APAMAN

2024年2月に2,591,800株(所有割合14.37%)を取得し、資本関係を強化し、2024年8月に業務提携契約を締結しました。

本提携の第1弾として、「TKP博多口カンファレンスセンター」を10月にオープンし、共同で運営する予定です。

今後、不動産オーナー向けサービスの提供や拡充など、シナジー効果を見込んでいます。

ノバレーゼ

2024年6月に持分法関連会社化しました。

ノバレーゼはブライダル施設を中心に、レストランなどの運営を行っています。

出店ペースの加速を目的に、物件情報の連携や地域創生並びに建物及び空間の再生事業における協業、ノバレーゼの保有する施設の最大活用などを見込んでいます。

株式会社ティーケーピー 2025年2月期 第1四半期決算説明会資料 より引用

注目していただきたいポイント

改めて当社の「持たざる経営」に注目していただきたいです。

当社は一部ホテル事業を除いて、不動産を持たないため経営リスクは最小限に抑えることができています。

そして、全国各地に拠点を張り巡らせたネットワーク力と、長年積み上げてきたオペレーション力があります。

これらの強みはあらゆる事業と相性が良いため、周辺領域への積極的なM&Aを推進することで事業領域の拡大、収益力の拡大を目指していきます。

投資家の皆様へメッセージ

2023年5月以降、新型コロナウイルス感染症の位置づけが「5類感染症」に移行されたことで、インバウンド需要の急速な回復・増加や企業の経済活動の正常化、人流の回復が一段と進み、当社事業における需要は堅調に推移しています。

そのような環境において、当社も強い対面需要の戻りに応えるため、2024年2月期から貸会議室・宿泊施設ともに積極出店する方針で中期経営計画を立てています。

中期経営計画の2年目に当たる2025年2月期は、新たな成長曲線を具体化して実行し、結果につなげる1年として参りますので、ぜひご支援いただけると幸いです。

株式会社ティーケーピー

本社所在地:〒162-0844 東京都新宿区市谷八幡町8番地 TKP市ヶ谷ビル2F

設立:2005年8月15日

資本金:163億円(2024年8月アクセス時点)

上場市場:東証グロース市場(2017年3月27日上場)

証券コード:3479

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

目次