【168A】株式会社イタミアート 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年9月30日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社イタミアートは販促品を中心とするEC販売を行い、短納期・低価格を実現する内製化と独自システムによる強みを活かし市場拡大を目指しています。

代表取締役の伊丹 一晃氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社イタミアートを一言で言うと

「IT × ものづくりの力で世の中を変える」会社です。

イタミアートの沿革

株式会社イタミアート代表取締役 伊丹 一晃氏

創業の経緯

私は学校を卒業後、印刷系の出版会社に勤務していました。

広告分野に興味があった私は、出版物の営業を通じて顧客に向けた提案活動で経験を積みました。

しかし、会社の方針と私のビジョンが一致せず、23歳の時に独立を決意し、1999年に「有限会社イタミアート」として当社を設立しました。

創業当初は、広告代理店やプロダクションのような事業モデルでした。

私自身が営業を担当し、ポスターやパンフレットなどの印刷物、時にはラジオのCMも取り扱いながら、小規模で経営していました。

そのような中、私は販促品やニッチな商材に着目し、”うちわ”のカタログ販売を開始しました。

また、幼稚園や保育園に向けた教材としてターゲットを絞り、約6,000施設の顧客を獲得することに成功しました。

この成功を契機に、有限会社から株式会社に移行し、さらなる事業拡大に乗り出しました。

販促商材のEC販売を開始

当社が本格的にEC販売を開始したのは2006年以降です。

1999年ごろからインターネットが普及していましたが、ECビジネスで販促品などを販売することは難しいと考えていました。

しかし、2001年から始めた”うちわ”のカタログ販売が成功したため、インターネットでの販売もできるのではないかと考えました。

その後、販促品全般の取り扱いをスタートさせ、EC事業に参入しました。

当初は、小規模事業者がインターネットで商売をするのは難しいとされていましたが、当社の取り組みは徐々に成果を出し、販促品のEC市場での存在感を高めていきました。

事業が拡大していく中、2006年に多店舗展開を可能にする自社開発ECサイト構築システム「DREAM-PACK」を導入し、ECサイト「のぼりキング」を開設しました。

その後、自社のECサイト群を「キングシリーズ」としてブランド化し、”商品名+キング”のECサイトを複数立ち上げ、事業を拡大していきました。

自社製造とIT化

2011年より当社はメーカー機能を持つことで競争力を高めようと考え、のぼり旗の自社製造を開始しました。

外注に頼るだけではコストがかさみ、納期の面で不利になるためです。

その後、印刷や製造のプロセスを内製化し、IT化も進めることで業務効率を大幅に向上させ、短納期・低価格での納品を実現しました。

上場の背景

当社の本社は岡山県にあります。

上場を目指したのは数年前ですが、岡山県ではなかなかブレイクスルーやイノベーションを起こすような会社が生まれず、どうにかして地元を活性化したいと考えていました。

私は『海賊とよばれた男』という本を読み、逆境を乗り越えて日本のために尽力する姿に感動し、自分もリードしていく側の人間になろうと考えました。

岡山県の企業としてリードしていくためには、事業を成長させ当社がブレイクスルーを起こす存在となる必要があります。

そこで、上場は当社の成長における1つのきっかけになるだろうと考え、2024年4月に東証グロース市場に上場しました。

イタミアートの事業概要と特徴

概要

当社のビジネスは、ECサイトを通じた販促品の販売が中心です。

特に「のぼり」「横断幕」「懸垂幕」などのサイネージ分野が主力商材となっています。

これらの商材は、飲食店やイベント会場などでのプロモーションに活用され、定期的に需要が発生するリピート商材です。

また、ECサイトでの受注は、卸売を含むインサイドセールスにも繋がっており、リピート顧客に対しては、深掘り営業を通じて顧客のニーズに応じた幅広い提案を行っています。

株式会社イタミアート 2025年1月期中間期 決算説明資料 より引用

事業における優位性

一気通貫のデジタル化

当社は、ECサイトの運営から受注、製造、納品まで一貫してデジタル化しています。

株式会社イタミアート 2025年1月期中間期 決算説明資料 より引用

まず、自社運営しているECサイトから受注が入ります。

ECサイトは「のぼりキング」や「横断幕・懸垂幕キング」というように、多店舗で展開しているため、管理が煩雑になります。

そこで、「DREAM-PACK」が多店舗でのECを展開している当社の販売管理を一手に担い、注文管理や顧客対応の効率化を実現しています。

「DREAM-PACK」は15年以上の運用実績があり、常にアップデートを繰り返しているため、一朝一夕では追いつけないシステムです。

株式会社イタミアート 2025年1月期中間期 決算説明資料 より引用

その後の製造プロセスにおいては、「DREAM-PACK」からのデータを、製造管理システム「i-backyard」と外注管理システム「i-partner」が適切に処理し、短納期で多品種の納品を可能としています。

株式会社イタミアート 2025年1月期中間期 決算説明資料 より引用

このような一気通貫のデジタル化により、ローコストオペレーションを実現しています

効果的なWEBマーケティング

当社は多店舗展開による拡大戦略を採用しています。

株式会社イタミアート 2025年1月期中間期 決算説明資料 より引用

主力商品名=ECサイト名にすることで、SEO(自然検索)による流入を効果的に獲得することが可能です。

”商品名+キング”の名を冠したキングシリーズは延べ15サイトに上り、顧客がわかりやすく購入しやすいような動線づくりを心がけています。

また、700以上の検索キーワードに対するSEO対策を行い、目的に合った顧客が確実にサイトに訪れる仕組みを構築しています。

株式会社イタミアート 2025年1月期中間期 決算説明資料 より引用

例えば、「ラーメン のぼり」や「のぼり デザイン」といった複合キーワードにも対応し、特定のニーズを持った顧客を集めることで、CV率(購入率)を高めています。

実際、業界平均の約1%を大きく上回る5%を実現しています。

顧客のリピート化

当社の取引顧客は約38万件に上ります。

リピート率は60%を超えており、安定した顧客基盤が形成されています。

これは、消耗品である”のぼり”などが定期的に購入されているためです。

例えば、飲食店では四半期ごとに販促品の入れ替わるケースが多く、季節毎のイベントが行われる際にも受注が発生しています。

先ほどもお話ししましたが、リピート顧客に対しては提案型のインサイドセールスも行っており、顧客との関係性強化・満足度向上に努めており、リピートによる購入を実現しています。

株式会社イタミアート 2025年1月期中間期 決算説明資料 より引用

イタミアートの成長戦略

2025年1月期の戦略

今期の戦略は、ECサイトの売上拡大と卸売強化に重点を置いています。

物流コストの上昇が課題となる中、価格転嫁を進めつつ、ライバル企業との競争にも配慮した柔軟な対応を行っています。

株式会社イタミアート 2025年1月期中間期 決算説明資料 より引用

ECサイトについては、「パネルキング」や「冊子製本キング」、「展示会キング」など、各ニーズの高まりが伺えるため、高成長サイトのさらなる成長を加速させるために積極的な投資を実施します。

また、新規領域への進出を進めており、その一環として2024年内に「ノベルティキング」のOPENを目指しています。

株式会社イタミアート 2025年1月期中間期 決算説明資料 より引用

卸売ではクロスセル強化による売上の拡大を目指しています。

具体的には、”のぼり”を購入した顧客に対して横断幕などの関連商材を提案するというように、連携できる幅を広げていく戦略です。

加えて、インサイドセールスによる営業活動を強化し、既存顧客との関係を深めることで、LTV(顧客生涯価値)の向上に繋げています。

来期に向けた準備も進めており、効率的な運営体制を整えることで、さらなる利益率の改善を目指します。

株式会社イタミアート 2025年1月期中間期 決算説明資料 より引用

中長期の戦略

当社の既存事業と親和性の高い分野における新規商材の取り扱いを拡大し、さらなる市場シェアの拡大を狙っています。

例えば、ディスプレイ業界やノベルティ業界といった、既存の販促品とは異なるマーケットへの進出を計画しています。

また、最新の自動化技術を活用した生産体制の強化も進めており、2024年10月にはのぼり専用工場の稼働を開始し、生産力を従来の3倍に引き上げる予定です。

株式会社イタミアート 2025年1月期中間期 決算説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

当社の”小ロット多品種”に対応できる柔軟な生産体制に注目していただきたいです。

他社が敬遠するような小規模の注文も積極的に引き受けることができ、システム化による効率的な処理が利益を生み出しています。

これにより、地域の印刷会社や看板屋が扱わない仕事を当社が請け負えるポジションを築き、事業成長を実現してきました。

また、自動化とシステム化を実現しているため、生産効率を向上させ、競合他社との差別化を実現しています。

このように、ブルーオーシャンの領域でもある”小ロット多品種”に強みを持つ当社のビジネスは、非常に成長性があると自負しています。

今後はさらにロボットの導入やAIの導入による効率化を進め、人員削減・コスト削減と生産力向上の両方を実現しながら、業界内での競争力を高めていく所存です。

投資家の皆様へメッセージ

投資家の皆様にお伝えしたいのは、短期的な成果に一喜一憂するのではなく、中長期的な視点で当社の成長を見守っていただきたいということです。

数字としてまだ顕在化していない部分も多くありますが、経営者としては確かな手応えを感じています。

特に、IT化による効率化や顧客基盤の拡充といった取り組みは、今後の持続的な成長に直結するものであり、これが企業価値を高める源泉です。

当社の成長戦略は、短期的な利益拡大にとどまらず、中長期的な視点での企業価値向上を目標としています。

投資家の皆様におきましても、当社を中長期的な目線で見守っていただき、ご支援いただけると幸いです。

株式会社イタミアート

本社所在地:〒700-0945岡山市南区新保660-15

設立:1999年2月8日

資本金:459,620千円(2024年9月アクセス時点)

上場市場:東証グロース市場(2024年4月8日上場)

証券コード:168A

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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