※本コラムは2024年4月25日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社アドテックプラズマテクノロジーは半導体・液晶業界に対応する信頼性の高いプラズマ用高周波電源、マッチングユニットやその関連機器の販売・製造を行い、基礎技術の確立と最先端技術への挑戦を続けています。
代表取締役社長の森下 秀法氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社アドテックプラズマテクノロジーを一言で言うと
最先端の「高周波技術」と「プラズマ技術」であらゆる産業を支える会社です。
アドテックプラズマテクノロジーの沿革
創業の経緯
創業は1985年で、半導体といえば白物家電に使われるくらいで需要は少なく、現在の1/10程度でした。
創業者の藤井は、現在は取締役相談役を務めています。
藤井は学生の頃から電気や無線、モールス信号等に興味があり、大阪電気通信大学で学んだ知識を活かしてパナソニック(当時は松下電工)に入社しました。
そして1985年に独立し、電気回路の設計が好きだった藤井はネオンサイン等の制御基盤を作りました。
しかし、それだけでは需要が限られていたため、半導体製造装置のコントロール基盤等の修理を依頼されるようになりました。
そのようにメーカーからOEMの請負等、電子回路設計の下請けから当社の事業は始まりました。
壊れにくい電源の開発
そのような中、取引先の半導体工場で「搬送ロボットと真空ポンプと高周波電源が壊れやすい」という話を聞き、壊れにくい高周波電源を作ろうと開発を始めました。
そして数年かけて開発を行い、1991年には高周波電源の1号機を製作し、半導体メーカーに無償で貸し出しました。
当社は後発メーカーだったため、このように思い切った営業で当社の電源の良さが認められ、九州地区での販売を皮切りに、徐々に事業を拡大しました。
藤井はビジネスで売上や利益を上げることよりも、エンドユーザーのためになる製品を作りたいと事業をスタートしたため、地道にものづくりを行い、その結果として売上や利益が上がってきました。
現在はエンドユーザーのニーズに応えるためにも、新製品の開発に積極的に取り組みながら事業拡大を目指しています。
アドテックプラズマテクノロジーの事業概要と特徴
概要
半導体・液晶業界向けのプラズマ用高周波電源や周波数を調整するマッチングユニットの製造・販売が主な事業です。
事業セグメントとしては半導体・液晶関連事業、研究機関・大学関連事業の2つですが、売上の約8割を半導体・液晶関連事業が占めています。
事業における優位性
顧客目線のきめ細い技術サービス対応
高い技術力と開発コンセプトを踏まえた柔軟な対応が当社の最大の強みだと考えています。
半導体市場に対応するため、アメリカ、イギリス、中国、台湾、韓国などに拠点を設けており、福山の本社では主に設計開発を行い、生産のメインはベトナムの子会社工場で行っています。
一部、栃木県佐野市や韓国の子会社でも製造していますが、ベトナムの子会社で生産を集中させていることで、製品の納期短縮やコストメリットを実現しています。
競合の中には電源を取り扱う大手企業もありますが、大企業の一事業部門としてではなく、専業メーカーとしての経営の速さ、意思決定の迅速さ、柔軟な対応力で競争力を高めています。
そのような強みを活かしながらお客様の要望に応じた開発設計を行い、生産・販売・アフターサービスに至るまで、グループ全体で一貫してフォローできる体制を整えています。
高難易度なプラズマ用高周波電源の開発
半導体・液晶業界で使用されるプラズマ用高周波電源の開発には高い技術力が必要です。
開発において扱う高周波は空気に触れるだけで変化してしまうためセンシティブで、高い専門知識が求められます。
こうした技術者を育てるのは非常に難しく、この分野に興味を持って取り組む人材でなければ育成は成り立ちません。
そのため、世界的に見ても100人ほどしか技術者がいないと言われるほど希少です。
現在、当社としても数名の新規設計ができる技術者がおりますが、彼らも十数年かけて専門技術を習得しました。
また、技術者の高齢化が課題とされる中、当社は次世代の開発者を育成し、40代の技術者が主力であるため技術の承継については問題ありません。
このように他社に比べて安定的に開発するための高い技術力を確保していることは強みだと考えています。
半導体・液晶業界に特化
当社の製品数は大手企業の高周波電源メーカーと比べて少ないですが、半導体・液晶業界に特化しているため、高い品質を兼ね備えた様々なラインナップがあります。
創業以来、当社は後発メーカーかつ資金力もあまりなかったため、電源の中でも業界に特化して事業を成長させてきました。
また、取引の際には生産キャパシティを求められることが多いですが、大企業のような製造拠点を持たないため、半導体・液晶業界に特化し、日本でNo.1を目指してきました。
その中でも5kW以下の13.56 MHzと27MHzのプラズマ用高周波電源に注力し、半導体の製造工程に不可欠な製品を開発しています。
そして、国内外で複数の特許も有しており、この業界における電源開発の参入障壁は非常に高いと考えています。
また、半導体の製造工程では、シリコンウェハーを処理するチャンバーという空間があり、チャンバー数が多いほど電源装置の需要も増えます。
以前は1装置につき4チャンバー程度だったものが、最近では8チャンバー、16チャンバーと増えています。
イメージとしては半導体製造装置メーカーが20%成長する場合は、その製造工程に必要な電源は2倍以上必要となるので当社は倍以上の成長を見込めます。
このような半導体業界に特化していることでのメリットもあります。
アドテックプラズマテクノロジーの成長戦略
生産体制の増強
当社製品において、製品売上データではアジア地域が多く占めておりますが、実際にはアジア地域の半分は日本の装置メーカーの製造拠点がシンガポールに移っただけだとご認識ください。
したがって、売上の約7割以上が日本の半導体製造装置メーカー市場に依存しています。
また、これまでは生産キャパシティが限られており、グローバル市場で競争するには不十分でした。
例えば、装置メーカーからは「月に1000台製造できるか」と尋ねられたとしても、フル稼働しても月に1500台の製造が限界でした。
これからはベトナム第二工場の完成とともに、生産能力を大幅に拡大させていく予定です。
製品ラインナップの拡充
半導体の製造工程において、より最先端な技術が求められていくため製品のラインナップを拡充させ、最先端技術を搭載した製品を開発していきます。
2024年4月には今後更に多様化する半導体製造プロセスを見据え、⾼速RF制御システム(Mark5)をリリースしました。
従来のシステムに比べ、電力制御を1000倍以上に高速化させ、安定したプラズマ放電が可能になりました。
これにより業界最速レベルの電力制御頻度を実現し、世界でもトップクラスの機能を持った製品として販売していきます。
また、高周波電力供給システムで要求される主要機能である「連続出力」、「パルス出力」、「アークハンドリング」、「周波数チューニング」を同時搭載させ、フルデジタル化したオールインワンモデル製品を実現しました。
このように高い技術力を活用し、半導体製造プロセスの多様化に先回りした製品開発を進めていきます。
注目していただきたいポイント
半導体製造工程に関わるプラズマ用高周波電源開発の市場は拡大しています。
当社は後発メーカーとして約30年の歴史を持っていますが、事業基盤の整備も完了し、これからがスタートです。
まずは日本国内のポジションを確立させ、今後は世界市場でのシェア拡大を目指しています。
既にグローバルに拠点の展開もしていますが、市場規模から考えても、シェアを数%上げるだけで売上が100億円増加する可能性があります。
今後、当社の生産キャパシティは3倍に拡大できる状態にあるので、より成長が見込まれる海外市場に力を入れていく方針です。
また、当社の高周波電源は装置を動かすための単なる電源ではなく、シリコンウェハーを直接加工するために必要なプラズマを生成する製品です。
この技術は、半導体の製造プロセスにおいて非常に重要な工程を担っています。
当社の製品は非常に繊細な技術を必要としており、ニッチな業界でもあるため大手企業が簡単に参入できるものではありません。
皆様には半導体の製造工程に欠かせない企業として知っていただき、当社の成長性に注目していただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
先ほどもお話ししたように、当社の製品は半導体業界において不可欠な存在です。
昔はシリコンサイクルと言われ、4年ごとに需要が急増するサイクルがありましたが、今ではスマホやタブレット、ゲーム機、さらには自動車に至るまで、あらゆる製品に半導体が必要な時代となっています。
当社はニッチな市場に特化し、他社には真似できない独自の技術が強みです。
新たにこの分野に参入するには、技術を確立させるために何年も何十年もかかり、費用も億単位に達します。
今後は市場規模も大きくなり、時価総額の向上、株価を意識しながら、安定した配当を提供することが目標です。
投資家の皆様につきましては、引き続きご支援とご理解を賜りますようお願い申し上げます。
株式会社アドテックプラズマテクノロジー
本社所在地:〒721-0942 広島県福山市引野町五丁目6番10号
設立:1985年1月26日
資本金:835,598,501円(2024年5月アクセス時点)
上場市場:東証スタンダード市場(2004年7月26日上場)
証券コード:6668