【7343】ブロードマインド株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年11月22日に実施したIRインタビューをもとにしております。

ブロードマインド株式会社は金融業界の既成概念に囚われず、新たな金融サービスの創出に挑戦し続ける会社です。

代表取締役社長の伊藤 清氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

ブロードマインド株式会社を一言で言うと

既成概念に囚われず、金融サービスの創出に挑戦し続ける会社です。

ブロードマインドの沿革

ブロードマインド株式会社代表取締役社長 伊藤 清氏

創業の経緯

私の経歴は非常にユニークで、1988年4月に日本電気株式会社(現:NEC)に入社した後、翌年にはスキューバダイビングや水泳、スキーなどのスポーツインストラクターをしていました。

スポーツの指導においては、ただ実技を教えるだけでなく、大学の単位に匹敵する厳しい講義や試験など幅広い経験を積みました。

その後、1996年9月にソニー生命に転職し保険業界のキャリアを始めました。

スポーツインストラクターで培ったプレゼンテーション力やコミュニケーション力は生命保険の営業にも活かされ、「どうすれば分かりやすく伝えられるか」「短時間で効率よく情報を伝えるにはどうするべきか」を考えながら経験を積みました。

保険営業を通じて様々なお客様と接する中で、「世の中には各社にそれぞれ良い商品がたくさんあるのではないか」と感じるようになりました。

当時は複数の保険会社の商品を扱うビジネスは一般的ではなく、お客様にとって最善の提案をするためには、さまざまな商品を扱うことが必要だと考えるようになりました。

そこで、「お客様に最適な組み合わせを提案できる環境を作りたい」という思いから、2002年1月に当社を立ち上げました。

ブロードマインド株式会社 2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

保険商品の価格破壊への挑戦

生命保険会社・損害保険会社11社と代理店契約を締結し、複数の保険会社を取り扱う総合保険代理店として事業を開始しました。

また、「日本で保険の価格破壊を起こすこと」という目標も掲げていたため、2003年1月に共済事業のコンサルティング事業を本格的に開始しました。

これまでにも、たとえば大学の体育会系クラブ向けの事故やケガの補償共済や、ゲートボール連合会の高齢者向け共済など、いくつかの共済を立ち上げた実績があります。

また、海外の再保険を活用して保険料を抑える仕組みを構築しましたが、日本国内の法規制により、再保険を海外ではなく国内の保険会社を通じて行うよう義務付けられた結果、期待していたよりも保険料の削減効果は限定的であり、この状況下で価格破壊を目指すことは困難だと判断し、2013年12月に事業会社を売却しました。

その後は、保険代理店業務に経営資本を集中させ、ビジネスモデルを確立するための取り組みを進めました。

保険業界における新たなビジネスモデルの確立

保険業界では基本給が存在せず、営業成績や販売実績に基づいて報酬が決まるフルコミッション制(完全歩合制)が一般的ですが、この仕組みに疑問を感じていました。

前職では同期入社した98人のうち、5年後に残っていたのはわずか3〜5人という悲惨な結果で、多くの人が見込み客を作れず辞めていく状況が続いていました。

契約時に「一生お客様に寄り添います」と言いながら数年で辞めてしまう状況は、お客様のためにならないとともに、業界全体のイメージ悪化にもつながるとも考えました。

そこで、当社は固定給制で、未経験者を一から育てながら、見込み客の獲得に奔走することなく、目の前のお客様に寄り添った提案ができる環境を整えました。

そして、2011年4月には新卒一期生が19名入社しました。

人脈がなく経験も浅い新卒は即戦力にはならないと思われがちですが、当社が仕組みをしっかりと整えれば可能だと考えました。

同年に業界初となる「提携ビジネスモデル」をスタートさせ、提携企業の会員や顧客に対してコンサルティングサービスを提供する仕組みを構築しました。

当時、保険会社の不払い問題や年金問題が注目されていた時期に、「特定の保険会社に偏らずに提案・アドバイスを行う」という当社のビジネスモデルが評価され、通販会社との連携に至りました。

その後、通販会社やカード会社、さらには官公庁とも提携し、事業を拡大していきました。

お客様のライフプランをしっかり立て、「何のためにお金を増やすのか」という目的を明確にし、その上で保険・証券・住宅ローンなど幅広いサービスを提供する体制を整えています。

ブロードマインド株式会社 2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

ブロードマインドの事業概要と特徴

概要

当社はお客様のニーズに寄り添いながら、生命保険・損害保険、投資信託・債券、住宅ローン、不動産など、幅広いソリューションをワンストップで提供しています。

ブロードマインド株式会社 2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

国内約60社の金融商品及び不動産を扱うことができる体制を整えており、資産形成や資産運用、老後資金の対策、家計相談、相続対策などのニーズに応えています。

ブロードマインド株式会社 2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

当社の社員がお客様とともにライフプランを設計し、その実現に向けて各ライフステージやライフイベントに沿った商品を提案することが可能です。

たとえば、当社のFPに「住宅ローンの毎月の返済額を抑えたい」という相談があれば、住宅ローンの専門スタッフが対応します。

さらに、住宅ローンの返済額を下げるということは日々の生活費を抑えたいという意図があるはずなので、その流れで生命保険や損害保険の見直しも提案にも繋がっています。

金融業界では〇〇フィナンシャルグループというように、ホールディングス体制で横のつながりを活かしながらビジネスを拡大させているところもありますが、別会社同士なので、スムーズな連携ができているとは言い切れません。

一方、当社は別会社にせず子会社として抱えるなどして、一体的に運営しているため、情報交換がしやすく、スムーズに連携できるのです。

ブロードマインド株式会社 2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

事業における優位性

提携ビジネスによる独自の集客モデル

一般的な保険代理店では見込み客を自分で開拓する必要があり、属人的な能力に依存していますが、当社ではそのスキルを必要としない仕組みを構築しています。

それが先ほども沿革の中でお話しした「提携ビジネス」です。

現在、30社以上の提携パートナーがありますが、毎月約2,200件の相談を受け付け、お客様の特徴に応じて適切な担当者が対応しています。

このビジネスモデルの実現がなかなか難しいのは、多くの保険会社ではフルコミッション制を導入している社員が多いためです。

日々の数字が生活に直結するため、固定給制と比較するとどうしても自分の営業成績を優先してしまいやすい環境です。

一方、当社は固定給制を採用しており、ガバナンスを徹底しているので提携パートナーには安心感を持っていただいています。

また、社員一人一人に対するKPIの管理も徹底しており、受注率をはじめとしたお客様へ貢献ができているかを、提携パートナーへ報告しています。

このように参入障壁が高いため、提携ビジネスを実現することは非常に難しいと考えています。

ブロードマインド株式会社 2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

新卒を育てる体系的な教育システム

当社のグループには「優秀な新卒学生を採用・育成する」という育成方針があり、業界内でもユニークな教育体制を整えています。

特定の商品に偏ることなく、お客様をサポートするために必要な内容を網羅しており、早期に一人前のFPに育てる教育プログラムを組んでいます。

10年以上蓄積してきた教育のノウハウを反映した体系的な教育システムは当社の特徴であり、競争力の源泉でもあります。

ブロードマインド株式会社 2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

⽣産性を高める独⾃のデジタルツール

当社は独自のデジタルツールを活用して、社員の生産性を高めています。

例えばオンライン商談システム「Broadtalk」はスマホ・タブレット・PCから利用可能で、アプリダウンロードが不要でWEBブラウザで使用することができるなど、BtoC営業に特化したシステムです。

当社の社員の多くは20代の若手社員ですが、お客様の多くは年上の方々です。

これまではお客様の自宅や喫茶店などで初対面の場を設ける必要があり、心理的ハードルが高いという課題がありました。

しかし、「Broadtalk」によりオンラインで対応できるようになったため、効果的な営業を行うことができ生産性が大幅に上がりました。

また、猛暑の暑い中移動をして面談するというようなこともなく、効率的にアプローチすることができるようになりました。

以前の対面方式では1日3件の対応が限界でしたが、オンラインでは1日に6件ほど対応が可能となっています。

その他にも保険と投資を組み合わせたライフプランニングシステム「マネパスwithFP」やコミュニケーションアプリ「FP Omusubi」などを活用し営業の効率化を実現しています。

ブロードマインド株式会社 2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

ブロードマインドの成長戦略

新規顧客獲得

今後も提携ビジネスを活用して新規顧客開拓を積極的に行って参ります。

たとえば、クレディセゾンさんには2,400万人以上1の会員様がいらっしゃいますが、当社のキャパシティでは対応しきることができず、顧客獲得の機会を逃しています。

ブロードマインド株式会社 2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

そこで、新卒を採用し早期戦力化を図ることで、この人材不足をカバーしていきたいと考えています。

実際、当社の強みである体系的な教育システムがあるおかげで、2年目の上半期中には新卒社員の黒字化を達成することができています。

ブロードマインド株式会社 2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

既存顧客のLTV向上

当社のお客様の多くは、生命保険契約をきっかけに関係が始まります。

ライフプランに基づいた適切な商品提案を行うことで、その後のライフステージの変化に応じた追加提案や販売をスムーズに進めることができ、結果としてLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高めることが可能です。

ブロードマインド株式会社 2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

単にアポの獲得が容易となるだけでなく、次の契約までにかかる時間が短縮されるため、高い利益率を実現しています。

現在、LTV部隊を組成し、少数精鋭で行っていますが、これまで約12万世帯のお客様が当社経由で保険契約をしていただいているので、ポテンシャルとして高いと期待している分野です。

ブロードマインド株式会社 2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

デジタルアセットの外部提供

これまで、当社は保険業界、ないしは金融業界において革新的なツールを開発してきました。

このノウハウや技術力を活かして、今後BtoB領域として競合他社をターゲットにしたビジネスを提供していきます。

ブロードマインド株式会社 2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

主には保険会社、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)、保険代理店をターゲットとして、「マネパスwithFP」を外販していきたいと考えています。

マーケット規模ですが、生命保険募集人が120万人近くおり、その中でもライフプランニングを実施しながら保険提案をしている募集人は約18万人程度と見積もっています。

すでに、ライフプランニングを行う企業の中には、当社のシステムをシミュレーションに採用したいという声もあります。

今後、サブスクリプションモデルで提供していく予定のため、安定した収益源になると期待しています。

ブロードマインド株式会社 2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

当社の離職率は業界内でも非常に低く、良い社内文化を持った会社です。

この点で、社員同士の団結力は他社と比べても大きな特徴だと思います。

ブロードマインド株式会社 2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

また、当社は仕組みづくりが得意で、提携ビジネスを含めさまざまな仕組みを構築しながら成長してきました。

さらに、業界内でなかなか進んでいないDXにも積極的に取り組んできました。

今後は当社のノウハウを基盤に、オンラインを軸とした金融スクール事業を開始し、

基礎コースから副業コースまでさまざまなプログラムを展開していきたいと思います。

このスクールの卒業生を、将来的には当社の仲間として迎えることも視野に入れています。

また、さまざまな投資家の方々とお話しする中で、「保険代理店としてどのような差別化を図っているのですか?」とのご質問があります。

当社は他の上場している保険代理店とは異なり、「サービスを創り出す会社」です。

先ほどお話ししたデジタルツールや金融スクールもその一例ですが、20年以上にわたり、ライフプランをベースとしたコンサルティングサービスをお客様に提供し、そこで培ったノウハウや強みをサービスとして再構築するだけの力があります。

そして新卒社員の多くは「ガンガン稼ぎたい」という人材ではなく、当社のビジョンや事業内容に共感し、そこに魅力を感じた人材ばかりです。

「こうしたサービスを届けたい」「お客様にこのような価値を提供したい」という意識を持った人材が多く集まっています。

こうした環境が、人材の成長を支え、サービスを再構築する力や組織力を生み出しているのです。

ブロードマインド株式会社 2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

当社は上場以来、安定的に増収増益を続けています。

中期経営計画の内容にもありますが、今後も着実に成長を続けていく会社です。

このような点から、投資家の皆様のポートフォリオの一部に加えていただければ大変ありがたいと考えています。

引き続きご支援のほど、よろしくお願いいたします。

ブロードマインド株式会社

本社所在地:〒150-6233 東京都渋谷区桜丘町1-1 渋谷サクラステージSHIBUYAタワー33階

設立:2002年1月9日

資本金:628,040,000円(2024年9月末時点)

上場市場:東証グロース市場(2021年3月26日上場)

証券コード:7343

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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