【4811】株式会社ドリーム・アーツ 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年8月15日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ドリーム・アーツは「デジタルの民主化」を推進し、IT業界に変革をもたらします、日本で唯一のリアルエンタープライズSaaSベンダーです。

代表取締役社長の山本 孝昭氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社ドリーム・アーツを一言で言うと

日本で唯一のリアルエンタープライズSaaSベンダーです。

ドリーム・アーツの沿革

株式会社ドリーム・アーツ代表取締役社長 山本 孝昭氏

創業経緯

私は中学生の時から起業家になりたいと考えていました。

大学入学の際には、将来会社を立ち上げることを目指し、30歳での起業を目標に据えました。

そして、まずは尊敬できる創業社長の下で働きたいと考え、入社したのがアシストでした。

この企業は、大企業向けの大型汎用コンピュータのパッケージソフトの輸入販売会社で、ここでの経験は、ドリーム・アーツが大企業向けのビジネスモデルを築くための素地となりました。

その後、知人の紹介でインテルに移り、テクノロジーマーケティングについて、テクノロジーをいかにデファクトスタンダードとして浸透させるかを学びました。

そして1996年、31歳の時に当社を立ち上げました。

中小・中堅企業向けから大企業向けに

創業初期はBtoC事業を展開していましたが、約3年で事業を見直し、BtoB事業に転換しました。

当時法人向けのソフトウェア開発に取り組んでいたことから引き合いを受け、ASP(Application Service Provider)製品の開発に着手しました。

これが弊社プロダクトの「INSUITE」の始まりであり、当初は中小企業向けに提供していました。

その後、2000年に大阪証券取引所のナスダックジャパンから上場承認を受けながらも、上場を辞退し、エンタープライズ市場に特化するという大きな決断を行いました。

中小・中堅企業を対象としたソリューションでは、思い描いているようなスケールは見込めないと判断したためです。

リスクを伴ったものの、長期的な成長を見据えた大きな転換期だったと振り返っています。

そして2005年、協業型データベース「SmartDB®(スマートDB)」を発表し、エンタープライズ市場に向けたビジネスモデルを推進しました。

オンプレミスからサブスクリプションへ

2017年に、オンプレミス型の提供モデルからサブスクリプション型のSaaSビジネスへ移行させるという大きな決断をしました。

最近は大規模での導入パターンが増えていますが、2019年当初はQSS(Quick Start & Success)という導入戦略を掲げ、まずは小規模な部門導入から始め、その成功をもとに全社導入を進めるというアプローチを取りました。

導入企業側の初期コストを抑え、大企業での段階的な導入が可能であるため、幅広い顧客獲得に繋がりました。

企業にとってオンプレミス型のシステムを利用し続けるということは、システムの拡張や定期的なアップデートに高額なコストと時間を要します。

しかし、クラウドシステムは、常に最新のバージョンで使用できます。また部門導入の場合、そのシステムの使用感を試すことができ、全社的な利用に拡大する可能性もあります。

企業側にもコスト平準化や導入リスクの低減など、多くのメリットがあることからSaaSでの提供に切り替えました。

そして、コロナ禍においてリモートワークが増えたことも追い風となり、多くの企業がデジタル化の必要性に迫られたため、案件大型化や導入事例が増加し、売上を大きく伸ばすことができました。

株式会社ドリーム・アーツ 2024年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

ドリーム・アーツの事業概要と特徴

概要

日本市場においてエンタープライズ向けのICTソリューションを提供するパイオニアとして、大企業の業務プロセスをデジタル化し、効率化を図るためのシステムを提供しています。

株式会社ドリーム・アーツ 2024年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

当社の主力製品である「SmartDB®」は、企業が抱える複雑な業務プロセスを可視化し、効率的に管理できるノーコードツールです。

「SmartDB®」は、企業の現場部門での使用を前提に設計されており、システム部門に依存することなく、現場の担当者が自ら業務をデジタル化できるという点が大きな特徴です。

例えば、大和ハウス工業、ダスキンといった大企業では、現場部門が主導して業務をデジタル化し、結果として生産性が大幅に向上しました。

このように「SmartDB®」は、単なる業務管理ツールに留まらず、企業の生産性を上げ、成長を支える製品として、業界問わず導入されています。

株式会社ドリーム・アーツ 2024年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

事業における優位性

顧客関係性資産

当社の最大の強みは、顧客との強い信頼関係です。

リクルートグループや三菱UFJ銀行など、業界をリードする大手企業と長年の取引があり、ビジネスの成功を共に目指すパートナーです。

株式会社ドリーム・アーツ 2024年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

また、実際に現場で活用できると実感していただいています。

株式会社ドリーム・アーツ 2024年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

当社では「ユーザー訪問」という既存顧客が弊社プロダクトの導入を検討している企業に実際の使用感や活用方法を紹介してもらう活動もおこなっており、新規顧客開拓に寄与しています。

これは顧客が「ユーザー訪問」を受け入れ、当社を推薦してくれる、応援してくれる関係性を築けていることの表れです。

こうした関係性の連鎖が、当社のビジネスを持続的に成長させる原動力となっています。

株式会社ドリーム・アーツ 2024年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

エンタープライズ市場に立脚

大企業が、SalesforceやServiceNowなど知名度のある製品ではなく、当社のシステムをわざわざ利用するということは、企業側の数々の稟議を潜り抜けてきたことを意味します。

当社は、日本市場においてエンタープライズ向けのICTソリューションを提供する中で、大企業特有の複雑な組織体系を理解し、あらゆるニーズに応える能力を培ってきました。

株式会社ドリーム・アーツ 2024年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

大企業においてシステム導入を進める際には、システム部門やサービス部門、人事部門、法務部門など、複数の部門が関与する中での調整が必要です。

こうしたプロジェクトを推進するためには、非常に高い技術力とプロジェクトマネジメント能力が求められます。

そして、フロントに立ってシステム導入を進めているのは、当社の20代から30代の若手メンバーです。

若手が大企業の担当としてやり取りを行うことは非常に難しいですが、優秀なメンバーがしっかりと対応しています。

もちろんトラブルが発生した際には、原因の解明や解消が長期間に及ぶこともありますが、粘り強く責任を持って対処しています。

このように、エンタープライズ向けにソリューションを提供できることは、今後さらに成長していく上で大きなアドバンテージになると考えています。

オリジナルソフトウェア「SmartDB®」の開発

「SmartDB®」は、エンタープライズ市場におけるノーコードツールの先駆けとして開発されました。

当社は、約20年前にこのツールをエンジニアを全く必要としないノーコード(当時はプログラムレス)で作るというビジョンを掲げ、長年にわたってアップデートを重ねてきました。

なお、世間ではノーコードとローコードという言葉が混同されがちですが、全く異なる概念です。

ローコードはプログラミングを理解しているようなプロ向けのツールで、ノーコードはプログラミングの知識がなくとも利用できるツールです。

現在、「SmartDB®」は日本国内で唯一のエンタープライズ向けノーコードツールとして、独自のポジションを確立しています。

株式会社ドリーム・アーツ 2024年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

この「SmartDB®」の強みは、システム部門だけでなく、現場部門のスタッフでも簡単に使いこなせる点にあります。

総務部門や営業部門など、ITの専門知識がない現場スタッフが、自らの業務プロセスをデジタル化できることから、企業全体でのデジタライゼーションが加速しています。

部門導入できるという柔軟性や導入後の拡張性が評価され、近年は全社一括導入が進んでいます。

株式会社ドリーム・アーツ 2024年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

ドリーム・アーツの成長戦略

デジタルの民主化とMCSA

当社の成長戦略の柱となるのが、「デジタルの民主化」です。

この概念は、企業のデジタル化をシステム部門だけに依存させず、現場の業務担当者が自らデジタルツールを駆使して業務を改善・効率化することを目指す、というものです。

この取り組みの具体例としては、大和ハウス工業における事例が挙げられます。

大和ハウス工業では人事部が主導して「SmartDB®」を活用し、わずか半年間で30業務以上をデジタル化しました。

このように、現場主導でのデジタル化が進むことで、企業全体の生産性向上が実現され、従来の大手SIer頼りだったDX化を現場から変革していく「デジタルの民主化」を進めていきます。

株式会社ドリーム・アーツ 2024年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

また「SmartDB®」の活用範囲として戦略的なターゲット領域に掲げているのがMCSA(Mission Critical System Aid)です。

MCSAというのは造語ですが、MCSはミッションクリティカルシステムの略で、ドーナツの中央部分です。

MCSAエリアは重要なデータを扱うERPの前受け、後受け処理のようなものであり、これまではノーコードでできないエリアだったのが、「SmartDB®」ではノーコードでできるようになりました。

ERPシステムのフロント業務を支援する形で「SmartDB®」が採用され、日本経済新聞社やダスキンなどの大手企業でも導入されており、今後成長していく上での重要エリアとして位置づけています。

株式会社ドリーム・アーツ 2024年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

SmartDBのターゲットと戦略パートナーの拡大

また「認定制度の普及と戦略パートナーの拡大」も成長戦略のひとつとして掲げています。

「デジタルの民主化」を進めていくためには、「SmartDB®」の業務アプリケーションの開発・運用に携わることのできる人材を創出していくことが大切です。

そこで、「SmartDB Certified Specialist(SCS)」という資格認定制度を発足させ、非常に力を入れて取り組んでいます。

ある会社では、資格取得を目指した合宿が開催され、大部分が人事や総務、営業部門などの非IT部門の人たちで構成されていました。先日、プレスリリースを発表しましたが、資格取得者は1,300名を突破しました。

また、社内でEC2(External Capabilities&Capacity)という「SmartDB®」に携わることのできる外部人材や、「SmartDB®」を商材として扱うことのできるパートナー企業を増やし、顧客ニーズへの対応力を強化しています。戦略パートナーには大手企業も含まれており、現在、実際の案件ベースでも一緒に取組んでいます。

今後も認定制度の普及と戦略パートナーを拡大し、「SmartDB®」の更なる拡販を目指します。

株式会社ドリーム・アーツ 2024年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

注目していただきたいポイントは、何よりも「SmartDB®」の導入事例の豊富さです。

未発表の事例も含め、当社の目指す「デジタルの民主化」が様々な業界で進んでいます。

また、当社はSaaSベンダーであるため、NRR(Net Revenue Retention)にもご注目いただきたいです。

現在、ホリゾンタルSaaSのNRRは約118%と業界内でも高水準を維持しており、これは単なる新規顧客の増加だけでなく、既存顧客へのアップセルも発生していることを示しています。

このようなホリゾンタルSaaSの成長率を支える豊富な導入事例や高い水準を誇るNRRは、当社が提供する価値が企業のデジタル化に貢献している証、とご認識いただきたいです。

投資家の皆様へメッセージ

国際情勢が不安定な中、日本は再び成長の時期に差し掛かっています。

特に、ドリーム・アーツを選ぶ企業は、保守的な選択ではなく、積極的に変革を求め、果敢に挑戦する企業ばかりです。

そして、業界トップクラスの企業が時代の先端を行くアグレッシブな選択をしてきました。

日本は「失われた30年」と言われることが多いですが、その間にも多くの革新や成長がありました。

日本の強みでもある「魔改造」が、AIの普及やデジタル技術の進化に伴い、真価を発揮する時が来たと考えています。

そのような中、当社は企業のデジタライゼーションを支える重要なパートナーとして、成長していきたいと考えています。

投資家の皆様には、当社の取り組みと成長にご期待いただき、ご支援いただければと存じます。

株式会社ドリーム・アーツ

本社所在地:〒150-6029 東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー29F

設立:1996年12月2日

資本金:5億6919万2000円(2024年8月アクセス時点)

上場市場:東証グロース市場(2023年10月27日上場)

証券コード:4811

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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