【8061】西華産業株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年9月25日に実施したIRインタビューをもとにしております。

西華産業株式会社は地球環境と調和したサステナブルなエネルギー創出・産業活動を支援する商社を目指します。

代表取締役社長の櫻井 昭彦氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

西華産業株式会社を一言で言うと

着実に事業成長を実現し、キラキラ輝く、一流企業を目指す会社です。 

西華産業の沿革

西華産業株式会社代表取締役社長 櫻井 昭彦氏

創業の経緯

創業は1947年、昭和22年10月1日です。

2024年10月1日で創立77周年になります。

戦前の三菱商事を母体としており、財閥解体後、北九州の門司市で同社関係者が当社を設立しました。

当社の主要顧客である三菱重工も財閥解体後、それぞれの造船所が独自に営業活動をしていたため、我々は距離の近い西日本を中心に、北九州から長崎、大阪、広島、四国へと事業を拡大していきました。

そして、ビジネスモデルを確立させ、1961年に東証一部上場を果たしました。

これは商社の中では比較的早い時期でありました。

しかし、上場後の1964年に三菱重工の販売代理店が三菱商事に一本化されることとなり、代理店契約の喪失という創業以来の危機に直面しました。

ただ、当時の経営陣の努力と三菱重工の理解で、これまでの取り組みが高く評価され、三菱商事の復代理店としての地位を確保することができました。

事業拡大と海外展開

その後、グループ経営や海外戦略を加速させながら様々な事業展開を進めてまいりました。

日本の高度経済成長とともに当社も成長し、ヨーロッパから繊維機械や製本機械など、様々な産業機械の輸入も手がけ、従来の電力事業以外の幅広い事業領域をカバーする機械総合商社として成長していきました。

1974年には、ドイツ現地法人を設立し、その後もヨーロッパ、アメリカ、東南アジア、東アジアに拠点を展開しています。

現在では国内外の関係会社29社の拠点を含めると、130以上の国内外のネットワークを保有しています。

選択と集中、そして三菱重工の正代理店

社長就任の2018年当時は、収益も停滞しており、その要因は過去に新規事業として投資したものが計画から大きく乖離し、事業収益を押し下げていました。

また当社の基幹事業であるエネルギー分野において 脱石炭の流れが加速するなど事業環境の変化もあり、将来に向けた取り組みを考えなければならなくなりました。

そのため、前中期経営計画においては、赤字からの脱却と業績の回復を目指し、事業領域における選択と集中、業務効率化などに取り組みました。

遊休資産の売却とタイにおけるプリント基板の製造販売事業の撤退、横浜・札幌支店の閉鎖など事業に於いての見直しを進めました。

斯様な取り組みを進めながら、社員の不断の努力のお陰もあり、最終年度である2023年3月期には目標値を達成し、再出発のスタートラインに立つことができました。

また、2023年4月に西日本地区における火力発電設備関連の事業から三菱商事が撤退したため、当社は三菱重工の正代理店としての地位を回復させました。

従来の火力発電設備の事業に加えて、原子力発電設備の事業も担うこととなったため、事業拡大の大きな一歩となり、当社の成長を支えております。

西華産業株式会社 より提供

西華産業の事業概要と特徴

概要

当社はエネルギー事業、産業機械事業、プロダクト事業の3つの事業領域で展開しております。

まず、基幹ビジネスはエネルギー事業ですが、三菱重工の正代理店としてお客様との厚い信頼を活かし、電力会社や大手一流メーカーと良好な関係を築いています。

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また、産業機械事業は、エネルギー事業で培った信頼関係から、お客様から「製造機械も扱えないか」「このような機械を探している」「海外進出のアレンジをして欲しい」というニーズに基づき、発生した事業です。

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そして、産業機械事業の中でも、特に特色のある海外製品などを、様々なお客様に販売する事業がプロダクト事業です。

このように、当社の事業は完全に独立したセグメントではなく、常に連携を取り、シナジーを生み出し続けています。

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事業における優位性

三菱重工の正代理店

三菱重工は代理店制度を整備しているため、他社との競合が発生せず、西日本地域における販売は当社に一任されています。

しっかりと商圏が定められているので、他社との競合に晒されることはなく、安定した取引を続けることが可能です。

西日本地区中心に可能な限り拠点を設け、大阪以西について言えば、岡山、福山、広島、山口、北九州、福岡、延岡、大分、長崎等々、かなり細かく拠点を配置しています。

この拠点網は、当社が長い歴史の中で積み上げてきたものであり、参入障壁は非常に高いものと考えております。

ニッチトップ領域での展開

プロダクト事業において、当社しか扱えない商材やサービスを多く持っており、ニッチトップの製品を取り扱っています。

核となるのは子会社群ですが、例えば、日本ダイヤバルブ株式会社はファインケミカル業界に使われる特殊なバルブ「ダイヤフラムバルブ」を販売するトップメーカーです。

また、鶴見製作所との合弁会社であるTsurumi(Europe)は、ヨーロッパ一帯に40数箇所の代理店を有し、下水ポンプや排水ポンプの販売を行っています。

さらに、三菱重工相模原製作所が製造している漁船用のエンジンを日本国内の総代理店として、販売並びにアフターサービスを行う、セイカダイヤエンジン株式会社と敷島機器株式会社という2社があります。

このように、ニッチトップの領域における商社として独自のポジションを築き上げています。

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約3,000社のネットワークと情報資産

当社は約3000社のメーカーとの取引を行っております。

長年の取引を行ってきた中で、エネルギー業界や産業界における知見やノウハウを蓄積してきました。

当社はあくまでも商社という立場でありますが、メーカーとお客様を繋げる存在として、「ヒト」に積極的な投資を行っています。

そのような中で、社会課題や環境問題を解決するメーカーと繋げ、新たな商材の開発や発掘を進めています。

先ほど、セイカダイヤエンジン株式会社は漁船用エンジンの販売を行っていると申し上げました。

当社が商社として漁船用エンジンの販売を持続可能にしていくためには、お客様の生業でもある漁業としっかりと向き合っていくことが大切です。

例えば、将来に向けてディーゼルオイルを燃料にしないEV船を試作し、マルハニチロと共同運行をしています。

現在は実証実験段階ですが、様々な実験を重ねながら実用化を目指しています。

また、長崎の新松浦漁業協同組合と藻場の磯焼け対策プロジェクトを進めています。

その他にも社会課題や環境問題などをキーワードに、商社というポジションで何ができるかを考えながら、様々な取り組みを進めております。

社会インフラを支えるビジネス

エネルギー事業を中心とした当社の事業領域は、全て社会インフラに関連するビジネスです。

景気に左右されない分野が多く、収益力、安定性ともに高いビジネスだと自負しております。

例えば、半導体などの商材を扱う場合は変動が大きく安定性に欠けていますが、当社の場合は電力会社など社会インフラを支える企業を対象としたビジネスであるため、大きく落ち込むことはありません。

そして、2023年4月より原子力発電設備関連事業を開始し、また、化石燃料を使用する火力発電に対するバイオマス混焼、水素混焼を提案したり、脱炭素・低炭素化に向けたビジネスを展開することができています。

西華産業の成長戦略

長期経営ビジョンの策定

先ほどお話した通り、海外での事業失敗もあり、ここ数年間は業績が低迷していました。

脱石炭の加速など事業環境も大きく変化していることもあり、

将来に向けて「ありたい姿」を念頭に置き、2030年に向けた長期経営ビジョンを策定しました。

2030年は将来のエネルギー事業における燃料の潮目と言われており、それに向けて当社は「地球環境と調和したサステナブルなエネルギー創出・産業活動を支援する」というパーパスを策定しました。

また、具体的な数値的目標も設定し、2030年には当期純利益で45億円、営業利益換算すると60数億円です。

策定当時は連結当期純利益で20億円程度であることを考えると、そこから2倍以上に成長させるという目標です。

前中期経営計画では選択と集中を行い、事業整理が完了したという認識の下、再出発をするという意味合いも込めてその数値を定めました。

2023年から2030年までの8年間を2つに区切り、第1次中計を2023年〜2026年、それから2027年〜2030年までを第2次中計として、現在は第1次中計に取り組んでいます。

成長戦略の概観

我々のビジネスは、企業における設備投資が商売の種ですが、昨今のお客様の動向を考えると、必ず「環境」というキーワードが入ってきます。

設備更新についても「環境に配慮する」「人にやさしい」というような設備の導入ニーズが非常に高い状況です。

そこで、これからは環境に根付いた商材の開拓を中心に進めていきます。

「グリーンイノベーション関連商材の拡大」とお伝えしておりますが、脱炭素に沿うような商材の開拓、省エネ・省人化、サーキュラーエコノミー、DXというキーワードが営業戦略の要です。

ただし、地道な営業活動も進めていく一方で、メーカーへの開発資金の援助や事業拡大に伴う補完的なM&Aも併せて推進していきます。

具体的には、事業戦略を推進するための施策として、100億円規模の事業投資を行うことをかかげております。

ただ闇雲にというわけではなく、目的や中計のビジョンとの整合性を見た上で、適正に判断した上で投資を行います。

将来的に、当社の事業を担う人材を育成するための人的資本投資も積極的に行います。

そして、安定して投資を行っていく上では、強固な財務基盤が必要です。

政策保有株式の縮減や、遊休資産の売却、事業整理を進め、経営のスリム化、財務基盤強化を進めます。

成長戦略の進捗状況

2024年9月現在、関係会社も含め業績は好調に推移しております。

進行期の2025年3月期の業績を見ますと、当初掲げた2026年の中計の目標数値はほぼクリアしており、2030年度目標数値にも手が届く範囲に近づきつつあります。

そのため、2025年の2月頃を目処に、第一次中計の最終年度である2027年3月期の目標数値の見直し、並びに2030年度の長期経営ビジョンの到達目標数字の見直しを検討中です。

この修正はポジティブな上方修正となるため、期待していただければと存じます。

西華産業株式会社 より提供

注目していただきたいポイント

これまで我々は三菱重工の代理店という立場もあり、なかなか自発的に成長戦略や足元の状況を株主の皆様を含め対外的に発表する場を設けておりませんでした。

しかし、2023年3月の東証からの提言を受け、これまでの反省も踏まえ、今後は株主の皆様との対話やエンゲージメントの向上など、IR活動などの対外的な発信を積極的に進めるべきだと考えています。

できる限りの時間を投資家の皆様へと考え、よりわかりやすく会社の事業や成長戦略を説明する場を設けております。

また、魅力的な企業だと認識いただけるように、株主還元についても積極的に取り組んでおります。

当社には既に安定した収益力があるため、今後は成長投資がどれだけできるかが重要なポイントです。

失敗や整理をする時期は終わり、現在は社員の努力や経営の努力が数字に表れてくる時期だと認識しております。

投資家の皆様には安定的な収益基盤を持ちながら、成長可能性の高い企業として注目していただければと存じます。

投資家の皆様へメッセージ

当社は安定かつ成長が期待できる会社です。

2024年3月期には総還元性向45%目途、ROEを10%以上など、さまざまな施策を打ち出し、着実に目標を達成しております。

株主還元については積極的な方針ではありますが、当社のビジネスモデルとこれからの成長に期待していただき、ご理解とご賛同いただきながら株主として応援していただければと存じます。

西華産業株式会社

本社所在地:〒100-0005 東京都千代田区丸の内三丁目3番1号(新東京ビル)

設立:1947年10月1日

資本金:67億28百万円(2024年9月アクセス時点)

上場市場:東証プライム市場(1961年9月1日上場)

証券コード:8061

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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