【4444】株式会社インフォネット 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年9月3日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社インフォネットは、Webを起点としたコーポレートコミュニケーションの「整理」「発信」「分析」「最適化」のプロセスを総合的に支援し、企業のWeb情報発信の効果と生産性を向上させるソリューションを提供しています。

代表取締役 社長執行役員の日下部 拓也氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社インフォネットを一言で言うと

技術と創造力で企業のWebコミュニケーションに進化をもたらし、成長を加速させるクリエイティブ・テック企業です。

インフォネットの沿革

株式会社インフォネット代表取締役 社長執行役員 日下部 拓也氏

創業の経緯

当社の創業は、インターネットがまだ黎明期だった2000年にまで遡ります。

創業者がWEBサイト制作の会社を個人事業主として、福井県で立ち上げたことがきっかけです。

2002年に法人化し、2006年にはビジネスを拡大するために東京進出を決め、2011年にはさらなる業容拡大と人員増強のため、本社を東京に移しました。

CMSへの拡大

創業期はITバブルの影響もあり、企業がWebやITに関心を持ち始め、会社紹介ツールとして名刺変わりのWebサイトを徐々に作り始めた時期でした。

WEB制作はHTMLやCSSといったプログラミングの専門知識が必要であり、当社もその専門性を武器に需要の波に乗り、順調に売上を拡大していきました。

ただし専門知識が必要がゆえに、お知らせの更新や些細な修正・変更でも当社のような専門の制作会社に依頼いただく必要があり、お客様にとっては時間もコストもかかるうえ、タイムリーな情報発信ができないという課題がありました。

そのような中、海外ではCMS(Contents Management System)と呼ばれる、専門的な知識を持たずとも、WEBサイトを更新できるパッケージシステムが開発されるようになり、創業者がいち早くそのCMSに目をつけ、日本向けにローカライズして提供し始めたのが、当社のCMS事業の始まりです。

その後バージョンアップを重ね、日本特有の業務プロセスやセキュリティ問題に着目し開発した、「infoCMS」を開発しました。

見たまま操作で簡単にWebサイトの管理運用が可能であり業務効率を向上させる点では、人員やコストに限りがある中小・中堅企業様のニーズにフィットしていますし、海外版オープンソース型のCMSではセキュリティ上の脆弱性が指摘される中、自社管理サーバーで強固なセキュリティ対策が施されている点は安全面を重視する公共系のお客様や上場企業様にニーズにフィットしています。

このように様々な業種・業界のお客様との取引が徐々に増え始め、現在では国内SaaS型CMS市場で9年連続トップシェアを獲得するまでに成長しました。

IPO

WEBサイト制作とCMSの両方を手がける会社としてオーガニックな成長を続け、さらなる事業拡大を目指して、2017年頃から本格的にIPOを目指すようになりました。

経営陣の強化や資本政策など、内部体制の強化に努め、2019年に東証マザーズ市場(現 東証グロース市場)に上場を果たします。

当社の収益モデルは初期構築のフロー収益のほかCMSの月額利用料や保守といったストック収益の二重構造となっており、顧客が増えればストック収益が右肩上がりに積み上がるモデルのため、オーガニック成長は描きやすかったのですが、上場後は新たなことにもチャレンジしやすくなり、また企業としての社会的責任を果たすためにも、もっと根本的な社会課題を解決しようと、技術力とこれまでの実績を活かした新たなプロダクトの開発などに注力し始めました。

現在はWEBサイト制作とCMSの提供にとどまらず、Webを起点とした企業の情報発信(コーポレートコミュニケーション)を、技術と創造力で総合的に支援するために、複合的なサービスを提供しています。

次世代CMS「LENSAhub」リリース

今後の中核プロダクトとなる新たなCMSとして、2024年7月に次世代CMS「LENSA hub」をリリースしました。

「LENSA hub」は従来のCMSの枠を超え、より柔軟で拡張性の高いシステムを提供します。

これまでは企業ごとにCMSのカスタマイズを行なっていたため、導入企業が増えるほど管理の負荷が大きくなるという課題があり、またそのように個別にカスタマイズしてアップデートした機能をすべてのお客様にタイムリーに適用するということが難しい状況がありました。

一方、新たに開発した「LENSA hub」はクラウド型で提供するため、すべての導入企業様に同様のアップデート機能をご利用いただくことができるようになったほか、導入しやすい豊富なテーマ・テンプレートの採用やAPI連携の機能を標準装備しました。

特にAPI連携の機能を追加したことで、他のCRMや採用管理システムなどとシームレスに統合でき、情報を発信するだけのWebサイトだけにとどまらず、そこに蓄積されたあらゆるデータを周辺業務にもシームレスに活用いただけるようになり、Webコーポレートコミュニケーションとしての提供価値を高めることができました。

これまで中心だった中堅・大手企業だけでなく、中小企業や一般社団、財団法人等の小規模事業者も販売ターゲットにし、多くの企業に導入していただけると期待しています。

株式会社インフォネット 2025年3月期第1四半期 決算説明資料 より引用

インフォネットの事業概要と特徴

概要

企業がWebを活用して行う情報発信のプロセスである、「整理」「発信」「検証」「最適化」というPDCAサイクルにおいて、お客様が直面する課題を解決するためのソリューションを、コンサルティングと技術の両面からサポートするサービスを提供しています。

中でもWebサイトはビジョンや優位性を発信する有用な情報発信ツールであるとともに、社会やユーザーとの接点を生み出し、アクセス情報やユーザー属性など、ビジネスの発展につながる貴重なデータが蓄積される非常に有効なツールです。

Webサイトの管理運用を効率化するための自社開発CMSの提供と、ターゲット特性やサイトの目的から最適なコミュニケーション設計を行うコンサルティング、ユーザー導線を意識して見る人の心を掴むクリエイティブワーク、そして継続的な運用を支援するカスタマーサポートを総合的に手掛けています。

事業における優位性

目的・ターゲットに応じたコンサルティングの提供

企業や団体の情報発信の目的・ターゲットは主に「IR(株主・投資家向けコミュニケーション)」「PR(広報・プロモーション)」「HR(採用広報・採用ブランディング)」「GR(公共機関向けコミュニケーション)」の4つに分類されます。

当社はこの4つの領域の専門知識を持ったプロフェッショナルが、お客様の課題をしっかりヒアリングし、Web課題を解決するための最適なコンサルティングを提供します。

グループ力で実現する「コンサルティング × テクノロジー」

インフォネットグループは各分野を専門としてチームで構成されており、グループで連携した総合的な支援を可能にしています。

業種、業界問わず多くのお客様のWeb課題を支援してきた実績に加えて、独自の分析と研究に基づいて提供する「コンサルティング」と、AI関連技術などの最新の「テクノロジー」の両面からWebコミュニケーションの効果を最大化します。

導入~運用までのワンストップサービス

自社開発のCMSを有しつつ、WEBサイトの企画・プロデュースからデザイン・コーディング、システム開発、運用サポート、効果測定など、マーケティングに欠かせないサービスをワンストップで提供していることが大きな強みです。

競合他社の多くは、WEBサイト制作のみを提供している場合や、CMSの提供のみをしている場合など、一部に特化したビジネスである場合がほとんどです。

もちろん、WEBサイトの制作はデザイン性やコンテンツなどのソフト面も重視されますが、当社はCMSを自社開発していることで、ハード面からの生産性向上を同時にサポートすることができるという側面で選んでいただけるケースも少なくありません。

CMSを提供し、運用をサポートをさせていただいていることで、ご利用いただいているお客様と継続的なコミュニケーションが可能になり、お客様の課題をタイムリーにキャッチアップできるとともに、当社からも定期的に最新のITトレンド情報や改善提案を提供することができます。

株式会社インフォネット 2025年3月期第1四半期 決算説明資料 より引用

安定的な収益モデル

当社が手がけているWEBサイトの受託案件は、プロジェクト規模によって異なりますが、新規案件でおよそ数百万円から一千万円単位の売上を見込みます。

また、初期構築でフロー収益をいただいた後は、CMSの月額利用料をいただきながら定期的に既存顧客の追加構築や改修を受託するため、安定したストック収益を積み上げています。

お客様は大規模から小規模まで様々で、プライム上場企業から一般社団法人など幅広くお取引しています。

株式会社インフォネット 2025年3月期第1四半期 決算説明資料 より引用

インフォネットの成長戦略

今後の成長イメージ

お話してきたとおり、私たちは創業来から続くWEBサイト制作とCMSを基盤とした事業を強みとしながらも、今後はWEBを起点とした情報発信(=コーポレートコミュニケーション)を、技術と創造力で総合的に支援していくために、ソリューションやプロダクトを拡充していくことを目指しています。

企業のWebコーポレートコミュニケーションの核となるWebサイトは企業の顔であり、そのデザインや運用はブランド価値を直接左右するものです。

私たちはお客様のビジョンや戦略を適切に発信できるように設計し、その後の運用に至るまで総合的なサポートを提供したいと考えています。

そのためにもAIを活用したサービスや高度なWEB解析ツール等、新規プロダクト・サービス開発への事業に投資していきます。

近年では、専門知識がなくても圧倒的にわかりやすく、大幅時短を実現するアクセス分析ツール「MEGLASS finder」や、記事コンテンツの作成を効率化させるAIライティングサービス「LENSA writer」をリリースしました。

また、より専門性を高めて高度なコンサルティングを提供すべく、人員の補強や従業員に対する投資も積極的に行っていきたいと思っています。

株式会社インフォネット 2025年3月期第1四半期 決算説明資料 より引用

M&Aによる自社サービス・プロダクトの拡充

私たちの成長戦略の一環として、M&Aも重要な柱です。

Webコーポレートコミュニケーションを総合的に支援するためのサービスラインナップの拡充は、自社開発ももちろんのこと、相互に提供価値を高めることができる親和性のある企業と手を組むことが近道だと考えています。

Web運用の継続的かつ頻度の高い顧客との取引関係を活かし、Web運用サービスおよび周辺サービスを増強することで顧客エンゲージメント向上を図りつつ、グループ全体の収益力を向上していくことを目指します。

株式会社インフォネット 2025年3月期第1四半期 決算説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

今期から私たちは成長にフォーカスし、より積極的な事業展開を進めていきます。

これまでお話ししたような世界観を実現するためには、オーガニックな成長に加え、外部リソースの活用が必要です。

そのため、迅速に市場のニーズに対応していくためにも、積極的に自社サービスやプロダクトを拡充し、体制を整えていきたいと考えています。

ぜひ、今後の当社の成長戦略と進捗にご注目いただければ嬉しいです。

投資家の皆様へメッセージ

IT技術の進展により『情報収集』の手法は充実している一方で、『情報発信』の課題はまだまだ多いのが現状です。

特に、多くの優れた商品やサービスを有している中堅中小企業にこの課題は顕著であり、「人・モノ・カネ」の経営資源の問題から十分な『情報発信』を行えていない企業が多くあります。

当社はこの課題が日本、あるいは世界全般の経済成長を最大化するうえでの社会課題だと考えており、テクノロジーとクリエティブの両面からこの課題に向き合うことで、人類の有する資源が最大限に有効活用される社会の実現を志向しています。

私たちには成長の余地が十分に残っていると自負しています。

Web/インターネット付随サービス市場は2兆円規模、CMS市場に限っても170億円規模と言われ、非常に大きなポテンシャルを持っています。

当社はこれまでの経験と実績を活かし、日本のコーポレートコミュニケーションを支える存在として成長していくと確信しています。

今期からはM&Aや新規サービスの展開を通じて、成長に舵を切った戦略を描いています。

ぜひ当社の成長に期待していただき、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

株式会社インフォネット

本社所在地:〒100-0004 東京都千代田区大手町1-5-1 大手町ファーストスクエア ウエストタワー2F

設立:2002年10月15日

資本金:29,080万円(2024年9月アクセス時点)

上場市場:東証グロース市場(2019年6月25日上場)

証券コード:4444

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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