【269A】株式会社Sapeet 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年11月14日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社Sapeetは「ひとを科学し、寄り添いをつくる」をミッションに、専門ナレッジを民主化し、高度化するAIカンパニーです。

代表取締役の築山 英治氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社Sapeetを一言で言うと

「ひとを科学し、寄り添いをつくる」AIカンパニーです。 

Sapeetの沿革

株式会社Sapeet代表取締役 築山 英治氏

創業の経緯

私は大学時代、アメフト部に所属しており、ここでの経験が当社を創業するきっかけとなりました。

入部当初の体重は60キロ程度でしたが、卒業時にはトレーニングの成果もあり、100キロ近くまで増加しました。

そのため、ネットで服を購入してもサイズが合わず、大変苦労したことを今でも覚えています。

そして、チームメイトたちも同じようにサイズ選びに困っている姿を目の当たりにし、「オンラインショッピングに試着の仕組みがあれば、この課題を解決できるのではないか」と考えるようになりました。

このアイデアを形にするため、大学院では仮想空間で3Dの洋服を試着できるシステムの研究に注力しました。

その後、試行錯誤の末に仮想試着システムを完成させ、これを事業化しようと決意し、当社を設立しました。

シセイカルテのリリース

仮想試着システムは、いくつかの企業に導入いただいたものの、大きな成果を上げることはできませんでした。

しかし、企業の方々との対話を通じて、このシステムを開発する過程で培った「体型推定」や「3Dモデリング技術」に高いニーズがあることに気づきました。

ちょうどその頃、ZOZOスーツが話題となり、アパレル業界全体で体型推定技術への関心が高まっていたことも追い風となりました。

また、同時期にPKSHA Technologyグループに入り、子会社として運営する中で、研究開発の環境が一層整備されました。

当初は体型推定に特化したシステム開発に注力していましたが、次第に顔の形状や肌の色、姿勢といった幅広い分析分野へと事業を拡大していきました。

その中で、顧客からの要望に応える形で姿勢分析技術を磨き上げ、2020年にウェルネス領域の店舗ビジネス向けサービス「シセイカルテ」をリリースしました。

この「シセイカルテ」は、現在当社の売上の大部分を占める主力プロダクトへと成長しています。

事業領域の拡大

「シセイカルテ」の開発後も、当社では体型推定や姿勢分析といった身体情報に関する研究開発を進めてきました。

しかし、「シセイカルテ」を提供する中で、顧客体験をさらに向上させるためには、分析前後のお悩みのヒアリングや信頼醸成のための寄り添い、サービス提供後のフォローアップなど、接客コミュニケーションの改善が重要だという声をいただきました。

これを受けて、新たにコミュニケーションアルゴリズムの開発に着手。現在ではサービス化を実現し、AIを活用した接客や営業支援ソリューションを提供しています。具体的には、メール文面の自動生成、AIアバターを活用したロールプレイング、そのフィードバックを通じた接客・営業スキル向上支援など、多岐にわたる機能を展開しています。

さらに、地方自治体とも連携し、山形市と共同で孤独・孤立に悩まれる方向けの相談チャットbotを開発しました。

このチャットbotは臨床心理士などのメンタルケアの専門家の監修を受けており、夜間や休日でも相談対応が可能になることで、大幅な業務効率化を実現しました。

また、AIプロダクトとして、ノーコードで接客フローを構築できる「カルティセールス」や、人とAIが協力してチャット対応を行う「カルティチャット」なども展開し、幅広い顧客ニーズに応えています。

こうして、身体分析アルゴリズムからスタートした当社は、顧客体験を向上させるためのコミュニケーションアルゴリズムへと事業領域を拡大し、現在は両分野でさらなる成長を目指しています。

上場の背景

当社は2024年10月29日に東証グロース市場に上場しました。

その主な目的は、事業成長に必要な「信頼性」と「知名度」の向上です。

当社の事業領域では、ウェルネス分野を中心に、顧客の身体に関するセンシティブな情報を取り扱っているため、信頼性は取引を続ける上で重要となります。

特にエンタープライズ向けにAIソリューションを提供している当社にとって外部からの高い信頼性を担保する指標が必要です。

また、採用面においても、信頼性や知名度を向上させることで、優秀な人材を確保することができると期待しています。

さらなる成長を目指す上では、これまで行ってきたリファラル採用のみならず、エンジニアやコンサルタントなど多様な分野の人材を安定的に確保していく必要があると考えています。

このように、事業成長における信頼性の強化と優秀な人材の確保を実現するために、この度上場を決断しました。

Sapeetの事業概要と特徴

概要

当社は、専門領域のナレッジを蓄積して開発する「Expert AI」を基盤に、AIソリューションとAIプロダクトを提供しています。

株式会社Sapeet 2024年10月29日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

顧客の規模に関わらず、幅広い業種に対応し、それぞれのニーズに応じたサービスを展開しています。

AIソリューションは主にエンタープライズ企業向けに提供しており、課題整理・戦略提案から開発、実装、保守運用までを一貫して支援しています。

株式会社Sapeet 2024年10月29日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

当社のソリューションは、単なるシステム開発に留まらず、機械学習やディープラーニングを駆使した高度なAI技術を用い、生成AIなど市場成長が著しい技術分野にも対応しています。

株式会社Sapeet 2024年10月29日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

一方、AIプロダクトでは、中堅・中小企業へのアプローチを強化しています。

一般的なSaaS型モデルとは異なり、各企業に合わせたカスタマイズを可能とするビジネスモデルを採用することで、導入ハードルを下げ、より多くの企業がAIを活用できるよう支援しています。

東大研究室出身のメンバーを中心に、AI技術のスペシャリストたちが、身体分析をはじめとするコア技術を基盤に、幅広い領域で課題を解決しています。

株式会社Sapeet 2024年10月29日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

事業における優位性

AIソリューションとAIプロダクトの相乗効果

身体に関する技術について言えば、体型測定の技術は業界を越えて活用することができます。

たとえば、アパレル業界では骨格診断に活用される一方、フィットネスジムではシェイプアップやダイエットのサポートに応用されるなど、その用途は多岐にわたります。

また、接客やカウンセリングといった分野についても、多くの店舗型ビジネスで共通するニーズがあります。

特に、インバウンド顧客対応のような場面では、業種を越えて活用可能なノウハウが存在しており、そのノウハウは「カルティ マルチカルテ」や「カルティセールス」などで活用されています。

このように、当社には、AIソリューションを通じて専門家のナレッジや高品質なデータを蓄積し、それをAIプロダクトとして汎用的に提供できるようにする仕組みがあります。

そして、AIプロダクトで得たデータを基にAIソリューションに活かすことで、さらに利便性を高めたソリューションを提供するという好循環の仕組みを構築しています。

この仕組みにより、安定した高成長を実現しています。

株式会社Sapeet 2024年10月29日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

幅広い市場と顧客基盤

現在、当社はウェルネス領域を主要なターゲットとしており、整体院・整骨院や歯科医院などを中心に、すでに3,000店舗を超えるお客様にご利用いただいています。

当社が提供するAIソリューションとAIプロダクトは、顧客規模、プロジェクト予算、導入スピードなど多様なニーズに対応可能な柔軟性が特長です。

この顧客基盤を活かしながら、当社の事業は小売、ファッション、寝具、健康食品といったさまざまな業界にも広がりを見せています。

特定の業界に依存することなく、幅広い分野で蓄積したナレッジを基に、新たなプロダクトやソリューションの開発に繋げています。

株式会社Sapeet 2024年10月29日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

共通する開発基盤

当社のサービス開発は、コンサルタント、デザイナー、エンジニアなど複数の専門職がユニット体制で担当し、各プロジェクトにコミットしています。

ユニットは必要に応じて再編可能で、柔軟かつ効率的な開発体制を整えています。

また、「特定のスキルに限定された人材」ではなく、「幅広いスキルを持つオールラウンダーな人材」を採用することで、プロジェクトの多様なニーズに対応できる体制を実現しています。

このような組織設計が、当社の競争力を支える重要な要素となっています。

株式会社Sapeet 2024年10月29日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

Sapeetの成長戦略

市場展開

当社はウェルネス領域から事業をスタートし、現在では販売促進、接客、フォローアップ、顧客管理など、一連の業務を支援する形で事業を展開しています。

ウェルネス領域においては高い評価をいただいており、業界内で当社サービスの利用が広がっています。

株式会社Sapeet 2024年10月29日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

この強固な事業基盤をもとに、医療や不動産、生命保険といった「人と人との寄り添いが重要な」業界への進出を目指しています。

当社のコミュニケーションアルゴリズムは、ウェルネス領域で接客を標準化する取り組みで成果を上げており、BtoCの営業や接客が重要な不動産会社や生命保険会社でも高い効果を発揮すると考えています。

ただし、業界ごとに重視されるポイントは異なるため、当社の得意とするカスタマイズ機能を活かし、それぞれの企業に最適化したソリューションを提供していきます。

株式会社Sapeet 2024年10月29日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

顧客・パートナーとの連携

当社が今後も安定的に成長するためには、データと技術が重要な原動力になると考えています。

たとえば、「シセイカルテ」など身体分析ソリューションの提供を通じて蓄積されたデータを、他の領域の分析に活用することで、さらなる技術革新を目指しています。

現在は、分析精度の向上に加え、姿勢以外の新たな関連領域にも技術を拡張することで、より高度で多様なサービスの提供を目指しています。

また、当社のソフトウェア利用が拡大するにつれ、業種ごとのデータや専門ナレッジがアセットとして蓄積され、これを活用することで、ユーザー体験のさらなる向上と当社の価値向上に繋げています。

たとえば、身体分析アルゴリズムでは身体の状態を詳細に分析できますが、健康の改善には一部分だけではなく、全体を総合的にサポートするソリューションが必要です。

このため、包括的にお客様の身体を支援できるサービスを構築し、各専門分野の事業者へのサポートを強化していきたいと考えています。

さらに、コミュニケーションアルゴリズム分野では、商談データや成約事例のドキュメントをAIが分析し、それを再現可能なナビゲーション機能として提供する技術を開発中です。

これにより、営業や接客の効率化と品質向上を実現し、幅広い業界での活用を目指しています。

株式会社Sapeet 2024年10月29日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

注目していただきたいポイント

当社の成長の根幹は、AI技術を基盤とした「Expert AI」にあります。

私たちは、企業のコア業務にAIを組み込み、売上を生み出す業務の一部をAIで代替したり、業務を拡張・向上させたりすることで、顧客のビジネス成長を支援しています。

特に、技術と専門家のナレッジを融合してAIアルゴリズムを開発する点は、他社にはない当社の強みです。

各分野の専門家と連携し、ナレッジやノウハウを高度化・可視化することで、「専門ナレッジ・ノウハウのAIといえばSapeet」というポジションを確立していきます。

また、当社のサービス開発は「プロダクトアウト」に留まらず、顧客の声を重視した「マーケットイン」の姿勢で、新たな価値を創出しています。

研究室のような探求心と、部活のようなチームワークを大切にし、高い技術力と事業開発力を兼ね備えたメンバーが、プロフェッショナルとして楽しみながら事業に取り組んでいます。

私たちは、「チームとしてお客様に価値を提供することに全力を尽くす」という行動指針を掲げ、熱意と冷静さ、知的好奇心を持ちながら、さらなる成長を目指します。

株式会社Sapeet 2024年10月29日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

投資家の皆様へメッセージ

私たちは、人を科学し、暗黙知として存在していた専門ナレッジやノウハウを「Expert AI」に変換し、各業界や社会のさまざまな領域へ広げています。

これにより、新たな顧客体験を創出し、より多くの方々にその価値を届けたいと考えています。

私たちの目指すのは、顧客とその先にいるエンドユーザーがWin-Winの関係を築ける世界です。

社会課題の解決に取り組みながら、高い満足度と継続率を兼ね備えたサービスを提供し、安定した成長基盤をもとに事業拡大を続けてまいります。

これからも温かいご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

株式会社Sapeet

本社所在地:〒108-0014 東京都港区芝5-13-18いちご三田ビル8階

設立:2016年3月9日

資本金:232百万円(2024年11月アクセス時点)

上場市場:東証グロース市場(2024年10月29日上場)

証券コード:269A

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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